【質的優位】横浜F・マリノス対浦和レッズ【誰がどこに戻る?】

マッチレポ2017×Jリーグ

2017年のJリーグの開幕戦は、横浜F・マリノスと浦和レッズ。12:30キック・オフという珍しい時間で行われた。ゼロックススーパーカップやアジア・チャンピオンズリーグですでに公式戦を行っている浦和レッズに対して、準備万端で臨む横浜F・マリノスという立ち位置の試合となった。中村俊輔の離脱などによって、オフの主役になった横浜F・マリノス。結果を出すことで、自分たちの行動の正しさを証明したい。昨年は年間勝点順位で頂点だったけれど、チャンピオンシップで負けた浦和レッズは、その雪辱をはかるシーズンとなるだろう。ただし、アジア・チャンピオンズリーグを強く意識していることもあって、ターンオーバーの香りがする浦和レッズのメンバーとなっている。

相手がボールを保持しているときのシャドウのポジショニング

相手がボールを保持しているときの、浦和レッズのシャドウ(興梠と柏木)のポジショニングは、非常に悩ましい。基本は5-4-1へ変化するため、シャドウの2人は、サイドハーフの守備の役割をはたす。一方で、自分たちがボールを保持しているときは、中央でプレーする。相手がボールを保持するときは、サイドにポジショニングする。このような移動は、相手に隙を与えてしまうことに繋がるケースが多い。また、トランジション(ボールの移りかわり)で、サイドにいることで、自分の持ち味(中央でのプレーを得意としている場合)が出しにくくなってしまうこともある。さらに、5-4-1では後ろの枚数が多くなってしまうことから、相手陣地からのプレッシングを行いにくいという問題も出てくる。

よって、この試合の浦和レッズのシャドウの守備の役割は、前に残ることが多かった。柏木、興梠を本職のシャドウとするかは疑問の残るところだが、サイドハーフの守備を行わせるよりも、前に残っているほうがメリットがあると計算していたのかもしれない。柏木と興梠が中央にポジショニングすることで、横浜F・マリノスのボール循環をサイドに誘導する。そして、相手のサイドバックを浦和レッズのウイングバック(宇賀神や駒井)、相手のサイドハーフ(マルティノスや齋藤学)を浦和レッズのセンターバック(槙野と森脇)で迎え撃つ設計になっていた。ボールをサイドに誘導するため、ラファエル・シルバも相手のセンターバックにプレッシングをかける場面は少なかった。

浦和レッズに計算間違いがあったとすれば、森脇と齋藤学のマッチアップだろう。最初の失点場面では、駒井が柏木を追い越してプレッシングをかける→齋藤学と森脇のどちらが質的優位を示せるか大会となり、齋藤学に軍配が上がり、バブンスキーのシュートが横浜F・マリノスに先制点をもたらした。齋藤学のドリブル力は異常で、ドリブラーが仕掛けることで相手を何人も引き寄せ、味方に時間とスペースを与えることを何度も行なうことに成功していた。ドリブラーの存在意義は、その格でたくさんの相手を引きつけることだったり。

横浜F・マリノスの撤退守備

先制したこともあって、横浜F・マリノスは4-4-2で自陣に撤退する。バブンスキーと富樫も自陣にポジショニングすることで、浦和レッズにスペースを与えない作戦だった。浦和レッズは、左サイドから中心の攻撃を組み立てていった。浦和レッズのビルドアップ隊の形は、最適解を見つけることができなかったけれども、センターバックの運ぶドリブルを中心に、横浜F・マリノスの2トップ脇から何度もボールを前進させることができていた。しかし、がっつりと下って守る横浜F・マリノスの前に、スペースを見つけられない展開が続く。また、森脇よりも攻撃的なポジショニングを見せる槙野というバランスもあったため、浦和レッズの攻撃は左サイドに偏り、右サイドはほとんど出番がない前半戦となった。守備に奔走するマルティノスに対して、齋藤学が守備で疲弊する場面は少なかったと思う。

横浜F・マリノスの守備で奮闘していたのが1列目のバブンスキーと富樫。懸命にボール保持者にプレッシングをかけつづける。直接的にボールを奪える可能性は少ないのだが、後ろの選手のために献身的に走りまくっていた。富樫はそういった泥仕事ができそうなイメージが強かったが、バブンスキーが守備でも貢献できることは大きい。不安要素があるとすれば、松原と天野か。松原は宇賀神に突破される場面が目立ち、天野はボールにポジショニングが引きづられてしまう傾向が強かった。彼らのレベルアップが先か、相手のスカウティングが先かの勝負となってきそうなポイントとなってくるかもしれない。

青木のダイビングヘッドなど、前半の浦和レッズにチャンスがなかったわけではない。だが、前半は横浜F・マリノスの狙いが炸裂した試合となった。特に浦和レッズが左サイドから攻めてきていることで、齋藤学がカウンターのために前に残れていたことが大きい。カウンターで齋藤学は、チームで同じ絵を描いているようだった。試合を通じて、天野からのパスが目立っていた。槙野と喧嘩していたけど。

柏木陽介を復活させる

ラファエル・シルバが下りてボールを受けることを想像以上にこなしていたこともあって、柏木のプレーエリアはほとんどない状況となった。よって、柏木を復活させるために、柏木のポジションを下げる。そして興梠とラファが前線に残るようになる。天野と喜田は、浦和レッズのシャドウを追い出すような守備をしていたけれど、柏木のポジショニングが後方に下ってしまえば、ついていくわけにはいかなくなる。また、浦和レッズのボールを保持しているときのポジショニングは、良い意味でも悪い意味でも流動的なので、非常に捕まえにくい。よって、柏木がフリーになることで、ボールが右に左に渡るようになっていく。なお、森脇も攻撃参加するようになるので、齋藤学のポジショニングも下っていった。

両サイドにボールが渡るようになったので、両サイドに強い選手を配置する。なお、関根は齋藤学を守備で抑える役割もあった。相手を押し込めるようになって柏木だけでもいけると考えたのだろう。青木の交代は怪我によるものか、たまたま怪我をしたのかは不明。そんな関根のクロスからラファエル・シルバが同点ゴールを決める。そして中央の柏木からの裏への絶妙なパスをラファエル・シルバがあわせて、浦和レッズが一気に逆転に成功する。横浜F・マリノスのセントラルハーフコンビの相手のシャドウを試合から追い出すワークを曖昧にした采配、柏木を下げて、興梠を上げて作戦が機能した瞬間であった。

狙われた浦和レッズの悪癖

浦和レッズは柏木→那須で守備固めの雰囲気が出てくる。横浜F・マリノスは走って死んでの富樫からウーゴ・ヴィエイラが登場する。負けているんだから相手陣地からでも積極的にプレッシングだと変化する横浜F・マリノスの守備に対して、浦和レッズは西川のロングキックで対抗していった。つまり、前からのプレッシングはまらない。また、浦和レッズは2トップに変化したことで、前半とは異なり、相手にボールを持たせないように守備をしていた。そんな状況も相まって、横浜F・マリノスは打つ手が徐々になくなっていく。マルティノスや齋藤学にボールが入れば何かが起きそうだけど、トランジションで彼らにボールが渡る状況でないと、時間とスペースを与えられそうもなかった。

つまり、逆転ゴールを入れてからも浦和レッズのペースが続いた。その試合を成立させたのが飯倉。2失点したことで、評価は低いかもしれない。しかし、チームを救うセーブをした、特に興梠のシュートが決まっていれば試合は終わっていたと思う。そんな飯倉の頑張りが困ったときのセットプレーで報われる。天野のクロスをニアで合わせたウーゴ・ヴィエイラ。同点ゴールが決まり、試合は振り出しに戻る。セットプレーでやられる浦和レッズはちょっと懐かしかった。

そして、浦和レッズが攻勢に出る。試合が動いたのはロスタイム。関根との一対一を制したのは飯倉。そのカウンターでこの試合で何度も繰り返された齋藤学の突破のドリブル。相手をひきつけて中央にボールを送ると、途中交代の前田が決めて、横浜F・マリノスが逆転に成功した。

この試合で何度も繰り返されたのが齋藤学が左サイドからドリブル。相手をひきつける。中央ががら空きだった。バブンスキーの先制点も同じ形であった。ボールを保持しているときにポジショニングを動かす浦和レッズは、守備を整理(ポジショニングバランスを整える)するまでにどうしても時間がかかる。また、誰でもいいからこの位置に戻ろうねという決まりごともない。あっても、たぶん戻ってこない。戻ってこられないというほうが正確かもしれない。浦和レッズの苦悩は続く。

ひとりごと

逆転までは良かった浦和レッズ。一方で前半を無駄にしてしまった印象はある。スタメンの選び方、選手の配置については、反省が必要かもしれない。また、ビルドアップの形にしても、森脇のポジショニングにしても、意図がよくわからない場面があった。その形がチームの利益につながっていないわけではないのだけど、なぜこのタイミングで、3バックなのか、森脇がアラバロールなのか、外にいるのかは、継続して見ないと理解できそうもなさそうだった

浦和レッズの特殊性につきあった格好の横浜F・マリノス。しっかりとつきあえたことは好印象。ただし、トランジションくらいでしかチャンスを作れなかったので、真価は不明。前線の選手は質的優位で勝負できそうだが、後方の選手は質的優位で殴られるので、全員でしっかりと守れないときつそうな印象を受けた。もちろん、全員で守られる選手が揃ってきているので、破綻は少なそうなのだけど、さらされる場面でどうなるかは不安で一杯だ。

コメント

  1. 船乗りH より:

    運もあった勝利でした。
    チーム戦術と連携、特に守備陣の能力はまだまだなのですが、それでも浦和に勝てたポテンシャルは観ていて嬉しいものでした。
    今年は上位を目指して我々サポーターは応援をしたいです。齋藤学は優勝を公言していますがそれはちょっと厳しそうですが(笑)

    • らいかーると より:

      飯倉くんが半端なかったですね。それでも2失点というのがマリノスらしくないうというか。
      千葉時代の阿部がキャプテンをして成長したように、齋藤学にも期待ですね(・∀・)

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