【中島のえぐさ】日本対ウルグアイ【果敢な姿勢をポジティブに変換しきれるかどうか】

森保×日本代表

パナマ戦と比較すると、スタメンをまるっとターンオーバーしてきた森保監督。連続してスタメンの選手は南野と大迫だけだ。この2人の序列が高いことを示しているか、他の海外組に比べてコンディションが良いから2試合連続でスタメンなのかはわからない。誰か森保監督に聞いてきてください。

ウルグアイのスタメンは、おなじみのメンバーがズラリ。ベンタンクールとトレイラのセントラルハーフコンビは素でえぐい。欧州がリーグ戦を始めたことによって、南米のチームも試合相手を探すことに苦労しているのだろうか。欧州組が多い欧州でない国が、欧州で欧州でない国同士で試合をする日が日常になるのか。そういえば、日本は南米で親善試合をしたことってあるのだろうか。

中島翔哉の列を下りる動き

ボール非保持では[4-4-2]対決となったこの試合。パナマ戦と似ていると言えば、似ている配置対決となっている。チームのプレーモデルはキーパーがボールを持ったときに最もわかりやすいと言われている。つまり、キーパーにロングキックを蹴らせるのか、センターバックにボールを渡すのかによって、チームのプレーモデルは明らかにされるということだ。パナマ戦に続いて、日本はセントラルハーフがセンターバックの間に下りてプレーする意思をみせたが、ベンタンクールがついてきた。よって、この動きをしても良いことはあまりないと判断した日本は、ボールを蹴っ飛ばしながら序盤戦を過ごすことを決断する。

「今日の僕たちはこのようなサッカーをしますよ」という日本の自己紹介を観察しようとしたウルグアイ。蹴っ飛ばしてきた日本の振る舞いに対して、お付き合いを選択した。よって、序盤戦はちっとも試合が落ち着かない展開となった。もちろん、両チームのセンターバックはもっとまったりとプレーしたかったのかもしれないが、両チームの攻撃的なプレッシングの前にリスクを背負う必要もない試合だった。また、ロングボールに対して、ボール保持側が局地戦を見つけることもできなかったこともあって、試合の慌ただしさは維持されていった。ゴールキックは長友サイドを狙うウルグアイの嫌らしさもこの時間帯に明らかになっている。

そんな試合を落ち着かせるきっかけになったのが中島だった。列の移動は、相手の守備の基準点を狂わせることができる。そのための、セントラルハーフがセンターバックの間に下りる。しかし、この策への対策はばっちりのウルグアイ。よって、他のポジションの選手が下りて、列の移動による優位性の獲得を狙うことは定跡といえる。この試合では中島がビルドアップの出口というよりは、ポゼッションの逃げ場として、日本の攻撃というよりは、試合全体を落ち着かせる役割となっていった。

日本がボールをほんの少しだけ持てるようになったことと、時間の経過が相まって、ウルグアイはプレッシング開始ラインを下げるように変化していった。よって、徐々にボールを保持できるようになっていく日本。7分間の慌ただしさが解消された試合は、日本の左サイドでの攻防が目立つようになっていく。パナマ戦では右サイドが主戦場だったが、この試合では左サイドを主戦場として選択した森保監督であった。そして、9分には中島のパスから南野が個人技を爆発させて、見事に先制ゴールを決める。中島からのパスコースを広げた大迫の動きも巧みだったが、中島が下りてプレーしてもバランスが壊れないように、それまでも気を使っていた長友と南野のポジショニングが支えたゴールでもあった。

殴り返しにかかるウルグアイ

日本がスコアを動かしたことによって、ウルグアイも試合のテンポをコントロールしようと動き始める。日本の攻撃的なプレッシングは、守備の基準点がはっきりしていると効果を得やすい。守備の基準点をずらされると、少し怪しい雰囲気になる。日本のプレッシングを怪しい雰囲気にするために、ウルグアイのえぐいセントラルハーフコンビは動き始めた。

ウルグアイのセントラルハーフコンビの最初の手は、日本のセントラルハーフからできるだけ離れてプレーすることだった。つまり、日本の1列目のすぐ後ろにポジショニングするようになっていく。どこまで深追いしてきますか?という問いだ。日本のセントラルハーフが深追いしてきたら、ロングボールを蹴っ飛ばして、サイドハーフにセカンドボールを拾わせる作戦に出ていた。

さらに、次の手は、トレイラがゴディンの左手のエリアにポジショニングし、ベンタンクールが1列目の間にポジショニングするであった。左右で非対称の形だが、欧州でも見られる形である。この形の変化に対して、日本はボール保持者をフリーにしてしまう場面が時間の経過とともに増えていった。ただし、22分のベンタンクールが前線の選手に動き出せ!と合図をしていたように、オープンな選手は作れど、前線の選手の動き出しが整理されていないウルグアイとなった。

しかし、相手にボールを渡せば何かが起きてもおかしくないのが世の常である。16分のコーナーキックのセットプレーは東口のファインセーブで防ぐことに成功した日本。しかし、28分のセットプレーは、ファーサイドからの折返しという定跡によって、失点してしまう。日本の立場からすると、スコアの変化によって、自分たちのやるべきことを変化させるか、このままでいいのか?が少し曖昧なように見えた。自分たちの都合と相手の都合と向き合って変化しなければいけない。ただ、時間帯も早かったので、非常に難しいところではある。

前半の残り15分でピッチで起きていたことは、定位置攻撃では両チームともに狙いを持ったプレーができていたことだろう。逆に言えば、定位置守備に両チームともに問題を抱えていた。もちろん、相手によって問題を抱えさせられていた、という面もあるけれど。日本は中島の存在感が抜群。相手も距離をつめることができずに、チームの中心として機能していた。ウルグアイはボールは運べるけれど、シュートまではいけない。よって、セットプレーに期待みたいな。前半のうちに、日本は定位置攻撃からの堂安の踏ん張りから中島のミドルシュートのこぼれ球を大迫が決めて勝ち越しに成功する。

ボールを奪われたときの振る舞い

後半の立ち上がりは、東口のファインセーブで始まる。負けているんやで!!!と言わんばかりのウルグアイの猛攻が続いた。日本の定位置攻撃にもファウルをためらわないプレーで対抗。ウルグアイが本気になった瞬間と言っていいだろう。そんなウルグアイの勢いを消すために、セントラルハーフがビルドアップの出口となろうとする日本。ウルグアイの1列目のプレッシングは曖昧模糊になっていたこともあって、何とか突破口を見つけたかな?という展開に移りつつあった。しかし、56分に三浦のバックパスをカットしてカバーニが同点ゴールを決める。

バックパスを奪われて失点!とは試合前から聞いていたのだが、このようなタイプのバックパスミスだとは思わなかった。バックパスによるミスは、パスの質によるものが多い。この場合は、本来はいないはずの場所にいるカバーニによって、決められている。三浦からしてもバックパスをするときにキーパーは基本的にフリーであると認識していたのだろう。むろん、カバーニの位置を見ていなかったことは指摘されるべきだろうが、同情を集めそうな失点であった。

そんな三浦を救うべく、日本は立て続けにゴールを決める。コーナーキック崩れからの酒井宏樹とのワンツーで堂安律が見せれば、堂安律のシュートのこぼれ球を南野が押し込んで一気に2点差となった。救われた三浦。リードしたこともあって、パナマ戦で見せたように、日本は全員がしっかりとポジションについて守備をする時間が増えていく。しっかり守ってカウンター!というリードしているチームのお手本のような展開の日本。ガンガンいこうぜ!に水を指したのは日本の今後の弱点になりそうな失点場面であった。

積極的に仕掛けます!というプレーは、ポジティブでもネガティブでもある。つまり、チームの仕組みによって、ポジティブな面を全面的に押し出していければ、果敢な姿勢に問題はない。この図は失点場面をなんとなく再現したのだが、そこでボールを失うのか?という場面で、トランジションが発生する。相手のカウンター発生に対して、デュエルに勝てるかどうかで選手としての価値は決まるのだが、この場面では青山を外されてゴールを許されてしまっている。つまり、3列目(ディフェンスラインの前)を防護する選手が1人になってしまうことがたびたびあるのだった。パナマ戦では三竿を外されたら一気にボールを運ばれていたみたいな。この問題を構造で解決するのか、人を入れ替えるのかといろいろな解決策はある。ただ、アジアカップではカウンターを狙ってくるチームが多いので、この問題にどのように着手していくかは注目していても損はなさそうである。

ボールを自陣のゴールに運ばれてしまえば、ウルグアイのようにセットプレーでやられることもある。なので、その機会を制限するようにしたいのだけど、トランジションが発生!即時奪回ができない場合は、一気にゴールまで運ばれる!だと、どこかで痛い目にあいそうな気がしてくる。今後の相手は、日本の前線をマンマーク+カバーリングで対抗してきそうなので、そうなると、青山か柴崎の啓示が必要なのだけど、さらされたトランジションでこのコンビがボールを奪いきれるかというと、なんとも言えない。ただ、後方のセンターバックが耐えきれればどうにかなるけれども。試合は4-3で終了する。

ひとりごと

前線の4枚の速攻、コンビネーションはこのチームの象徴になっていきそうだ。ミシャ式の1トップ+2シャドウに+1したようなコンビネーションはなかなかおもしろかった。その一方で、近い距離の選手によるコンビネーション、狭いエリアでも発揮される高い技術!みたいなお題目も感じた。欧州風に見える森保NIPPONだが、和式にもときどき見えるというか。

また、攻撃は現時点でも高い完成度とバランスが保たれているように感じた。チームが完成してしまった!というよりは、起用された選手の個性と森保監督の描いた絵の相性がはまったというか。選手を見て絵を描いたのか、たまたま一致したのかは不明だ。ミシャらしさを感じることも考えると、たまたまのような気もする。ただ、前線の選手たちは自分たちの役割を好意的に解釈しプレーできていることもあって、好循環になっていると思う。みんな良い人というか、志向が似ていたと言うか、そういう人材を揃えたと言うか、たまたま揃ったというか。この偶然のような出会いを必然として絵を描いている人がいたとすればえぐい。

攻撃の多彩さ(定位置攻撃、カウンター、速攻、セットプレー)とそれぞれのバランスも良い。多少は速攻よりのカウンターに傾いているように見えるけれど。相手によって、全部できます!の方向に舵をとっているのだとすれば、非常にいいことだと思う。この先はボール非保持の局面についてブラッシュアップしていくのだろう。

3バックじゃないんかい!?という意味において、日本の一部を驚かしているだろう森保NIPPONの今後もとても楽しみとなる試合たちであった。

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