【齋藤学周りで起きていること】横浜F・マリノス対コンサドーレ札幌【クロス爆撃】

マッチレポ2017×Jリーグ

開幕戦で浦和レッズに勝利した横浜F・マリノス。オフのごたごたを払拭するためには、結果を出すしかない。そこで結果が出たことで、色々なことが好転していきそうな予感だ。また、新外国人もカイケの悲劇のようにはならなそうな予感がひしひしと。さりげなく、若返り&ユース出身者が増えてきているのもいい。優勝するか!と言われればぐぬぬとなるが、台風の目くらいにはなりそうである。

開幕戦でベガルタ仙台に敗戦したコンサドーレ札幌。5年ぶりのJ1昇格らしい。J1しか見られない生活だったので、まるで情報がない。横浜F・マリノスで活躍していた兵藤がコンサドーレ札幌にいる。中村俊輔の空けたスペースを埋めるマンとして、中町とジュビロ磐田に移籍するかとおもったが、兵藤は北海道へ、中町は残留と。また、懐かしの河合はベンチにいる。チャンピオンシップのゴールは忘れられない。

コンサドーレ札幌のプレッシング

相手がボールを保持しているときのコンサドーレ札幌のシステムは、5-3-2。5-3-2でプレッシングをするときの注意点は、相手のサイドバックへどのようにプレッシングを与えていくか?となる。ボールを持たせて選択肢をなくさせる、ウイングバック(石井、田中)を前にスライドさせる、インサイドハーフ(キム・ミンテ、兵藤)が気合のスライド、1列目が走って死んでなどなど色々ある。コンサドーレ札幌の選択は、インサイドハーフのスライドだった。横浜F・マリノスのセンターバックには都倉、ジュリーニョをぶつけたかったのだろう。同数のようなプレッシングでボールを奪ってからの速攻!という狙いがあったのかもしれない。

3センターの横スライドでもなかなか大変なのが現状だ。コンサドーレ札幌の場合は、さらに長い距離を斜め前に走っているので、さらに大変となる。兵藤が出ていけば、深井、キム・ミンテが横スライドで対応することが定跡だ。この定跡通りにコンサドーレ札幌は3センターが気合を見せることで、コンサドーレ札幌の守備を支えていた。恐らく、コンサドーレ札幌は基本的にこのようなプランなのだろう。立ち上がりのファウルの連続は、球際の激しさを物語るものだった。横浜F・マリノスはそれを承知で、浦和レッズでは機会の少なかったボールを保持する場面でのチャレンジをしていく。

横浜F・マリノスの前進

 

ボールを保持しているときの横浜F・マリノスのシステムは、4-3-3。天野、バブンスキー、喜田のポジショニングがキーとなった。

喜田はジュリーニョと都倉の間にポジショニングしたり、列を下りて3バックにしたりと、コンサドーレ札幌の1列目のプレッシングを牽制した。11分に中澤のボールを受けた喜田から始まった攻撃は、コンサドーレ札幌のプレッシングへ準備してきたんです!という横浜F・マリノスの攻撃の形だった。

天野とバブンスキーは、インサイドハーフのように振る舞った。コンサドーレ札幌のインサイドハーフ(兵藤、キム・ミンテ)の守備の基準点をずらしにかかる。しかし、兵藤たちは自分たちの役割を遂行する。兵藤が松原たちにプレッシングをかければ、深井、キム・ミンテがスライドしたり、センターバックからのサポートを得ながら、自分たちの型を横浜F・マリノスにぶつける試合となった。

横浜F・マリノスはボールを保持することはできたけれど、相手の撤退守備&人海戦術に対して、結局は捕まってしまう場面が多々見られた。それでも齋藤学とマルティノスがときどき質的優位で相手を殴りそうなのは流石だった。特に齋藤学は面白い。自分が仕掛けることで発生する相手のリアクションを整理できているプレーの判断を感じる。カット・インからのフィニッシュは言うまでもなく、自分が仕掛けますよ!という姿勢を見せることで、どこにスペースができるか、そしてそのスペースを見つけられるバブンスキーがステキだ。

さらに、繰り返される新井&天野の追い越す動きが齋藤学を助けていた。ほとんどボールが来ることのなかった新井のオーバーラップとインナーラップだったが、センターバックや相手のインサイドハーフを齋藤学に集中させない(カバーリングさせない)役割を愚直にこなしていた。新井の飛び出しで時間を得た齋藤学のアシストで先制点が決まり、天野の追い越しからのクロスで3点目が生まれたのはちょっとできすぎだったかもしれないけれど。この関係性は、ファン・ブロンクホルストとロナウジーニョを思い出させる。懐かしのバルセロナ左サイドコンビだ。

前半の横浜F・マリノスは運動量過多になりそうなコンサドーレ札幌のスタミナを削れればいいくらいのポゼッションに見えたが、モンバエルツ監督は満足でなかったらしい。実際に前半の35分過ぎくらいからは、コンサドーレ札幌は5-3-2の撤退をさらに強める。兵藤に前に出てこないでいいよと合図する都倉。1列目が走って運動量の過多を交代してあげたように、コンサドーレ札幌はコンサドーレ札幌で体力を間違いなく削られていた。

コンサドーレ札幌の攻撃というかクロス爆撃

後半が始まると、無双状態の齋藤学がアシストをする。周りのサポートで相手を動かしでできたエリアに飛び出してくるバブンスキーで先制点を決める。その後はカウンターで齋藤学の抜け出しから富樫が決めて、あっさりと2-0になってしまう。横浜F・マリノスの強さは、齋藤学周りで何かが起きることを全員が理解している。そして、さらに齋藤学周りにスペースと時間を作るために左サイドバックと左インサイドハーフが労を惜しまないプレーをしていることが大きい。

前半のコンサドーレ札幌の攻撃は、配置的な優位性を活かしたものだった。横浜F・マリノスは撤退よりもプレッシングを優先して行っていたが、3バックに対していまいちプレッシングがはまらない。同数でプレッシングを仕掛ける場面が見られたが、後方の準備ができていなかった。よって、兵藤がライン間でボールを受けながら攻撃を前進させていく場面が何度も見られる。復讐にもえる兵藤。

コンサドーレ札幌の攻撃はクロスが中心だった。配置的な優位性で得た時間とスペースを利用して利き足を利き足で使うことで、さっさとクロスを入れる。ターゲットは都倉。ハイボールへの強さは尋常でない。さらに、ゴール前に人数をかける意識もしっかりとしているので、なかなか迫力のあるクロス爆撃となった。そんなクロス爆撃からのコーナーキックの回数も11回もあった。ちなみに、横浜F・マリノスは2回。横浜F・マリノスは中澤と飯倉を中心にクロス爆撃に耐え忍んでいたけど、1点くらいは入ってもおかしくなかったかと。

57分に金園登場で5-2-3に変更するコンサドーレ札幌。プランBである。プレッシングの役割も変更になるのだけど、横浜F・マリノスはこのようなことへの対応がまだ上手くない。そういう意味では、プレッシングの枚数の変更は、横浜F・マリノスにとって隙を生み出すものになっていくかと。また、横浜F・マリノスのカウンターで興味深いのが齋藤学。サイドハーフのはずだが、前に残っていることがある。だからといって、誰かが下っているようには見えない。よって、齋藤学の裏のエリアというのは、今後のスカウティングで狙われるポイントになってくるかもしれない。

横浜F・マリノスはウーゴ・ヴィエイラが3点目を決める。クロスに合わせる前に相手を倒したように見えたが、審判はスルーだった。ビデオ判定があったなら、どのようになったのかは興味深い。

コンサドーレ札幌は最後まで諦めずにゴールに迫っていく。特にクロスを大外で合わせるプランは、何度もチャンスに繋がっていた。しかし、火力不足というか、最後に河合が出てきたが、試合はそのままに終了した。また、撤退守備でクロス対応をさせたら、最強の中澤が終了間際になればなるほど存在感を増していくのは本当にさすがだった。

ひとりごと

横浜F・マリノスは2連勝。次節の相手が鹿島アントラーズなので、真価が問われるだろう。ただし、鹿島アントラーズの調子がいいのかは何とも言えないのが切ないところで、そういう意味では横浜F・マリノスにとっては運がいいのかもしれない。そんな巡り合わせも大事だ。

コンサドーレ札幌は、先制できるかが鍵となるか。守りきれるかというと、この試合のように守りきれなそうだ。だからといって、5-4-1で撤退するのもまた違うのだろう。たまたまだけれど、昇格組の試合は全て見た。清水エスパルスがもっともしっかりしている印象を受けている。コンサドーレ札幌とセレッソ大阪の命運やいかに。

コメント

  1. 船乗りH より:

    台風の目でなく優勝候補になれるかは、次の鹿島戦でわかるかな、と思いました。
    勝つのは厳しいでしょうが、この段階で課題が浮き彫りになるようにするためにビビらずに戦ってほしいと思います。

    何にせよ、攻撃の爆発力はJトップレベルかなと思っているのでそこに期待したいです。
    右サイドも左と同じように機能すると面白いのですが…前田は学のような判断力を身に付けていって欲しいです。
    マルティノスはそのままでいいかな(笑)ドリブルしかけるだけで脅威になってくれるので。

    • らいかーると より:

      守ろうと思えば守れそうなんですが、札幌戦もクロス爆撃で危なっかしかったですし、浦和レッズには2得点を許しているので、今季の横浜F・マリノスは守備の評価が実は難しいんですよね。鹿島には厄介な攻撃のタレントが多数なので、横浜F・マリノスらしさでもある守備がどれだけ安定的にできるかが鹿島アントラーズ戦では注目かと思います。僕は見られません!前田くんには期待していますが、ユース上がりのサイドハーフにも期待しています。昨年は試合に出ていたのに!!

  2. カワダ より:

    戦術分析とてもありがたいです。
    試合を観ていて漠然としかわからないものを分析してもらえて理解が深まります。
    マリノスファンですが、とてもためになりありがたいです。
    サッカーをより深く楽しめます。
    また拝読させて頂きます。

    • らいかーると より:

      ご丁寧なコメントをありがとうございます。

      また遊びに来てください!

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