【回収された伏線と残した伏線】日本対チリ

森保×日本代表

日本のスタメンは、大迫、原、植田、冨安、杉岡、柴崎、中山、久保、中島、前田、上田。オリンピック代表のメンバーに植田、柴崎、中島がオーバーエイジで入っているかのようだ。キーパーは川島をスタメンで起用すると予想していたので、オリンピック世代への強化への想いが、外野と中の人達の差異として強いのかもしれない。

チリのスタメンは、アリアス、イスラ、メデル、、マリバン、ボーセジュール、プルガル、アランギス、ビダル、フエンサリーダ、バルガス、サンチェス。チリ代表といえば、サンパオリ時代のスーパーハイインテンシティ時代の印象が強い。その時代にプレーしていた選手も多いが、サンパオリ時代から比べると、良い意味でも悪い意味でも落ち着いてきたようである。

人への意識ましましのメリットとデメリット

日本のキック・オフで試合が開始した。ボールを受けた中山は周りの状況を観察しながらショートパスを選択。つまり、序盤にどかんと蹴り飛ばすデザインはなかった日本だった。いわゆる最初の伏線となる。つまり、この試合の日本は無闇にボールを相手に渡さずに試合を組み立てていこうという伏線だ。

さて、そんな姿勢はチリも同じようで、序盤は様子見のロングボールでリスクを減らすよりは、最初から自分たちが志向しているプランを遂行することのほうがリスクは少ないよねと考えているようだった。よって、センターバックからまったりとボールを繋いでいこうとするチリに対して、日本がプレッシングという構図で最初の攻防が始まった。

コパ・アメリカを何試合か見てきたのだけど、マークの特定をはっきりとするチームが多い。中間ポジションよりは、誰が誰を見るかをわかりやすくすることを優先している、というよりは、ど付き合いが好きなんだろう。つまりは、マンマーク思考。特徴として、ボールを奪えそうな雰囲気を感じ取ったら、一気に選手が集まってくる守備形式が多い大会となっている。

日本は4-2-3-1で人への意識ましましで試合に入る。まるで他の代表チームに影響されたかのようなプレッシングとなった。特に中山は列を降りていくインサイドハーフについていく場面が多かった。マンマークのメリットはこのような移動に対して発揮されるが、デメリットも存在する。それは、自分たちよりも後方にいる相手へのパスラインを阻害しにくいということだ。

つまり、俺はこの選手にボールを触らせないことに命をかけている、え?ビダルにボールを触らせなくても、もっと前にいるサンチェスにボールが入ったら元も子もないだって、それはそれだ(・∀・)

よって、チリのセンターバックにいきなりギャップを通される立ち上がりだった。なお、コパ・アメリカでは相手のマンマークに対して、横や縦のポジションチェンジが猛威を奮っている、気がする。そして、一気に縦パスを見つけやすいので、楔のパス大会でボールを受ける選手とパスカットを狙う選手のど付き合いだ。というわけで、この試合ではアレクシス・サンチェスが楔を受けるプレーで存在感を示していった。まずは、アレクシス・サンチェスへのパスラインをきるを優先すべきだが、守備のやり方はたくさんあるので、なんとも言えない。

ビダルのサイドチェンジで輝くイスラ

ボールを受けると、とにかく目立つ中島の個人技を尻目に、アレクシス・サンチェスのキープ力を活かしてビダルがボールを受ける場面が増えていく。ビダルはシンプルなサイドチェンジでピッチの横幅を使い始める。ドリブル小僧として目立つ中島が守備で下がってこない情報を手に入れていったチリだった。

そんな序盤戦で見逃せないプレーが柴崎のサリーだ。いわゆるセンターバックの間に降りる移動である。なお、柴崎は7分までに2度のサリーを試みるが周りの選手に華麗にスルーされている。たぶん、絶対にこのようにプレーしないといけないという原則はないのだろう。これが伏線そのニである。

ビダルが2度目のサイドチェンジを行う頃に、日本は1列目と2列目に距離ができる恒例行事となる。これではカタール戦の二の舞になってしまう雰囲気だ。中山は長い距離を走って相手を捕まえにいくが、簡単に前を向かれるようになってしまっていった。そして、ビダルの2度のサイドチェンジから、今日はイスラの日だね、ということで、チリの強烈な右サイド攻撃が始まる。

イスラが輝いた理由は明白で、中島が下がってこないのである。中島が下がってこないならば、代わりにそれをどのようにカバーするか?という決まり事が必要なのだが、それはピッチから読み取ることができなかった。よって、常に数的不利の杉岡にとって地獄のような時間帯が続いていった。さらに困難だったことは、イスラのクロスに対して飛び込んでくるのが逆サイドのアレクシス・サンチェスという噛みあわせだろう。どれだけ不運やねん、という噛みあわせだ。

答えは前田大然が持っていた

ボールを保持すること、アレクシス・サンチェスが攻撃の起点になれること、右サイドでは優位性が落ちていることを整理したチリは4-1-4-1→4-4-2のプレッシングをさらに強めることで、日本の時間帯を減らそうと画策する。その前からやっていたけど、その効果が倍増する的な。

日本は中島や久保がビルドアップの出口にさっさとなることで、個人技炸裂大作戦へと偏っていく。堂安、南野、中島のジェットストリームアタックは人を変えても行われるようだった。しかし、彼らの個人技は特に南米では評価をされそうな雰囲気である。たぶん、無駄に会場をわかせたに違いない。切ないところは、その個人技で試合に勝てそうもないが、他に試合を勝たせられそうな手法を日本が持ち合わせていなかったことだろう。

そんなわけあるかい!と日本のサッカーを見ていると、前田大然が妙なポジショニングをしていた。快速の前田大然はなぜか相手のアンカー脇でのプレーが多かった。中島はもともとフリーダムなところがあるので、あんまり気にならない。だが、前田大然である。上田と前田のダブル裏抜けに期待していたのだが、どうやら前田には中に入っていくという役割が与えられているようだった。これが最も大きな伏線と言えるだろう。

日本の狙いを整理していくでござる

さて、時間が過ぎていくと、日本は明確に4-4-2でプレッシングを行う場面が増えていった。恐らく、アンカーを警戒するよりもセンターバックへプレッシングをかけたほうが早いと考えたのだろう。この狙いはそれなりに機能し、チリがシュートまでたどり着きそうな機会を減らすことに見事に成功する。なかなかボールを奪うことは達成できなかったけれど。

チリのプレッシングに対して、解決策を見いだせそうもない日本。ただし、サンパオリ時代に比べると、チリの熱量もなんとも言えなかった。早いプレッシングに対して、日本はその速さに向き合う勇気がないように見えた。たぶん、これが経験値のなさとか若さってやつなのかもしれない。

しかし、大迫は意地でも繋ぐ。ゴールキックをセンターバックに渡し続けた。これが最後の伏線で日本はボールを保持するプランがあった。キック・オフやゴールキックを見ていると、そのように考える根拠にはなる。

そして、柴崎のサリーだ。サリーはボール保持を安定させるために行い、その副産物、というよりは、メリットとしてサイドバックの位置を高くすることになる。つまり、ボール保持を安定させながら、サイドバックに横幅を取らせたかったのだろう。

なぜか?前田大然を中に送り込むためだ、というよりは、チリのアンカー周りを狙い撃ちにしたかったのだろう。上田の裏抜けで相手のセンターバックをピンどめし、サリーで相手のインサイドハーフの基準点をなくし、アンカーの周りに中島、久保、前田で強襲プランである。アンカー脇でプレーする前田大然に違和感を感じながらも、このような形を準備していたんだろうなと。

ただし、日本の良くも悪くも積極性を魅せる中島、久保のドリブルはわらっと集まってくるチリの前にボールを失うことが多かった。となると、ボール保持からは遠いプレーとなってしまう。また、サイドハーフが中にいる関係でボールを失ったときのポジショニングもバラバラ。さらに、上がっていると危険なサイドバックも味方がそのタイミングでボールを奪われるんかい!が続くと怖くて上がれなくなってしまう。というわけで、チリのボール奪取能力の前に、日本の攻撃はゆっくりと機能性を失っていった。

さらに、チリはアンカー周りを使うなら中央を固めまっせと相手と対話ができるそれゆえに久保はサイドに流れてボールを受けようとする振る舞いをみせることになった。中央渋滞から逃れようとするあたりは流石である。ただ、別にサイドハーフの守備をやらせてもいいような気がするが、それは久保に気を使っているのかもしれない。

日本の最後の変化は何の伏線になるのだろうか

というわけで、チリの対話の前に何もできなくなっていく日本。だったら、押し込まれる展開になるわけで、30分過ぎからは猛攻をくらう。勝負どころでのチリの圧力はシュート数という形で現れるからわかりやすい。そして、困ったときのセットプレーで先制し、前半のわずかな残り時間は静かに過ごそうとする。しかし、柴崎のスルーパスを上田!という決定機を作られたように、コパ・アメリカのインテンシティと比べると、チリはちょっとゆるさを感じた。

後半になっても大きな流れは変わらない。多少は守備意識を増した中島だったが、よりによって守備に下がらなかったときに失点することはこの世界ではよくあることだ。なぜかは不明。若かったことのメッシもこのようなことによく遭遇していたと記憶している。杉岡と中山にとっては辛い日となったことは言うまでもない。

日本の最後の変化は安部と三好の登場で起こった。もちろん、2点差を考慮して、チリが下がって試合を展開したことも大きい。ビルドアップ隊が時間とスペースの貯金を作れなくて苦労していた状況が、相手の撤退守備によって解決した瞬間に意気揚々とプレーする面々現象だ。

また、この交代で面白かったのが両サイドハーフの役割だ。安部はしっかりとサイドにはっていた。三好は少し中気味だったかもしれないが、技術の高さでそれを問題と感じさせなかった。さらに、攻撃参加しないと話にならないだろうと、最初の失点から攻撃参加の意思を強めたサイドバックコンビも自分の役割をまっとうするようになっていく。そして、中央の久保も中央渋滞を解消されたことで、プレーエリアを確保できるようになっていった。

最終的にはさらなるトドメを刺されて試合は終わるのだけど、このノーマル型4-2-3-1はなかなか興味深い現象を巻き起こしていた。つまり、アンカー脇を使いたい→使わせない→だったら使わないという会話が選手交代でなりたったことで、試合の中身が変化したという事実は見逃せない。もちろん、チリがチリなりにプレッシングを続けていたならば、それも起きなかったかもしれないけども。

大敗により、次の試合で引き分けないと3位抜けは厳しそうな日本の命運やいかに。

ひとりごと

コパ・アメリカを経験することで、この世界を日常にするしかないんや!と海外に移籍するオリンピック世代の選手が出てくるかどうかは楽しみにしておきます。

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