はじめに
数試合をまとめる短観シリーズは終わりだ。これからはまとめないで行くぜ！がテーマのブログです。でも、内容は短観シリーズです。大量生産したい気分なんです。さて、いつまで続くことやら。
浦和レッズ対ファジアーノ岡山
気がついたら崖っぷちの浦和レッズ対ファジアーノ岡山の対決。まさかファジアーノ岡山のほうが勝ち点が上で迎えることになるとは夢にも思わなかったぜ案件。浦和レッズがJ２に落ちたときに各地に初見参する浦和レッズのサポが話題になっていた古い記憶。岡山のサポたちはその逆パターンを楽しむ日々になるに違いない。道中を楽しんでもらえればと思います。
内容をわけたロングボール作戦
ボール非保持の岡山は【523】。1列目の配置は2トップ+トップ下で、浦和のセンターバックとセントラルハーフを監視が役割となっていた。チーム全体の配置が柏レイソルの「それ」と同じなので、参考文献なのかもしれない。文献ではないけど。
もしも、浦和が【433】に変化するならマンマークを基本とする形となる。ちなみに、岡山の前線のプレッシングルールとして、誰がどの役割をしてもOKとなっていた。ボール保持でも岩渕と江坂は幅広く動く傾向にあったので、誰がどの位置でも機能するようになっているのだろう。Jリーグ全体として、センターフォワードはセントラルハーフを消して、ウイングが前に出てくる形が増えている気がする。
試合開始直後から西川がじっとして岡山のプレッシングルールを観察していた。キーパーまでは来ない、サイドに誘導したいのかなどなど、実際の相手と対峙して把握しなければならないことはたくさんある。そんな時間を与えないハイプレを序盤にやるのもドッキリとしてはありだし、最初から本来の姿を見せることもありといえばあり。
恐らくはスカウティング通りだったのか、それとも自分たちの配置に対して【3421】系統のプレッシングに慣れているというところか。浦和は計算通りにボールをすすめ、サイドの選手がワンタッチで中央にいれるあれ、と、相手の処理ミスもあり、いきなりサビオが決定機未遂を迎える。岡山からすると、初手で相手にボールを運ばれてしまうのは雰囲気が良くない。
でも、岡山はハイプレを継続。さすがにワンチャンでビビっていたら話にならないか。浦和のプレッシングルールに目を向けると、序盤の岡山は蹴っ飛ばし傾向にあったので不明。ただし、サンタナはプレッシングをかける意志が強いようだった。でも、後ろを観てついて来ないじゃん！、そんなときは大人しくなる場面もたまにあった。
ゴールキックをそのまま蹴っ飛ばすのではなく、センバに繋いで相手を自陣に誘ってから蹴りたい浦和。ロングボールを蹴るにしても相手が準備万端の状況で蹴るよりも、そうでない状況で蹴りたいのが最近の流行り。世界では繋ぐふりをしてセンターバックが蹴っ飛ばすこともある。
浦和のビルドアップ隊に時間を与えると厄介なことになるのは神戸戦で明らかだったので、ハイプレな岡山。この判断は間違いなかったと思う。たぶん、ボールを持たせたら松本だけでなく、もっと多くの選手が裏抜けを勤しんだに違いない。
安居にも神谷が出てくるので、中央エリアにビルドアップの出口はつくらせたくない強い意志を感じさせる岡山。サイドに誘導してウイングバックのスライドというよりも、浦和レッズのサイドバックを狩り場としているのかもしれない。
浦和は岡山のキーパーにはプレッシングにはいかず、サンタナが睨みをきかせる感じ。繋いでくるよりは、マリウス周辺をロングボールの終点としている様子。なので、浦和もセカンドボール争いを重視か。なお、途中から関根周辺にも蹴っ飛ばすようになる。たぶん、想定よりもマリウス周辺でのロングボール争いで優位に立てなかったから目先を変えたかったのだろう。
岡山を出発点とするロングボールの空中戦は、どちらかというと浦和に分があった。ハイプレ傾向もない浦和はセカンドボール拾う隊も準備されていて空中戦も負けない状況だと、浦和ボールになり、トランジションが発生。トランジション状態なので、岡山の配置は整理されておらず、浦和のボール保持を遅らせる目的でプレーすることになるので、その時間で浦和の個々の選手はリズムを掴みやすいようだった。
前半は浦和のペースで試合が進んでいった一番の理由は、このロングボールの争いにあった。岡山のプレッシング隊を誘き出してボールを蹴る浦和のロングボールの的のサンタナは存在感を発揮。さらに松本の裏抜けの二段構えになっているので、非常に強力であった。また、セカンドボールを拾う選手の配置もばっちし決まっていて計算通りだったのではないかと。なお、ボール保持者をダイヤの底において、ダイヤの先に空中戦の的だとセカンドボールは拾えることの多い法則。
逆に岡山のロングボールはマリウスに蹴っ飛ばしても、関根周辺に蹴っ飛ばしても思うようにならず。サンタナの孤独なプレッシング以外はミドルで構える傾向にある浦和のほうがロングボールに対する手当をしていた様子。となれば、ボールを繋ぎたくなる岡山は10分すぎからスケジュール通りにボールを繋ぎ始める。
守備の配置をいじる岡山のジレンマ
岡山の落ち着いたビルドアップの場面が少なく、終盤では撤退を選択した浦和だったので、浦和のハイプレについてはサンタナの強い意志が中心となった。恐らく柏レイソル戦で見せた【4213】でプレッシングが相手の3バックへの答えなのかもしれない。でも、そのかみあわせが少なかったので、その答えはまた今度になりそうだ。
話は変わるが、金子の立ち位置に応じて金子を追い越せる関根はボール保持を考慮すると、2人のバランスが良いのかもしれない。サイドハーフ仕草もできる関根。鹿島の小池の起用とは逆転の発想。
23分すぎから江坂が右サイドハーフのような守備を始める。チーム判断か、現場判断かは不明。恐らく、後半もこの形が継続されていたので、保険として準備されていたのかもしれない。岡山のセントラルハーフからすれば、目の前のグスタフソン、安居を担当する選手が一人減った（江坂が右サイドになった）ので、2人で捕まえにいきたい。もしくは2トップに背中で消して欲しい。
でも、浦和のセンターバックはロングボールを匂わせながらボールを持つので、セカンドボール争いにも参加する必要があるジレンマを抱える。西川までプレッシングにいかなければずれることもないが、2トップは行くときは行ってしまうので、だんだんとグスタフソンが活躍する盤面が成立していった。
そもそも2トップにした理由が浦和のセンターバックへの圧力を強めるためだっただろうなので、難しいところである。かみ合わせよりもスピードで浦和のボール保持の精度を落としたい、みたいな。え？撤退守備で我慢すればいいじゃんとなるけど、それはそれで厳しかったことはこのあとの時間帯が証明し、ロングボールを蹴られることがきついこともわかっていてのハイプレ。ジレンマである。
グスタフソンがボールを触るようになっていく盤面になったので、28分から浦和が押し込む時間帯が続いていくことも必然。押し込んだ状態だと、安居がゴール前に飛び出し、グスタフソンが後方に残ってゲームメイクを担当する模様。ただし、関根の攻撃参加、荻原にサビオの解放と神戸戦で観たような絵面が蘇っていくようだった。
相手陣地では【523】、自陣では【541】が岡山のデフォルトなのかは不明。たぶん、そういうことなのだろう。35分すぎからは0-0でハーフタイムを迎える計画になった岡山は撤退守備で浦和に対抗する。浦和はサビオが相手のブロックの手前でプレーする機会が増え、サビオがひきつけてグスタフソンが時間を得るパターンからの攻撃が多かった。周りの選手が気が利く選手が多いことからポジションチェンジをしてもバランスが壊れない。
というわけで、きれいに崩してサンタナが得点を決めたものの、オフサイドで取り消しになる浦和。岡山からすれば、あってよかったVAR。浦和のサイドバックが内側にいたり、大外にいたりすると、グスタフソンのプレーエリアが広がることは計算か、嬉しい誤算か。相手を押し込んでいることが前提条件なのは忘れてはいけない。
しなもろの雰囲気の岡山
後半の開始とともに、岡山はハイプレを再開。当初の【523】に戻し、序盤の脅しとしては最適だった。偶然か、必然か、二回ともに西川の左足方向からプレッシングをかける江坂という構図が完成し、立ち上がりは上々の岡山。しかし、サビオの個人技でゴール前までボールを運ばれてしまうのだから理不尽極まりない。こういうワンプレーって地味に大事なんですよね。
49分に安居のクロスをサンタナが決めて浦和が先制する。グスタフソンの無茶振りのようなパスをきかっけに岡山はプレッシングを発動する論理的な行動をしたのだけど、関根、金子の巧みさにボールを奪いきれず、ポケ凸を実行した安居の動きが今季の浦和のやりたいことを具現化しているようだった。岡山からして辛かったことはボールを奪い切れる場面で奪いきれなかったことが多く、ボールを奪うためのコストが大きすぎたことだろう。しかも、奪ってもすぐにボールを奪い返しに来る浦和。
試合前のプランを改めて遂行するかのように、後半からマリウスエリアにボールを放り込み、マイボールにならなくても、プレッシングをかける岡山。西川にボールを下げれば、利き足サイドからプレッシングをかけられるので、デザインのひとつかもしれない。リードされたことで、ハイプレに一か八かが搭載されるようになるが、少しでも連動性が欠けると、前半のように2トップでプレッシングをかけすぎてグスタフソンがフリーの構造を再現性をもって利用されていた。
というわけで、浦和の時間帯が継続。ハイプレを仕掛けてもはがされ、押し込まれたらゴール前に釘付けにされる状況の岡山は我慢の時間帯へ。浦和からすれば、この時間帯に追加点が取れれば理想的。そんな展開ではあかん！なので、岡山は57分にルカオと木村が登場する。登場したばかりのルカオはマリウスとのど付き合いで自己紹介を終え、颯爽をファーストシュートを放った。
リードしたことで、まったりしたい西川だったが、61分の場面は豪快に蹴っ飛ばしている。その直後に松尾が登場し、サビオが右に移動。相手陣地でボールを奪い、サビオが決定機を迎えるが、シュートは枠の外へ。岡山は65分に佐藤龍之介が登場。登場直後に大岩監督が黒幕のように画面に写ったのが面白かった。
この直後の浦和のビルドアップに対して、岡山は江坂をサイドに出して元気な木村と佐藤に走ってもらう作戦のように見えた。岡山のセットプレーは大外から立田の折り返しが100％に近い確率で決まるのがずるい。あと、サビオが右サイドに移動してから岡山の攻撃がサビオサイドに偏っていったので、サビオの裏を狙っているのだろう。サビオが守備をサボっているというよりは、サビオの前からのプレッシングに連動したがる習慣を利用されている節がある。もちろん、たまたまかもしれない。
この試合のサンタナは攻守に懸命にプレーしているのだけど、一人ぼっちな場面が多かった。なので、ときどき身振り手振りで怒る。でも、そんなサンタナに無理矢理に連動する場面が浦和はほとんどなかったことで、バランスを維持することに成功している。そんなチアゴ・サンタナのジレンマ。ただし、スモールラインナップの浦和にとって相手のセットプレーで存在感を発揮するサンタナを外すことはできないだろう。サイドバックが大きくなれば話は別だが。
時間の経過とともに、岡山のプレッシングの圧が浦和に少しばかりの恐怖を与えるようになる。佐藤、神谷の果敢な縦スライドと、木村、ルカオが浦和のセンターバックに同数で突撃し、ロングボールを蹴らせるなら西川、できるだけ逆足でのプレッシングが成功する。前半に見せた変更点の改善バーションが炸裂。前から行くときに迷いはいらない、みたいな。
リードしている浦和からしても、無理矢理に繋ぐ必要性がなくなってきた時間帯なので、蹴っ飛ばすいて徐々に撤退風味になる。70分なので少し早い。72分には私が三人目＆ポケ凸の組み合わせで佐藤龍之介がゴール前へ強襲に成功。やはり少し早い。
76分に原口と大久保が登場。サビオの裏をなくすぜの采配と原口元気のパワーに期待なのだろうか。そんな原口元気は果敢なシュートブロックを見せチームを鼓舞する。途中から登場した松尾、大久保ともに、前から追いかけたそうなサンタナを華麗にスルーし、ハイプレが必要ないときはしなくてOKという現実的な修正からの逃げ切りに成功と言いたいところだが、最後のルカオに決められていればどんな雰囲気になったかは想像したくない。その場合は松尾の決定機など、2点目を決めきるチャンスに決めきれなかったことが課題になりそうだけどさ。
ひとりごと
普通に書いてしまった。こんなつもりではなかった。でも、試合を観ながら書くと逆にこんな感じになってしまうような。それはそれでいいのか、よくないのか。
浦和はこれで問題が解決！なんてことは恐らくなさそうな予感。ロングボールのどつきあいで優位に運べたことで試合の主導権を握り、いろいろなことができたって感じ。ハイプレを無理矢理にやらなくなったくらいだろうか。
ただし、ロングボールと地上戦のグスタフソンの両立はなかなか破壊力があるけど、渡邊凌磨が帰ってきたらどうするのだろうか。あと、大久保と松尾が元気そうで良かった。人が増えたので、怪我をちゃんと治せしてからの復帰になっているのかもしれない。
岡山はカテゴリーの違いでそこで計算が狂うのか！みたいな試合だったかと。それでも我慢を重ね最後にワンチャンの可能性を残したり、プレッシングの配置をいじったり、強度をあげたりと目の前の壁を超えるためのあれこれは良かったと思う。
コメント