【システム変換は日常になるか】インテル対ユベントス

マッチレポ1516×セリエA

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2位のインテルと12位のユベントスの試合です。チャンピオンズ・リーグから遠ざかっているミラノの両チームですが、インテルはマンチーニの帰還とともに、虎視眈々と上位進出計画を進めています。リーグ戦の不調とは異なり、チャンピオンズ・リーグでは好調のユベントス。恐らくリーグでも復調してくると誰もが考えているでしょうが、この試合をそのきっかけにしたいところです。いわゆるナショナルダービーと呼ばれる試合はそのきっかけにちょうどいいでしょう。インテル側からみても、ユベントスを叩くことができれば、復活を内外に印象づけることができます。

しかし、結果はスコアレスドロー。サン・シーロでの引き分けはユベントスにとってはインテルに比べれば、ポジティブかもしれませんが、まじめにスクデットを考えると、ちょっと痛かったかもしれません。なお、長友は試合に出ていません。左サイドバックには本職がセンターバックのファン。対面のクアドラード対策だったのかもしれません。そうでなくても、試合には出られていないようですけど。

では、そんな試合を振り返っていきます。

■流れが変化する要因をさぐる

ユベントスのシステムは、相手がボールを保持しているときは4-4-2。ボールを保持しているときは3-1-4-2になります。システム変換のキーはエブラとポグバです。エブラは守備ではサイドバック、攻撃ではウイングバックの役割になります。ポグバは守備ではサイドハーフ、攻撃ではインサイドハーフになります。むろん、システム変換作業が間に合わないときはそのまま対応します。ユベントスがこのような変換作業を行うのは相手を見ているから、というよりは、クアドラードを活かすためであると考えられます。ユベントスの3バックは5バックで守備をします。その場合、クアドラードが最終ラインまで下がることになってしまいます。彼の長所を考えると、好手とはいえません。よって、生まれた変換作業になります。

インテルのシステムは4-4-2。相手がボールを保持しているときは4-4-1-1。ただし、前線コンビはどちらがマルキージオを観て、もう一方がセンターバックにプレッシングをかける役割になっていました。前半のインテルはマルキージオ経由の攻撃をさせないために、特にヨヴェティッチがマルキージオのそばをうろちょろしていました。

両者の攻撃の狙いは実は似た部分がありました。相手の2枚のセンターバックに2枚のフォワードをぶつける。両者ともに自分たちのフォワードに自信を持っているようで、早めに縦にボールを入れる場面が目立ちました。ユベントスは3バックに変化してからのオープンな状況を利用して相手の裏に放り込む。インテルはサイドハーフを落として、サイドバックをつります。そして、センターバックを孤立させてからヨヴェティッチたちを使います。

序盤の15分はクアドラードの特攻も含めて、ユベントスのほうが試合の流れを掴んでいました。3バックでビルドアップするユベントスに対して、マルキージオ番をつけると、どうしてもプレッシングが遅れます。その遅れで得た時間をユベントスは前線の選手に繋ぐことができていました。

インテルはユベントスのハイプレッシングをまともに受け止める形になります。ユベントスは守備の基準点がずれないように、ビルドアップを助けに行く選手にもしっかりとケディラがついていく対応を見せていました。こうしたシステムの噛み合いから生まれる、または生まれない時間を、ユベントスは上手く使えていました。

時間がたつにつれて、インテルが落ち着きを取り戻していきます。調べによると、普段は3センターをやっているようなので、その不慣れさから時間がかかったのかもしれません、要因として、ユベントスがミドルプレッシングに変更してきたことによって、ビルドアップ隊に時間が生まれたこと。そして、ビルドアップ隊のヘルプ(フェリペメロやメデルの落ちる動き)に対しても、すぐにボールを奪いたいという勢いがユベントスのプレッシングからは消えていきました。

ユベントスのプレッシングが変更になった理由は、時間経過による計画どおりだったかもしれません。ただし、ユベントスの攻撃は上手くいっていたのですが、技術的なミスからカウンターを食らう場面がしばしば観られるようになっていきました。インテルがユベントスの攻撃になれたというよりは、なぜそのボールがトラップできない、とか、なぜそのパスがずれる?みたいなミスです。よって、ユベントスからしても試合のリズムを早めるよりは少し落ち着こうという意志はあったかもしれません。

インテルはペリシッチとブロゾビッチのポジションチェンジをするなど、前線は流動的に振る舞う場面も観られました。それよりも、ヨヴェティッチとイカルディの存在感は凄まじく、彼らにボールがおさまるからインテルの攻撃が機能する、といった展開が多く観られました。ユベントスは段々と押し込まれるようになり、ブッフォンの仕事も増えていきます。歯車の狂ったユベントスの攻撃は、クアドラードは孤立気味、マルキージオは抑えられている、エブラも高い位置までいけない、前線は頑張るけど、ボールがおさまらないと我慢の時間が続きます。コンテ時代を彷彿とさせるような、インサイドハーフがサイドにポジショニングして、中央へのパスコースを空ける動きも観られましたが、いかんせんボールが止まりませんでした。

後半のユベントスは戦い方を変更してきます。最初にハイプレッシングを復活させます。前半20分以降はインテルがボールを保持する時間が長かったので、その呼吸を乱すためです。相手のボール保持時間を削るにはハイプレッシングと自分たちのボールを保持する時間を長くすることが大切になります。

ユベントスは3バックで後半もビルドアップをしていましたが、インテルが明らかに4-4-1-1に変えたことを読み取ると、4バックに変更します。具体的な現象で言うと、バルザーリが攻撃参加の回数を増やしていきます。また、なぜかマルキージオも自由になります。恐らく、人よりもスペースという意識が強かったのでしょう。前半に比べると、ユベントスはバルザーリの攻撃参加、マルキージオの自由によって、試合を優位にすすめる条件が整っていきます。

さらにモラタとザザも相手のセンターバックとのマッチアップに集中しなくなります。マッチアップで勝負をすれば、結果が出ます。突破できるか、突破できないか。ボールを保持する時間を長くしたいのであれば、そのエリアで勝負するべきではありません。よって、モラタは中盤のエリアまで下がり、相手のセンターバックから離れてプレーをするようになっていきます。そしてクアドラードとのワンツーやボール保持の安定に力を尽くしていきした。

こうして試合の主導権を握り返したユベントスは愚直にインテルのゴールに迫っていきます。しかし、インテルも枚数が足りない、なんて場面は少なく、自陣に撤退してカウンターを狙います。グアリンを投入し、中盤のテコ入れを狙うがあまり意味はありませんでした。ユベントスはザザ、モラタを交代し、マンジュキッチ、ディバラを投入し、残り15分で勝負に出ます。ポグバも積極的なゴールを見せましたが、サイドからスタートすることが多く、もうちょっとゴールに近い位置でプレーさせてあげたくなります。特にユベントスは決定機もありましたが、シュートがゴールに届かずで試合はそのまま終了します。こうして、ナショナルダービーはスコアレスドローに終わりました。

■独り言

両チームともに攻撃の目玉はフォワードです、みたいなようにも感じられる試合だった。ザザ、マンジュキッチ、モラタ、ディバラのユベントスと、ヨヴェティッチとイカルディのインテル。このメンバーで、チャンピオンズ・リーグでも戦えるかというと、やってみなければわからない。なんとなく得点力不足で苦しみそうな気配もあるが、ユベントスにはクアドラードやポグバも控えている。インテルはこの試合は労働者を多数配置しただろう。でも、ベンチを見ると、そんなにいない。ユベントスはチャンピオンズ・リーグでこの攻撃陣でもやっていけることをどこまで証明できるか注目。インテルはとにかく欧州の舞台に返り咲いてそのときの補強次第か、このまま殴りこむか。全ては今シーズンを成功できるかどうかが大事なんだけど、マンチーニのインテルはオーソドックスで堅い印象が強いので、優勝するかどうかは別にして3位以内は大丈夫なのではないかと感じた。でも、ナポリも復調しているようなので、3位までというのはやっぱり厳しい条件だなと思わされるセリエAであった。

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