ユベントスのスタメンは、シュチェスニー、デ・リフト、ボヌッチ、ダニーロ、アレックス・サンドロ、ロカテッリ、ベンタンクール、クアドラード、ラビオ、ベルナルデスキ、キエーザ。モラタとディバラは怪我をしたらしい。なお、リーグ戦は不調。アッレグリ監督よ!もう一度!!の行方はどうなるか興味津々だ。
チェルシーのスタメンは、メンディ、リュディガー、チアゴ・シウバ、クリステンセン、アスピリクエタ、コバチッチ、ジョルジーニョ、マルコス・アロンソ、カイ、ツィエク、ルカク。カンテがコロナ、マウント、プリシッチ、ジェームスなどは怪我で欠場。マンチェスター・シティに敗戦したことで、ちょっとだけ暗雲漂いそうなチェルシー。チャンピオンチームは負けるだけでニュースになるのだから流石だ。
最初は【4-1-4-1】
チェルシーの【3-2-5】を止めるために、多くの強豪が【5バック】を導入してきた昨年のチャンピオンズ・リーグ。そんな背景を踏まえると、アッレグリの打ち手が個人的に注目だった。
その答えであるユベントスのボール非保持は【4-1-4-1】。ただし、左のキエーザはクリステンセンを捕まえて、右のクアドラードはマルコス・アロンソを捕まえる場面が目立っていた。トラップ・ディフェンスな雰囲気もあったが、断言できるほどの自信はない。その理由は【4-1-4-1】がさっさと終了してしまったためだ。試合を通じて感じたことはクリステンセンにはフリーでボールを持たしたくないけど、リュディガーはしょうがない。誰にフリーでボールをもたせるかを選べるならリュディガーという雰囲気は試合を通じて感じることができた。
シティ戦と比較すると、ボールを保持するプランのチェルシー。シティほどのプレッシングの圧力をユヴェントスが見せていないこともあって、ボールを保持しながら試合を進めていくことに成功する。ただし、まったりとしていると選択肢がどんどん減っていくこともあって、展開は早い。特にジョルジーニョ、コバチッチのコンビには相手のインサイドハーフが基準点を置いていることもあって、外からのボール循環が中心となっていった。
ユヴェントスのボール保持を眺めていると、シュチェスニーは繋ぐ気満々。しかし、シティを彷彿とさせるプレッシングでチェルシーは対抗。誰が無理をするのかと見ているが、チェルシーの強度にタジタジであった。それでもシンプルにシュチェスニーが蹴っ飛ばす場面はほとんどなかった。モラタたちがいないこともあって、シンプルな空中戦では分が悪いと考えたのだろう。相手を自陣に引き寄せてからの裏にキエーザプランは、チェルシーを苦しめることになっていく。
次に【4-4-2】
15分過ぎになると、ユヴェントスがボールを保持できなかったこともあって、チェルシーが相手を押し込んで試合を展開するようになっていく。しかし、ユヴェントスも押し込まれたときはキエーザを前に残して442の気配を見せていく。カウンターで刺す可能性を少しでも残すというか。キエーザはジョルジーニョとデートな雰囲気になっていった。正確に言うならば、キエーザかベルナルデスキのどちらかはジョルジーニョをマンマークで抑える約束事になっていたのだろう。その約束事が曖昧になると、ベンタンクールがすぐに指示をしていた。
ユヴェントスの狙いとしては【4-4-2】で中央圧縮。外にボールを誘導させて出たらスライド。二列目はとにかくペナ幅を維持。ルカクにも一対一で対応。そしてカウンターで対抗する。イメージとしては、大外レーンはサイドバックに任せるシメオネ式【4-4-2】に酷似していた。【4-1-4-1】のときにいわゆる存在しないはずのアンカー脇を使われる場面が多かったこともあり、クアドラードとラビオのSHコンビに内側レーンを担当させる狙いがあったように感じた。そして、放置したくないジョルジーニョとコバチッチには2トップをぶつける。
ユヴェントスの【4-4-2】によって、時間と空間を与えられるのはチェルシーのセンターバックになる。そして彼らが何気なしに近くの味方にボールを預けると、ユヴェントスはプレッシングスタート。結果として、十分にカウンターに勝機を見出せそうな時間を過ごしていくこととなった。チェルシーは油断をすると、プレッシングの網に引っかかる嫌な時間帯となる。
そして【5-3-1-1】
20分になると、右サイドはクアドラードがマルコス・アロンソとデートをするようになる。しかし、ラビオは下がらない。つまり、【5-3-2】に変更するユヴェントス。まだ前半20分である。相手に決定機を与えたわけではないのだけど、ボール非保持の配置を変えまくるアッレグリ。【5-3-2】への変更の理由はツィエクとカイ・シュバルツを明確に捕まえることを優先しているようだった。実際にダニーロがツィエク、デリフトがカイ・シュバルツを捕まえることによって、チェルシーのボール保持は分断されていく。
さらに、ベルナルデスキはジョルジーニョ番。コバチッチ周りは3センターで担当すれば良い。余ったキエーザは相手の裏を狙おう作戦に切り替えていく。恐らく訪れていたカウンター機会や今日のチェルシーに対しては【5-3-1-1】でも行けると感じたのだろう。こうして、相手との噛み合い、そして実際のピッチの状況を観察しながら20分で結論をだしたアッレグリ。キエーザを前に残してひたすらにウイングバックの裏に走らせていた。
ユヴェントスのプレッシングは秀逸だった。あのエリアまでは追いかけない、このエリアまで来たらプレッシングに出るが意思統一されており、さらに、このエリアに選手という判断基準も存在する。例えば、コバチッチやジョルジーニョだったら早めにプレッシングに出ていく。クリステンセンやリュディガーだったら、ゆっくりスライドで問題ないと。そして動的な要素であるカイシュバルツたちはマンマークで捕まえつつも、持ち場を離れすぎたらついていかない判断も秀逸だった。人とエリアによる基準が明確に設定されていてちょっと恐ろしかった。
チェルシーに泣き所があるとすれば、ルカク周りだろう。ルカクは2トップだと動的になりレーンを横断することも頻繁にある。しかし、3トップだと中央から動かない。動けないのかもしれない。しかし、相手は百戦錬磨のボヌッチだった。また、チェルシーの大外レーン担当者に質的優位はあまりない。だからこそ、ヴェルナーとマルコス・アロンソのレーンチェンジは最高だったのだけど、この試合ではほとんどそんな場面も見られなかった。クアドラードを嫌がったマルコス・アロンソが中に移動しても外には誰もいないやるせない配置になっていた。
イエローカードを貰ったマルコス・アロンソを下げてチルウェルが後半から登場。後半にキックオフからユヴェントスが先制。アスピリクエタにラビオをぶつける空中戦の優位からベルナルデスキのスルーパスをキエーザが豪快に決める。ゴールキックでも仕込みを見せていたユヴェントスだが、キックオフでも仕込みがあったようだ。ユヴェントスの先制点によって試合が大きく動く、なんてことはまるでなかった。展開は前半と全く代わらず。クリステンセンやリュディガーが上がってきても、ゆっくりとスライドで休憩されてしまう状況は続いた。
対して、チェルシーは【3-1-4-2】
60分にハドソン・オドイが右サイド、ロフタスチークがインサイドハーフ、チャルマーアンカーに登場する。プレミアリーグでは見られない怒りの三枚替えだ。【3-1-4-2】に変更するチェルシー。シティ戦と前半と同じ配置だ。プレッシングがどうなるかと様子を見ようとすると、ゴールキックからいきなり外され、相手に決定機を与えてしまう。
しかし、カイ・シュバルツが自由を謳歌するようになり、様々なエリアに出没するようになる。そして、ジョルジーニョ、コバチッチよりも、ロフタスチークは相手の陣地やブロックの中に入っていくプレーをすることで、チェルシーのボール保持の配置がゆっくりと動的なものになっていく。また、マンマークの要素もあったユヴェントスの約束事であったが、相手の配置変更によりゾーンで対応する場面を余儀なくされることとなったが、別に問題には見えなかった。
ただし、コバチッチ、ロフタスチーク、カイシュバルツにかきまわされるようになり、段々とユヴェントスの3センターの負荷が強くなっていった。なお、リュディガー、クリステンセンもかなり高い位置を取るようになっていて、3センターを最初に狙い撃ちにしながら、相手の約束事を乱す狙いがある采配だったのかもしれない。さらに、右サイドで質的優位をもたらせるハドソン・オドイによって試合の流れを引き寄せようと考えたのだろう。
ユヴェントスの手はマーカーを失ったベルナルデスキを下げてクルゼフスキ。段々とキエーザも守備に参加するようになり、【5-3-2】になっていく。3センターのヘルプの意味合いもあったのだろう。
75分にクリステンセン→バークリー。この采配が面白かった。チャルマーがクリステンセンの位置に入る。この采配の妙は、相手との噛み合わせによって時間とスペースをもらえる位置に誰を配置するか問題への着手となる。この位置にチャルマーが飛び出してくることの意味は大きい。ただし、この位置にマンチェスター・シティだったら、デ・ブライネがいることを考慮するとまだ足りない。チャルマーはデ・ブライネが得意とするエリアからのクロスを試みていたが、決定機にはならなかった。
3センターの負荷によって、ラビオ→マケニー、キエーザ→キーンで強度の維持を図るユヴェントス。ベンタンクールをチャルマーサイドに持ってきて、元気なマケニーを元気なバークリーに当てる采配も見事だった。
最後に【5-4-1】
チェルシーもクロスからのヘディングやとうとうルカクがボールを受けてシュートを打つ場面が80分から見えてくるが、枠に飛ばない。最後まで身体をはるユヴェントスの面々は当たり前かもしれないけれどさすがだった。特にシュートを打たれそうになると、3人くらいシュートコースに飛び込んでくるのだからえぐい。
そして、最後に登場するラスボスはキエッリーニだ。クアドラードをサイドハーフに戻して、鉄壁な守備網を完成させる。ゴールに迫りに迫っていくチェルシーだったが、残念そこはキエッリーニな場面も作ったユヴェントスが見事なボール非保持と配置の変換によって、チェルシーの撃破に成功した。
ひとりごと
ルカクがいるからといって、昨年の方法論を変える必要はないと思うのだが、ルカクに合わせる部分もあるのだろう。そのあたりのジレンマがこの2試合に出ていたように思える。マウントのほうがもっと列を降りるプレーをすることで、相手の約束事を混乱させることができそうなので、あれはチームの約束事なのか、マウントの個性によるものなのかは、ルカクとの共演をみないとわからない。ただ、静的な【3-2-5】だと、チェルシーは大外レーンが機能しない傾向にある。また、5レーンをサポートする、この試合でいうと、後半のチャルマーの攻撃参加のエリアに誰を置くかも大事になってきそうだ。
ユヴェントスは見事だった。スタッツを見ると、薄氷を踏むような試合に思えるが、この試合は完勝と言っても良いくらいにボール非保持で試合をコントロールしていた。さすがはカルチョの国。
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