【移ろうシステムと個人で時間を作れるかどうか】ユベントス対バイエルン

マッチレポ1516×チャンピオンズ・リーグ

ユベントスのスタメンは、ブッフォン、リヒトシュタイナー、バルザーリ、ボヌッチ、エブラ、クアドラード、マルキージオ、ケディラ、ポグバ、マンジュキッチ、ディバラ。負傷からキエッリーニは帰ってこなかったが、マンジュキッチは帰ってきた。グアルディオラに恨みを持つだろうマンジュキッチの復讐が達成されるかどうか注目。イタリアの期待を背負う(ユベントスファンの期待だけかもしれないが)ユベントスだが、ファイナルラウンドの初戦でいきなりラスボスと対戦することになる運命。なお、ローマもレアル・マドリーと対戦なので、セリエAからすると、なんというくじ運の悪さとなるか。

バイエルンのスタメンは、ノイアー、ラーム、キミッヒ、アラバ、ベルナト、ヴィダル、チアゴ・アルカンタラ、ミュラー、ロッベン、ドグラス・コスタ、レヴァンドフスキ。ゲッツェやリベリがベンチに復活。攻撃の選手が怪我から復帰してきている一方で、センターバックには怪我人が続出。キミッヒがセンターバックとして活躍をしているのが現状だ。なお、シャビ・アロンソもベンチにいる。チャンピオンズリーグ制覇が悲願のバイエルンにとって、ファイナルラウンドの初戦の相手がユベントス。グアルディオラにきつい試練を、運命は与える。

■移ろうシステム

最初に両チームのスタメンはこちら

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試合序盤のかみ合わせはこちら

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チアゴ・アルカンタラが浮いていることはおいておく。

バイエルンのボールを保持しているときの序盤のシステムは、4-3-3。キミッヒとアラバがセンターバック。リーグ戦では3バックでビルドアップをする現象が見られたが、この試合では2バック+ヴィダルでビルドアップをする現象が見られた。ヴィダルが降りて3バックに変化するよりは、2バック+アンカーの形が維持される傾向が強かった。リーグ戦で見られた形のように、バイエルンがボールを保持しているときのラームはボランチ、ユベントスがボールを保持しているときは右サイドバックの役割となった。

10分たつと、噛み合わせは変化していく。

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チアゴ・アルカンタラがアンカーの位置にいたことはあまりない。実際にはバイエルンが先制した場面くらいで、基本はラーム。そしてラームの位置にはミュラー。

バイエルンの特徴は、決められた役割はあるけれど、その役割をまっとうする選手は決められていない。柔軟にポジションを入れ替えながら行われる。

最初の役割は、ビルドアップでオープンな状態をつくり、相手のサイドハーフとセンターフォワードの間のエリアから、運ぶドリブルで攻撃の起点になること。3バックのときは、アラバとキミッヒがこの役割を果たす。2バックのときは、ラームとときどきベルナト(ベルナトはこの役割が苦手なのでインサイドハーフのチアゴ・アルカンタラとポジションチェンジすることが多い)が行っていた

次の役割は、大外にポジショニングをとることで、相手の守備を外に広げること。仮に相手が広がならなかったら、サイドから攻撃を仕掛ける。ロッベンとドグラス・コスタをスルーするチームはあまりないけれど。基本的にはロッベンとドグラス・コスタがこの役割を担う。左サイドでは、ドグラス・コスタが中に行けば、ベルナトが大外。右サイドではロッベンが中に行けば、ミュラーが大外にポジショニングをとる役割になっている。

さらに次の役割は、相手の四角形(サイドバック、サイドハーフ、センターバック、セントラルハーフ)にポジショニングし、ライン間からコンビネーションによる中央突破を狙う。または、ライン間のポジショニングによって、相手のサイドバックやサイドハーフを中央に絞らせて、サイドを自由にする。さらに、ウイングにボールが入ったときに、オフザボールの動きで、サイドバックをカバーリングしようとする相手の選手を牽制する。ミュラー、チアゴ・アルカンタラ、ラーム、ベルナト。ときどきロッベンやドグラス・コスタがこの役割を行なう。

センターフォワードとのどつきあいは、レヴァンドフスキとミュラー。基本はレヴァンドフスキのみ。攻撃的に行くときは、ミュラーもゴール前に集中する。

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3バックの前に誰がいるかもバイエルンにとっては重要。しかし、この試合ではユベントスがかなり自陣に撤退して守備をしていた。よって、得点を狙うためにアンカー(図ではチアゴ・アルカンタラ)のポジションをなくして攻撃を仕掛ける場面が、時間がたつにつれて目立っていった。おそらくキミッヒやアラバがボールを運べるので必要なしと判断したのだろう。ボールを失ってもボールを運んだアラバたちがアンカーの役割を行なうという計算は十分に成り立つ。さらに、ユベントスの1列目も守備に全力を注いでいたこと(ユベントスのカウンターを恐れないで良い)もその要因か。ある意味で、センターバックによるアラバロール。でも、ヴィダルが降りたときのアンカーは、基本的にはラームが行なう。

ユベントスのボールを保持していないときのシステムは、4-4-2。序盤はディバラがヴィダル、マンジュキッチが2バックを担当していた。ヴィダルが最終ラインに降りていったことで、ユベントスの1列目の守備は横並びに変化した。そして、自陣に撤退してバイエルンの攻撃に抵抗していく。

最初に苦労したことは守備の基準点の整理。中央に入ってくるラームとベルナト(ときどきチアゴ・アルカンタラ)へのプレッシングを誰が行なうかが明確であった。けれど、その設定が罠だった。ユベントスはサイドハーフの選手がラームたちに寄せていくのだけど、そうなると、ロッベンたちへのパスコースが空くというバイエルンの計算になっている。また、余っているチアゴ・アルカンタラへのプレッシングも遅れるケースが目立ち、ボールを奪うという局面になかなか移動することができなかった。よって、ボールを前進させないことだけに苦心するユベントス。

また、ゴールキックからボールを繋ぎたいユベントス。しかし、バイエルンの執拗なプレッシングにたじたじ。ポグバがフィジカルを活かしてラームを圧倒することで、なんとかなりそうな場面もあったが、確実に運べるかというと微妙。よって、ポグバとラームの高さのミスマッチを狙って蹴っ飛ばす場面もあった。つまり、ユベントスはボールを運ぶことに苦労していた。そのことが意味するものは、自分たちでボールを保持することができなかったということだ。よって、バイエルンが延々とボールを保持して攻撃を仕掛ける展開となっていく。

17分にクアドラードとアッレグリが会議をする。このままではまずいと修正が行われる。

バイエルンの狙いとして、相手の四角形のなかでプレーしている選手、または相手のセンターバックとどつきあいしている選手を動かすことで、相手のセンターバックを動かしたい狙いがある。ユベントスからすれば、センターバックは動かしたくたい。だからといって、相手をスルーするわけにはいかない。

ユベントスの守備の修正は、バイエルンの攻撃の起点となる選手へのプレッシングには中央(ケディラとか)の選手がいく。サイドの選手はサイドから動かさない。サイドへボールが出たら、サイドハーフとサイドバックで対応。特に左サイドはクアドラードがサイドバックのように振る舞って対応する。右サイドは厄介なラームがいるので、ポグバで対応。その代わりに、マンジュキッチを2列目に頻繁に下げて、守備の人員増加でバイエルンの攻撃に対抗した。

ユベントスもかなりのパワーを守備にさいているので、困ったバイエルン。よって、アンカーの位置にいることの多かったラームが相手の四角形エリアに侵入していき、ミュラーがゴール前の仕事に集中するようになっていく。このように、お前がここにいるのかというポジショニングは相手を狂わせる。そして決定機を作るが、ミュラーとレヴァンドフスキの呼吸が合わずにゴールは生まれず。

ユベントスは守備に力をさきすぎで、カウンターはノイアーまで届くか届かないかという威力。さらに、その機会も少ない。けれど、ファーストレグであることを考えれば我慢我慢。バイエルンはブッフォンを強襲する場面が増えていくが、さすがのブッフォン。ぎりぎりでバイエルンの攻撃を防いでいく。

しかし、前半の終了間際にバイエルンに先制ゴールが生まれる。カウンター返しの起点はヴィダル。このボールをチアゴ・アルカンタラが前線につなげると、ロッベンのクロスを大外でドグラス・コスタが折り返す。大外から大外へのクロスをさらに中に折り返すと、相手の視野はリセットの連続となる。このクロスのクリアーボールがミュラーに渡り、冷静にミュラーが決めて、バイエルンが待望の先制点を決めた

■ボールを保持を長くするために

後半の頭から、マルキージオ→エルナネスで攻撃的にでるユベントス。前半の終了間際に反撃雰囲気を作れたことも大きいか。

立ち上がりから相手の陣地から積極的なプレッシングを行なうユベントス。バイエルンに隙があるとすれば、システム変換するときに発生する時間。ノイアーから始まるビルドアップは4-3-3で行なう。相手を押しこんだら3バックに変化する。よって、3バックに変化させるまえに、執拗なプレッシングをかければ、バイエルンは困る。攻撃的になっているユベントスからすれば、この相手の変換条件は願ったり叶ったりなので、積極的なプレッシングで試合の主導権を握りに行くユベントス。

しかし、50分からは、前半のリピートのような場面。ただし、ユベントスもボールを保持したときは懸命に自分たちの時間を長くしようと試みていた。前半はポグバくらいしかボールをキープできる選手がいなかった。よって、後半の頭からエルナネスを投入し、ボールを持てる選手を増やして攻撃の時間を増やそうとしている。ただし、攻撃を仕掛けるということは、相手にカウンターのチャンスを与えることにも繋がっていく。

54分にバイエルンのカウンターが炸裂。クアドラードのクロスを奪うと、起点はチアゴ・アルカンタラ。最後はロッベンが自分の型で相手を殴り、左足を炸裂させる。久々にロッベンらしいゴールを見た。

60分には、バイエルンのパス回しにオーレの大合唱。なお、ユベントスサポはブーイングで応える。ユベントスはディバラ、ポグバ、エルナネス、クアドラードの個人技が目立ち始める。相手のプレッシングを個人技術でかわしてしまえ理論は、かつてのウィルシャーがバルセロナ相手に披露していた。特にエルナネスのファウルを受ける回数は多かった。ファウルを受けることで、マイボール状態を継続し、ポジショニングを整理できることは大きい。

62分にユベントスが反撃。相手のゴールキックを回収し、丁寧にビルドアップ。キミッヒのクリアーミスを拾ったマンジュキッチからのスルーパスをディバラが決めて1点差にせまる。リヒトシュタイナーがドリブルで相手をはがせたことが大きかった。ゴールキックを蹴らせたことも大きい。レヴァンドフスキさえなんとかすれば、バイエルンの空中戦はなんとかなる。あとはノイアーからショートパスで繋がせないために前から行く仕組みがあるかどうか。

64分にマンジュキッチがレヴァンドフスキに復讐をする。その後もマンジュキッチは1列目なのにもかかわらず、前半のように左サイドハーフの守備を助けながら、バイエルンの選手をなぎ倒していく。なぎ倒しながら、相手の裏に飛び出していった場面の迫力は尋常でなかった。

68分にケディラ→ストゥアーロ。

73分にベルナト→ベナティア。本職のセンターバックがようやく登場したバイエルン。同時にディバラ→モラタ。

75分にユベントスが同点ゴール。ノイアーからのつなぎを中盤で奪い取り、そのまま速攻が炸裂。この攻撃が空中戦ではないのだけれど、ボールの軌道だけを見れば空中戦で面白かった。最後がストゥアーロがフィジカルの強さをみせつけるゴールとなった。2点ともにノイアーに長いボールを蹴らせてから発生していることは、セカンドレグでも注目したほうがいいかもしれない。

80分にはマンジュキッチがヴィダルに喧嘩を売る。

83分にドグラス・コスタ→リベリが登場。健康なロッベンは最強という代名詞をもらうロッベンよりも、最近は稼働率が低いリベリ。そんなリベリはアラバとのゴールデンコンビであっさりとユベントスのエリア内に侵入していくからすごい。リベリはドリブルでもチャンスメイクを連発。その恐ろしさは健在のようだった。

システム変換が足を引っ張るバイエルンは、ヴィダルをセンターバックへ動かし、ラームを中盤へ。そんなヴィダルをがモラタを相手にするのはフィジカル的にきつい。そしてイエローをもらい、マンジュキッチに何かを言われる。

試合はそのままに終了。おそらくどちらにとってもポジティブになれる結果と内容。バイエルンは試合内容で圧倒し、怪我人が戻ってくれば、さらに迫力をます。ユベントスも後半に見せたような気迫、とくに球際の強さは尋常でなく、そこで戦えた、そして結果がでたという現実は、次もどうにかできるかもしれないという希望を持たせるには十分だった。

■ひとりごと

セカンドレグも楽しみ。どこのリーグの審判が担当になるかも結果に大きく影響しそう。

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