マンチェスター・シティ対ウェスト・ハム ~計算されていたデ・ブライネのアンカー起用~

マッチレポ×マンチェスター・シティ1718

いけいけ!僕らのマンチェスター・シティ!!前節も奇跡のスターリングで勝利したマンチェスター・シティ。公式戦は19連勝中だ。カップ戦もチャンピオンズリーグもあわせて19連勝だ。この記録を止めるのはどのチームになるだろう。シャフタール・ドネツクか。なお、今日も勝利すると、プレミア・リーグの連勝記録のレコードになるらしい。ミッドウィークにはチャンピオンズリーグもあるし、次の週末にはマンチェスター・ダービーもあるよ!というわけで、フェルナンジーニョをベンチに置いている。なお、ストーンズは6週間の離脱となっている。

ウェスト・ハムの監督はモイーズ。いつのまにかモイーズ。サバレタ、ハートとマンチェスター・シティに色々な想いを持っていそうだ。ただし、ハートは試合に出ていない。ビリッチからモイーズにバトンタッチされたのだが、解説者曰く、別に調子は上向いていないらしい。負けるな、モイーズ。ただ、選手を眺めると、個の能力は異常に高そうに思えてしまう面々だ。スイス代表のフェルナンデスとか、セネガル代表のクヤテとか、オグボンナ、オビアングはちょっと名前も似ている。なお、試合前にモイーズ監督こんな発言をしていたらしい。マンチェスター・シティの弱点は知っている。彼らは背後に広大なスペースを抱えている。我々にはスピードスターがたくさんだ。あとは試合を見てみよう!的な発言をしていたらしい、みんな、見てみよう。

三角形攻撃

試合の開始の合図とともに、いつもどおりにマンチェスター・シティがボールを保持する展開で試合は進んでいった。ウェスト・ハムの守備の形は5-3-2から始まった。そして、10分が過ぎると、図のように5-4-1と変化していった。ランシーニが左サイドハーフの位置にポジショニングするのか否かが曖昧な10分だったが、下げることに決定したのだろう。よって、サウサンプトンと同じ5-4-1を採用したウェスト・ハムであった。コンテが率いていた時代のユベントスの攻撃のポジショニングはかなりの特殊系(3-1-4-2)だった。コンテの設計図を跳ね返すためには4バックでは無理なんじゃないか?という雰囲気がイタリアを支配したとき、イタリアから4バックが姿を消していったことをよく覚えている。それと同じような現象がイングランドでも起きているのかもしれない。

今日のマンチェスター・シティの注目点はダニーロだ。デルフではないダニーロはインサイドレーンにポジショニングするよりは大外レーンにポジショニングすることが多かった。よって、シルバが攻撃の起点となることが多かった左サイド。ダニーロが大外ポジショニングをとる関係で右サイドはウォーカーが攻撃の起点となる場面が多かった。デ・ブライネへのパスコースはしっかりと来られているのだけど、スターリング経由であっさり届けるところまでは設計されているのだろう。なお、スターリングにボールが入ったときに、インサイドレーンの選手にパスをする、もしくはインサイドレーンの選手がそのまま相手の裏に突撃すると攻撃方法は多く設計されている。

四角形攻撃

 

三角形でもかなりの攻撃力を備えているマンチェスター・シティ。得意技は三角形の再構築だろう。ボール保持者以外がポジションを入れ替える策はかなり効く。さらに攻撃の圧力を強めるときは、もうひとり攻撃に加わってくる。その選手はセンターバックだったり、アグエロだったり、デルフだったり、逆サイドのインサイドハーフだったりする。それらの選手が他の選手とのポジショニングの関係によって役割を入れ換えていくので、相手からすれば非常に複雑怪奇な攻撃となる。それぞれがポリバレントプレーヤーだからできる策と言えるかもしれない。

 

サウサンプトンで見せた1トップの周りに2人の選手を配置する形にまでは至らなかったけれど、相手によってそれらを使い分けている場面は見られた。ウェスト・ハムの1トップはデルフを見たり見なかったりする。よって、この試合のマンチェスター・シティのアンカーは基本的に自由に振る舞える場面が多かった。ただし、ときどきはマークをされる場面もある。そのときはセンターバックコンビが運ぶドリブルで4人目として登場する。オタメンディは言うまでもないが、マンガラも懸命にその役割をこなしていた。移籍できなかったらしいマンガラには是非とも頑張って居場所をマンチェスター・シティで居場所を見つけて欲しい。フィジカルの強さは異常だった。

ときどきはスピードでマンチェスター・シティを慌てさせる場面を作っていたウェスト・ハム。ただし、あくまで時々であった。ボールを奪ってもすぐにプレッシングを浴びてしまうのでボールを繋げない。苦し紛れにアドリアンにボールを下げてもロングボールを蹴るしかない。自分たちでボールを保持しようにも、マンチェスター・シティのプレッシングにたじたじ。マンチェスター・シティのボールを奪われたときの振る舞いで目立っていたのはファーストディフェンダーの2度追い、3度追い。その間に周りの選手がパスコースを消したり、ボール保持者に集まってきたりする。というわけで、コーナーキックを得るのが精一杯のウェスト・ハムであった。アドリアンのスーパーセーブに支えられ、時間を無駄に使いながら前半を過ごしていった。しかし、終了間際のコーナーキックからウェスト・ハムがまさかの先制点を決める。

相手との関係性で時間とスペースを得られる場所に誰を配置するか

前半の終了間際にまさかの失点をしたマンチェスター・シティ。後半の頭からダニーロ→ジェズス。デ・ブライネがアンカー。右のインサイドハーフにシルバ、左のインサイドハーフは誰もいなかった。アグエロとジェズスが誰もいないエリアを上手く使う雰囲気はあったが、デルフのランニングでどうにかするという計算になっていたのだろう。サネにボールがいると何度もインサイドレーンを駆け上がるデルフ。シルバが得意としている動きだ。ときどき走らないと、サネに怒られていた、走れと。

この変更でもっともえぐいのがデ・ブライネの位置だ。ウェスト・ハムはアンカーに対する守備が非常に曖昧になっている。セントラルハーフの選手たちを前に出すのは少し怖い。よって、1トップの選手に担当させるチームが多いのだが、ウェスト・ハムは中途半端であった。前半の終了間際から登場したサコもアントニオよりもさらに守備をしなかった印象を受けたくらいだ。つまり、相手の守備の論理、形から考えて、マンチェスター・シティのアンカーの位置は時間とスペースを得られやすい。その位置にデ・ブライネ。この采配はえぐい。できそうでできない。伝説になっているのがサイドバックにデコという采配だろうか。サイドバックがボールを持たされる展開が多いなら、サイドバックにめっちゃ上手い選手を配置して困らせてやる采配はポピュラーと言えばポピュラーな采配と言える。

よって、マンチェスター・シティの猛攻が始まる。56分にマンチェスター・シティが同点ゴール。デ・ブライネの直接フリーキックからのスローイン。スターリングとジェズスがワンツーでサイドを突破。セットプレーの流れで前線に残っていたオタメンディがクロスにあわせて泥臭くゴールを決める。列やゾーンの移動は相手のマークを剥がす目的があるが、マンチェスター・シティは単純なワンツーでそれを達成することが多い。さらに個々がボールを持てる、突破のドリブルもできちゃうので、非常にえぐい。

同点になってからは、アドリアンタイムとなった。マンチェスター・シティは撤退する相手に対して、ミドルシュートの雨嵐を浴びせる。しかし、アドリアンが止めまくる。ミドルシュートを打てるということは、2列目のスライドが間に合っていないということになる。サウサンプトンは4-5-1に変更して2列目の枚数を増やす奇策に出たが、モイーズは動かない。嘘だ、モイーズは動いた。ランシーニ→アルナウトヴィッチ。その直前にアントニオとランシーニの位置を入れ換えていたが、アルナウトヴィッチを入れるともとに戻した。まるで意味のわからない入れ換えであった。守備をどうする?という場面でアルナウトヴィッチを入れるのは博打うちすぎる采配だったけれど。

そして、マンチェスター・シティに82分に逆転ゴール、波状攻撃からのスローインでの再開。デ・ブライネ→シルバ→デルフと繋ぐ。デルフはインサイドレーンから逆サイドのインサイドレーンにいるデ・ブライネへパス。デ・ブライネ番がいないので、デ・ブライネに時間とスペースができる。ペナルティーエリアの外からデ・ブライネはループスルーパス。これを2列目からするするっと上がっていったシルバが決める。かなりえぐいゴールだった。アンカーにデ・ブライネを置いた意味がでた瞬間とインサイドレーン同士のパス交換に相手はなかなかついていけない法則を利用したゴールであった。左インサイドハーフがいなくても、サネの質的優位とデルフの長い距離を何度も走れるでごまかした采配を見事だった。

そして登場するアグエロ→フェルナンジーニョ。逆転した瞬間にデ・ブライネのアンカータイムは終了した。残り時間で危険な場面を作られることもあったマンチェスター・シティだったが、しっかりと防ぐエデルソンと、そこで決められたらもっと勝ち点を積み重ねているだろうウェスト・ハム。よって、試合は終了。マンチェスター・シティが連勝街道をまだまだ突き進むこととなった。

ひとりごと

シルバの逆転ゴールはすごかった。その試合でまかれた伏線が回収されるようなゴールであった。ダニーロでなくてデルフ。デルフでなくてデ・ブライネ。そして、後方からするすると上がっていくシルバ。この場面のシルバのゴール前への飛び出しも相手からすれば、非常に捕まえにくくなる。デ・ブライネがクロスを上げてくるぜ!という場面で2列目から飛び出してくる選手を捕まえることは難しい。

そしてモイーズは何となく苦労していそうな気がする。降格しなければいいけど。

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