さて、今日の相手はワトフォード。マッザーリという特殊系の監督を添えてみたけれど、結局は解任。そして、新監督はハルを立て直したマルコ・シウバ。77年生まれの新鋭だ。チームとしても大量補強を行い、マルコ・シウバに全てを託したところ、今のところは良い順位にいる。やはり只者ではないのだろう、マルコ・シウバ。しかし、今日の相手は我らがマンチェスター・シティ。フェイエノールトをフルボッコにし、勢いにのっているはずだ。なお、チャンピオンズ・リーグの開幕に伴い、ターンオーバーとか色々考えられるのだけど、フェイエノールト戦とのスタメンを比較すると、ほぼまんまのマンチェスター・シティであった。
ハーフスペースの入り口並びに、2トップの脇
マンチェスター・シティのボール前進の目的は、このエリアでオープンな状態でボールを持つ状況を作ることだ。オープンな状態とは、ボール保持者がフリーな状況でボールを持つことと定義している。この位置でオープンな状態でボールを持つために、マンチェスター・シティは2つのネタを利用する。フェルナンジーニョの列を下りる動き(2バック→3バック化)と、インサイドハーフのサイドバックエリアへの移動であった。双方ともに、自分のラインから下のラインへの移動によって、オープンな状況を作り出すことに成功している。
最もポピュラーなインサイドハーフが起点
この形が最もオーソドックスな形だ。インサイドハーフのデ・ブライネとシルバがハーフスペースの入り口にポジショニングする。サイドバックが大外のポジショニングで横幅を確保する。ウイングはハーフスペースにポジショニングすることで、オープンな状況でボールを持っているインサイドハーフたちの選択肢を増やしている。
相手の対応を考えると、サイドハーフ、もしくはセントラルハーフがボール保持者にプレッシングをかけるしかない。おそらく、サイドハーフがプレッシングにくるとき、セントラルハーフがプレッシングにくるときで、どのように振る舞うかはしっかりと準備されているのだろう。ただ、マンチェスター・シティとして、下記のポジショニングも重視しているように見えた。
相手のセントラルハーフの間にポジショニングする。逆サイドのウイング(この図ではジェズス)がポジショニングすることもある。このポジショニングの肝はセントラルハーフのプレッシングに迷いを抱かせることに繋がる。例えば、チャロパーがデ・ブライネにプレッシングに行けば、アグエロへのパスラインができてしまいそうな状況となっている。アグエロのポジショニングに対して、相手からすれば、横圧縮のスライドで対応するしかないのだけど、その場合は、逆サイドの大外のメンディーが非常にうざいし、アイソレーションを前提とすれば、サネに大外ポジショニングを任せることもできるだろう。それはもうちょっと先のお話になるかもしれない。
相手のプレッシングの形、枚数に応じて、フェルナンジーニョと2人のインサイドハーフが適切なポジショニングをとることで、ハーフスペースの入り口でオープンな状況を作る。さらに、大外のサイドバックのポジショニングで相手のサイドハーフをピン止めをする。セントラルハーフの間のポジショニングで、ボールサイドのセントラルハーフをピン止めして、ハーフスペースの入り口へのプレッシングを牽制するというネタであった。なお、迎撃型で対抗すると、おそらく、ポジションチェンジからの裏抜け大会をマンチェスター・シティは行いそうだ。でも、それも先のお話になるだろう。
次にポピュラーなセンターバックが起点
フェルナンジーニョの位置には、ストーンズが来ることも多い。最近のストーンズは攻撃参加したい欲が高まってきていて、そのうちにしばらくはベンチに座っていなさい!みたいなミスをしそうで非常に怖い。基本形は似ているのだけど、デ・ブライネサイドはボックスになることが多い。シルバサイドはジェズスがシルバの背中でボールを受けたり、セントラルハーフの間にポジショニングしたりと、良い意味で変幻自在。ただ、どちらかというと、デ・ブライネサイドのボックスのほうがめんどくさい。サイドハーフは守備の基準点を用意され、チャロパーはスターリングとアグエロを抑える形になっている。
なお、フェルナンジーニョが列を下りると、デ・ブライネかシルバのどちらかが中央にポジショニングする約束事になっているようだった。サイドアタッカーのイメージが強いスターリングだけれど、基本的にハーフスペースにポジショニングすることが多かった。3バックが起点で、デ・ブライネがハーフスペース、ウォーカーが大外にポジショニングしているときのスターリングは、セントラルハーフの間にポジショニングしていた場面も多かった。
ざっくりと、メモを拾ってみると、以下のようになる。
デ・ブライネが起点。大外がウォーカーで、ハーフスペースにスターリング。
フェルナンジーニョが起点。デ・ブライネとのポジションチェンジ。フェルナンジーニョはクリバリーのマンマークを嫌って、3バックへの変化を行う傾向があった。
ストーンズが起点。外にウォーカー、ハーフスペースにスターリング。デ・ブライネはサイドバックの位置にいる。
ストーンスが起点、外にウォーカー、デ・ブライネ。ハーフスペースにスターリング。でも、ボールは相手のセントラルハーフの間のアグエロ。
オタメンディが起点。ハーフスペースにシルバ、大外にメンディ。この場面ではシルバの背中でボールを引き出したジェズス。
オタメンディが起点。ブロック外でボールを受けるシルバ。ジェズスが相手のセントラルハーフの間でピン止め。大外はメンディ。デ・ブライネに大外クロスで決定機。
ストーンズが起点。外にウォーカー、スターリング。ハーフスペースにデ・ブライネ。
ストーンズが起点。ハーフスペースにデ・ブライネ。大外にウォーカー。セントラルハーフの間にスターリング。
フェルナンジーニョが起点。ハーフスペースにジェズス、大外にメンディー。シルバはフェルナンジーニョの位置。
ウォーカーが起点。デ・ブライネが外で、ハーフスペースにスターリング。
ワトフォードの守備の論理を見ていくと、最初は4-4-1-1でフェルナンジーニョとクレバリーがデートであった。よって、デートを嫌がったフェルナンジーニョが列を降り始める。3バックでハーフスペースまでボールを運べていたので、インサイドハーフたちが下りる場面は減っていき、3バックが攻撃の出発点となることが多かった。
試合を眺めていると、ワトフォードはボールを保持するネタが散りばめられていた。それゆえに、あまり守備は得意ではないのかもしれない。ハーフスペースからの前進、侵入をどのように防ぐかではいいアイディアを出せていなかった。1列目にもっと走って死んでをやらせるのか、もっと撤退してビルドアップとか知らない大作戦を決行するとか、セントラルハーフ、もしくはサイドハーフがハーフスペースの起点を潰しにいったときのカバーリングシステムの整備などは全くであった。というわけで、このハーフスペースの入り口から何度も何度もワトフォードゴールに迫りまくるマンチェスター・シティであった。
流行りつつあるプレッシング回避の方法
図にしてしまえば、なんてことはない。マークがはまったときに、列をスキップして一列戻すボール循環でプレッシングをはがすプレーが増えてきている。後半のワトフォードは死なばもろともプレッシングを見せるが、後方からのビルドアップからフィニッシュまで持っていかれる場面もしばしばであった。マンチェスター・シティの前線はハイボールに強くないけれど、スピードあふれるカウンターは得意としている。相手陣地からのプレッシングがはまらないと、マンチェスター・シティにスペースを与えた状態での攻撃を許すことになるのは、なかなかえぐい状況といえるだろう。特に、スターリングとサネは早い。ついでに、アグエロも早い。大切なのは列を飛ばす→戻すのプレーだ。ナポリも得意としている。
ひとりごと
相手の1列目と2列目のライン間のエリアを支配しよう!というのが、相手を攻略するポイントだった時代は間違いなくある。1列目が守備をしっかりとしないチームは、たいていこのエリアから優位性を相手に作られてしまう。よって、アトレチコ・マドリー並みに、1列目が守備で奮闘するチームが増えてきた。よって、1.2列目のライン間を支配することは、難しい状況になりつつある。だったら、次はハーフスペースの入り口を支配しましょう時代に突入だ。いわゆる2トップの脇でオープン状態を作れば、後は好き勝手に暴れましょう作戦。ゴールを決めるには、まずはこのエリアを支配することから始める。相手が前から来たら列をスキップするパスでひとつ戻ればオープンだ作戦が一般化されれば、より凶暴な時代が訪れそうである。
コメント
いつも楽しく拝読しております。
おっそろしいスピードで欧州では戦術が進んでいるんですね・・・
大変勉強になる、と同時にWカップが怖く思えて来ました:)
去年のドルトムントが、同じように一列飛ばし、戻るを多用していましたね。ターンせずに済むので、ボールを失いにくいということでしょうか?
シンプルだけど、効果的な方法ですね。
オープンな状況を簡単に作れるので、一列飛ばしで戻るを多用しているのかなと予想しています。