知る人ぞ知る本気出して考えてみたシリーズです。ストーミングというよりは、最近はレッドブルグループのサッカーをたくさん見てきました。その中で、ストーミングって結局なんなんだよ!ということを自分なりに考えてみたいと思います。
── ストーミングって何なのか、現時点での考えを説明してください。
完璧なストーミングなどといったものは存在しない。完璧なゾーンディフェンスが存在しないようにね
── え。でも、ゾーンディフェンスは存在しますよね。
そういう意味で考えると、ストーミングも存在します。曖昧なゾーンディフェンスが存在するように。
── 本気出して考えてみた結果を教えて下さい。
そうですね。ストーミングという言葉はぶっちゃけ良くないと思います。ストーミングをしている!というチームのサッカーを見ても、嵐のようなサッカーをしているチームはほとんどありません。ザルツブルグくらいしか目撃できていません。
── では、世間でストーミングと呼ばれるサッカーをしているチームが実際に何をしているかを説明してください。
最初にサッカーは4局面あると言われています。ボール保持、ボール非保持、ボールを奪ったとき、ボールを奪われたときですね。たぶん、この説明はあと100万回くらいするような気がしますが、毎回しようと思います。
この4局面をシームレスに移ろっていくのがサッカーというスポーツの特徴です。それぞれの局面にプレー原則、つまり、どのようにプレーすべきか!といルールが存在するように、局面が変われば、やるべきことが変化します。つまり、いくらシームレスといっても、切り替えはどうしたって発生します。プレー原則が変化するんですからね。
この切り替え、つまり、4局面の円環を速いスピードで行うことを厭わないチームが、ストーミングと呼ばれるサッカーをしているチームの特徴になります。中身のない言い方をすれば、ポジショナルプレーが配置とボール循環による試合の支配だとすれば、ストーミングは4局面の円環の意図的なスピードアップによる試合の支配となります。
── 4局面の意図的なスピードアップを行うために、具体的に何をしているのでしょうか。
この行動が嵐のようなスピードを持って行われるためストーミングと呼ばれてるのかな!?とは感じました。
相手がボールを保持しているときは絶え間ないボール保持者へのプレッシングです。注意点はプレッシングをするときに同数プレッシングのような勢いをみせなければいけないため、相手の配置変更に対して、自分たちも配置変更を余儀なくされるところです。シンプルな[3-4-3]や[4-3-1-2]が彼らによって復権していることは見逃せません。ただし、マインツ時代のトゥヘルも[4-3-1-2]で前からプレッシングだ!をやっていたので、そのリサイクルとも言えなくないですが。
自分たちがボールを保持しているときは、とにかく速攻です。前にボールを蹴る。相手の裏にボールを蹴る。自分たちがボールを保持する時間を減らし、相手にボールが渡ることを恐れません。相手にボールが渡ったとしても、前から死なばもろともプレッシングを行うので、局面がすぐに入れ替わる算段になっています。
つまり、速攻で失ったボールをすぐに奪い返すプレッシングが準備されています。そして回復したボールをまたすぐに速攻にすれば、あら不思議、4局面が高速で円環していることになります。このような速度で4局面が円環していけば、どうしても整理された状態での攻防は減り、整理されていない状態で試合が展開していきます。
── なるほど。よくわかりました。で、ストーミングがない!という理由は何になるのでしょうか。
だって、みんなやりません、これ。
── え
例えば、75分以降のプレミアリーグとか、無秩序になるじゃないですか。カウンターの殴り合いみたいな。もちろん、状況を導いているのと、疲労でそうなっちゃうのは全然違うとは思うんですが。ただ、局面の円環を速めるってのは、それなりにみんなやっているような気はするんですよね。あと、90分間それをやるのは無理ですし。ずっと高速で動き続けるのはさすがに無理というか。
── では、ストーミングと呼ばれるチームが局面の高速円環以外にどのようなプレーをしているのでしょうか。
配置で得た時間とスペースを活かして、普通にボールを繋いで前進させています。マンチェスター・シティとリヴァプールのサッカーが収斂してきたように、局面の高速円環だけでなく、自分たちがボールを保持する局面をしっかりとデザインしているチームが多いと感じました。
具体例でいうと、リヴァプール、ヴォルフスブルク、シャルケ、ボルシア・メンヒェングラートバッハ、そして、まだ試合を見ていませんが、ライプツィヒもその流れにあると聞いています。なので、ストーミング対ポジショナルプレーという文脈で語られることも多いと思いましが、どちらのチームも両方をこなそうとしているので、その文脈が成り立つことに違和感を覚える昨今です。
── 疲労とか色々あるかとは思いますが、なぜ両者が収斂してきていると思いますか?
勝てないからじゃないですかね。結局、サッカーでやるべきことを決めてくれるのはプレー原則でもプレーモデルでもなく、相手です。そして、時間とスコアです。リードしているのに、相手陣地にストーミングと叫びながら突撃してカウンターで同点ゴールを決められたら切なくないですか?残り時間が少ないのに。
相手と時間とスコアを考慮して、自分たちがどのように振る舞うべきか?と考えると、答えは自ずと出てくると思います。全部できないといけない。
自分たちの配置とボール循環で相手を整理されていない状況に追い込めないならば、力技で切り替えを連打するような変化が必要となります。
自分たちの高速円環でちっとも円環が加速しなければ、振る舞いを変える必要があります。相手が撤退して、ファウルを連発し、アウトオブプレーになるように試合をぶつ切りにしてくるならば、そうさせないようにボールを保持して試合時間を長くなるように振る舞うべきかもしれません。
勝つためにはみんな必要というシンプルな話だと思います。相手の守備が整っていない状態にするために、ボールを繋ぐかもしれないし、速攻で相手にボールを渡してプレッシングをするかもしれないし、相手に攻めさせて、ボールを奪ってロングカウンターをするかもしれないし、相手にボールを保持させて、相手陣地から強烈なプレッシングを浴びせるかもしれません。もちろん、それらに得意不得意は出て当たり前なのですが、相手と時間とスコアが自分たちの長所だけで勝負を許してくれる、なんてことはないでしょう。
── ポジショナルプレーとストーミングの出し入れの判断の基準みたいなものはあるのでしょうか。
マンチェスター・シティのゴールキックがわかりやすいと思います。おれたちは後方のエリアの優位性を相手陣地に持ち込んでいくぜ!というチームに対して、前進させないぜ!それどころか、ボールを奪ってやるぜ!と相手が人員を動員してくれば、シンプルにアグエロに蹴っ飛ばします。
レッドブルグループのポジショナルプレーは、それで前進できるならそれで行こうと。相手が人員を動員してきたら、蹴っ飛ばそうと。蹴っ飛ばすときに空中戦の的はいますし、セカンドボール回収隊も用意されています。このあたりの設計は見事です。地上戦という名の前進もいけるし、空中戦と言う名の速攻もいけるし、その保険も準備してます、というのは、大きな特徴と言えるでしょう。
シティは質的優位で勝負ですが、レッドブルグループは組織で勝負している印象です。
── そろそろまとめてください。
相手の配置をアンストラクチャーにするためにはどうしたらいいか!局面を高速で円環させるんだ!ついでに速攻も成功したらなお良い!というのは面白い発想で。そういう意味では発明に近い。ただし、相手のボールを繋ぐ技量が半端ないと、フルボッコにされてしまうこともある。
自分たちのボール保持で相手をアンストラクチャーにするとか、4局面をどのようにして3局面に減らすか?というサッカーばかり見てきた気がするので、新鮮味はすごい。ファン・ダイクでも20回勝負すればどうにかなるだろ!なら、20回放り込んでみようぜ!という発想も確かに楽しい。
ただ、それだけじゃだめ!ということで、ボール保持に寄り添ってきているのも面白い。この流れで最もわりを食いそうなのがインサイドハーフ。インサイドハーフにシャビ、イニエスタ、デコを使っていた時代ははるか昔で、インサイドハーフには全員マテュイディみたいな選手が起用されるような時代になってきているのかもしれないね。
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