マンチェスター・シティ対ストーク ~最も力の差がでた局面と論理的であったマーク・ヒューズの采配~

マッチレポ×マンチェスター・シティ1718

いけいけ、ぼくらのマンチェスター・シティ。グアルディオラの選手起用を思い出してみると、いろいろな選手を起用するイメージがある。しかし、マンチェスター・シティの試合を見ていると、スタメンはほぼ固定的だ。グアルディオラの方法論をインストール済みの選手が少ない、ということの裏返しなスタメン起用になっているのだろうか。プレミア・リーグの過密日程を考えると、スタメン固定だとどこかで落とし穴が待っていそうな気がする。落とし穴にはまったときに考えればいいような気もするけれど。なお、この試合は代表ウィーク明けなので、選手によっては非常に疲れているかもしれない。

プレミア・リーグの中堅のチームの選手を眺めると、ビッククラブでの生存競争に敗れた選手が多い。つまり、ビッククラブに在籍したくらいなので、ポテンシャルはえぐい選手が多い。ストークで言えば、2トップは、元レアル・マドリーのヘセ・ロドリゲスと元バイエルンのシャキリだ。さりげなくフレッチャーもいる。右サイドバックのエドワーズくんはデビュー戦。99年生まれの新鋭だ。ポテンシャルの高い選手たちと下部組織からの選手を上手く融合できれば、センセーショナルなことは起こせそうな予感。センセーショナルを起こしたのがレスターだったのかもしれない。当時のレスターに下部組織の選手がいたかはわからないけれど。ぼくらのジョー・アレンは脳震盪のため、しばらくはお休み。

ストークの論理を見てみよう

ボールを保持していないときのストークは、4-4-2。普段は3バックを基本としているらしい。マンチェスター・シティを相手に4-4-2で臨んだ理由は、怪我人など自分たちの理由もあれど、マンマークでやるよりもゾーン・ディフェンスを基本としたほうが守れると考えたのだろう。マンチェスター・シティのポジションチェンジに対して、マンマークだと剥がされてしまう可能性が高い。であれば、ボールの位置を基準とするゾーン・ディフェンスのほうが適していると考えても仕方がない。しかし、それでも役者が揃う感のないストーク。1列目とサイドハーフの攻撃を長所とする選手を配置している。これで守れるのか?とは誰もが思ったのに違いない。なお、1列目のちびっこコンビは献身的に守備をしていた。

ストークの1列目コンビは、かなり献身的にプレッシングを行っていた。マンチェスター・シティのセンターバックが運ぶドリブルをしないように監視。2トップの脇のエリアに下りてきた、もしくは移動してきた選手にはプレッシングを仕掛ける。機動力のあるコンビだからできる芸当だった。マンチェスター・シティのセンターバックはフリーなようでフリーでない状況に対して、ロングボールで答える。だが、パスの受け手とタイミングがあわない場面が続いた。

2トップに対しては、フェルナンジーニョを下ろす形が多く見られてきたマンチェスター・シティ。しかし、この試合のフェルナンジーニョはなるべく下りない形が維持された。2トップに対して、2-1でビルドアップすることは定跡なので、決して悪いことでも何でもない。何か狙いがあるのだろうかと見ていると、その狙いが徐々に発揮されていった。

マンチェスター・シティの攻撃の起点は、サイドバックだった。センターバックが監視されていて、フェルナンジーニョへのパスコースも非常に怪しい。確かにフェルナンジーニョはヘセとシャキリの中間ポジションをとっていた。だが、そもそもシャキリとヘセの距離が短ければ、中間ポジションにいてもボールを通すことは難しい。よって、マンチェスター・シティは大外に位置するサイドバックからの前進を狙った。すると、ストークはサイドハーフがプレッシングに出てくる。よって、この動きを逆手にとったのはマンチェスター・シティのインサイドハーフの動きだった。サイドバックがボールを持つと、マンチェスター・シティのインサイドハーフは、サイドに流れることが多かった。エドワーズくんはサネ担当なので、シルバにはついていけない。

ストークの論理は、サイドに流れたインサイドハーフはセントラルハーフが捕まえ続けるだった。よって、シルバの動きによって、中央にスペースが生まれる。このエリアを使うのがジェズス。そして、ときどきフェルナンジーニョであった。フェルナンジーニョがセンターバックのラインまで下りてプレーしていたら、このエリアまで出てくることはできない。ジェズスに対しては、センターバックがついていったりいかなかったりと、曖昧な対応をするストークであった。

定跡で考えれば、キャメロンがカバーリングすることで、中央のエリアを埋めればいい。しかし、付近にデ・ブライネがいる。また、チームとしてセンターバックが埋める約束事になっていれば、一応は絞る必要はない。このあたりの曖昧さを出させるために、シルバのサイドに流れる動きが重要なキーとなっていた。なお、セントラルハーフがシルバをスルーした場合は、シルバとサネのコンビネーションでボールをさらに前進させていく流れになっている。サイドバックにボールが入ったときの選択肢は、サイドに流れたシルバを使う。空いたエリアに侵入してくるジェズスやフェルナンジーニョを使う。最後に、自分でボールを中に運んでいくであった。サイドバックがボールを中に運んでいけると強い。

むろん、キャメロンがカバーリングする場面も多々見られた。しかし、そうなると、デ・ブライネが空いてしまう。これもモティングがカバーリングすればいい。しかし、本職は前線&長所は攻撃の選手は、ボールサイドの守備は頑張れるが、ボールサイドでないときのポジショニングを苦手とする選手が多い。もちろん、ボールサイドでない選手は前線に残るという約束事も多々ある話だ。この試合のようにボールを保持されてしまう試合で、それをやるのはかなり厳しい。よって、シルバのサイドに流れる動きをきっかけとして、相手がどのように動くのか、そして、何が起きるのかをしっかりと分析しているマンチェスター・シティだった。

それでも試合を動かしたのはトランジション

試合開始とともに、デ・ブライネをハーフスペースの入り口起点とする攻撃を見せるマンチェスター・シティ。しかし、ウォーカーが看板に激突する。そして、看板を破壊する。4-4-2で構えるストークは、中央からのビルドアップを許さない。献身的な1列目の働きによるものだった。サイドチェンジを含めたロングボールに出るけれど、効果的でないマンチェスター・シティ。15分を過ぎると、フェルナンジーニョが姿を見せ始める。いよいよ、攻撃の圧力を強めていくマンチェスター・シティな雰囲気だったが、試合を動かしたのはストークであった。

自陣で相手の横パスを奪ってのマンチェスター・シティのカウンター。インナーラップのウォーカーとシュートを決めたジェズスのオフ・ザ・ボールの動きが秀逸であった。懸命に守っていたストークだったが、ボール保持のミスが失点に繋がる残念な場面となった。そして、失点直後のキック・オフからボールを奪われて、さらに追加点を許してしまうストーク。あまりに残念過ぎる展開だった。

18分にマンチェスター・シティに追加点。キーパーを含めたボール保持からの攻撃。失点したこともあって、マンチェスター・シティ陣地から果敢なプレッシングを行うストーク。しかし、急にプレッシング開始ラインを代えても、全体が連動することはまれだ。相当の訓練が必要な芸当。結果として、マンチェスター・シティにスペースを与えることとなる。サネの突破の結末は、デ・ブライネのシュートを打つとみせかけてのスルーパス。最後はスターリングが押し込むだけという場面を作ったマンチェスター・シティだった。

守備の約束事を守るのは人間性による、という名言がある。失点をしてからのストークはサイドハーフが戻ってこない場面が出てくる。攻撃に長所をもつ選手のあるあるだ。こうなれば、マンチェスター・シティの猛攻が続いていくのは当然だろう。なお、ストークの最大の切なさは、ボールを奪ってからのうんぬんがまるでなかったことだ。マンチェスター・シティの素早い切り替えの前にすぐにボールを失っていた。さらに、ちびっこコンビが雑なロングボールをキープできるわけもない。失点するまでの守備は悪くはなかったけれど、ボールを奪ってから&自分たちがボールを保持する局面での精度の低さが足を猛烈に引っ張っていた。

26分にマンチェスター・シティに追加点。ボール保持攻撃から。大外でボールを持つデルフ。相手のセントラルハーフをひきつれて大外に流れてくるデ・ブライネ。セントラルハーフの空けたエリアでボールを受けるジェズスと、この試合で何度も起きたパターン攻撃でやられるストーク。最終的にはシルバがゴールを決めた。この時点で3-0となってしまった。

マーク・ヒューズは諦めない

 

30分を過ぎると、シャキリがトップ下に落ちて守備を開始するようになる。シャキリが自分の意思で行動したのか、チームの意思によるものなのかは不明。ただし、後半のストークは3センターになるので、この行動はチームの利益になるものだった。フェルナンジーニョ番というよりは、セントラルハーフの動いたスペースを埋める役割であった。ただ、このシャキリがトランジションで奮闘したこともあって、43分にストークが反撃のゴールを決める。フェルナンジーニョからボールを守りきったシャキリはサイドにボールを展開。デルフを相手にしても質的優位で勝負できるディウフが強さを見せて、ゴールを決めた。

マルティンス・インディとアフェライが後半の頭から登場。ヴィマーとヘセが交代。そして、46分にエドワーズのクロスがウォーカーにあたってゴールに吸い込まれる。スコアは3-2となった。ディウフのマークを外してしまったウォーカーがカメラに何度もぬかれる。マルティンス・インディの登場は、いかにしてボールを繋ぐかを解決するためだった。また、アフェライを3センターの一角として起用することで、マークの役割をはっきりさせた。さらに、シャキリでデルフを狙い撃ち。そして、困ったときのロングボールにディウフと、前半の苦戦した問題を一挙に解決するような采配を見せるマーク・ヒューズ。

不運だったのはエドワーズくんの退場だった。

モティングがまさかの3センターの一角となった。守れるわけがない。それでも、後半に1点返したこと&4-5-1にシステムを代えたことによって、マンチェスター・シティは最適解を見つけられないまま試合をすすめていた。チャンスだ!ストーク!とボールを繋ぎ始めるが、またもボールを奪われて失点してしまう。55分にマンチェスター・シティのカウンター炸裂。ボールを繋ぎ始めたストークのボールをデ・ブライネが奪ってサイドを独走。ピンポイントクロスでジェズスぼゴールをアシストする。またも自分たちのボールロストから失点をするストーク。ここからはマンチェスター・シティのゴールラッシュとなった。

59分にフェルナンジーニョのスーペルミドルが炸裂。祝福の人数がいつもよりも多く感じたのは気のせいかどうか。61分にデ・ブライネのスルーパスからサネが決めて6点目。モティングが空けたエリアをあっさりと使われる。お役御免だとばかりに、ベルナウド・シルバ、ギュンドアン、ヤヤ・トゥーレ。78分にヤヤ・トゥーレがボールを奪ってからのカウンター、最後はベルナウド・シルバ。奪いに奪って7得点。ストークの心は折れたし、選手によっては守備時の大穴になってしまったことは事実だった。ただ、ストークのボールを保持していないときが悪かったというよりは、ボールを保持したとき、ボールを奪ったときの手があまりになかったことが、この試合の別れ目となった。なので、その手を修正しょうとしたマーク・ヒューズの采配は論理的だった。ただ、結果が出なかったのが超批判されていたかもしれないけれど。

ひとりごと

何となく見え始めたマンチェスター・シティ対策は、ボールを奪ったときにマンチェスター・シティのファーストディフェンダーを交わす仕組み、個を用意する。そして、マンチェスター・シティのサイドバックを個で殴れる選手を用意する。デルフを殴れる選手は、たくさんいそうな気がする。凄く失礼な物言いで申し訳ないが。または、シャフタル・ドネツクのようにボールを取り上げるか。結果は出なくても、マンチェスター・シティを苦しめるようなチームがそろそろ出てこないかなと期待している。それがさらにマンチェスター・シティを進化させそうなので。

ストークの守備を思いだしてみると、何を捨てるかが守備においては重要だということを認識させられた。ボールを奪うことを捨てないといけないときもある。ボールを奪うのか、前進させないのか、ボールをどのエリアに運ばせないのかなどなど。全部をやろうとすると、大抵の場合はうまくいかない。振り返ると、この試合は、ボールを保持したときのストーク対ボールを保持していないときのマンチェスター・シティという局面のときに両チームの力の差が一番でてしまった試合だった。

コメント

  1. いるすけ より:

    いつも楽しく拝見してます。

    シティのサイドバック問題が解決した時、
    どう変わるのか楽しみです。

    一点気になった部分があります。
    ヘセロドリゲスですが、元バルサではなく元レアルマドリーの選手だったかと思います。
    ご確認してみてください!

  2. らいかーると より:

    ほんとだ!!!速攻修正します。ありがとうございました

    • いるすけ より:

      よかったです!
      同じ内容2度入力してしまって申し訳ありません。
      すぐに反映されなかったので間違えてしまいました。
      これからも楽しみにしてます!

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