ミランのスタメンは、ドンナルマ、アバーテ、アレックス、ロマニョーリ、アントネッリ、クツカ、モントリーボ、本田、ボナベントゥーラ、ニアン、バッカ。メディアから伝わってくる情報はミランの不調と本田とミハイロビッチの不和ばかり。しかし、気がつけば欧州の舞台へ返り咲ける順位が現実的に狙える位置まで上がってきているミラン。ナポリ、ユヴェントス、フィオレンティーナ、インテル、ローマと、上位陣もラツィオ以外は元の鞘に収まってきている感がある。
インテルのスタメンは、ハンダノビッチ、ファン、ムリージョ、ミランダ、サントン、ブロゾビッチ、メデル、ペリシッチ、リャイッチ、ヨベティッチ、エデル。冬に補強したエデルが突然のスタメン。エースだと思っていたイカルディと、スタメンだったのではと思っていた長友はベンチ。なお、長友は3試合連続でベンチスタートらしい。インテルの目標はチャンピオンズ・リーグ出場権の死守と、あわよくばスクデットというところだろうか。そのためにも、ダービーで負けている場合ではない。でも、最近は調子が悪いらしい。
■速攻とカウンターとか
インテルのボールを保持しているときのシステムは、4-4-2。ただし、サイドハーフの選手はかなりフリーダムに動き回っていた。前線の選手もセンターバックとのどつきあいを長所としている選手は起用されていない。よって、相手を押し込んだ後のインテルのポジショニングは不規則な動きを見せていた。基本はメデルをアンカーとするビルドアップ。プレミアリーグで見られるボックスビルドアップとはちょっと違う。大した差はないけれど。
ゴールキックをどのように準備するかによって、そのチームの考えがわかることもある。インテルはゴールキックを蹴らずに、ビルドアップへの移行を試みていた。この現象からも、インテルがボールを保持するサッカーをしようとしていることがわかる。ミランとしても、ゴールキックからのビルドアップはさせないように、相手エリアからのプレッシングを試みていた。相手が前から来る場合は、ゴールキックからビルドアップへの移行を諦めるケースが多い。しかし、インテルはかたくなにビルドアップをしようとしていて、その意志を強く感じさせた立ち上がりであった。
高い位置からプレッシングに行くミランの1列目の守備にあわせて、ミランの2列目の守備は、高いポジショニングをとる。よって、インテルの前線とミランのセンターバックはどつきあいになる傾向が強い。インテルはそのマッチアップを狙っていた。前線にボールを届ける方法は、サイドハーフが相手のサイドバックから自由になるポジショニングをとり、ボールを受けて前線に供給する。なお、この狙いに対して、ミランはサイドバックが対応する約束事になっており、インテルのサイドハーフ対ミランのサイドバックという構図ができあがっていた。なんとなくな印象だけれども、セリエAのディフェンスたちは一対一で負けないことをチームの約束事にしている気がする。
インテルの守備は4-4-1-1。頂点にヨベティッチ。その下にエデル。守備の出発はセンターバックを放置。相手のセンターバックとサイドバックのパス交換(センターバックへのバックパス)によって、プレッシングのスイッチが入ることもあった。ミランのビルドアップは基本的に外外の形が多かった。この形がミランの日常なのかは不明。インテルのサイドの選手は中央へのパスコースを制限し、サイドへボールを出させてからボール保持者にプレッシングをかける形が多かった。恐らく、インテルの中を優先する守備にも、ミランの外外攻撃が目立った原因を求めることができそうだ。
両チームともに目立ったのが速攻。最終ラインからの前線への放り込み。1列目の選手と相手のセンターバックが数的同数ならば、積極的に勝負をさせる考えによるものだろう。問題はそのボールから発生する攻防の効率になる。この効率はあまり良くなかった。つまり、攻撃側から見ると、質的優位ではないけれど、そのエリアで勝負させる場面が目立った。速攻による攻撃の失敗は、自分たちの守備の枚数が足りない状態で相手の攻撃に対抗する場面にはなりにくい。そういう意味で両チームの速攻は、相手にカウンターの機会を与えたくないという思惑も関係するものだったろう。
インテルの空中戦の的は、ペリシッチ。サニャを空中戦の的にするよりはいいけれど、前線が空中戦で戦えないと、他のポジションの選手で代用することになる。試合の展開を追ってみると、やはりボールを保持しようとするインテルのほうがミランの陣内に侵入していく回数が増えていった。ドンナルマの出番も徐々に増えていき、インテルが自分たちの型を相手に押し付けることにゆっくりと成功しているような前半戦となった。ただし、インテルの攻撃やビルドアップも再現性を持って、相手の構造を殴れていたわけではなかった。また、前線の選手の火力不足(純粋なセンターフォワードがいない問題)もあり、ミランはミランでしっかりと守って攻撃を仕掛ける場面も見られるようになっていった。
インテルはライン間でプレーする意識のある選手が多いけれど、ゴール前の圧力が物足りない。ミランはバッカくらい。ボナベントゥーラや本田が相手のライン間でプレーするかと思ったが、トランジションのときはあったけれど、定位置攻撃ではほとんど見られなかった。バッカは相手のライン間でプレーするよりは、相手から離れてプレーすることが多かった。ミランの攻撃は本田のサイドからの仕掛けが中心となった。ファンとの一対一。勝ったり負けたり。ただし、左利きだけど、必死の縦突破からの右足でのクロスを見ていると、チームに求められていることに取り組むことで、レベルアップを図っているだろう本田圭佑の姿がそこにあった。その他ではクツカの突撃プレーも目立っていた。クルカの上がるスペースを開ける意味でも本田はサイドにはっている必要があったのだろう。
34分のコーナーキックからのプレーでミランが先制。ショートコーナーから本田のクロスをアレックスが頭であわせて決まる。最近のショートコーナーは3人が絡むようになっている。この場面も3人によるショートコーナーからの本田の左足のクロスに繋がっている。ショートコーナーでボールを動かすことによって、マークすべき対象と視野をリセットすることも狙いだろう。
後半になっても、試合展開は大きく変わらず。50分にマンチーニ退場。本日の主審はピッチの選手の判定とことごとく一致しなかった。恐らく、マンチーニもフラストレーションをためていたのだろう。それゆえの爆発。
63分にヨベティッチ→イカルディ。これで前線の火力不足は解消される。ボールを保持しながら攻撃を仕掛けるインテル。ミランは守りながらカウンターを仕掛けるが、ハンダノビッチまではなかなか届かない。ボールサイドにいるときのクツカのポジショニングが3列目から離れすぎる現象が前半からミランには起きていた。さらに、ミランのサイドハーフのボール保持者に対するプレッシングの角度は中途半端であることが多いので、サイドバックとサイドハーフの間をパスラインとして使われるケースが目立ったそのエリアを使いはじめるインテル。基本はライン間のスペースを使って、攻撃を仕掛ける。そしてイカルディの突撃からPKを得るが、このPKをイカルディが外してしまう。
その直後の72分にトランジションからのカウンター。ニアングのクロスをバッカがあわせて追加点。インテルは守備の枚数が足りずに、その隙を見逃さなかったミランが巧み。いわゆる相手の守備が準備できていない(枚数も足りない)ときに繰り出されたカウンター炸裂であった。攻撃に出るインテルは守備がおざなりになっていたのが、相手に追加点を許す原因となった。
76分にボナベントゥーラがサントンからボールを奪い返してカウンター。ニアングが相手にぶつけながらもこぼれ球を押し込んだ。一気にスコアは3-0になった。サントンのプレーがかなり軽率だった。ただ、追いかける場面だったので、イージーに相手にボールを渡すようなプレーはしたくなかったのだろう。気持ちはわかる。
3-0になってから、ミランは交代枠を順々に消費していく。スタメンへの信頼度が高いのかもしれない。インテルはフェリペ・メロを入れ、最終的には3バックにして攻撃を総攻撃に出るが、システムをかえるのはちょっと遅かった。それよりも、守備の役割が曖昧になり、ミランにボールを回されて時間を消費される一番切ない状況となってしまった。オーレの合唱が起きるサン・シーロ。スコアが動くことなく、ミランが勝利。こうしてヨーロッパリーグへの出場権は射程圏内にいれたミランだった。でも、コパ・イタリアでも勝ち残っているようなので、ヨーロッパリーグなら現実的に出られそうな予感。
■ひとりごと
右サイドでクロスマシーンになっていた本田。ボールを失う場面も多かったけれど、恐らくチーム内での評価も高まっているはず。逆サイドのボナベントゥーラはボールを持ったときの上手さはなかなかだったが、クロスマシーンになれそうな気配はなかったので。インテルはどのように戦うかなどの整理はなされているけれど、前線のベストな組み合わせがなかなかはまらないのだろうか。単純にお金が足りません(点を取れるスペシャルな選手いない)なんて結論になったら切ないので、頑張って欲しい。
コメント