【文字通りに救世主となった香川】ヴォルフスブルグ対ドルトムント

マッチレポ1516×プレミアリーグ

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ポイント差はあるものの、2位と3位の対決。結果は日本のメディアでも騒がれていたように、途中出場の香川が勝ち越しゴールを決めて、ドルトムントが勝利している。

デ・ブライネの脱出によって、開幕当初は結果が出なかったヴォルフスブルグ。しかし、気がつけば、定位置にいる。その底力は凄い。そして、チャンピオンズ・リーグも勝ち残っている。この試合では、ダンテが出場停止。ドラクスラー、シュールレ、クルーゼと、ドイツ代表の近い未来に主力になりそうな選手が複数いる。全員移籍組だけど。多国籍化が進む、バイエルンへの対抗となりえるか。そしてホームでは無類の強さを誇っており、今季も未だに負けなし。

香川がベンチスタートのドルトムント。カストロが好調のため、香川はベンチへ。香川がベンチの理由を少し考えてみる。ハリルホジッチが言っていたように、疲労を考慮して。カストロが好調だから。この2点が本命の予想か。なお、カストロにインサイドハーフのポジションを奪われたら、ローテーションで回していくのではないかと、予想している。フンメルス、ソクラティス、ヴァイグルは、インフルエンザで離脱。それでも、代役にギンター、ベンダー、スボティッチと、何とかなりそうなネームバリューに、ドルトムントの意外な層の厚さを思い知らされる。

■ヴォルフスブルグの守備のメリット・デメリット

開始早々からエンジン全開で飛ばしていくドルトムント。ギュンドアンの直接FKをバーに直撃、セットプレー崩れからのベンダーのボレーはポスト直撃といきなり先制をしそうな雰囲気満載の立ち上がりであった。

ヴォルフスブルグのシステムは、4-4-2。ボールを保持しているときも、していないときも、基本は4-4-2。守備の特徴として、相手のポジショニングに従属する癖が強い。よって、序盤にスボティッチからオーバメヤンに楔のボールが入る場面が2回見られた。アーノルドがあいてにつられ、オーバメヤンへのパスコースができてしまう。できたスペースをカバーリングするはずの選手も相手のポジショニングにつられ、カバーリングが遅れてしまう。そんな癖がヴォルフスブルグには蔓延していた。

さらに、ヴォルフスブルグは高いエリアからの守備を1列目が行った。シュールレとクルーゼは走りに走る。しかし、ドルトムントはセンターバックとアンカーで横幅と縦幅を作ることができる。定跡では、片方が縦幅(ギンター)、もう一方が横幅(センターバック)を交互(センターバック同士でパス交換したら)に抑える形となる。しかし、ヴォルフスブルグはリスクをかけて一気に襲い掛かる。だから、あっさりとプレッシングを回避されてしまう場面が目立った。そんなプレッシングに後方も連動する雰囲気は時間とともになくなっていき、23分には絶望する1列目の守備が目撃されている。

よって、香川のいないドルトムントが好調に見えた理由は、ほとんどがヴォルフスブルグの守備に理由を求めることができる。1列目の守備が機能しない。2.3列目の守備も相手のポジショニングに従属しすぎる。もちろん、ライン間でボールを受けようとする動きに対して、相手を捕まえに行くヴォルフスブルグのスタイルは相性が良い。しかし、ドルトムントの攻撃は後方からのビルドアップ、サイドバックの攻撃参加、縦への移動を繰り返すインサイドハーフとなかなか厳しいものがあった。また、カストロのサイドに流れる動きに対応できない場面も多く、ドルトムントはやりたい放題に近い形で試合を進めていくことができていた。

ヴォルフスブルグが試合の流れを取り戻すためには、局面を変換する必要がある。ドルトムントがボールを保持している対ヴォルフスブルグがボールを保持していないときの局面はどうにもこうにも分が悪い。だとすれば、この局面の時間帯を減らし、展開を逆にすればいい。そのため、ヴォルフスブルグはボールを保持する時間を増やそうと画策する。しかし、ドルトムントも高いエリアからのプレッシングで、ヴォルフスブルグの企みを破壊しようとすぐに動き始める。

ヴォルフスブルグのボール循環は、外外(サイドバックからサイドハーフ)の形が多く見られた。ドルトムントはスライドで外外循環に対抗する。前からのプレッシングがはまっているとき(ボール保持者の近くにパスコースがない状態)は良かったのだが、はまらない場面が出てくるようになる。

ドルトムントは4-1-2-3で攻撃を仕掛ける。守備のときはいまいち定まっていない。香川が出ていたときは、香川を前に出して4-4-2。高いエリアからプレッシングをかけるときはロイス、ムヒタリアンを前に出して4-3-3。ときにはロイス、ムヒタリアンを落として4-1-4-1となる。おまえがなんでそこにいるんだ!というポジショニングは攻撃では有効だが、守備では有効ではない。状況に応じてというとレベルが高く聞こえるが、守備はできるかぎりシステムを変えない方がいい。

ドルトムントの守備を見ていると、クローゼたち(ヴォルフスブルグの左サイドエリア)がボールを持っているときに、ロイスはギラボギにつく場面が見られた。そして、リカルド・ロドリゲスがボールを持っているときは、ムヒタリアンが近くにいるのに、ギュンドアンが飛び出していく場面が何度か見られた。4-3-3で守っているときのドルトムントは、1列目の守備が突破されたら、インサイドハーフがサイドにスライドして攻撃に対応する。4-1-4-1のときは、サイドハーフ(ムヒタリアンたち)がサイドにいるので、インサイドハーフはサイドにスライドする必要が無い。

よって、キーマンとなるのはロイスとムヒタリアンの守備となる。彼らの振る舞いで中盤の役割が決定される。しかし、ロイスとムヒタリアンの守備は相手の状況に応じて適切に変化しなかったので、ドルトムントの中盤の守備の役割は混乱を持って相手の攻撃に対応するようになった。その混乱を起こすために、ヴォルフスブルグは外外(守備の役割が複雑になりそうなサイドを中心)攻撃を準備してきたのだろう。チームがもともと持っている特徴とも言えるが。ヴォルフスブルグは外外循環と一発のサイドチェンジで3センターで守るドルトムントを苦しめにかかる。また、ドルトムントはインサイドハーフの前のエリアを防護する選手がいないことが多く、このエリアを使われてしまう場面も目立つようになっていった。

こうしてゆっくりとヴォルフスブルグが確実に試合の流れを引き寄せていた。しかし、先制点はドルトムント。中途半端でも前からボールを奪いに行けば、ときには奪える。すると、発動するはショートカウンター。ギラボギからボールを奪い最後はロイスが決めて、ドルトムントが先制する。

先制された時間帯の前後に、ヴォルフスブルグはシュールレを左に、ドラクスラーを中央に配置した。中央で使われたシュールレだが、左サイドからのカットインの強烈さは異常。ドラクスラーも中央で相手の空けたスペースを見つけられる&ドリブルで試合を壊せる選手なので、この配置のほうが強烈そうであった。

前半を振り返ると、せっかく試合の流れを取り替えしていたのに自分たちのビルドアップミスから失点したもったいないヴォルフスブルグ。序盤の奇襲と懸念された後方のビルドアップが相手の拙さにも助けられ機能したドルトムント。不安点は守備にあるといったところ。

■外外と中中循環

後半になると、ヴォルフスブルグはギラボギ→ドスト。4-1-4-1に変更し、インサイドハーフにはドラクスラーとクルーゼが起用された。ドストへの放り込み、ドラクスラーとクルーゼのビルドアップの出口となる動き、サイドに流れる動きなどで攻撃に変化が出てきたヴォルフスブルグ。ボールを保持して外外循環に中でボールを受けられるクルーゼとドラクスラーを配置して総攻撃の姿勢を見せた。この采配と前半からの流れ(ボールを保持する時間が増えた)は噛み合いを見せ、ドルトムントは攻撃される時間が増えていった。

55分に、ドルトムントはギュンドアン→香川。ギュンドアンは腰を痛めたよう。香川の投入をきっかけに、ドルトムントの守備は4-4-2となった。ロイスとオーバメヤンを1列目、香川、ギンター、カストロ、ムヒタリアンが2列目となった。恐らく、ハーフタイムに指示があったのだろう。3センターと4枚の2列目を行き来するのではなく、固定して守ろうという修正をする。

ヴォルフスブルグが恐ろしかったことは、守備は4-1-4-1。ドルトムントはアンカー脇のスペースを使うことを得意としている。3列目の守備の撃退で基本は対応するヴォルフスブルグ。ドルトムントからすれば、狙っているエリアでボールを受けられるのだから攻撃のスイッチが自然と入る。しかし、シュートまで行けそうでなかなか行けない。ヴォルフスブルグの危険な賭けだったが、守備の隙を作ることで、相手の攻撃を加速させ、ボールを保持する時間を減らすという狙いは、ある程度は成功していた。むろん、いい形でボールを奪えれば、カウンターを発動させることもできる。

57分にカリジュリ→トレシュ。ヴィエリーニャが前に上る。途中出場の右サイドバックのトレシュはがんがんゴール前にクロスを上げまくっていた。気がつけば防戦一方のドルトムント。シュート数、コーナーキックの本数でも逆転されてしまう。ビュルキのファインセーブも出てくるようになり、さすがのトゥヘルも守備固めに乗り出す。残り約10分でオーバメヤン→パク・チュホ、カストロ→ホフマン。ロイスと香川を前線に上げ、パク・チュホはまさかのセントラルであった。

しかし、ロスタイムにカウンター返しをくらう。カウンター返しといっても守備の枚数は足りていたのだが。左サイドからカットインするシュールレをエリア内で倒してPKを与えてしまう。微妙な判定にピスチェクは怒る。でも、判定が覆るなんてことはなく、トゥヘルもおとなしくしていた。失点する可能性は多く見られた展開だったので、割り切れたのかも。このPKをなぜか左サイドバックのリカルド・ロドリゲスが決めて同点となる。絶望がドルトムントの選手を覆っているかに見えた。

これで試合は終了かとおもいきや、ドルトムントが最後に攻撃を見せる。香川起点の攻撃は練習でもできないような流れを見せた。中央の香川から右エリアのピスチェクへ。そして左サイドにいた大外のムヒタリアンがダイレクトで中央に折り返し、香川が流れるようなボレーシュートを決めることに成功して勝ち越しゴールが決まった。こうしてホームで最強の内弁慶ことヴォルフスブルグはとうとう負けることとなった。バイエルンも敗戦したことで、ドルトムントからすると、これ以上は望めない週末となったことだろう。

■ひとりごと

守りきれなかったけれど、突き放したドルトムント。前節でも露呈したように相手にボールを保持されると不安定さを見せてしまう。ボール保持を意識すると、ボール保持に長所をもった選手をたくさん起用することになる。彼らが守れるタイプではないので、その状況でボールを奪えないのか!という場面が連続する。この試合では4-4-2でポジショニングを守り、最後の最後まで失点はなかったが、失点しそうな場面は作られていたので、何とも言えず。ボールを保持していないときの問題をどのように解決していくか期待。それとも攻めダルマになるのかどうか。

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