【バイエルンが恐れたもの?】リヴァプール対バイエルン

マッチレポ1819×チャンピオンズリーグ

舞台はアンフィールド。

リヴァプールのスタメンは、アリソン、ロバートソン、マティップ、ファビーニョ、アーノルド、ヘンダーソン、ワイナルドゥム、ケイタ、フィルミーノ、サラー、マネ。ファン・ダイクが欠場。チャンピオンズ・リーグのファイナルの初戦でバイエルンと当たるなんて、くじ運を恨むべきだろう。

バイエルンのスタメンは、ノイアー、ズーレ、フンメルス、キミッヒ、アラバ、ハビ・マルティネス、ハメス・ロドリゲス、チアゴ・アルカンタラ、コマン、グナブリー、レヴァンドフスキ。ダ・ゾーンから離れてしまったこともあって、めっきり出会わなくなったブンデスリーガの面々。さて、今季のバイエルンは、リヴァプールとどれだけやりあうことができたのだろうか。

ボール保持を企むバイエルン

キックオフからロングボールでキミッヒを狙うリヴァプール。そして、その位置にプレッシング隊を動員するリヴァプール。リヴァプールらしいプレーで試合の幕は開けた。

なお、レヴァンドフスキはファビーニョを空中戦で狙いうちにしていた。リヴァプールの前線はフィルミーノ以外は空中戦で頼りになるタイプではないが、セカンドボールを拾う隊のスリーセンターが球際最強なこともあって、ロングボールが地味に機能するのずるい、というよりは設計がうまい。

バイエルンのプレッシングの配置は[4-2-3-1]。チアゴ・アルカンタラとハビ・マルティネスがセントラルハーフコンビだった。トップ下のハメス・ロドリゲスも含めて、リヴァプールのスリーセンターにがっつりマンマークにいけるような配置になっている。

ときどきトップ下のハメス・ロドリゲスが[4-4-2]の2として振る舞うと、少しずれるけれど、レヴァンドフスキの負担を考えると、しょうがない。ただし、ハメス・ロドリゲスが前列へ移動することによるズレをリヴァプールに使われるような場面はほとんどなかった。

リヴァプールのプレッシングの配置は[4-3-3]。ウイングのマネとサラーは、サイドバックへのパスコースを消しながら、センターバックへプレッシングをかける。フィルミーノはアンカーのように振る舞うハビ・マルティネスのパスコースを消しながら、中央に鎮座する。で、バイエルンの選手がビルドアップの出口となろうとするチアゴ・アルカンタラやハメス・ロドリゲスにパスをしたら、プレッシング発動からのジャンプ、といういつもどおりであった。

リヴァプールのプレッシングに対して、耐えきれなくなったら蹴っ飛ばすノイアー。でも、空中戦はレヴァンドフスキがいるので、別に悪くないバイエルン。

さて、試合を眺めていると、どっちもボールを保持しようとする雰囲気はある。バイエルンはレヴァンドフスキのワントップでのプレッシングになるので、時間とスペースを与えられているのは、リヴァプールのボール保持。しかし、リヴァプールのセンターバックは相手をひきつけるほどの運ぶドリブルが、多分許されていない、というくらいにやらない。その代りに、スリーセンターが柔軟なポジショニングでビルドアップの出口となるように設定されている。

しかしこの試合ではスリーセンターはマンマーク気味に。そして、そんなときにチームを救うゼロトップのような振る舞いをするフィルミーノに対しては、フンメルスの撃退と中央に構えるハビ・マルティネスに封じ込められていた。特に前への守備で存在感を示すフンメルスは隠れたキーマンとなっていたと思う。というわけで、実はこの試合でリヴァプールはボール保持からの攻撃は効果的に行うことは最後までできなかった。ただし、リスクを冒すようになると、センターバックも前に出てくる。でも、ファーストレグだしね、ということなのだろう。

一方で、バイエルンのボール保持は、じわりじわりと近づいてくるリヴァプールのスリートップに対して、ロングボールに逃げない強い意志を感じた。なので、バイエルンはアンフィールドでボールを保持する気満々だったのだろう。レヴァンドフスキとファビーニョという優位性をもたらしてくれそうなポイントがあるにも関わらず、地上戦にこだわって最終的にロングボールという結末が多かったことは言うまでもない。

10分くらいから、バイエルンがボールを保持する時間が増えていく。バイエルンはボール保持の逃げ場として活用したのはサイドバック。特にサラーの裏のアラバ。パスコースを切りながらのプレッシングというリヴァプールのウイングの役回りだけど、少しボケる時がある。ポジショニングがそもそも曖昧になったり、撤退は[4-4-2]気味に変化することもあるので、可変のなかで変化する役割がごちゃまぜになるというか。

また、ボールを運べたあとは、徹底したサイドチェンジで奇襲。ビルドアップにも奇襲プレッシングでリヴァプールのミスを誘うバイエルン。アリソンがミスをすれば、その場面からは継続してアリソンまでプレッシングをかけるバイエルン。試合巧者ぶりを発揮していた。ただし、バイエルンのボール保持を見ていると、攻撃の再構築、やりなおしが目立った。え?そんなにボールを下げる必要があるのか?という場面でもノイアーまで下げる場面がちらほら。これは何かしらの意図がありそうである。

ボールは保持できるけど、効果的な前進ができないリヴァプール。そんなリヴァプールが得点を奪えそうな雰囲気になる場面は、バイエルンの配置が整っていないときであった。つまり、ボールを奪った瞬間や、ロングボールのこぼれ球を回収した瞬間である。そんなときのバイエルンの隙とリヴァプールの鋭さは見事なまでにマッチしていた。

配置が整っているときと整っていないとき

リヴァプールはマイボールによる前進というよりは、セカンドボールをマイボールにしたときの相手の配置の乱れを狙った攻撃をするようになる。バイエルンからすれば、ハビ・マルティネスはセカンドボールをフィジカルでマイボールにしてくれそうだが、ハメス・ロドリゲスとチアゴ・アルカンタラではかなり怪しい。なお、リヴァプールのスリーセンターは、ナビ・ケイタ、ワイナルドゥム、ヘンダーソンと限りなくガチだ。

コマンとグナブリーとサイドからの突撃でリヴァプールに迫るバイエルンに対して、守備の整っていない状態からの突撃を試みるリヴァプール。もしくは、ビルドアップミスを狙いたいリヴァプールのプレッシング。そんな試合の構図を自分たちに優位に持って来るにはボールを保持すること、という結論になってもおかしくはないバイエルンの振る舞いだった。

つまり、バイエルンからすれば、相手にカウンター、自分たちの配置が整っていない状態での攻撃を許したくない。しかし、リヴァプールは自分たちのロングボールから、カオス状態を作り出せる。

となれば、バイエルンからすれば、相手にボールを持たせたくないから自分たちでボールを持ちたい。さらに、相手に地上戦をしてほしいので、レヴァンドフスキのワントップでのプレッシングを始めることで、相手のセンターバックに時間とスペースを与えた、と考えると、色々な辻褄が合う。

実際に、リヴァプールのボール保持攻撃をなれない守備に奔走するハメス・ロドリゲスとチアゴ・アルカンタラの奮闘を見ていると、しっかりと準備してきた感は満載であった。

ピンどめとサイドの守備

48分にようやくゴールキックを蹴っ飛ばす決意をしたバイエルン。これ以上は事故が起きると判断したのだろう。いざとなったら、レヴァンドフスキがいるのはずるい。というわけで、レヴァンドフスキが競り勝ち、マイボールにしてからまったりと攻めてくるバイエルンという後半の立ち上がりとなった。

リヴァプールのプレッシングの配置はスリートップとツーインサイドハーフが鍵となる。相手のサイドバックへのパスコースはウイングがきっているのだが、空中を使われると、どうしてもサイドバックにボールが渡ってしまう。このときにリヴァプールのサイドバックは、バイエルンのウイングにピンどめされているので、前に出ることは難しい。

よって、リヴァプールのウイングかインサイドハーフが頑張る仕組みになっている。で、問題はインサイドハーフとウイングのどちらに頑張ってもらうか?となる。基本はサラーとマネが頑張るのだが、この試合ではサラーも頑張っていた。だが、リヴァプール的にはインサイドハーフに頑張ってもらったほうが、サネたちを前に残すことができる。

なので、2枚のセントラルハーフで、リヴァプールのインサイドハーフをピンどめする。チアゴ・アルカンタラに比べると、ハビ・マルティネスのボール保持での存在感は微妙だったが、いるだけで意味があるやつである。

バイエルンからすれば、ビルドアップの出口をサイドバックに設定し、サイドハーフがロッベリー仕事をするという計算だったのだろう。グナブリーの果敢な仕掛けとシュートは迫力があったので、将来は大化けするかもしれない。

75分にナビ・ケイタ→ミルナー。フィルミーノ→オリギ。アンフィールドでスコアレスドローはよろしくないリヴァプール。力技に出る。この場面からはリヴァプールがゴールに迫り続ける展開へ。さすが、残り15分のカオスに慣れているプレミア・リーグだ。しかし、ハビ・マルティネスとフンメルスを中心に今日は守るときは守るんですと意思統一されたバイエルンは崩れない。こうして、たぶn予定通りにアンフィールドをスコアレスドローで過ごすことができたバイエルン。セカンドレグはホームでの試合になるので、はてさてどうなったのだろうか。

ひとりごと

チアゴ・アルカンタラが元気そうで良かった。コマンとグナブリーのドリブルはロッベリー時代を思い出したし、ゴールキックから意地でも繋ごうとする姿勢は、グアルディオラ時代を彷彿とさせた。国内では今日のような試合展開はあまりないのだろうけど、しっかりと遂行する姿勢は流石というべきなのだろう。

リヴァプールはいつもどおりだけれど、終盤の撤退した相手に苦戦というのは、まだまだ好まない展開なのだろうなと。それでも、柔軟にあらゆる展開に対応できるようになってきているから、今季の結果に繋がったのだろうけれど。それにしても、普通にセンターバックをこなしたファビーニョがえぐい。バカヨコが行方不明なので、ファビーニョには頑張ってほしい。

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