【充実したボール保持】日本対パナマ【怪しさの漂うボール非保持】

森保×日本代表

両チームのスタメンはこちら。日本の非ボール保持のシステムは、[4-4-2]。パナマの非ボール保持のシステムも[4-4-2]。つまり、相手の[4-4-2]に対して、どのように抗っていくかが試される試合となった。

日本の可変とパナマの不可変

試合開始の笛がなると、日本はすぐに青山を列を下してプレーさせた。パナマの[4-4-2]は守備の基準点(誰が誰のマークを見るか)がはっきりしているときは、攻撃的なプレッシングを見せていた。パナマのプレッシングに権田を使って回避するよりは、苦し紛れのロングボールを選択することが多かった日本のセンターバックコンビ。よって、2枚のプレッシングに対して3枚で優位性を持つ狙いは、相手の攻撃的なプレッシングを封じる意味でも非常に機能していた。

青山下ろしは、相手の2トップのプレッシングに迷いを与え、ボール保持者の前から相手を取り除くために行われる。よって、相手の2トップがプレッシングに来ないときに、列をおりる必要は殆ど無い。ボールを保持したら、機械的に列を下りる!とパターンにすることは手段と目的がごちゃごちゃになっていると良く言われる。この試合の日本は、青山を下ろす形をパターンとしているようには見えなかった。ときには三竿が下りる。三竿はサイドバックの位置に下りることもあった。また、ときには両者ともに下りないこともあった。相手を見て、自分たちのポジショニングを決めている証拠になるだろう。

パナマに目を移してみると、パナマは可変式を採用しなかった。よって、日本の攻撃的なプレッシングを正面から受け止めることとなった。キーパーを使ったプレッシング回避を行う素振りを見せなかったパナマは、自分たちでボールを動かしてどうこうする!という形はほとんど作ることができていなかった。ただし、身体能力の高さを生かして、優位性のない状況から無理矢理に優位性を見つけていくプレーは、国内ではなかなか経験できないものだったのではないか?と感じさせられた。ただ、どうにもならないほどの差ではなかったので、権田の出番はほとんどないまま時間が過ぎていった。なお、最終的にパナマも3バックでビルドアップをするようになる。

日本の前線4枚の役割

序盤に攻撃の起点として目立っていたのは冨安。そして、冨安のパスコースとして、大外の室屋、ライン間の伊東、中央の南野と、相手の間に味方がポジショニングするように設計されていた。パナマの[4-4-2]でそれぞれの選手に対応しようとすると、どうしても選手を動かす必要が出てくる。よって、その選手が空けたスペースを使う意識が前線の選手たちは共有されていた。ボールを受けに下りる選手と裏に走る選手と逆の動きを繰り返すことで、相手の守備を惑わそう作戦となった。ピンどめによって、ボールを受ける選手がフリーなら良し。相手が迎撃の守備で対抗してくれば、相手が動いたエリアを使えば良しと、自分たちの狙いは非常に整理されていたと思う。

ビルドアップの形でも相手の配置を見て、ポジショニングを判断する!というくだりがあったが、攻撃面でもそれは同じであった。ピンどめする選手は誰でもいいし、裏に抜ける選手も特定の選手でなくて良い。よって、大迫がボールを受けに下がってくる場面もあった。決まり事がしっかりとあるけれど、自分たちで判断する裁量もしっかりと残されているので、選手たちはのびのびとプレーしていたのではないだろうか。ときどき気になったことが三竿である。南野へのパスラインを消すことになりそうなときは、横にどいていた。ちょっともったいない。

時間の経過ともに、パナマの全体のラインが撤退していくと、青山が高い位置でボールを持つようになる。青山の啓示によって、日本は前線の選手が時間とスペースをより得られるようになっていく。ただし、日本の攻撃は良くも悪くも積極的だったこともあって、計算されていないだろうボールの失い方も多かった。速攻、カウンターの場面が多いことは何ら問題ではないのだけど、即時奪回ができないときに、パナマにつけ入るチャンスを与えているようにも見えた。よって、25分過ぎから権田の出番がちょくちょく出てくるようになる。しかし、定まっていないパナマの定位置攻撃に対して、攻撃的なプレッシングを繰り返した結果、ボールを奪ってからのカウンターで南野が先制点を入れることに成功した。

なお、日本の攻撃が右サイドよりになった理由は、チーム全体としての狙いなのか、冨安が上手だったからかはわからない、パナマの攻撃が右サイドからが多かった理由は、ボールを奪ったのが左サイドでサイドチェンジしてからのカウンターが多かったからだろうと感じた。

攻撃的なプレッシングと定位置守備の怪しさ

日本がリードしていることもあって、後半の立ち上がりのパナマはボールを保持して攻撃的な姿勢を見せた。守備の基準点がはっきりした前半戦はボールを繋ぐよりも、トランジションで存在感を見せていたパナマ。後半は、明確な形こそないものの、段差を作って日本の守備の基準点を狂わせる&フィジカルで打開の合わせ技で日本に迫ってきた。日本はボール保持者への絶え間ないプレッシングを継続していくのだけど、DFラインがついてこない場面が散見された。はるかドイツの時代から続く日本の伝統芸と言えるだろう。悲しい伝統芸であることは言うまでもない。

また、前半から繰り返されたパナマのカウンターに対して、日本は前線の4枚の選手の帰陣が遅い。どの位置に誰でもいいから戻ってこい!方式なのか、ちゃんと[4-4]のブロックを作れるように、このポジションの選手は戻ってこい!なのか不明だ。守備の枚数が足りなくても失点をしなかったことは、パナマの稚拙さに助けられている面が大きい。いわゆる、ミスをまるで見逃してくれないでござるの世界の強豪が相手だと、失点なしでしのげるかは微妙な試合内容であった。

この守備の怪しさに拍車をかけていたことが、試合をコントロールするのか、トランジション合戦をするのか?という選択の場面だ。パナマの定位置守備は、前半とほとんど変わりがなかった。よって、日本はボールを保持できれば、試合をコントロールできそうな気配であった。しかし、良くも悪くも積極的な姿勢が、後方にサポートがいない状態でボールを奪われてる状態に繋がり、あっさりと、日本のゴール付近までボールを運ばれてしまう場面が目立っていた。肉を切らせて骨を断つ!のトレーニングだったんです!と言われれば、それまでなのだが、右サイドに偏った攻撃ゆえに、トランジションで三竿のそばに佐々木がいたことは大きかったのではないかと思う。どこまで計算して選手を配置しているかは不明だけど。そんな日本の追加点はボール保持からであった。

森保監督の采配

2-0になったと同時に、2トップを同時に交代する森保監督。その後に伊東が負傷退場。2-0でリードしていることもあって、一気に日本の様相が変化していった。この試合ではボールロストからの相手のカウンター、それに伴う帰陣の不安定さが守備では目立っていた。よって、相手にボールを渡し、しっかりと全員で守備を行うことで、自分たちの守備の穴を防いだのであった。しっかり守ってカウンターで追加点を決めるなど、盤石の試合展開、というか、できすぎた結果のような試合は終了する。伊東の負傷で出場することになった堂安を除くと、交代枠も最少の利用だったので、結果にこだわる姿勢を親善試合でも見せたことは、森保監督にとって大切なことだったのかもしれない。

ひとりごと

ボールを保持しているときの日本のプレーは非常に良かったと思う。ボール保持、カウンター、速攻と多様な攻撃を示すこともできていたし、前線の役割分担、逆の動きでギャップを作る動きもよくできていた。一方でボールを失ったときの振る舞いは非常に怪しさが漂っていた。前線の選手の即時奪回が間に合わないボールの失い方をしたときに、耐えきれるかどうか。その仕組みをどのように作っていくかは非常に興味深い。手っ取り早いのは、アラバロールだけれど、可変式がすぎるので、やはりどこかで3バックを使うようになっていきそうな予感はしている。

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