【変則的3-4-3の正体とは】アタランタ対インテル【躍進を遂げるガスペリーニ】

マッチレポ1617×セリエA

さて、今回は10/23に行われたアタランタ対インテルから。この試合を観戦した理由は、アタランタの快進撃の秘密を探ろうと考えたからだ。6節から14節までのアタランタの成績は、8勝1分だ。ビッククラブでも困難な結果を成し遂げている。アタランタの監督は、懐かしのガスペリーニ。ガスペリーニの代名詞である3-4-3を導入してから、アタランタは一気に上昇気流に乗ったようだ。目の前の選手を尊重したチーム設計をすべき論は根強い。一方で、監督の得意技を出したほうが結果がでるケースも目立っている印象を受ける。インテルの監督は、この試合ではフランク・デ・ブール。ガスペリーニも解任危機だったらしい状況を考えると、両者の命運を分けた試合になってしまったのかもしれない。

アタランタの変則的3-4-3

両チームのスタメンの並びはこちら。

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さりげなく、右サイドバックで長友がスタメンで出場している。注目はアタランタのゴメスとクルティッチのポジショニングだ。

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通常の3-4-3ならば、センターフォワードと両ウイングとなる。3-4-1-2の場合は、トップ下と2トップとなる。しかし、アタランタの前線の3枚の並びはさらに特殊系となった。その正体は、トップ下+ワントップ+左ウイング。右ウイングはいない。この3名の個性を眺めると、クルティッチはトップ下で守備も頑張れる選手だ。ゴメスは左サイドからの突破とライン間でボールを受けることを得意としている。そして、ペターニャはサイドに流れるよりも、中央で相手のセンターバックとどつきあいをすることを得意としている。よって、この特殊系の配置が選手の個性とは全く矛盾していない。

4-3-3で対抗するインテルと変則的3-4-3の噛み合わせ

腐ってもシステム噛みあわせ論は大切だ。

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ゴメスが左ウイングになっているので、アタランタの左サイドは人数が多い。どのポジションの守備の基準点を無くすかの設計において、サントンの守備の基準点をなくす設計はあまり見たことがない。もちろん、亜流として右サイドハーフが左サイドまで移動してサイドハーフ同士のコンビネーションを炸裂させる策は今までもあった。ロッベリーしかり、かつてのセビージャのゴールデンコンビことペロッティ×ヘスス・ナバスしかり。ただし、それらの具体例は、あくまでときどき行なう策であり、常に行なう策ではなかった。

この噛みあわせから何が起きそうかというと、長友サイドがどうしても苦しい。そして、その予想通りに長友サイドから崩されまくるインテルという試合内容になっていく。また、死んでいそうなアタランタの右サイドだが、しっかりと設計はなされていた。

左右非対称のサイド攻撃の設計

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ゴメスのいる左サイドはインサイドハーフのフロイラーのポジショニングが巧みだった。フロイラーがサイドに流れることで、マシエッロからライン間でボールを受けたいゴメスへのパスコースが空く。ジョアン・マリオがマシエッロに対応したら、フロイラーからドラムの外々でボールを運ぶ。そして、長友に数的不利を迫りながらガンガン仕掛けていく。長友はこの対応にとっても苦労していた。ドラムにもクロスを上げられ、ライン間で活動するゴメスにも苦戦する。時間がたつにつれてファウルで対応するしかなくなり、後半の早い段階でアンサルディの交代するのも頷けるプレーとなってしまった。もちろん、アタランタの攻撃に対して、チームで準備できていないのが悪い。

右サイドの攻撃は、そんなに機会が少なかった。コンティが独力でクロスまで行けてしまうこと&ケシーが異常にうまいこともあって、質的優位で迫るのが右サイドのように見えた。ただし、物量的に枚数が足りない問題を解消するために、クルティッチやケシーが積極的に上がっていくことで、枚数の足りなさを解消しようとはしていた。基本的には左サイドからの攻撃が中心となる。このケシーは恐らくビッククラブに引き抜かれるだろう。ちょっと次元が違った。

左右非対称のシステムによる守備

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特徴は3バックの中央の選手に迎撃をさせることと、捨てる相手は思いっきり捨てるだ。迎撃系の3バックは両脇のセンターバックがライン間で活動する選手をマンマークで潰すことが多い。しかし、アタランタの場合は、3バックの中央の選手がマンマーク気味に迎撃守備を行なう。この試合ではカルダラが果敢なマークでイカルディを試合から追い出すことに成功していた。相手が2トップならば、両脇のセンターバックが迎撃で対応するのかもしれない。2センターバックがカバーリングを行えることもあって、イカルディに対して幅広く動いてもチームのバランスが壊れないように設計されている。

思いっきり捨てられている選手が、この試合ではサントンとミランダだった。左右非対称ゆえに空いてしまうサントンにボールをがいかないように、サントン側のセンターバックをマンツーで抑えているのが非常ににくい。そして、長友からミランダのバックパスに対して、ゴメスが鋭く反応することで、インテルのボール保持を破壊しようとアタランタは計算してきた。ビルドアップの出口として計算している中盤トリオだったが、アタランタのマンマークに苦しむ形となった。頼みの綱のイカルディもマンマークで消されていたので、前半のインテルはフルボッコにされることとなった。

インテルの修正

インテルの狙いとしてが、4-3-3で3トップによる3バックのビルドアップを破壊する狙いが前半はあったのかもしれない。ただし、アタランタの3セントラルに対して、インテルの3セントラルがピン止め状態になってしまっていた。よって、3センターがスライドしてワイドの選手に対応しなければならないのに、対応できない状態となっていた。よって、後半のインテルはセントラルハーフの選手を相手の3バックにぶつけるように守備の方法を変化させてきた。

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この変更でゴメスへの対応に集中できた長友だったが、ファウルが増えてきたこともあってアンサルディと交代する。また、セントラルハーフの守備機会がどうしても増える修正だったこともあって、ブロゾビッチ→コンドグビアで餅は餅屋作戦のフランク・デ・ブールだった。

また、攻撃面でも遠回りをしてもいいから空いている選手を使え作戦を実行する。アタランタは前に選手が移動する(コンティがサントンにプレッシング)と、3バックが前に出てきてカバーリングをするようになる。そのタイムラグを利用して、インテルはまったりとボールを左右に動かしながら、アタランタの選手たちを動かしていくようになる。なお、スペイン人監督だったが、時間とスペースを与えられる位置の選手に超つなげる選手を配置する采配をすることが多い。この試合で言えば、サントンの位置にブロゾビッチを置くとか。

なお、後半はインテルも自分たちのやりたいことをピッチでも表現できるようになったことで、一進一退となる。インテルの同点ゴールはエデルの直接フリーキックが炸裂する。正確に言うと、横に転がしたボールをエデルがズドン。アタランタもなかなか前に出てこないインテルに対して、クロスやミドルシュートでゴールに迫っていくが、さすがはハンダノビッチとインテルのセンターバックコンビ。入りそうでなかなか入らない。後半に限っていえば、インテルのほうが決定機が多かったが、試合を決めたのはケシー。右サイドの約束事である攻撃参加をすると、ケシーはエリア内でサントンに倒される。このPKを途中交代で出てきたピニーラが決めて、アタランタが勝ち越しに成功し、試合はそのまま終了した。

ひとりごと

変則的3-4-3を機能させる仕組みが面白かった。それぞれの選手もどのように動くかがはっきりと理解しているようなので、大崩れはしないだろう。それぞれのチームに解決しなければならない状況を強いるという意味でも、ガスペリーニの奇策は成功している。後半のインテルのように、対策をしっかりとすれば、どうにかなる可能性は高い。そんなガスペリーニ対策がイタリアでは注目されているのだろう。

 

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