UEFA Champions League 2013-14 Final ~1314シーズンで5度目のマドリードダービー~

 

アンチェロッティ対シメオネ、5度目の対決である。史上初となった、同じ街に本拠地を置くクラブチーム同士のチャンピオンズリーグファイナル。

 シャビ・アロンソの代役を誰にするか、注目の集まったレアル・マドリー。アンチェロッティの答えは、ケディラだった。セットプレー、流れの中での高さ要員として、期待されたのだろう。アトレチコ・マドリーのセットプレーは、驚異的な決定力を持ち、DFからのハイボール競り合いでも強さを見せている。相手を考慮した堅いスタメンと言えるかもしれない。

 アトレチコ・マドリーのスタメンで興味深いのはビジャとジエゴ・コスタの共存。そして、ラウール・ガルシアを右サイドに配置したことだ。あとで分かることだが、試合前から決められていたかのように、ジエゴ・コスタは元気よくピッチから、たったの9分で去っている。

 ジエゴ・コスタがいなくなることを前提とすると、相手に脅威を与えるFWが必要となる。ラウール・ガルシア、アドリアン・ロペス、ビジャと見比べれば、一目瞭然だ。ビジャをトップで起用するとなると、必然的にラウール・ガルシアをサイドに配置するしかなくなるという流れに落ち着く。

 スペースの奪い合い

 4-5-1か4-4-2のどちらで、アトレチコ・マドリーが守備を固めるか。シメオネの答えは4-4-2であった。ビジャとジエゴ・コスタの共存を考えれば、納得の行く答えである。基本的にはハーフラインから相手にプレッシングをかけていくのだが、チャンスがあれば、深追いもしていた。特にカシージャスが狙われていたことが印象に残っている。

 ケディラがいることで、レアル・マドリーのビルドアップ隊が不安定になることも考えられた。だが、シメオネはボールを積極的に奪いに行くことで発生するリスクよりも、ボールを持たせたところで何もできないと考え、そのリスクを消すことで、レアル・マドリーにスペースを与えないい道を選んだ。

 しかし、ボールを持たせてはいけない選手がいる。モドリッチとディ・マリアだ。

 彼らがボールを持った時はハーフラインからプレッシングをかけようという約束事を脇においておく。彼らの厄介な能力は、ボールをドリブルで運べることだ。ここでのドリブルでボールを運べるというのは、突破のドリブルという意味になる。カバーリングがいなけば、彼らはこの位置でドリブルを選択し、悠々と相手をかわしてボールを運んでいく。

 よって、アトレチコ・マドリーは彼らに時間を与えないようにプレッシングをかけていく。アトレチコ・マドリーの泣き所に、ボールを持ったら最強の選手をしっかりと配置しているアンチェロッティ。そして、その位置の対策をしっかりしているシメオネ。次のターンはアンチェロッティである。

 今までの対決で見られた手である。モドリッチとディ・マリアをレアル・マドリーの狙い所から外し、SBやセルヒオ・ラモスに狙い所でプレーさせる。アトレチコ・マドリーのプレッシングは、相手の選手によってスイッチが入ったり入らなかったりする。この動きは特に左サイドで行われた。

 コエントランがボールを持った時には何も起こらなかったが、セルヒオ・ラモスがボールを持ち上がったときは徐々にアトレチコ・マドリーを攻略する糸口を掴むことに成功していた。左サイドでためて、右サイドのカルバハル&ベイルへのサイドチェンジでボールを徐々に前進させることに成功していた。特に、カルバハルは何度もフリーでボールを受けることに成功していた。

 ジエゴ・コスタを失ったアトレチコ・マドリー。問題はいかにカウンターを成立させるかである。ジエゴ・コスタは独力でボールを運ぶ能力を持っている。そして、その能力を持っているもう一人のキーマンのアルダは、怪我で出場できない。よって、アトレチコ・マドリーは個の能力を全面にだした攻撃をすることができなかった。

 アトレチコ・マドリーに残されたカードは、偏ったサイド攻撃くらいであった。両SBを積極的に攻撃参加させて、人数を集めた状態でサイドを突破していく。そして、ボールを失ったらハイプレス発動でショートカウンターに繋ぐことが目標と言えるだろう。この方法論は、Jリーグの横浜F・マリノスに地味に似ている。アトレチコ・マドリーは愚直にサイド攻撃をすすめ、その過程や結果で得たセットプレーを大事にしたい。

 レアル・マドリーが徐々にボールを前進させることに成功していたときに、アトレチコ・マドリーに先制点が生まれた。セットプレーからのゴティン。カウンターがダメならセットプレーと絵に描いたような展開で試合が進んでいくアトレチコ・マドリー。この場面でのカシージャスの対応はお粗末であった。このままのスコアで敗戦していたら、なぜディエゴ・ロペスでなかったのか?の大合唱がメディアで起きていただろう。

 先制に成功したアトレチコ・マドリーは、すぐに4-5-1に変更。自分たちの泣き所への対策を進める。これで、誰がボールを持っていてもプレッシングに行けるという計算になるし、フリーになりがちだったカルバハルへの距離も近くなる。前半は1-0のまま終わり、ハーフタイムのアンチェロッティにすべてが託された形となった。

マルセロとイスコ

 後半が始まると、存在感を示したのはアドリアン・ロペスであった。アトレチコ・マドリーのサイド攻撃を牽引。左サイドから再三にわたって、レアル・マドリーのゴールに迫り、チームにセットプレーを多くもたらした。

 58分にアンチェロッティが動く。マルセロとイスコを投入し、モドリッチを中央に配置した。4-4-2から4-5-1に変化したことで、FWとMFの間のスペースを埋めきれないアトレチコ・マドリーを徹底的に狙う考えである。また、ディ・マリアが左サイドに張り付く形になったので、クリスチャーノ・ロナウドが自由に動き回るようになった。

 セントラルに配置されたモドリッチとイスコで、アトレチコ・マドリーの攻撃を抑えきれるか、というと非常に怪しさがつのる。よって、前半に比べると、アトレチコ・マドリーも攻撃のチャンスを掴むようになっていった。ただし、レアル・マドリーもチャンスを掴むようになっていくのは言うまでもない。

 アトレチコ・マドリーはラウール・ガルシア→ホセ・ソサでカード&マルセロ対策を行う。ディ・マリアへのヘルプも行う必要があるので、妥当な采配と言える。

 レアル・マドリーは自由になったクリスチャーノ・ロナウドとベイルのコンビネーション、イスコ&マルセロ&モドリッチの時間とスペースの創出からのディ・マリアの個人技などなど、徐々にアトレチコ・マドリーのゴールに迫っていく。しかし、肝心のシュートが枠に飛ぶ場面は少なく、クルトワを焦らせる場面は少なかった。

 割り切ったアトレチコ・マドリーはDFラインを下げて、ゴール前にバスを並べる。アドリアン・ロペスとビジャのポジションを代えて、元気なアドリアン・ロペスに前線でカウンターを行わせる変更をする。終了間際に相手をファウルで止め、自分もファウルを受けるなど、ビジャは試合の流れを分断する大きな仕事を行った。

 相手の事情はあれど、前半よりは確実にゴールに迫ったレアル・マドリー。しかし、時間はロスタイム。だが、ここでとうとう試合が動く。繰り返されたセットプレーからのセルヒオ・ラモスのヘディングが炸裂し、試合は延長戦に突入した。失点直後に周りを鼓舞するシメオネはちょっとかっこよすぎた。

死力を尽くした延長戦

 延長戦になると、マルセロとディ・マリアが役割をかえて攻撃を仕掛けるようになるレアル・マドリー。アトレチコ・マドリーはもう耐え忍ぶ力しか残っていなかった。よって、ひたすらに耐える、耐える。元気なマルセロの仕掛け&前線から守備を頑張るモラタに苦しむアトレチコ・マドリー。

 決勝ゴールは意外な形から生まれた。攻撃の終わりからハイプレスをいつも通りに仕掛けるアトレチコ・マドリー。追い込まれたレアル・マドリーはカシージャスがロングキックをする。カシージャスのキックはいつも通りに相手の元へ一直線。しかし、このボールをティアゴがトラップミスすると、レアル・マドリーのカウンターが発動。ディ・マリアの独走から最後はベイルが押し込んで、レアル・マドリーが逆転に成功する。

 その後もカシージャスのミスが出てきわどい場面を作られ、チーム全員に怒られるなんておちゃめな場面もあったが、残りの時間はレアル・マドリー祭り。イグアイン、ガゴと同期で唯一の生き残りのマルセロは、オーレの声を無視して追加点を決める。そして、締めはチャンピオンズリーグで優勝するために、レアル・マドリーに移籍してきたクリスチャーノ・ロナウドのゴールで試合は終わった。

独り言

 アトレチコ・マドリーはかなり低い位置にポジショニングして、守備をすることを得意としている。

 低い位置からのカウンターは、この試合で何度も見られたように、ショートパスを繋ぎながら前進する。ハイボールをラウール・ガルシアで裏に飛び出す。そして、アルダとジエゴ・コスタの運ぶ能力に託す。最終的に、最後の2つがなくなった時点でアトレチコ・マドリーはかなり苦しい試合となった。それでも、先制して延長戦まで辿り着くのだから、恐ろしいチームである。

 アンチェロッティになってからのレアル・マドリーはバランスが良くなった。サイドハーフの守備しない構造を解決し、ボールを保持した状態からでも、相手を崩せるようになった。よって、今までよりもカウンターが活きるようになった。

 次は、バルセロナ、グアルディオラのターン。来季も非常に楽しみである。

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