5位のジェフ千葉が4位のアビスパ福岡を迎え撃つ試合。
EUROの予選があるため、ペチュニクが欠場のジェフ市原。また、5月はなかなか結果がでていないので、スタメンもいじっている印象。久々の水野。水野、家長が将来の日本代表を背負う、なんて言説の記憶を思い出させる。ただし、二人共にJ2にいたでござるの巻。
バルセロナBとミッドウィークに試合をしたアビスパ福岡。ちなみに、0-5で完敗したらしい。また、この試合とスタメンはほぼ一緒。いわゆる自ら望んでの過密日程。バルセロナBに比べれば、ジェフ市原なんて、、効果を狙ったのかどうかは定かではない。監督は井原。曲者と知られているので、横浜に帰る気配がちっともない。ネルシーニョの元での学習の成果をアビスパ福岡で見事に示している。ところで、井原のマイチームはどこなのだろう。
■奇襲と計算
試合開始10分までは秩序のない時間が訪れることが多い。本来は自陣に撤退して守備を組織するチームでも、高い位置からのプレッシングを仕掛けることがある。地上戦を志向しているチームが相手の裏にロングボールを蹴りこみまくることもある。いわゆる、奇襲に対してどのように対応するか。安全に対応するか、自分たちの型で対応するかは、チームの哲学次第だろう。
ホームの勢いを活かして、とつい書きたくなるくらいに、ジェフ市原は奇襲を仕掛けた。アビスパ福岡の中で背の低い堤サイドを狙い撃ち。競り合いを起こすようなハイボールもあれば、裏に放り込むボールもあった。相手のウイングバックの裏を取り、無理せずにコーナーキックがとれれば問題なしという攻撃を見せる。また、素早い攻守の切り替えによって、アビスパ福岡の攻撃の開始を狂わせることにも成功した。5-4-1で撤退するアビスパ福岡が無理にクリアーすれば、前線の的は中原のみなので、マイボールになる確率の高いジェフ市原。理にかなった奇襲で一気に試合の主導権を握ることに成功する。
そんな奇襲に面食らったのか、アビスパ福岡は自分たちの自己紹介すらできないままに、判断ミス。安全にクリアーでいいのか、それでも繋ぐのか。ハイボールの処理ミスから町田→森本で先制を許し、その直後にはコーナーキック崩れからの水野のミドルが炸裂し、試合は2-0といきなりの動きを見せた。
その後にアビスパ福岡がロングボール攻勢を強めていくのだけど、相手にロングボールを蹴らせないために裏に放り込む&素早い攻守の切り替えでロングボールを蹴らせないというジェフの筋道は本当に良くできていたと思う。
■アビスパ福岡の自己紹介
夢スコアも文字通りに夢ではない展開だったのだが、2得点は試合の状況を変えるには十分なスコアであった。ジェフは多少構えを見せ、これ以上の失点は試合の終わりを告げることを知っているアビスパ福岡は、自分たちはこういうサッカーをします、ということを急に示し始める。
3バックによるシステムのミスマッチでオープンな選手を作る。オープンな選手から中原にロングボールを放り込む。中原の空中戦の強さに屈する場面の多かったジェフの守備陣。セカンドボール争いでも城後、金森に後手を踏む場面が多かった。さらに、ボールを外に出せば、堤のロングスローで中原の頭にボールが飛んでくる悪夢。ゴール前にウイングバックも侵入していく積極性を見せて、試合の主導権を取り返すことに成功した。
ロングボールに苦しむジェフ。ロングボールを封じる作戦は自分たちがボールを保持するくらいしかない。いざとなれば、キーパーからだってロングボールは蹴ることができる。だからといって、最少人数で相手のセンターバックを追いかけまわしても意味が無い。図のように枚数が足りない。パウリーニョたちが連動すれば、中原周りのセカンドボール争いで後手を踏む。つまり、相手がボールを保持しているときに限って言えば、センターバックの事情に合わせるかどうかが重要なのだが、最後まで走っていた。たぶん、走らせるのが好きな監督なのだろう。
では、ボールを保持して相手のロングボール機会を削ることができたかどうか。アビスパ福岡も相手にボールを保持させるのは賢くないと考えていたのだろう。5-4-1からの中盤中央の選手が前線に飛び出すなど、かなりの無茶をしながらプレッシングをかけていた。そんな無茶なプレッシングでは、ポジショニングと角度で外すことができる。しかし、2-0で勝っている状況もあるので、ジェフはロングボールを蹴っ飛ばす場面が多かった。実際にビルドアップミスからのカウンターを受けていたので、何ともいえない判断である。でも、セットされた状態から崩す場面もあったので、ちょっともったいなかったかなとも。
そんなジェフの攻撃は森本の奮闘もむなしく、アビスパ福岡の守備陣に跳ね返される場面のほうが多かった。こうなると、攻守に詰んでいる状態となる。失点の時間の問題、という場面が次から次へと出てくると、未来へと希望が繋がってくる。ああ、自分たちのやっていることは正しいのだなと。というわけで、プレーに勢いを感じさせ続けた金森のゴラッソでスコアは2-1へ。
■動かない関塚監督
後半になっても流れはほとんど変わらず。変える必要のないアビスパ福岡と変える必要のあるジェフ。ジェフはカウンターから井出と中村の左サイドから仕掛ける場面が目立ち始めるが、試合に影響をあたえるほどのインパクトはなく。アビスパ福岡は相手を押し込めるようになり、ロングボールとサイドからのクロスとシュートの雨あられ。それでも、アビスパ福岡のビルドアップ隊がボールを持っているときは前から追いかけるのだから健気。でも、健気では勝てない。左サイドからのクロスに中原がヘディングで同点ゴールを叩き込む。
その後の関塚監督は動きに動く。選手を交代して、目先を変えたり、ポジションを変えてみたり。むろん、スーパーサブがいればそれでもいいのだろうが。アビスパ福岡も前線の運動量過多な選手たちをかえる。懐かしの坂田大輔。そして酒井高徳弟。キャラがこい。ジェフが何も変わらなかったので、試合内容はそのまま流れていった。決定機を次から次へと掴んでいくアビスパ福岡。しかし、最大のチャンスは坂田大輔に当たって外れる不運。Luckyなジェフは引き分けのまま試合を終えることに成功した。
■独り言
ロンドンオリンピックスタッフが揃ったジェフ。しかし、序盤戦の好調が終わりをつげ、気がつけばいつものプレーオフ圏内へ。セレッソ大阪が内乱しているうちに、とおもいきや、大宮と磐田、そしてまさかの金沢。気がつけば札幌と群雄割拠状態。金沢との試合は現地で観戦したのだけど、ジェフはなかなか耐えられない。守備に問題あり。人よりも型。よって、ロンドンオリンピックスタッフの真価がやっぱり問われるシーズンとなりそう。
アビスパ福岡はネルシーニョの現実的な部分をがっつり引き継いでいるかのようなサッカーだった。金森の積極的な姿勢と素早いドリブルがとっても特徴的だった。それにしても、アビスパ福岡の監督を引き受けた井原監督はやっぱり曲者。
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