【クロップスタイルの浸透】リヴァプール対マンチェスター・ユナイテッド【試練が続くモウリーニョ】

マッチレポ1617×プレミアリーグ

リヴァプールのスタメンは、カリウス、クライン、マティップ、ロブレン、ミルナー、ヘンダーソン、ジャン、コウチーニョ、フェルミーニョ、マネ、スターリッジ。今季は欧州の舞台に参加していないリヴァプール。日程的な余裕と、クロップの2年目であることを考慮すると、チャンピオンズ・リーグの出場権は、最低でも確保したい。今季は調子もよく、現在の順位は4位なので、より高い目標設定も現実的かもしれない。欧州の舞台がないリヴァプールにとって、真価をはかるにはプレミアリーグの強豪との試合しかない。今日の相手は、マンチェスター・ユナイテッド。クロップ対モウリーニョという構図もなかなか興味深いものがある。

マンチェスター・ユナイテッドのスタメンは、デ・ヘア、ブリント、スモーリング、バイリー、バレンシア、エレーラ、フェライニ、ラッシュフォード、ヤング、ポグバ、イブラヒモビッチ。グアルディオラとの再会から、一時的に調子を落としたマンチェスター・ユナイテッド。結果という意味では、復調傾向にある。上位から中位まで団子状態とはいえ、チャンピオンズ・リーグ圏内から外れている状況は、歓迎すべき状態ではないだろう。また、ヨーロッパ・リーグとの兼ね合いから、地味に過密日程であることも、チームを苦しめている。さらに言えば、ポグバ、ルーニーをうまく機能させられない状態で、しばらくは最適解を探しながら、シーズンを過ごすことになりそうだ。

リヴァプールのビルドアップスタイルとモウリーニョの対策

ゴールキックもできれば蹴りたくない意思表示をしたように、リヴァプールはボールを保持することを志向している。ボールを保持することを志向しているというよりは、ロングボールによる陣地回復、前進を試みるには、適した前線の選手がいないという理由があるのだろう。前線の選手を眺めても、裏抜けは頑張ってしてくれても、相手のセンターバックと空中戦を好んで行なう選手はいない。もちろん、ロングボールを蹴る→セカンドボールを拾いまくるという策もある。しかし、ずっとその策を行えば、さすがのクロップのチームでもガス欠になるのは間違いない。となれば、ボールを保持できなければ、話にならないとなる。なお、かつてのドルトムントのように、前線にレヴァンドフスキでもいれば、策も変わってくるかもしれない。

リヴァプールのビルドアップスタイルは、ヘンダーソンを下ろす形だ。この試合では、マンチェスター・ユナイテッドの第一守備ラインがポグバとイブラヒモビッチであったので、センターバックがさらされないように、3バックに変化する場面が多かった。ポグバとイブラヒモビッチは、いつもよりも懸命に守備を行なう場面が多かった。ボールサイドの選手がボール保持者にプレッシングをかける&ボールサイドでない選手が中盤のエリア(ヘンダーソンがいる場所)を埋めるを淡々とこなしていた。イブラヒモビッチに比べると、ポグバの頑張りが目立っていた。インサイドハーフだったり、セントラルハーフだったりするポグバだが、今日はトップ下で起用された。

ビルドアップの出口として利用したのがコウチーニョとフェルミーノ。インサイドハーフのコウチーニョは、インサイドハーフ下ろしのような動きで相手から自由になろうとする。そして、自分の動いてできたエリアをフェルミーノに使わせる場面が目立った。ウイングで起用されたフェルミーノだが、その実態はフリーマンのようで、各エリアに神出鬼没なプレーを見せていた。

リヴァプールの長所が、フェルミーノとコウチーニョだとする。だったら、その長所を最優先に抑えなければいけない。モウリーニョの策は、コウチーニョをエレーラで抑えるだった。エレーラがほぼマンマークのようにコウチーニョについていくことで、コウチーニョを消すことに尽力する。そして、エレーラの空けたエリアは、ディフェンスラインの選手の撃退でしっかりと対応していた。リヴァプールは左サイドのビルドアップの出口を消されてしまうと、マンチェスター・ユナイテッドがボールを保持する展開が目立つようになっていく。なお、この状況をリヴァプールが打開するのはエムレ・ジャンが動き始めてからだけど、それはもうちょっと先のお話だ。

この試合のモウリーニョのプランニングを考えてみる

モウリーニョの置かれた立場は、決して楽観的な状況にはない。もちろん、解任なんて報道はさすがにまだ出ていないと思うが、期待されていた結果にはわずかに届いていないし、内容も周りの人々を満足させるものではないだろう。よって、負ければさらに自分の周りの状況が悪くなる可能性は高い。相手は好調のリヴァプールで、会場はアンフィールド。是が非でも3ポイントを得なければいけない状況でもない。ここがオールド・トラフォードだったら、話は別だが。

モウリーニョのスタメンのセレクトで印象的なのは、ヤングとラッシュフォード。このコンビの役割は、走って死んで。攻撃面での突撃やクロスよりも、相手のサイドバックの位置に応じて、どこまでも下っていくことが求められているようだった。残り時間少ない状態で登場したルーニーにも、同じ役割が課せられていた。サイドハーフがサイドバックのように振る舞うことによって、マンチェスター・ユナイテッドの4バックは、中央の守備と撃退により集中することができる。このサイドハーフの守備のヘルプが、フェルミーノのフリーマンを効果的にさせなかったことは言うまでもない。

マンチェスター・ユナイテッドのボールを保持した攻撃は、イブラヒモビッチの下りる動きが目立った。イブラヒモビッチが中盤に参加することで、+1の関係になる。しかし、イブラヒモビッチの空けたエリアに突撃していく選手はいない。サイドハーフはサイドで走って死んでがメインの選手で、ポグバも2列目から飛び出していくことを長所とはしていない。こうなると、マンチェスター・ユナイテッドのボール保持攻撃が機能しそうな気配はない。もちろん、イブラヒモビッチとポグバの個人技爆発を待ったり、高さで優位性があるので、セットプレー一発という可能性は間違いなくある。よって、守備を優先してスタメンを決めた可能性は高い。自分たちの攻撃の精度を高めたいのであれば、マタを起用したのではないだろうか。

リヴァプールの猛攻と耐えるモウリーニョスタイル

前半の終わりくらいから、エムレ・ジャンはビルドアップの+1になり始める。コウチーニョに比べると、マークが厳しくないエムレ・ジャン。ある意味で左右不均等なマンチェスター・ユナイテッドの守備。ときには(たぶん1回だけだけど)センターバックの間に下りるエムレ・ジャン。ビルドアップの出口を見つけたリヴァプールは、前線の選手たちが躍動する条件が整ってくる。

残り30分になると、スターリッジ→ララーナが登場する。フェルミーノがトップ、コウチーニョが左ウイングに移動する。スターリッジはどうも元気がない。また、エムレ・ジャンのビルドアップ出口作戦は決して再現性を持って繰り返されたわけではないが、徐々にマンチェスター・ユナイテッドが当初の予定通りに全体のラインを下げて撤退守備に切り替えたことで、リヴァプールのビルドアップ問題は解決する。ただし、ゴールキックなどのプレーの再開のときに、しっかりとリヴァプールにロングボールを蹴らせるようにラインを上げてくるのは、最近の流行か。それでも、繋ごうとするカリウスは愚直な人なんだなと思ったけれど。

さて、後はアンフィールドの声援を後押しにゴールに迫るだけ。しかし、6バックをためらわないマンチェスター・ユナイテッドの前に、なかなかチャンスを作れない。隙間でのポジショニングが得意そうなブラジルコンビにも6バックが許す撃退守備に苦しめられる。守るときは守るモウリーニョ。リヴァプールの主なチャンスは、エムレ・ジャンの突撃とコウチーニョのスーパーミドル。両方共に意外性がキーワードとなる。まさかのエムレ・ジャンの突撃はデ・ヘアのが防ぎ、コウチーニョのスーペルミドルもデ・ヘアがスーパーセービングで防いだ。モウリーニョの計算からすると、前者はゆるすべきでないけど、後者の決定機はしょうがないのかなと。あの位置から決められたらドンマイみたいな。決められなかったからモウリーニョの計算の勝ちだけど。

サッカーはミスのスポーツなので、どんなにうまく守っていても相手に決定機は訪れるもの。また、ひたすらに自陣に撤退していてもカウンターで一回くらいはチャンスが有るもの。問題は、そのチャンスで点を決められるか。キーパーの立場からすれば、そのチャンスで存在価値を証明できるか。今日はデ・ヘアがその価値の高さを証明してみせた。

ボール保持しながらの攻撃でどうにもならないときは、困ったときのセットプレー。しかし、フェライニ率いるマンチェスター・ユナイテッドの高さの優位性は異常だった。では、ボールを奪ってのショートカウンターだとなるが、この試合でのマンチェスター・ユナイテッドのボールキープ力もまた異常だった。すばやくボールを動かす、フィジカルを活かしたキープ力で、相手にボールを奪わせない。もちろん、リヴァプールがボールを奪ってのショートカウンターという場面もあったが、クロップの計算ではもっとその機会が多かったはずだろう。その計算を狂わせるモウリーニョはやっぱり策士だと感じさせる。

そして時間は過ぎていき、試合はスコアレスのまま終了する。リヴァプールからすれば、攻めまくった内容に多少の満足感を覚え、マンチェスター・ユナイテッドはプランどおりに無失点に相手を抑えたことに満足感を覚えただろう。よって、引き分けという結果は、まっとうなものだったと思う。もちろん、モウリーニョのプランに不満を覚えるマンチェスター・ユナイテッドサポはいるかもしれないが、守ると決めたときのモウリーニョは、こんな感じなので、受け入れるしか無い。そして、しっかりと結果を残したことは称えるべきだろう。

ひとりごと

ボールを保持したほうが強いとはいわないが、ボールを持たされているというほどの表現が適切な試合ではなかった。なので、リヴァプールにとっても、ボールを保持して相手を圧倒できたというのは、昨今の両チームの力関係を考えると、ポジティブな内容だったんだと思う。フェルミーノとコウチーニョがキーマンなのだろう。あとはスターリッジの位置に誰を配置するかでさらにレベルアップするかもしれない。スターリッジが機能するのが一番いい結末なのかもしれないが。

マンチェスター・ユナイテッドはモウリーニョらしくなってきたが、今日のようなプランが現地でどのように評価されているかは不明だ。ヨーロッパ・リーグのあとに、スタンフォード・ブリッジでチェルシー、リーグカップでマンチェスター・シティと、なぜか強豪との試合が続くマンチェスター・ユナイテッド。モウリーニョのマンチェスター・ユナイテッドの序盤戦の評価は、この連戦で決まるのだろう。すべての試合に引き分けだと、さすがに雑音が増えていきそうだ。

コメント

  1. 774 より:

    後半の面子からジャンとワイナルドゥムを入れ替えたのが普段の形ですね。
    ワイナルドゥム、ララーナが怪我で欠場&ベンチスタートとなったためこの形になりましたけど。スタリッジは普段ベンチです。
    出来ればベストな布陣での試合見て欲しかったです…笑

    • らいかーると より:

      スターリッジが普段はベンチなのですか。それはびっくり。ネームバリュー的にも。また、見てみます!

  2. ミルナーの背中 より:

    久々のスタメンのジャンでしたが、今後ジャンがアンカー、ヘンダーソンがインサイドハーフはダメですね❓ヘンダーソンのアンカーも定着してきましたけど…

    • らいかーると より:

      ヘンダーソンのアンカー、めっちゃ機能していたじゃないですか!!!そのコンビを交代する理由とメリットがよくわかりません。僕はミルナーにインサイドハーフやってほしいです。

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