長澤和輝の浦和移籍即千葉レンタル事件によって、ちょっとだけ注目の集まったケルン。序盤は好調だったものの、寒くなるにつれて、チームの状況は悪化。結果が出たのはいつのことだっけと記憶を辿らなければいけないような状況らしい。なお、ストライカーのモデストに批判が集中し、この試合ではとうとうスタメンから外される結末となった。なお、大迫もベンチでスタンバイしている。
トーマス・トゥヘルが監督にきたドルトムント。1年目でこの成績は立派。バイエルン以外の強豪がスタートダッシュに失敗したこともあって、打倒バイエルン、ブンデスリーガの火を消すな!という役割を強制的に担わされることになったのは幸か不幸か。ヨーロッパリーグも勝ち抜けし、過密日程との戦いで真価が問われていくことだろう。クロップ時代がそうだったように、バイエルンとの直接対決は多くの人が楽しみにしているはず。直前にカップ戦があったことで、少しメンバーが変動している。懐かしのパク・チュホ。そして、香川は久々のスタメンのはず。
この試合が終われば、ブンデスリーガは冬休み。
■ケルンの狙い
ボールを保持していないときのケルンのシステムは、5-3-2。ブンデスリーガでも5バックでバイエルンやドルトムントに対抗するチームが出てきた。バイエルンがボールを保持するサッカーをしていることは明らかだ。同じように、トゥヘル就任以降のドルトムントもボールを保持するサッカーをしている。この試合でもボール保持率が70%をこえている時間帯があった。
ケルンの1列目の役割は、リッセはフンメルスをマンツー。ツォラーはヴァイグルをマンツーで抑えるものだった。かつて繋げないからという理由で、プジョルがずっとフリーであったバルセロナ対策を思い出させるケルンのドルトムント対策である。よって、ドルトムントの攻撃は、ソクラテスから始まることが自然と多くなった。なお、ソクラテスがボールを持っていても、ケルンの面々はじっと見守っていた。またはゆっくりとよせていくか。
ケルンの2列目の役割は、ソクラテスから始まる攻撃に対して、全体をスライドさせて対応する。ドルトムントの攻撃の起点は、インサイドハーフであることが多い。よって、ギュンドアン、ギンターエリアで数的不利になることは避けたい。ギュンドアンたちがボールを保持したときに、迷わずにプレッシングにいけるようにポジショニングを調整する必要がある。ケルンはウイングバック(ヘクター)がギンター、インサイドハーフ(スヴェント)がギュンドアンを担当することで、ずれを生じさせないように設計されていた。
ケルンの3列目の役割は、相手を撃退すること。高いポジショニングをとるドルトムントのサイドバックをボールサイドのウイングバックは捕まえる。逆サイドのウイングバックは当たり前のように中央にしぼる。相手のロングボールに対しては、ほぼマンツーマンで対応する。3バックの距離が離れることもためらわない。バイエルンに対して、シャルケの行った3バックに少し似ていた。
そんなケルンの守備に対して、ドルトムントはこまる。ソクラテスがボールを保持しても周りの選手は捕まっている。よって、最初に動き出したのが香川であった。左サイドを主戦場としているが、頻繁に右サイドに移動。ボールの受け手として相手の守備の基準を乱そうとする。しかし、全体をスライドさせるケルンの守備の前に、ドルトムントはパスコースを作れない。だからといって、ヴァイグル付近で香川がプレーすることもチームのバランスを壊しかねない。
よって、次のドルトムントの手は、フリーなパク・チュホにボールを預けることであった。パク・チュホとホフマンのコンビは左サイドにいたので、好都合であった。ただし、いわゆるスタメンではないホフマンとパク・チュホから攻撃を始めなければいけないという状況が、すでに罠の気配である。パク・チュホにボールが入ると、時間とスペースはある。フンメルス担当のリッセが気合の戻りを見せることもあったが、基本的には状況に応じてウイングバックが出てきたり、インサイドハーフがずれてきたりのケルンだった。
ドルトムントはボールを前進させることができていたけれど、左サイドで攻撃がつまってしまう場面のほうが多かった。そして、発動するケルンの罠。ボールを奪ったケルンは、パク・チュホの上がったスペースにツォラーまたはリッセを流れさせることで、フンメルスとのマッチアップを狙った。色々とネガティブな話が出てきているフンメルスの弱点を狙ったいい形だったと思う。
ケルンの狙いを整理すると、ソクラティスにボールを持たせて全体をスライドする。窒息させて攻撃の機能性を失わせる。空いている左サイドへドルトムントにボールを展開させる。左サイドの攻撃の機能性は、他に比べれば劣る。ボールを奪ったら、パク・チュホの裏に放り込んで、フンメルスの弱点を狙う。この狙いではファイターのモデストの出番は確かにない。ケルンは自分たちの狙いどおりに試合をすすめていった。
しかし、左サイド攻撃でコーナーキックを得るところまで進んできたドルトムント。このコーナーキックの連続から、ソクラティスが意地の一発を放ってドルトムントが先制に成功する。ケルンからすれば、まじかよ!!という展開だろう。
先制されたからのケルンは、高い位置からの守備を敢行。ビュルキが繋げるわけではないので、センターバックに突撃する→バックパスでビュルキ→蹴っ飛ばすの展開になれば勝ちだと。ヴァイグルにはレーマンが飛び出していく形で対応。もしも、失点したら前から行くぞ!前から!!!という準備をしてきたのだろう。スムーズに戦術が移行されていた。時間を相手に与えないケルンのプレッシングの前に苦しんだのはパク・チュホ。頼りにしていたフンメルスは対策されていて、ビュルキに戻せばボールを失う。この無限地獄に苦しみ、何度もボールを失うこととなった。相手のボール保持を破壊したケルンは、カウンターやウイングバックからのクロスで攻撃を仕掛け続けて前半を終える。
後半の頭から、トゥヘルはフンメルス→ベンダー、パク・チュホ→シュメルツァー。疲労を考慮して、という部分もあるのだろうが、なかなかファンキーな采配であった。単純にあやしかったパク・チュホを交代する。そして、相手の標的となっていたフンメルスを下げることで、誰をマークをするかを混乱させる狙いだ。
しかし、ケルンのフンメルス狙いはすでに終了していた。おれたちは前からプレッシングを仕掛けるだけだと、迷いのないサッカーを見せるケルン。時間を奪われたドルトムントは、いつものインサイドハーフから始める攻撃を出せる機会が減っていく。そうなると、守備の時間が増える。守備の時間が増えると、今季のドルトムントは弱い。ファウルなしでボールを奪えなかったり、サイドの選手が帰ってこなかったり。もちろん、ドルトムントに追加点のチャンスがなかったわけではないが、試合の流れ的にケルンのペースになっていった。
そして、ケルンも同時に2枚交代。モデストとビッデンコートが登場する。そしてシステムも4-4-2に変更した。4-4-2に変更したことで、序盤はドルトムントにいつもの型を出させてしまう場面が出てくるが、やはりセンターバックの時間を奪うんだ作戦に、すぐに移行。高さでオーバメヤンが地味に貢献できないことが、ドルトムントに流れを取りもどさせる隙を与えなかった。こうして、後半はケルンが攻めに攻める。しかし、シュートが枠に飛ばない。またはビュルキに防がれる。そして、ドルトムントもカウンターを仕掛けるという展開へ。
そんな試合を動かしたのはビュルキ。まさかのビルドアップミスでヴァイグルへのパスが奪われると、ツォラーに決められて同点へ。そして終了間際にはドルトムントのクリアーを跳ね返したヘディングがまさかのスルーパスになるケルン。ボールはモデストのもとにながれ、不調だったモデストがこれを決める。残り10分でまさかの逆転に成功するケルン。ドルトムントは自分たちのミスとわけのわからないゴールに見まわれ、終わりよければ全てよしにすることができなかった。
■ひとりごと
ドルトムントがボールを保持する理由は、自分たちの色々な弱点を隠すためにみえる。攻守の切り替えもはやく、カウンターもできるのだが、前線から追い掛け回されてポゼッションの前提を破壊されると、試合の流れを取り戻せない。これまでの相手の対策は、ドルトムントのポゼッションの機能性を削っていくことに集中していたが、そもそもボールを持たせないという展開に今日は苦しんだ。アーセナルのようにバスを並べることもできればなんとかなりそうだが、それをやるそぶりもなければ、できそうなメンバーと実際のスタメンの様相は異なっている。
さて、どうするトゥヘル。
コメント
例えば今いる、ドルトムントの選手でバス止めするとするなら、どんなチームになりますかね?
ぽこさんへ
誰を起用するか?ということですよね。仕組みを作れれば、誰でも問題ないと思います。終盤になったら4231にしてしまえば良さそうですが。