【ピオリのユベントス対策】インテル対ユベントス【ユベントスの4231】

マッチレポ1617×セリエA

7連勝中のインテル。フランク・デ・ブールからピオリ監督になって、もろもろが好転しているようだ。7連勝もすれば、言うまでもなく順位はうなぎのぼり。チャンピオンズ・リーグの出場権を狙える位置までジャンプアップしている。7連勝もすれば、チーム力や勢いに疑いの余地はない。そんな状態でユベントスとの試合というのはなかなか興味深い一戦と言えるだろう。インテルの強さが本物だとして、どれだけの本物なのかをはかる相手として、ユベントスは最適なチームと言える。

チャンピオンズ・リーグを控えるユベントス。コンテ時代から3バックのイメージがとても強い。しかし、前節から4-2-3-1を導入して話題になっている。単純に考えれば、センターバックの代わりに前線の選手を起用していることになる。よって、ディバラ、イグアイン、クアドラード、マンジュキッチを無理なく併用することができている。マンジュキッチだけ本職とは違うポジションといえるが、献身性を代名詞とする選手なので、問題はないだろう。このシステム変更がチャンピオンズ・リーグを見据えたものなのか、ブラフなのかは不明だ。

ユベントスの4-2-3-1の特徴

前線の選手の併用が話題になっているとおり、前線の4枚の強烈さが異常だ。右サイドはクアドラードに時間を与えるために、リヒトシュタイナーが果敢にオーバーラップを繰り返している。クアドラードは得意の突破のドリブルとアーリークロスを連発することで、右サイドを攻撃の起点としていた。特に繰り返されるアーリークロスに飛び込むイグアインとマンジュキッチという構図は、チームで設計された形なのだろう。右で作って、左で得点を決めるのが基本の形といえるかもしれない。

中央に君臨するのは、ディバラだ。相手のライン間でポジショニングする。ポジショニングの幅はかなり自由に設定されている。よって、ビルドアップが苦戦しているようだと、ケディラたちを助けに現れる、列の移動を行なう。サイドに流れて、サイド攻撃に厚みを加えることもできる。チェルシーでアザールが中央のポジションを楽しんでいるように、ディバラの能力をフル活用するためのシステム変更とも言えるかもしれない。

左サイドに君臨するのはマンジュキッチだ。シメオネの弟子でもあり、グアルディオラを絶対に許さないマンとしても有名だ。本職はまごうことなく中央の選手なんだけれども、イグアインと比べれば、サイドに追いやられても仕方がない。イグアインより決定力は劣るかもしれないが、左サイドハーフとしての仕事を普通にこなすことができる。右で作って左でしとめる張本人でありながら、相手のサイドバックとの空中戦やフィジカルのミスマッチを活かした攻撃は脅威だろう。困ったときの空中戦の的としても期待できる。

3バックで相手陣地からのプレッシングがトレンドになりつつある。しかし、リスクがあるといえばある。チェルシーが撤退守備をメインにしているように、3バックの基本は撤退守備だ。撤退守備が基本になると、相手にボールを渡すことになる。だが、4バックシステムを採用することができれば、相手陣地からのプレッシングも行なうことは難しくない。よって、4バックへの変更がユベントスに守備の幅をもたらすことは間違いないだろう。いつだって撤退守備ではなく、4-4-2でアトレチコ・マドリーのようにユベントスが振る舞うことも可能だ、という話だ。

ピオリのユベントス対策

前節から4バックシステムにユベントスがしたと解説者たちは言っていた。繰り返すが、前節からだ。前節からなのに、ユベントス対策をしっかりとしている次点で、インテルの監督の有能さがよくわかる。また、それらをしっかりと実行するインテルの選手たちも凄まじい。派手な選手はイカルディくらいで、地味に頭の良い選手が揃っていたことも、ピオリ監督を助けているのかもしれない。

ユベントスのプレッシング対策⇔配置的な優位性を狙った3バック

この試合のユベントスは、前からのプレッシングをやりたがっている場面が何度かあった。恐らく4バックにすることで可能になったプレッシングを行なう予定だったのだろう。しかし、最初から3バックで構え、2セントラルハーフもビルドアップに参加するインテルの形に、これはデメリットしかないねと判断するようになる。つまり、インテルのビルドアップ隊の枚数の前に、ユベントスはさっさと自陣に撤退に切り替えるようになった。このあたりの割り切りの速さは素晴らしいユベントス。自陣に撤退したユベントスは4-4-2で構えた。

ユベントスの4バック対策⇔センターバックを動かす仕組み

センターバックを動かすためにはサイドバックをどうにかする必要がある。よって、サイドバックをつるために、ウイングバックを利用する。ウイングバックにボールが入れば、ジョアン・マリオたちがサイドバックの裏に走る。また、サイドハーフも邪魔だ。よって、両脇のセンターバックの運ぶドリブルで相手をおびき出す。相手のサイドハーフをおびき出す手段として、2セントラルハーフによるサイドに流れる動きも頻繁に行っていた。

キエッリーニやボヌッチを動かすことには成功していたインテル。しかし、キエッリーニたちに潰される場面が多かった。また、相手を動かしてイカルディへのパスラインを作ることもできていたのだけど、肝心のボール精度に苦労する場面が見られた。それでも、この状況を作って、こうするのだ!という目は揃っていたので、非常に惜しい攻撃が繰り返されていた。

また、相手陣地からのプレッシングを激しく行なうことで、ユベントスはビルドアップで非常に苦労していた。相手陣地でのインテルの守備は、はまるとほぼマンツーになっていたので、プレッシングを回避できれば一気にチャンスになるユベントス。でも、その機会は少ないという試合だった。

マンジュキッチとのミスマッチを回避するためのシステム変更

撤退守備のインテルは、4-4-1-1。普通は5-4-1のようになりそうだが、4バックで対応していた。5バックだと、マンジュキッチの対応はカンドレーヴァになってしまう。ミスマッチになってしまうので、ムリージョがマンジュキッチ番として活躍していた。ムリージョの奮闘がマンジュキッチを試合から消すことに繋がっている。なお、ときどきは5バックのようになっていたが、ムリージョがマンジュキッチはオレが抑えるのだというポジショニングをしているのが、なかなかおもしろかった。邪魔だ、カンドレーヴァ!みたいな。なお、右サイドのクアドラードと中央のディバラを止める仕組みまでは準備できていなかった。よって、クアドラードとディバラがマンジュキッチよりは目立つ形の試合となる。

なお、インテルのほうが自分たちの狙いを出せていたにも関わらず、先制点はユベントスに入る。セットプレーのこぼれ球をクアドラードがズドン。かつてのオリセーを思い出させる強烈なシュートだった。

ピオリとアッレグリの采配を検証しよう

最初に動いたのがピオリだった。動いたと言っても選手交代ではなく、相手陣地からのプレッシングをやめた。その理由はデメリットのほうが大きいと判断したのだろう。ブッフォンを使ってプレッシングを回避してくるユベントスのビルドアップの精度を落とすことには成功したけど、かいくぐられたときのユベントスの攻撃がスピードアップする恐怖は前半に何度も顔を出していた。ならば、少し引いて構えようと。カウンターチャンスも広がるし。ボールを保持しているときは3バックのようで、4バックのまま行っていた。ただし、ダンブロージオはウイングバックのように振る舞うことで、前半の良さを後半にも活かそうとしていた。

このインテルの引いた姿勢に対して、ボール保持を許されたユベントスは、攻勢に出る。ディバラの列の移動、それにともないケディラ、ピヤニッチの攻撃参加、繰り返されるクアドラードとリヒトシュタイナーの右サイドコンビはかなり厄介だった。

そして、選手交代を行なうインテル。ブロゾビッチは怪我のように見えた。クアドラードサイドをより攻撃的にすることで、クアドラードとリヒトシュタイナーに守備をさせる作戦をピオリは決行する。負けているのだから当たり前といえば当たり前だが、なかなかできる策ではない。ペリシッチを逆サイドにおいて守備タスクから少し解放しているのも大きい。インテルにとって、ダンブロージオの高いポジショニングはキーになっていたので、エデルとのコンビに期待したのだろう。なお、ムリージョも攻撃参加していたが、決して本職ではない。でも、なかなか上手だったけど。

 

アッレグリの采配は、クアドラード→マルキージオ。ディバラをサイドに出して、攻めるならカウンターするからと牽制する。牽制しながら、中盤の3センターでディバラが守備で遅れてもどうにかできるようにする。マルキージオは前に出てプレッシングもしていた。守備を固めながらも攻撃のことは忘れない采配だ。ただし、守備の意識が高まったユベントスだったので、インテルが強引な攻撃を何度も繰り返すようになっていく。

このあとの采配は特に意味を持たなかった。インテルはジョアン・マリオ→パラシオを入れて前線の枚数を増やす。インテルは疲労がたまっていそうなリヒトシュタイナー→アウベス。そして、ディバラ→ルガーニで相手のパワープレーに対抗だった。インテル目線からいえば、エリア内での怪しいファウルがユベントスにあったように見えたけど、判定はノー。最後の最後にハンダノビッチを上げた攻撃参加でペリシッチが退場するおまけつきで、スコアは動かず。ユベントスがクアドラードのミドルを守りきった形となった。

ひとりごと

ユベントスの4バックシステムがいまいち機能していないことを差し引いても、普通にユベントスと殴り合うインテルが少し頼もしく見えた。ただでは死なないというか。最期まで結果に抗う姿勢は、インテルらしくないなと。だからこそ、7連勝できたのだろうけど。この流れに長友が乗っているのかどうかは不明だ。この試合では出番がありそうな雰囲気はまるでなかった。

コメント

タイトルとURLをコピーしました