ストークのスタメンは、バトランド、ジョンソン、ショークロス、ヴォルシャイト、ピーテルス、ウィーラン、アフェライ、ボージャン、ウォルターズ、アルナウトビッチ、ホセル。シャキリは怪我。肉弾戦と技術戦の両方に対応できる選手がずらり。どっちつかずになってはしまわないかと不安になる。ブリタニア・スタジアムでは、アーセナルにほとんど負け知らずらしい。いわゆる鬼門。ボージャン・クルキッチがストークに居場所を見つけることになるとは、夢にも思わなかった。
アーセナルのスタメンは、チェフ、ベジェリン、メルテザッカー、コシェルニー、モンレアル、フラミニ、ラムジー、チェンバレン、キャンベル、ウォルコット、ジルー。怪我のため、エジルは欠場。キャンベルがスタメンに定着できたのは嬉しいお知らせ。レンタル生活のなかで、ワールドカップ、オリンピアコスでのプレーが印象に残っている選手がキャンベル。エジルがいないなかで、アーセナルのサッカーにどのような影響が出るのか注目。
■バトランドとチェフ
ストークのシステムは4-2-3-1。相手がボールを保持しているときは、ボージャンが1列目に移動したりしなかったり。高い位置からプレッシングを仕掛けるときは、4-4-2。ハーフラインから守るときは4-4-1-1と整理されていた。ときどきあやふやになる場面もあったが、1列目のプレッシングに対して、2列目の選手が連動できることが、ストークの強みだろう。このチームはボージャン、アルナウトビッチ、シャキリ(今日は欠席)などのスペシャルな選手たちが注目を集めている。その攻撃の華やかさも素晴らしいんだけど、懸命に全員で守備を行えることが大きい。
アーセナルのシステムは4-1-4-1。相手がボールを保持しているときは、ラムジーかチェンバレンが1列目に移動することがある。トリガーは不明。どちらかというと、自分たちのアクションによって試合に影響を与えたいときに移動が行われていた。例えば、相手の定位置攻撃に苦しんでいる&守備の時間が長くなっている状況を変えたいから、前からプレッシングを仕掛けるといった模様。基本は自陣に撤退。カソルラ、エジル、アレクシス・サンチェスと試合を動かせる、壊せる選手の不在から、そのようなゲームプランになったのかもしれない。
両チームともに、序盤はロングボールでプレッシング回避が多く見られた。ジルーへの放り込みによる前進&ストークのプレッシング回避のために、アーセナルはロングボールを多様。アーセナルので3列目(ディフェンスライン)の裏に放り込んで相手を下がらせる意図をもって、ストークはロングボールを多様。トップのホセルも空中戦を厭わないタイプなのは驚いた。スペイン人らしくないというか。もちろん、そういった選手がいないという意味ではないけれど。
アーセナルのバックパスに対しても、追い続けるストーク。激しいプレッシングに対して、アーセナルはジルーに助けを求める。しかし、もともとは空中戦&肉弾戦を主戦としていたストーク。やっぱり空中戦に強い。尋常じゃないくらいに強い。リヴァプール戦では優位点として機能していたジルーだったが、この試合ではまったく機能しなかった、だったら、地上戦でどうにかするしかないとなるのだが、前述のように、ストークはチェフまで追いかけてくる。地上戦は正面衝突となる。こうして、アーセナルのボールを保持する時間は少なくなっていった。
ボールを保持するようになったストーク。アーセナルの1列目の守備を警戒して2列目の中央の選手を落として、ビルドアップを行う場面が見られた。狙いとしては、3列目の選手にフリーな状態でロングボールを蹴りたい。選択肢として、精度の高いロングボールは常に用意されていた。ロングボールといっても、相手陣地での空中戦だけではない。対角線のサイドチェンジだったり、相手の裏への放り込みだったりで、アーセナルのゴールに迫っていった。
また、サイドバックからサイドハーフへの外外循環から、アルナウトビッチのカットインは準備されていたプレーだったろう。アルナウトビッチの左サイドからのカットイン→ボージャンが同サイドに流れる→ボージャンの動きに相手がつれたら中央への選択肢ができる&つれなかったらボージャンという選択肢ができる。
さらに、アーセナルを押しこむことができたら、ストークはグレン・ジョンソンを高い位置に上げる。このポジショニングの意図は、サイドハーフを横幅役割から解放すること&アーセナルのサイドハーフに低いポジショニングをとらせることにある。中央に移動していったウォルターズに相手が対応しなかったら中を使う。対応したら、アーセナルのサイドハーフが下がってくるはず。下がってこなければ、外を使う。相手を押し込めたら、ウォルターズをゴール前に突撃させるボールを供給する。
20分すぎまでは、ストークがやりたいようにサッカーをしていた。アーセナルは相手のアクションに対して、ひたすらにリアクションを行う。自陣に撤退してカウンターという絵図も、相手のサイドバックの高いポジショニングにサイドハーフがカウンターででられなくなってしまっていた。孤立するジルー。
30分過ぎからストークの圧力が弱くなる。具体的に言うと、スライドが間に合わなくなり、守備が分断される。アーセナルがフィニッシュまで持ち込めるようになる。そんな展開でゆっくりと活動を始めたのがキャンベル。ボールを受けてファウルをもらう。様々なポジショニングでボールを引き出すことで、相手の守備を狂わせる。ゆっくりと反撃のチャンスを狙っていた。試合を作れる選手が不在のアーセナルのなかで、その役目を全うできそうなのがキャンベルだったというのは感慨深いものがある。
しかし、データで最強の数字を残すバトランド22歳。キャンベルの演出した決定機を止めると、そのあともアーセナルの数少ない決定機をしっかりとシャットアウト。対するチェフも安定したセーブを見せる。撤退守備にチェフは鬼に金棒。相手が3バックでビルドアップするかもしれないし、ここは相性の悪いブリタニア・スタジアムだし、まあ守ろうかみたいなアーセナルだったけれど、チェフはその期待に応えるセーブを見せていた。
ゴールキーパーが試合を支える。後半のアーセナルはプレッシング開始ラインを高めに設定。最初の15分で奇襲だと。その15分でえたチャンスにはやっぱりバトランドが立ちはだかる。ストークは守備の強度回復に成功。アーセナルはロングボールをグレン・ジョンソンを狙い撃ち。セカンドボールを死守したのはストーク。そういう意味では前半とそこまで大きな変化はなかった。さらに言えば、ときどき地上戦を仕掛けるアーセナルの前に、カウンターを炸裂させるストーク。アーセナルのカウンターのクロスカウンターで対抗するストーク。しかし、ここでもチェフが立ちはだかる。
ピッチを広く使ったポジショニングサッカーでせまるストーク。しかし、得点がどうにも入りそうにもない。よって、ボージャン→ディウフでアルナウトビッチを中央に。クロス爆撃の確率を少しでも高めようと。だが、自陣に撤退が得意技になりつつあるアーセナル。サイドバックもしっかりと中央に絞って対応。危険なボールはチェフが対応。そしてメルテザッカーという空中戦の鬼もいる。
アーセナルもキャンベルのポジショニングで勝負。しかし、こちらはバトランドまで届かない。最後のパスや仕掛けのパスの精度の悪いは最後まで改善されなかった。出し手が悪いのか、受け手が悪いのかという以前のミスを連発。カソルラの偉大さを実感する。それでもなんとかしてくれる選手は怪我でいない。となれば、あとは守り倒すだけとなる。ストークの猛攻を防ぎ、アーセナルは0-0で試合を終えることに成功する。
■ひとりごと
首位のアーセナルと7位のストークの試合だったんだけれど、力の差はそこまでない。これがプレミアリーグの醍醐味や!となりそうだけど、単純に上のチームが絶対的な力を持っていないというだけの話のような気がした。バイエルンやレアル・マドリー、バルセロナは力づくで相手をねじ伏せる。たぶん、相手のアクションに対して常にリアクションで対抗しなければならない状況には恐らくならない。同じレベルで拮抗することがリーグ戦を楽しむ上での条件なのかはわからないが、今季のプレミアリーグの混沌さは上位チームがちょっと不甲斐ないからな気がする。そんなことないさ!ということをチャンピオンズリーグで証明できるかは、注目。
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