最後のシ者ことシャビの実力とは 2021.11.23 チャンピオンズ・リーグ第五節 バルセロナ対ベンフィカ

2021/22欧州サッカー

バルセロナのスタメンは、テア・シュテーゲン、ピケ、ラングレ、ジョルディ・アルバ、アラウホ、ブスケツ、デ・ヨング、ニコ、ガビ、ユスフ・デミル、メンフィス。監督がシャビになってから2試合目。優秀な監督はピッチの景色をすぐに一変させられる説を唱えている吾輩なので、シャビがどっちなのかは気になる。ただし、選手層を考えても、あのころのグアルディオラとは与えられた前提条件が違いすぎるような。

ベンフィカのスタメンは、ヴラホディーモス、ヴェルトンゲン、オタメンディ、アンドレ・アルメイダ、ヴァイグル、ジョアン・マリオ、グリマルド、ジウベルト、エヴェルトン、ラファ・シルバ、ヤレムチェク。監督のジョルジュ・ジェズスが有名。なぜに有名なのかは知らないところがやるせない。そして、オタメンディ、ヴェルトンゲン、ヴァイグル、ジョアン・マリオと懐かしい面子が揃っているところがにくい。

なお、カンプ・ノウは大雨だった。

ガビ、ニコ、フレンキー・デ・ヨングが旅をする

【433】を代名詞とするバルセロナだが、この試合では【352】で試合に挑んだ。解説者曰く、ボールを保持することを基本としているベンフィカに対して、配置を噛み合わせることを選択したシャビ。その狙いは見事に機能し、前半を振り返ると、ベンフィカが能動的にボールを動かせていた場面は数えるほどしかなかった。

明確な守備の基準点を与えられたバルセロナの面々はボールを奪い切る強い意志を見せる。そして、ベンフィカの前線の選手とのタイマン勝負を挑むことになったピケを中心とするバルセロナの守備陣は素早い出足と予測でベンフィカの前線の存在感を消すことに成功していた。特にアラウホの強さは異常だった。

バルセロナのプレッシングを見ていると、相手の3バックには2トップをぶつけている。2トップには速さが求められ、相手がゆっくりとボールを保持することを許さなかった。数的優位を利用してボールを運ぼうとすれば、中盤からプレッシングのサポートが素早く出てくることから、配置の優位性をプレッシングの速さに寄って時間を消すことでどうにかする!というシャビの計算もまたうまくはまっていたと言っていいだろう。

バルセロナと言えば、ボール保持による守備だ。ボールを保持することで、相手の攻撃機会を削る意図は世界中で流行することとなった。しかし、ビルドアップの作法が世界中で流行したことによって、相手からボールを奪うことが難しい時代になってきている。そのためにシャビは配置を噛み合わせたのだろう。むろん、各々にわかりやすいデュエルを強いることで、サッカーの原始的な部分をバルセロナの選手たちに思い起こしてもらう意図もあるかもしれない。

相手からボールを奪う策の二段構えとして、プレッシングのスピード強化によって相手陣地でも時間を奪うこと、そしてボールを運ばれたとしても配置を噛み合わせることで、相手から時間とスペースを奪うことを志向するシャビはなかなかの曲者かもしれない。そして、ボールを奪ったら、自分たちがボールを保持する機会を増やしていく第三の策によって、バルセロナを取り戻そうとしている。

配置が噛み合っていることで、バルセロナもベンフィカのプレッシングをまともにくらう形となった。しかし、織り込み済みのバルセロナの面々は、テア・シュテーゲンを利用してプレッシングを回避していく。11対10の局面を意図的に作ることで、相手にプレッシングにいってもボールを奪えないと感じさせればボールを保持することは達成したも同然だ。テア・シュテーゲンは長短のパスを織り交ぜながら、ビルドアップに貢献していくことで、バルセロナのボール保持を支えていく。

バルセロナのボール保持の配置は【31411】のような形に見えた。5レーンを意識しているよりは、ガビが左ハーフスペースに位置することで、フレンキー・デ・ヨングとレーンを敢えて重ねているように見えた。隣り合うポジションはレーンを重ねてはいけないルールはもう時代遅れになっている。相手にバグを叩きつけるために、自分たちにバグを仕込むことは定跡だ。

ブスケツ、ニコ、フレンキー・デ・ヨングで構成されるいつものアンカー+インサイドハーフにガビが左ハーフスペースに陣取ることで、配置のかみ合わせを狂わせることに成功していた。もともと、ベンフィカのプレッシングの配置は【523気味の541】だったこともあって、ジョアン・マリオとヴァイグルは数的不利に陥る場面が多く見られた。また、フレンキー・デ・ヨングがゴール前に飛び出していけることもあって、ガビと役割を交換することも相手にとっては混乱を助長することとなっていた。

序盤戦はガビ、ジョルディ・アルバ、フレンキー・デ・ヨングの密集によるコンビネーションアタックが左サイドの狙いだったとすれば、右サイドはユスフ・デミルによるカットインからのズドン。メッシを彷彿とさせるプレーをするユスフ・デミルだった。ゴールの枠にぶつけた場面がもしもゴールに決まっていれば、一気にメジャーデビューとなっていただろう。

大雨の中でもぶれないバルセロナは、前半の途中からニコがガビのように振る舞い始める。つまり、【31411から325】へ変化する場面が見られた。フレンキー・デ・ヨングがセントラルハーフでもプレーできることから可能な変化だった。5レーンをフリーマンで壊す序盤戦から、5レーンを意識したサッカーに姿を変えながら迫っていくバルセロナは、戦術でできる限界にチャレンジしているようにすら感じる。

この変化を可能になっている理由は、ガビ、ニコ、フレンキー・デ・ヨングが相手のブロックの中でも外でもプレーすることができるからだろう。彼らは状況が必要とする場所にすんなりと移動することができる。ビルドアップのサポートが必要ならボールに近づきボールを動かし続ける。サポートの必要がないならバックステップで相手のブロックの外へ移動していく。この2つの役割を旅できる選手が多ければ多いほど、チームのできることは増えていくだろう。

前半を振り返ると、ベンフィカはセットプレーでチャンスを掴むことが精一杯で、バルセロナは流れの中からベンフィカのゴールに迫ることが多かった。この流れがシャビが取り戻したいバルセロナの試合内容のようにすでになっていることが恐ろしい。

フレンキー・デ・ヨングの強襲

後半は【325】で試合に臨んだバルセロナ。ベンフィカもプレッシングよ!もう一度!!を合言葉に後半に臨んできたこともあって正面衝突となった。【325】のバルセロナは配置が均等になっているのだけど、フレンキー・デ・ヨングが左サイドに寄っていくと人員の動員に成功していた。ロティーナ×セレッソも得意としてきたけど、センターバックがロングボールを蹴るときにひし形の奥にもうひとりを配置するだけでマイボールになる確率が跳ね上がる気がしている。

つまり、【325】だろうが【31411】だろうが、左サイドの密集と右サイドのアイソの関係性が変わらないとすれば、フォーメーションは電話番号理論も納得のできるところだ。なお、配置が変わってもチームとしてやるべきことが現象として変わらないことはなかなかできることではない。

ただし、ベンフィカも5バックで構えているので、バルセロナはシュートまで行くのに四苦八苦していく。さらに、後半は【541】で構えることの多くなったベンフィカに対して、質的優位が欲しくなってくるときにデンベレが登場する。質的優位マシーンのデンベレは右サイドからドリブルで違いを見せる。ときには暴走することもあるが、明らかな格の違いを見せつけたデンベレはフレンキー・デ・ヨングに決定機をプレゼントしていた。

ブスケツの横を基本的な位置としているフレンキー・デ・ヨングだが、運動量が尋常ではない。ボールを持って前に飛び出していく選手のイメージがあったが、今ではボールがなくてもゴール前に迫っていく雰囲気になっていた。カンセロが+1になれたように、5レーンに+1をどのようにもたらすかで監督の腕の見せどころ時代となっている。バルセロナではフレンキー・デ・ヨングがその役割を担っているようだった。

ベンフィカは選手交代によって、デンベレ対策を遂行していく。それでも縦突破もできてしまうデンベレだったが、内側に移動したり、カットインをしたりと自由な雰囲気を醸し出していって、チームとしての役割から離れていった。ただし、大外レーンにはニコが流れるなど、補完関係は流石だったけれど。

バルセロナはあの手この手でゴールに迫るけれど、ゴールを誰が決めるねん問題でしばらくは苦戦しそうな雰囲気だった。しかし、シャビは下部組織の哲学を利用しながら、バルセロナを取り戻しくて行くことは間違いなさそうなだった。ただし、結果が出なかったときに周りがどのような反応になるのかは不明だけど。

ひとりごと

昔は列の移動、細かく言えば、ライン間、ライン上などがメインだったけど、最近は役割を旅できるかどうかも重視される時代になってきている。狭いエリアでプレーできるかどうか、相手を背負えるかどうかと、後方で相手をひきつけて味方に時間とスペースを配れるか。時間とスペースを得るための手段を持っているかどうかみたいな。ファティやペドリが帰ってきたときにどのようなメンバーが並ぶかは楽しみだ。

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