チェルシーのスタメンは、クルトワ、イバノビッチ、ズマ、テリー、アスピリクエタ、ミケル、マティッチ、セスク、ウィリアン、ペドロ、ジエゴ・コスタ。ヒディンク以降、負けてはないが、別に勝ってもいないという状況が続くチェルシー。残留争いからは無事に脱出できそうだが、最終的にどんな順位で終わるか。それとも、まさかのチャンピオンズリーグを狙いにいくのか。
なお、アザールは怪我のため離脱している。
エバートンのスタメンは、ハワード、オビエド、ストーンズ、ジャギエルカ、ベインズ、バリー、ベシッチ、バークリー、レノン、ミララス、ルカク。定位置が5位だったことも、今は昔。現在の順位は11位。一部で評価の高いマルティネスが就任し、多くの期待を集めていたことも今は昔。メンバーも決して悪くないので、何が原因で低迷しているのだろうか。
■失点で回復するチーム
チェルシーのシステムは4-2-3-1。ビルドアップは、ボックスビルドアップ+1(セスク)。マティッチとミケルの近くでセスクがプレーしていた。トップ下に配置されていたセスクのプレーエリアには、サイドハーフ(ペドロ、ウィリアン)がポジショニングすることで、バランスは取れていた。サイドハーフの空けたエリアには、サイドバックが出てくる。サイドバックが外、サイドハーフが中という分担は、モウリーニョ時代にちょっと似ている。
エバートンのボールを保持していないときのシステムは、4-4-2。ハーフラインからプレッシングをかけるときも基本は4-4-2。ルカクに比べると、バークリーは守備に戻ることがあった。特徴として中央圧縮の傾向が強い。チェルシー対策なのか、日常の動きなのかは不明。特にサイドハーフの選手が相手につられてスペースを空けてしまうことが多かった。だから、スタート地点は中央よりにすることで、サイドで相手を待ち構える形にしたくなかっただけかもしれない。中央からサイドへの移動はOKだけど、サイドから中央に戻ってこない状況は避けたいみたいな。
エバートンのシステムは、4-2-3-1。ビルドアップは、ボックスビルドアップ。ベインズが少し下がり気味でサポートするのが特徴。相手のポジショニングを観て、ベシッチとバリーが自分たちの陣形を決める。そして、バークリーがボールを引き出して、ボールを前線に繋げていく。ミララスはサイドにこだわらずに、ベインズのオーバーラップエリアをつくる。レノンはどちらかとうと、サイドにいることが多かった。ルカクは大きくて早い。大きいけれど、空中戦を嫌う選手は意外に多い。ルカクは懸命にこなすので、好感が持てる。
チェルシーのボールを保持していないときのシステムは、4-4-2。チームのマインドを積極的にするためか、相手陣地から積極的なプレッシングを見せた。エバートンにボールを保持させたくない、エバートンにロングボールを蹴らせたい、チェルシーがボールを保持したいなどなど、理由は色々と考えられる。だが、ルカクが空中戦に弱いわけでもないし、チェルシーがボールを保持したときに効果的な攻撃をしたわけでもない。また、エバートンの攻撃を撤退でも跳ね返せるように、中盤にミケル、マティッチを並べている。よって、試合の流れをどうこう、というよりは、自分たちのアクションを積極的にすることで、マインドの積極的な変化を狙っての高いエリアからのプレッシングだったのではないかと。
前半は基本的に膠着状態。良くも悪くもチェルシーの行動によって、試合が動きそうになることが多かった。例えば、チェルシーは相手陣地からのプレッシングを行った。しかし、エバートンはビルドアップ隊がしっかりと準備されている。セスクとジエゴ・コスタだけでは相手に圧力を加えることができない。よって、自分のエリア(サイドハーフ)を飛び出して圧力に加わることが多かった。この行動がハワードのロングボールに繋がることがあった。その一方で、サイドハーフが移動したことで空いたサイドバックからボールを運ばれてしまう場面もあった。
ボールを保持したときのチェルシーは、セスクを中心に攻撃を進めていった。頻繁に移動するセスクは、相手のファーストディフェンダーの決定を狂わせることに成功していた。つまり、なぜおまえがそこにいるんだポジショニング。セスクに寄せれば、他のビルドアップ隊が空いてしまうという計算になっている。また、チェルシーはウィリアンとペドロの中央からサイド、裏に移動することで、エバートンの中央(バリーとベシッチ)を動かすことに成功していた。その位置にミケルが出てきたり、サイドバックが入ってきたりする場面が何度も見られた。たぶん、エバートンの癖なのだろう。
両チームともにビルドアップで致命的なミスをする気配もない。だからといって、ロングボールをがんがん放り込むでもない状況だったので、いわゆるトランジション曲面は非常に少なかった。チェルシーの意図として、自陣の低い位置で奪ったら速攻を仕掛ける意図は何度か見られた。しかし、機会そのものが少なかった印象。ボールを奪われそうな相手を背負った状態でも、エバートンの前線の選手たちは無理が効く場面が多かったこともカウンター機会の少なさに繋がっているだろう。
ときどきゴールまで届く展開だった前半戦から後半になると、試合が一気に動き出す。
後半の立ち上がりに、ルカクが個人技で見せる、サイドでボールを受けると、中央にボールを運ぶ。相手がどんどん寄ってきてもお構いなし。相手をひきつけるだけひきつけると、後は順番にずらしていくだけ。ベインズのクロスはテリーにあたってゴールに吸い込まれた。
後半のチェルシーは前からのプレッシングをひきつづき敢行。しかし、2列目と3列目が連動しないケースが多々。サイドハーフだけ行ってしまっても仕方ない。チェルシーはオスカルを入れて、セスクを1列下げるモウリーニョスタイルへ。しかし、その前からいく姿勢はチェルシーの守備を分断し、バークリー発信の攻撃は最終的にミララスのファインゴールとつながった。
後半が始まって11分で0-2になってしまったチェルシー。スコアと残り時間で取るべきプレーは異なってくる。中途半端に連動していなかったチェルシーの守備だったが、0-2になったことで、死なばもろともスタイルに変化していく。後ろのことなんて知ったことではないと。攻めないと話にならないと。ときどき2-0は危険なスコアというけれど、こういった相手の死なばもろともスタイルをかわせるかかわせないかがで、本当に危険なのか危険ではないのかが決まるのではないかと考えさせられた。
2失点目によって、皮肉にも意思統一されたチェルシーのプレッシングに対して、エバートンはボールを保持できなくなっていく。また、点差がついたこともあって、自陣に撤退がさらに撤退するようになっていく。また、チェルシーもペドロをサイドにはらせて、ひたすらにアスピリクエタとのコンビネーションからのクロス爆撃をしてくるように、後半から変化している。そうした攻撃の圧力に対してカウンターで対抗したエバートン。しかし、バークリーも下げなければ耐えられそうもないので、カウンター機会も減っていった。
前半の定位置攻撃大会から、試合は整理されていない状態のどつきあいになっていく。正確に言えば、チェルシーの定位置攻撃→エバートンのトランジション曲面という形になるが。そういった流れのなかで、最初のゴールはチェルシー。懐かしのセスク→ジエゴ・コスタの縦ポン。モウリーニョスタイルが炸裂し、チェルシーが1点返す。
そして、次のゴールもチェルシー。ゴール前でのセスクとジエゴ・コスタのワンツーから最後はセスク。こうして、10分の2点差は10分後に同点となった。
その後もチェルシーの猛攻が続く。ペドロ→ケネディでゴール前の要員を増やすチェルシー。それはペドロでもできそうなのだが、チェルシーだと、ゴール前というよりは、バイタルエリアが活動エリアとなる。よって、ちょっと持ち味がでそうもない。エバートンはカウンターから超決定機を迎えるが、残念そこはクルトワだった。負けていないチェルシーの要因にクルトワの復帰は絶対にあると思う。
残り10分でエバートンはデウロフェウとピーナールを投入。チェルシーのハイペースが持つはずないと反撃のチャンスを狙っていた。そして、残り時間が少なくなると、チェルシーも攻め疲れ。エバートンがボールを持つ時間が増えるようになり、スペースを感じられるピーナール、クロスで違いを見せるデウロフェウとチェルシーのゴールに迫っていった。
そしてロスタイム。コーナーキックの流れからデウロフェウがクロスをやりなおす。これを途中出場のラミロ・フネス・モリが決めて、エバートンが勝ち越しに成功する。よし、残すはロスタイムだとなるが、あと7分。エバートンは何度も守り切るチャンスを得るが、相手にボールを渡してしまう場面多数。そして、最後のワンプレーでテリーに華麗なシュートを決められるパワープレーが炸裂。こうして激闘は3-3の引き分けで終わった。
■ひとりごと
プレミアリーグを続けて観戦。ご存知だと思いますが、そんなにプレミアリーグを見ません。良い意味で大雑把という印象の強いプレミアリーグだったんだけれど、想像よりも悪い意味で辛抱強くなっている印象。そっちの方へ流れていくとはちょっと想像していなかった。
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