ユベントスのスタメンは、シュチェスニー、キエッリーニ、ボヌッチ、カンセロ、スピナツォーラ、エムレ・ジャン、マテュイディ、ベルナルデスキ、マンジュキッチ、クリスチャーノ・ロナウド。
ファーストレグではボールは持てど笛はならず状態だったユベントス。アトレチコ・マドリーの[4-4-2]に対して、どのような策で挑むかが注目される。スコアの差は2点。最悪でも2-0という結果が求められる状況だ。
アトレチコ・マドリーのスタメンは、オブラク、ゴディン、ヒメネス、ファンフラン、アリアス、コケ、サウール、ロドリ、レマル、グリーズマン、モラタ。
ファーストレグでアトレチコらしい試合で結果を残したアトレチコ・マドリー。セカンドレグでは、対策を打ってくるだろうユベントスにしっかりと試合の中で対応できるかが鍵を握りそうだ。ジエゴ・コスタとトーマスは、確か累積で出場停止だったような気がする。
配置的な優位性で殴る
ファーストレグのユベントスは前線の3枚がフリーダムに動き、中盤の3枚がそのバランス維持に懸命に走る、という相手を意識したサッカーになっていなかった。よって、セカンドレグでは各々の役割を整理して臨んで来た気配が強い。
[4-3-3]のユベントスだが、ボールを保持したときの配置は[4-4-2]殺しとしては定跡に基づいた配置だった。
最初にエムレ・ジャンがボヌッチの右手に降りる。ボヌッチを中央とする3バックを形成し、アンカーにピアニッチで[3-1]の形を作る。2トッププレッシングに対する配置として、これ以上ない形、というよりは、ユベントス的には懐かしい配置となった。
サイドバックのカンセロとスピナツォーラは横幅を確保するために、前に上がっていく。つまり、ウイングの役割が求められる現代的なサイドバックと言えるだろう。エムレ・ジャンが降りたインサイドハーフの位置には、ベルナルデスキが移動して、バランスの維持が図られている。
そして、最前線にはマンジュキッチとクリスチャーノ・ロナウド。クリスチャーノ・ロナウドは左サイドでスピナツォーラのサポートをしながら、ゴール前に侵入してくる形が多かった。つまり、ボールを保持したときのユベントスは[3-1-4-2]でアトレチコ・マドリーの[4-4-2]に勝負を挑む、ということを示した序盤戦となった。ただし、クリスチャーノ・ロナウドは左サイドにいることが多いけれど。
左右不均等のユベントスを見ていると、左サイドはクリスチャーノ・ロナウド、マテュイディ、スピナツォーラのトリオで崩しにかかるイメージ。キエッリーニはパス出しで終了。スピナツォーラはドリブルで仕掛けられるし、マテュイディは繰り返される裏への飛び出しを何度も行うことができる。ファーストレグでボールを持たされたキエッリーニに気を使った可能性が高い。
右サイドは、エムレ・ジャンの運ぶドリブルとベルナルデスキとカンセロでボールを保持すること&ゴール前にクロスを上げることで、クリスチャーノ・ロナウドとマンジュキッチが得意とする形を作ることを重視しているように見えた。アトレチコ・マドリーは右サイドバックがアリアス、左サイドバックがファンフランといつもどおりでなかったこともあって、サイドからの攻撃に苦しんでいく展開が続いていった。
ファーストレグを思い出すと、がんがんカウンターを仕掛けていたアトレチコ・マドリーだったが、この試合ではカウンターを仕掛けるような場面は皆無だった。その理由をアトレチコ・マドリーに求めると、1列目も今日は守備をしようねというポジショニングになっていた。2点差があるので、気持ちはわかる。
ユベントスに求めると、[3-1]による配置的な優位性でアトレチコ・マドリーの1列目を試合から消し、クリスチャーノ・ロナウドやサイドバックを使った大外レーンによるビルドアップ隊からの前進が、中央圧縮を基本とするアトレチコ・マドリーにとって、ボールを奪う機会を減らす形となっていった。ユベントスからすれば、[3-1]による優位性がボール保持のやりなおしも可能とするため、無理に仕掛ける必要もないこともあって、ボール保持をしながらの試合を可能とした。
20分にようやくアトレチコ・マドリーがまったりとボールを保持する時間が訪れる。ユベントスのボール非保持の配置は[4-3+ベルナルデスキ]。3トップのなかで守備の負荷が大きい役割をディ・マリアロールと呼ぶが、ベルナルデスキがそれを担っているようだが、下がらないこともあるようだった。でも、基本はベルナルデスキが降りての[4-4-2]。偶然かもしれないけれど、マテュイディの役回りがフランス代表と同じで面白い。ボール保持ではインサイドハーフ、ボール非保持ではサイドハーフとして振る舞う。そんなマテュイディロール。
26分にトランジションの連続から、ベルナルデスキのクロスをファーサイドで待ち構えるクリスチャーノ・ロナウドが頭で合わせてゴールを決める。クリスチャーノ・ロナウドのクロスを待ち構えるポジショニングが秀逸。大外からの奇襲。相手の視野から外れる位置。もちろん、マンジュキッチのおとりになる動きも良い。
クリスチャーノ・ロナウドのゴールが試合に大きな影響を与えることはなかった。35分過ぎからはアトレチコ・マドリーがボールを持つようになる。しかし、アトレチコ・マドリーの攻撃は裏へのアタック、ユベントスで言えば、マテュイディの飛び出しをする選手がいなく、相手を動かすことはできなかった。ファーストレグで抜群の存在感をだしたジエゴ・コスタのような選手がいれば、それでも攻撃は成り立つかもしれないけれど、今日はいない。
ただし、ユベントスの[4-4-2]の守備の強度も高いとは言えない。ボールを保持した局面で絶対的な優位性を示している試合だったので、相手にはボールを持たせたくない展開だ。しかし、ボール非保持の局面は、ボールを奪うんだ!という迫力が足りない。撤退守備で結局は失点しないよ!という強さの一方で、相手から即座にボールを奪い返すことは苦手なのかもしれない。ボールをもたせてしまうと何かが起こるしかもしれない、というわけで、最後にモラタにあわやの場面を作られて前半は終了する。
前半戦のリピート
配置的な優位性で殴り続けるユベントス。殴られ続けるアトレチコ・マドリー。シメオネが動かない理由は不明。そして。48分には今度はセンターバックの間からヘディングを決めるクリスチャーノ・ロナウドであった。ポジショニングが本当に秀逸である。ただし、ゴールラインテクノロジーがなければノーゴールになったかもしれない。
66分にディバラが登場する。交代選手はスピナツォーラ。え?という交代に中の人達もしばらくは混乱。最終的に左サイドバックにカンセロ、右サイドバックにエムレ・ジャンという結論を出した。
この交代によって、ユベントスはシンプルな[4-4-2]になる。ただし、エムレ・ジャンとカンセロがいるので、可変もやろうと思えばできる。アトレチコ・マドリーからすれば[4-4-2]同士の対決になるので、細かいことは気にしなくて良くなる。
で、この采配で大事だったことは、アンヘル・コレアを入れて攻撃姿勢を強めたシメオネに対する牽制になったのではないかと。アッレグリからすれば、アトレチコ・マドリーにはそのまま[4-4-2]でいてくれたほうが、何も起きない可能性が高い。なので、その判断を導くように、[4-4-2]に揃えるから、そっちもそのままでいてね、というメッセージに見えた。そして、その通りにアトレチコ・マドリーは変化をしないで時間を過ごすことになる。
79分にマンジュキッチ→モイーズ・キーン。噂の選手が登場したが、直後の決定機を外す。そして、この試合で獅子奮迅の活躍をしていたベルナルデスキが長い距離をドリブルで駆け上がり、アンヘル・コレアに倒されてPKを奪い、これをクリスチャーノ・ロナウドが決めて、逆転に成功する。
さて、試合はこのまま終わるのだが、シメオネの采配について考えていきたい。アウェイゴールを決めれば終わった試合である。相手は3バックでビルドアップをしてくる。両脇のセンターバックが運ぶドリブルをしてくる、という条件が揃ったときに、ボール保持側にとってめんどくさいことはなんだろうか。
カウンターのために、2トップが備えるである。この試合のアトレチコ・マドリーの1列目はファーストレグよりはポジションを下げてプレッシングを行っていたが、カウンターに備えていたといえば、備えていた。しかし、大外からのボール保持にボールを奪いきれないアトレチコ・マドリーだったのだが。
このときに定跡を思い出してみると、ちょっと怖いのだ。相手の2トップとビルドアップに参加しなかったセンターバックが同数で残っている状況は。ピアニッチが残っていると考えても、定跡からは外れている。ただし、優位性をもたらせるという意味では、センターバックの運ぶドリブルは間違ってはいない。むしろ、定跡通りだ。
ユベントスからすれば、得点を奪うしかない状況である。だから、リスクをかける!という意味での定跡を実行しやすい、というより、やるしかない。そういった状況がセカンドレグにはたくさん訪れる。だからこそ、逆転が起きるのかもしれない。この試合は、非常に論理的な試合となった。奇跡でも勝つ気持ちが勝ったのではなく、サッカーでしっかりとユベントスが勝った試合だった。
シメオネからすれば、カウンターで、という思いがあったのかもしれないが、その策を捨てる決断力がどこかで必要だったのかもしれない。ただ、コケがあっさりと抜かれている様子を見ていると、疲労蓄積や選手層の薄さが目に見えない形で溜まっていたのかなと考えさせられる試合でもあった。
ひとりごと
さて、シーズンの終わりなので書けることなのだが、アトレチコ・マドリーは選手の入れ替えに着手するらしい。シメオネ体制は続けるようなので、来季以降も大崩はしないだろうが、チャンピオンズ・リーグのファイナルに再登場できるかは、何となく怪しい雰囲気だ。キーパーとストライカー以外の補強が苦手な印象があるので、何とか頑張ってほしい。サウールやコケはどこかで報われてほしい。
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