周りの色に馴染んでいくカメレオン 2021.11.29 リーガ・エスパニョーラ 第15節 レアル・マドリー対セビージャ

2021/22欧州サッカー

レアル・マドリーのスタメンは、クルトワ、アラバ、エデル・ミリトン、マンディ、カルバハル、カゼミーロ、クロース、モドリッチ、ヴィニシウス、ベンゼマ、アセンシオ。日本で流行している時を戻そうキャンペーンに参加したレアル・マドリー。しかし、アンチェロッティは流石だった。時が戻ったかは定かではないが、結果を見れば順風満帆な雰囲気である。

セビージャのスタメンは、ボノ、ジエゴ・カルロス、クンデ、モンティエル、アクーニャ、フェルナンド、ラキティッチ、ジョルダン、オカンポス、パブ・ゴメス、ラファ・ミル。チャンピオンズリーグも生き残ったセビージャ。気がつけば、レアル・マドリー、バルセロナ、アトレチコ・マドリーの次に位置するチームとして君臨し続けている気がしている。どこかでハズレを引いてもおかしくないが、フロントが鬼なのだろう。

阿吽の呼吸

レアル・マドリーがエンジン全開のプレッシングによって、セビージャに襲いかかる様相で試合がスタートした。クリスチャーノ・ロナウドがいたころのレアル・マドリーはプレッシングに難がある状態だったが、時が経ち、問題は解決されたのかもしれない。思い出してみれば、ラファエル・ベニテス時代に守備固めのために残り時間が少なくなると、自分の居場所を守れるウイングが登場していたことを思い出すと、時の流れを感じる場面だった。

アセンシオ、ヴィニシウスともに、先頭を走るベンゼマに連動するプレッシングを見せていた。現在のサッカーでは相手陣地からプレッシングに行くときはほぼマンツーで【8対7】を作ることが定跡になりつつある。レアル・マドリーはそこまでのリスクを冒すよりは、前線の選手のスピードで相手の時間を奪うことを優先しているように見えた。よって、セビージャはラファ・ミルに放り込みながらも、レアル・マドリーが与えてくれる時間とスペースを得られるサイドバックをビルドアップの出口とすることで、状況の打開を狙っていく。

ボール保持に自信がありそうなセビージャもレアル・マドリー陣地からのプレッシングを遠慮なく行った。ゴールキックを繋がせるつもりは全くなく、ロングボールに誘導するために前から選択肢を消していく配置をとっていた。ベンゼマとの空中戦からのセカンドボール争いで後手を踏む場面もあったが、クンデ、ジエゴ・カルロスのコンビは世界屈指の守備力を持っているため、危機的にはならないと計算していたのだろう。

お互いのプレッシング合戦に対して、徐々に流れを掴んでいったチームはレアル・マドリーだった。その理由は、レアル・マドリーはボール保持を落ち着いてできたことだろう。レアル・マドリーは何よりも攻め急がない。そして、各々のスキルがべらぼうに高いので、簡単にはボールを失わない。逆にセビージャはレアル・マドリーのプレッシングを利用してボール保持を加速させる傾向にあったため、ボールを保持してまったりする場面はあまりなかった。まったりしようと思えばできる場面もあったのだけど、アウェイということもあり、攻めきることを優先していたのだろう。また、早々にリードした事実もこの状況を加速させていった一因であることは見逃せない。

レアル・マドリーのビルドアップで目立っていた選手は、クロース、モドリッチ、カゼミーロのトリオだった。最初に動き出した選手はクロースだった。セビージャが【4411】で構え、ラキティッチがカゼミーロ番をするなかで、クロースは対面のジョルダンから遠く離れた位置に移動して、つまり、列を降りてプレーする場面が目立った。擬似的なサリーのような形で、ラファ・ミルやラキティッチがつれれば、レアル・マドリーのセンターバックに時間とスペースを配ることもできるし、自分がフリーならその位置から攻撃の起点となることができていた。

モドリッチも同じようにカゼミーロの脇のスペースを利用することがあった。このときにカゼミーロはトップ下のような位置に移動することで、モドリッチとクロースのプレーエリアを空けることを目的としている。ただし、前線に移動したカゼミーロのスペースへの飛び出しの質は年々あがってきている気がしている。カゼミーロ、モドリッチ、クロースのトリオは、相手の位置と味方の位置に応じて、アドリブで最適な位置に移動することができるようになっている。阿吽の呼吸の最大レベルと言っていいだろう。

パターンとしては、モドリッチが前線に上がればカゼミーロは我慢。モドリッチが下がれば、上がる。そういう意味ではモドリッチ次第。なお、クロースは上がらないのか?となるが、左サイドはベンゼマ、マンディ、ヴィニシウスで共有することになっているようで、攻撃の起点となるプレーが多い。もちろん、上がることもあるけれど。なお、カゼミーロの上がる動きの厄介なところは、相手はマークを受け渡すか否かを考えなければいけないところだろう。さらに、カゼミーロの列を上下する移動によって、カゼミーロ自身も相手の守備の基準点を見出し、ビルドアップの中継地点や出口になる場面が増えてきていることも見逃せない。

11分にコーナーキックからラファ・ミルのヘディングで先制したセビージャだったが、時間の経過とともに、レアル・マドリーに押し込まれる展開となっていった。押し込まれたときのセビージャはサイドハーフもサイドバックのように振る舞い、セントラルハーフは人よりもハーフスペースで待ち構えるようになっていく。このときにレアル・マドリーが得意としているプレーは、ミドルシュートの雨嵐だった。モドリッチたちがピン留め要員になり、気がつけば、センターバックの面々がセビージャ陣地でプレーするようになる。

そして、クロースとともにミドルを打ちまくる。アラバの強烈なミドルも記憶に残っている。シュートを打ちまくれば何かが起こるかもしれない。そして、エデル・ミリトンの強烈なミドルが炸裂し、こぼれだまをベンゼマが押し込んでレアル・マドリーが同点に追いついて前半は終了した。

くるくるまわる3センター

後半になると、おれたちの攻撃的なプレッシングはあれだな、別に機能してないな。オカンポスにバーにぶつけられたしな、というわけで、プレッシングのラインを下げて後半に臨んだ。よって、セビージャがボールを保持する展開で後半はスタートする。この辺りがレアル・マドリーの不気味なところで相手にボールを持たれることをなんとも思わない。いや、ゴールを許さなければ別にいいっしょみたいな。

ボール保持を許されたセビージャのボール保持の特徴は、3センターが役割を交換することだろう。モウリーニョ×ポルトの元でアンカーとして大活躍をしたフェルナンドが基本的に3列目の前でプレーすることになっているが、ジョルダンもラキティッチもボール保持においては、フェルナンドの役割をこなすことができる。よって、レアル・マドリーのカゼミーロとモドリッチ、クロースの位置関係のようにセビージャもくるくるすることで、非常に捕まえにくい構造になっている。ついでに幅広く動き回るパブ・ゴメスも厄介な中継地点として機能している。

そんなセビージャのボール保持に対して、レアル・マドリーは【4-1-4-1】で構えて対抗する。レアル・マドリーの特徴はライン間で相手がボールを受けても、受けたらプレッシングをかければいいでしょ?と言わんばかりの余裕を見せるところだろう。カマヴィンガたちが登場するまで、セビージャのボール保持に耐えながらカウンターを狙う構造に試合を変化させたレアル・マドリーだったが、クルトワが焦らせるような場面を後半に作らせなかったことは、11人で守備をすることが可能になったからこそできる選択肢なのかもしれない。

おそらくこの割り切りというよりは、ボールが入ってから寄せてもどうにかなる差が両チームの明暗を分けた、というか、力関係の差ではなかったのだろうか。例えば、列を降りていくモドリッチやクロースを放置すると、非常にめんどくさいことが起こる。彼らは低い位置からでも時間とスペースを味方に繋ぎながらボールを前進することができるからだ。しかし、だからといってどこまでも深追いするわけにはいかないジレンマに苛まれる。レアル・マドリーの場合は、たとえ相手がライン間にいてもボールが入ってからで間に合うと考えていたし、実際に間に合っていた。多少は放置してもどうにかなる計算と放置したらやばいと計算の差は非常に大きい。

73分にカマヴィンガとバルベルデが登場して一気に試合の流れを取り戻すレアル・マドリー。またボールを保持して攻撃を仕掛けていくにスタイルを変更することは難儀なはずなのだが、レアル・マドリーは変幻自在だった。またしても押し込まれるセビージャの息の根を止めたきっかけはまたもミリトン。ミリトンからのサイドチェンジを受けたヴィニシウスは左サイドから中央にカットインからのファーサイドに突き刺すシュートでチームに逆転ゴールをもたらした。是非ハイライトで見てください。シンプルにえぐいです。

ひとりごと

カゼミーロが上がっていく形はジダンの時代から見られていたと記憶するが、いつからだったかは記憶にない。セビージャの3センターの役割を見ていて、レアル・マドリーの3センターの位置関係の仕組みもロペテギが少し関わっていたら浪漫だなと考えさせられた。たぶん、事実ではないだろうけど。ボールを根性で持ちに行くスタイルとボールを相手にあげてしまうスタイルが共存するレアル・マドリーは不気味な存在として、チャンピオンズリーグに君臨していきそうだ。そして、さりげなく世代交代に成功していることがにくい。シャビによって、バルセロナが蘇れば、プレミアリーグの強豪対策にもなるだろう。レアル・マドリーのチャンピオンズリーグにも注目していきたい。

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