相手陣地からプレッシングをかけるべきか、それとも撤退すべきか 2021.10.4 プレミアリーグ 第7節 リヴァプール対マンチェスター・シティ

リヴァプールのスタメンは、アリソン、ロバートソン、ファン・ダイク、マティップ、ミルナー、ファビーニョ、ヘンダーソン、ジョーンズ、サラー、マネ、ジョタ。アーノルドが怪我で、代役にミルナー。昨年はファン・ダイクの離脱ですったもんだがあったが、今季は怪我人も少なく覇権を取り戻したい気分だろう。ただ、不動のスタメンたちが年齢を重ねてることも事実なので、耐久性がどうなのかは気になる。ただし、ジョタやジョーンズの台頭もあるわけで、ミナミーノにも頑張ってほしい。

マンチェスター・シティのスタメンは、エデルソン、ルーベン・ディアス、ラ・ポルト、ウォーカー、カンセロ、ロドリ、ベルナルド・シルバ、デ・ブライネ、グリーリッシュ、フォーデン、ジェズス。チェルシー戦よ!再びのメンバーとなっている。考えてみると、チェルシー、リヴァプールと連戦が続くなんて日程くんはどうかしてるぜ!としか言いようがない。

序盤はマティップの運ぶドリブル

マンチェスター・シティのプレッシングの配置は【4-3-1-2】。グリーリッシュがトップ下のような位置でファビーニョを監視していた。前線のフォーデン、ジェズスは大外レーン、相手のサイドバックを背中で消しながらセンターバックへプレッシングする約束事になっているような立ち上がりだった。ボール保持の配置はプレッシングの配置を基本としているが、チェルシー戦との差は、デ・ブライネが右、ベルナルド・シルバが左に位置していることだろう。

マンチェスター・シティのプレッシングに対して、リヴァプールは正面から向き合うつもりはなかった。リヴァプールの日常であるマネやサラーの裏抜けやサポートを用意した状態でのロングボールでの前進の機会を増やしながら、試合を進めていく。ロングボールの結果がマンチェスター・シティに渡ったとしても、プレッシングを発動すれば良いクロップスタイルは今日も健在だった。

序盤で目立っていたのはマティップ。フォーデンが外を消しながらプレッシングに来ることを考慮して、中に運ぶドリブルを実行。外への警戒が緩んだら外を使うと、相手と駆け引きをしながら序盤のキーマンとなった。5分のジョタに縦パスを通した場面は秀逸だった。

相手のビルドアップに対して、マンマーク気味に対応するチームが増えてきた理由は、センターバックがボールを運べるようになってきたからだ。ボール保持者に対して、特に横のパスコースの選択肢を消しながらプレッシングをかけることはよくあることだろう。しかし、横からプレッシングをかけると、縦に運ばれる。だから、相手のセンターバックの正面に立つ。パスコースを消すよりも、センターバックに集中する。むしろ、パスはOK。運ばせないみたいな。

リヴァプールのプレッシングの配置は【4-3-3】。元祖・ウイングの選手が外を切りながらプレッシングスタイルも健在だった。ただし、空を使われると、背中で相手を消しても意味がない。ゆえに、サイドのサポートにインサイドハーフやサイドバックが飛んでくる仕組みになっている。相手のアンカーに対して、トップの選手(グリーリッシュ)を当てるか、アンカーの選手(ファビーニョ)を当てるかの差は90分後にどのように変化していくかは非常に興味深い。

なお、この試合のマンチェスター・シティは偽サイドバックは行わずに、ノーマルな【4-3-3】を継続している。元祖・ウイングの選手が外をきりながらプレッシングスタイルの泣き所に選手を配置するためだろう。わずかかもしれないが、時間と空間を得られる、相手のプレッシングが届きにくい位置に選手を配置するグアルディオラはにくい。

10分過ぎから両チームともに、クリーンな形で相手がボールを保持しているときのプレッシング開始ラインをハーフラインに下げる。よって、ボール保持対決になっていきそうな展開へ。撤退したときのマンチェスター・シティの配置は【4-5-1】だった。リヴァプールにボールを持たせるときは撤退で対応と徹底している印象を受けた。

17分、リヴァプールのプレッシングは相手のボールを外に誘導している節はあるが、できれば中央に入れてほしいのか。ただ、ファビーニョがロドリ警戒を強めれば強めるほどに中央にはボールが入らない。ゆえに、サイドに浮き球やサイドチェンジでボールを展開するマンチェスター・シティ。そしてサイドから前進できてしまうので、外に誘導する意味はあるのかないのか。恒例になっている多角形プレッシングの問題が徐々に顕在化してくる状態になっていった。

マティップ対策で【4-4-2】へ変化するシティ

マティップにボールを運ばれまくったことを受けて、マンチェスター・シティのプレッシングは同数な雰囲気が漂い始める。ベルナルド・シルバ、デ・ブライネも前に出てくるようになり、リヴァプールはロングボールを選択することが増えていった。20分にベルナルド・シルバの個人技から決定機。なお、このプレーの後くらいからデ・ブライネとベルナルド・シルバがポジションを変更している。

35分過ぎからデ・ブライネを前に出して【4-4-2】へ変更した。つまり、相手のセンターバックに対して、正面にたつことを優先してボールを運ばせないように変えてきた。ファン・ダイクにボールを持たせない意図に関しては、なんとも言えない。マティップが機能しなければ、トラップ・ディフェンスといえそうだが、この修正を見る限り、特に意識していなかった可能性が高い。

ほぼ同時にリヴァプールがプレッシングを迷い始める。センターバック、特にラ・ポルトを起点とするアンカー脇を強襲される場面が増えていく。何度も何度も。前から行けばサイドにボールを逃され、自陣に構えると、自由なセンターバックからライン間を狙われる古典的な展開へ。よって、時間が経てば経つほどに、マンチェスター・シティがボール保持、非保持の両局面で試合の主導権を取り戻し、アリソンに迫っていく展開が増えていった。

【4-4-2】に修正してセンターバックの前に立つことを優先したマンチェスター・シティ。リヴァプールの3トップは相手の2バックに対して複雑なタスクになっていた。サラーが行けば、相手のサイドバックが空いてしまう。でも、一人で二度追いをしたり、後方から迎撃で出てきたりすれば、プレッシングの速さで解決できるだろう。しかし、その強度をどれだけ維持できるか?が鍵となってくる。ハーフタイムを挟んでプレッシングの強度がましましになるあたりは流石。撤退してもろくなことにならないと判断したのだろう。

ベルナルド・シルバが左で、デ・ブライネが右な理由の考察

チェルシー戦ではベルナルド・シルバが右で、デ・ブライネが左。ゲームメイカーを右サイドはベルナルド・シルバ、左サイドはカンセロが担っていた。その形を継続するか?と眺めていたが、スタートはベルナルド・シルバが左、デ・ブライネが右だった。前半に流れで位置を交換することもあったが、気がつけば元通りになっていたので、こだわりポイントがあったのだろう。

リヴァプールのスタメンを眺めると、ヘンダーソンが厄介な役割を担っている。アーノルドはいないが、サラーを中央に送るために大外レーンを疾走するヘンダーソンはリヴァプールの名物だ。なお、当たり前だが、内側レーンを疾走することもある。この試合ではミルナーが右サイドバックだったこともあって、サラーの周りには走る選手がたくさんいる状況となった。

チェルシー戦で見せたように、ベルナルド・シルバは守備でもえぐい運動量を見せる。ジョーンズに比べれば、プレーエリアが広そうなヘンダーソンとのマッチアップを考えると、デ・ブライネでは対応できるか不安で一杯だ。しかし、ベルナルド・シルバだったら、走りに走ってくれるだろう。

また、ボールを保持する局面を考えても、ヘンダーソンのプレッシングは強度ましましだ。しかし、カンセロとベルナルド・シルバなら、かつてのウィルシャーのように、個人の力でプレッシングを回避することもできるだろう。

さらに、この試合のマンチェスター・シティのボール保持は、グリーリッシュのゼロトップが機能しているかどうは不透明だった。恐らくゼロトップのタスクを捨ててからのほうがグリーリッシュは彼らしさを出せていただろう。目立っていた形は、ウイングとインサイドハーフのコンビネーション、シンプルな裏抜けだ。カットインしてどうこうよりも、裏に抜け出して順足によるクロスを狙う場面が多かったマンチェスター・シティ。なので、左サイドにフォーデンとベルナルド・シルバ、右サイドにデ・ブライネとジェズスを並べたのだろう。

プレッシングスタイルゆえに生まれる失点

【4-4-2】への変更によって、マティップにボールを運ばれる機会を減らすことに成功したマンチェスター・シティ。後半にリヴァプールがプレッシングの強度を上げてきたことに対抗して、デ・ブライネも走りに走るスタイルに引っ張られていった。なお、ファン・ダイクたちのロングボールを根性でエデルソンにバックパスをするウォーカーは隠れた好プレーを連発していた。前に跳ね返すと、リヴァプールのプレッシングの餌食になる計算になっているからだ。

そんなデ・ブライネのプレッシングから始まった攻撃で、58分にリヴァプールが先制。根性でつないだリヴァプール。カンセロを綺麗に突破したサラーのスルーパスをマネが決めて先制となった。デ・ブライネのプレッシングで相手を追い込んで奪いにいったところをファビーニョが華麗にワンタッチでサラーにつけたところから攻撃が加速することとなった。

65分が過ぎると、リヴァプールのプレッシングの強度が下がる。フリーなロドリにボールが入ってなんでやねん!みたいに怒るヘンダーソンが良い。そしてグリーリッシュ→スターリングがブーイングの中で登場。67分にジョタ→フィルミーノ。

フィルミーノの登場ともに、前からプレッシングだ!発動。エデルソンまでプレッシングをかけるが、空を使われてカンセロにボールを届けられてしまう。カンセロから順々に剥がされていき、ジェズスのカットインから最後はフォーデンが決める。この2つのゴールは相手の前からのプレッシングによって始まった攻撃だったことが象徴的だった。ただし、リヴァプールの繋ぎは少し無理があったけれど。

リヴァプールの勝ち越しゴールはジョーンズのポジショニングから。左のインサイドハーフのジョーンズが右サイドに現れる。マティップがフリーなことを確認すると、バックステップで相手のライン間に移動。突然に現れたことでシティからすれば、守備の基準点が定まらなかった。そして、ヘンダーソンが前に位置することで、サラーをフリーにしているのがにくい。そしてボールがサラーに届くと、個人技が炸裂する。

マンチェスター・シティの同点ゴールは、マンチェスター・シティの一点目と似たような形から生まれている。サラーのミスによって得たスローインを奪いに行くリヴァプールだが、あっさりと左サイドでプレッシングを回避されてしまう。そして、またしても空いてしまった1.2列目の間。簡単にデ・ブライネサイドにボールを運ばれて今度は早めにサイドチェンジ。そしてそのクロスを最後はデ・ブライネが決める。マンチェスター・シティのゴールは2点ともに似たようなルートをたどっていることが面白かった。リヴァプールの泣き所なのかもしれない。

そして試合はそのまま終了。前半の決定機を決めきれなかったことで、リヴァプールに反撃の機会を与えてしまったかのような試合となった。

ひとりごと

リヴァプールは自分たちらしさの維持、プレッシングを相手陣地から行うことで、後半に流れを取り戻した。しかし、その強度、連動性の低下によって、相手にスペースを与え、失点に繋がってしまったこともまた事実だった。だからといって、自陣に撤退すれば、ラ・ポルトにボールを前進させられてしまう前半のリピートになってしまう。難しい自分らしさとの戦い。

マンチェスター・シティは、ノーマルな配置でチェルシーとリヴァプールと自分たちらしく戦えることを証明した。リヴァプールは速攻を得意としていることもあって、チェルシー戦ほどに高い位置からのプレッシングを行うことはなかったが、【4-4-2】に変更してからは、さらに流れを掴んでいたように見えた。ただし、マンチェスター・シティはシティで、撤退した状態からジョーンズのポジショニングをきっかけに破壊されてしまったこともまた事実。

両チームともにボール非保持の振る舞いでどれだけの完成度を見せられるかが覇権争いの鍵になっていきそうだ。普段は露見しない問題かもしれないけどね。

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