ワトフォード戦で会心の試合をした僕らのマンチェスター・シティ。今日の相手は、クリスタルパレスだ。監督はフランク・デ・ブール!かと思ったら、すでに解任され、監督はロイ・ホジソンになっていた。ドイツからはわんさか優秀な監督が出てくるけれど、その他の国々は監督育成に苦戦している様子だ。ただ、選手時代は無名だったけれど、という監督がドイツには多いので、ドイツ以外は監督の競争社会そのものに問題があるのかもしれない。ただ、フランク・デ・ブールくらい選手時代の経歴がある選手が、監督としてフィーバーするのも見たいのだけれど。
頂点が4つのとき
ワトフォード戦で見られたハーフスペースからの侵入は、この形が理想的だとしている可能性が高い。パターンとしては、デ・ブライネ(大外)とウォーカー(起点)で行われる2人のポジションチェンジと、ウォーカー(起点)、デ・ブライネ(ライン間)、スターリング(大外)と3人のポジションチェンジがある。アグエロは基本的に固定だ。ときどきスターリングの位置にいるけれど。
頂点が3つのとき
アグエロが間に合っていない。右サイドのポジションチェンジと同じように、個々の選手のいるエリアによって、仕事が変わってくる。ただ、メンディーが起点になる場面は、あんまり記憶にない。このときのシティはライン間や大外にボールを前進させられるときは、迷わずにボールを前進させる。ただ、相手のマークや移動が間に合っている場合は、バックパス&サイドチェンジしてポジショニングを調整(全員がいるべき場所に戻る)をする。
頂点が5つのとき
頂点が3.4つのときは、ポジショニングに迷いがない。外から見ていても、それぞれのポジショニングの意図が伝わってくる。ただし、頂点が5つになると、ちょっと歪になってくる。いる意味がないとはいわないが、ちょっと効率が悪いというか。実際に迷っているウォーカーは何度も見られた。ああ、おれはこのときは中に入っていくんだよな?と思い出しながらプレーしているようだった。
基本構造は、隣り合うポジションは同じレーンにいてはいけない。でも、味方がときどき自分のレーンに入ってくるから、なんで入ってくんねんという場面がちらほらであった。
例えば、右サイドの崩しを見ていると、デ・ブライネがサイドにいる意味がよくわからない。もちろん、対面のサイドハーフのピン止めにはなっているのだけど、どうしても必要な役割かと言われれば、そんなことはない。ただ、この位置でもデ・ブライネをオープンにするとめんどくさいので、人による。左サイドの崩しのように、アグエロがポジショニングすることが多いセントラルハーフの間のエリアにサイドハーフの選手がずれてくれば、しっくりくる。また、サネとアグエロのポジションが入れ替わってもいい。ただ、その動き(FW仕事)を得意とするジェズスはこの試合ではベンチにいた。
反抗するロイ・ホジソン
ボールを保持していないときのクリスタルパレスのシステムは、4-4-2。ワトフォード戦と同じような試合になるかなと予想されたが、ワトフォード戦をしっかりと研究しているようだった。
最初の手は、1列目(ベンテケとロスタス・チーク)が根性でハーフスペースにプレッシングだった。次の手は、セントラルハーフの突撃であった。そして、間に合わないときは大外を捨てて、サイドハーフが突撃であった。と、ハーフスペースでボールを持つシルバとデ・ブライネの仕事を防ぐ手段がないわけではないクリスタルパレスであった。
さらに、ボールを引き出すアグエロにもしっかりと迎撃で対応。守備の基準点が狂いそうな高い位置をとる大外サイドバックには、サイドハーフを下げて6バックになってもしょうがない作戦で対抗する。つまり、ライン間ポジショニングには、人への基準を強くすればいいのだろう!という正攻法でマンチェスター・シティに対抗した。いつもよりも、相手が側にいる状況でマンチェスター・シティはミスを連発するようになり、ベンテケの脅威の空中戦とキープ力を活かしたカウンターによって、クリスタルパレスはチャンスをときどき作っていった。
マンチェスター・シティの守備を見ていくと、いわゆるハーフスペースにポジショニングする選手が固定ではないので、トランジションのときに後手を踏んでしまう傾向が強い。また、前線に空中戦が強い&キープ力が半端ない長所を持つ選手がいると、カウンターの起点としてのプレーを許してしまう傾向にある。この試合の結果は大差となるのだけど、前半に限って言えば、スコアに差がつくような内容ではなかった。
ロイ・ホジソンに反抗するマンチェスター・シティ
人を基準とするクリスタルパレスのプレッシングに苦しんだマンチェスター・シティ。よって、マンチェスター・シティも力技が必要とされる。
最初の手は、ハーフスペース同士のパス交換であった。図で言えば、シルバからデ・ブライネ。誰かを経由しても良いのだけど、このボールの移動は相手の極端なスライド機会をさらに増やすことになった。
次の手は、ロングサイドチェンジ。ワトフォード戦ではほとんど記憶になかったが、この試合ではサイドチェンジの機会が多かった。ボールの受け手はサイドバックであることが多かったのだけど、後半の最後の方はウイングがサイドチェンジの受け手となっていた。これも相手のスライドをうながすことに繋がり、体力の浪費に繋がる。
さらなる手は、相手の守備が不安定なときに攻撃を仕掛けること。枚数は揃っているのだけど、普段と異なるポジションにいるときは、守備が機能しないことが多い。なので、サネの個人技が爆発した場面や、デ・ブライネの→アグエロ→スターリングの3点目は、この状況を利用したものだった。
では、そもそも枚数は揃っているけれど、普段と異なるポジションにいるときってどんなときだ?という話になる。例えば、セットプレー崩れはそのイメージがしやすい。また、攻撃を仕掛けたとの相手の速攻に対する帰陣。ひとまず4-4-2の位置に戻ればいいというのがグアルディオラ時代のバイエルンのルールだったけれど、ロッベンとリベリがセントラルハーフの位置に戻ったら、何となく失点しやすいのは想像できるのではないだろうか。むろん、彼らが帰ってこないからどうする?という問題があったのだけど、それは、また別のお話だ。
人への基準が強いプレッシングには質的優位だ!と言わんばかりの懐かしいシステムで試合を終える。ハーフスペースにポジショニングする選手を固定すると、相手の守備もはっきりしてしまうのだけど、それでも、質的優位で殴れれば、話は別だ。相手の守備をわかりやすくさせてしまう一方で、マンチェスター・シティ側もトランジションで優位に運べるメリットがある。ゆえに、リードしている状況やかたく試合を運びたいときには、今後も出てくるかもしれないアラバロール。そんなデルフがゴラッソを決めて、クリスタルパレスにトドメをさした試合となった。
ひとりごと
引いた相手を崩すときのグアルディオラパターンのひとつが、この試合の3点目だった。左ハーフスペースでデ・ブライネがボールを持つ。右サイドの大外から斜めに侵入してくるアグエロにデ・ブライネがパスをする。アグエロは中央に折り返して、スターリングが決めるだけ。懐かしのイニエスタ→アウベスパターンである。バイエルン時代も使っていた技がマンチェスター・シティでも見られて、ちょっと懐かしくなってしまった。
今日のマンチェスター・シティは、ハーフスペースからの頂点3or4or5からのロングサイドチェンジandハーフスペース同士のパス交換→アラバロールであった。多彩である。また、フェルナンジーニョが地味に上手い。セカンドボールや相手から奪ったボールをダイレクトに前線に預けるプレーが秀逸。ちょっと代えが効かなくなってきた印象だ。デ・ブライネならできそうだけど。
コメント
これほど多くシティを取り上げてくださるとは!!
いまのところ、カップ戦の1試合を除き、全部みているのでとても参考になります。
CLのシャフタール戦、ナポリ戦(とくに初戦)、このあたりを執筆されるようでしたら、
熟読間違いなしですwww
それにしてもエデルソンの足元の技術の高さには驚かされました。
プレッシャーがかかる中、中央をダイレクトで正確に通したり、
あーロングボールで逃げたかー、と思いきや、味方にピンポイントだったり、
毎試合かなり驚かされます。
高いと思っていた移籍金も、この活躍なら個人的には納得です。
マンCの反則的な強さにこんな背景があったとは…常にパスフォローに入らなきゃいけないから、選手も頭良い人じゃないと試合出してもらえなさそうですね。
グアルディオラ特にシティのマッチレポートとても緻密なグアルディオラの準備と相手にジレンマを抱かせながら対応させるシステムの変化とポジションの変化にとても楽しませて、深く知ることができて読み入ってしまいました!!
一つ疑問点というか要求点がありました。
シティのハーフスペースの入り口からの攻撃や残り30メートルの崩しのバラエティさに驚愕していたんですが、そのボール保持までの過程、ボールの回収の仕組みや守り方はどうなっているんだろうと素人ながら思ってしまいました!
シティの守備時の基準点や特筆すべき点や独特なボールの回収が有りましたらお聞きしたいです!!