自分らしさの檻を破れるかどうか 2022 9/14 チャンピオンズ・リーグ リヴァプール対アヤックス

2022/23欧州サッカー

リヴァプールのスタメンは、アリソン、ツィミカス、ファン・ダイク、マティップ、アーノルド、ファビーニョ、チアゴ、エリオット、ルイス・ディアス、ジョタ、サラー。ロバートソンは負傷。マティップ、チアゴ、ジョタがスタメンに復帰。ジョタをスタメンに復帰というと、ニュアンスが違う気もするが。地味にけが人が多い印象を受けるベンチメンバーとなっている。

アヤックスのスタメンは、パスフェール、ブリント、バッシー、ティンベル、レンシュ、アルバレス、テイラー、ベルフハイス、ベルフヴェイン、クドゥス、タディッチ。前回のスタメンと恐らく変わらず。アントニーの穴をどうするかと思ったら、左利きのタディッチを今度は右で起用することで解決。左右どころか中央でも遜色なくプレーできる選手は世界中を探してもいそうでいないと思う。

列を下がるエリオット、チアゴとジョタ

アンフィールドでの試合だが、アヤックスがリヴァプール対策として何かを変更することはないように見えた。序盤の無秩序な時間を両チームが過ごしたあとは、アヤックスはキーパーにボールを下げながらボール保持によって試合のペースをコントロールする意思を見せる。対するリヴァプールはジョタをアヤックスのアンカーであるアルバレスに当てながら、賽が投げられたらプレッシングを開始する、こちらも既知のリヴァプールスタイルでアヤックスに臨んだ。

ジョタのプレッシングをきっかけに試合を動かさなければならないアヤックスに対して、リヴァプールのビルドアップは時間制限がないように見えた。アヤックスのプレッシングの配置は[4231]。ファビーニョにベルフハイスを当ててリヴァプールの中盤に配置を噛み合わせることを優先していた。その代わりにフリーになりがちだったのはリヴァプールのセンターバックとアーノルドだった。左ウイングのベルフベインはアーノルドを捨ててマティップまで前に出てくる場面が目立った。この仕組みを利用して、リヴァプールはセンターバック、もしくはアーノルドからボールを運ぶことで自分たちが前進したいタイミングを決めることができていた。

そのなかで、リヴァプールはショートパスによる前進とジョタに降りる動きによるずれ、そして突然の速攻を組み合わせてアヤックスの陣地に侵入していった。アヤックスがマンマークの要素が強いのだけど、センターバックの前に鎮座することで良さを発揮するアルバレスも前におびき出される格好をよしとするかしないかで釈然としない立ち上がりとなった。その釈然としなさがこちらも列を降りるチアゴやエリオットに時間を与えることとなり、リヴァプールへの流れを加速させていくこととなる。

アヤックスのセンターバックは小さいことで有名である。リサ丸とティンベルコンビのときはお互いに180ないセンターバックコンビとして有名だった。高さはどうするんねんとなるが、そこで出番が訪れるのはアルバレスである。クロスなどは根性を出すしかないが、ゴールキーパーから蹴られたボールは空中戦に強い選手が競る設計を作ることはできる。よって、チアゴ・アルカンタラを捕まえるためにアルバレスが前に出ていく設計がすでに罠となっている。リヴァプールの先制点はアリソンからのロングボールをルイス・ディアスが競り勝ったことはきっかけで生まれてる。計算通りなのかもしれないし、偶然かもしれない。

列を上がるティンベル

失点したことで、このままではいけないアヤックス。プレッシング強度を上げる素振りをみせるが、リヴァプールのセンターバックがフリーな構図は変わらないので、試合の流れはあまり変わらなかった。リヴァプールはアリソンからの速攻を織り交ぜながらアヤックスのゴールに迫っていった。ナポリ戦と比べると、リヴァプールらしい速攻やカウンター、そしてチアゴを中心とするゲームメイクでリヴァプールが復活の狼煙を上げているように見えた。

しかし、この流れをアヤックスに引き寄せたきっかけはアルバレスだった。キーパーへのバックパスを繰り返すアヤックスは、さらにアルバレスがセンターバックの間に降りることで、リヴァプールのプレッシングを牽制する。守備の基準点を失ったジョタはプレッシングのスイッチを入れにくくなる。サラー、ルイス・ディアスと3トップで3バックにぶつける作戦もあるが、リヴァプールの選択は降りる相手についてきたインサイドハーフの選手がそのまま相手のプレッシングのスイッチを入れる形が目立った。エリオットの根性はかつてのロバートソンを彷彿とさせるプレッシングだった。

しかし、いつもの形でボールを保持するようになったアヤックスは同点ゴールを決める。肝はいくつかある。キーパーがボールを持っているときに相手の背中に隠れてサイドバックの平行サポートに備えるティンベル、右サイドでボールを何度もキープすることに成功していたタディッチ、そしてアヤックス得意の密集による相手の守備の基準点乱しによってベルフハイスが裏抜けに成功し、クロスを待ち構える選手はさらにフリーという流れから同点ゴールが決まった。その後もリヴァプールはマティップの運ぶドリブルからアーノルドのFWのようなシュートなどチャンスを作ることに成功していたが、徐々に試合は五分五分の様相となったところで前半は終了する。

プレッシングで流れを取り戻すリヴァプールらしさ

後半の頭から、アルバレスはサリーを行い、前半のリピートを企んでいるようだった。しかし、ハーフタイムを挟んだことで、リヴァプールはプレッシングを強める意思統一を実行する。サラーもルイス・ディアスも相手のセンターバックに襲いかかることで、アヤックスのボールを保持する時間を削り試合をオープンなものに導こうとしていた。特に相手の背中を取りに来る希少なティンベルを試合から追い出すために、どちらかといえばバッシーがボールを持つ展開になるようにプレッシングを修正してきた。なお、バッシーは左足でサイドチェンジができた、、、ミスも目立ったけど、、とはいえ、本当の狙いはそこではなかった。

アヤックスのボール循環は前半よりもロングボールが増える。空中戦の的や困ったときのキープ係として充実のパフォーマンスをしていたタディッチ。しかし、ティンベルサイドを消されたことで、どうしたってベルフワインサイドにボールが集まるようになる。また、リヴァプールのプレッシングによって、アヤックスは苦し紛れのロングボールが増えてしまう。アヤックスは根性でボールを前進できる場面もあれば簡単にボールを失う場面も増えていった。

リヴァプールに目線を移すと、相変わらずセンターバックからのボール運びが目立っていた。前半から見られたプレッシングスタイルを敢行するアヤックスだったが、徐々にアルバレスは最終ライン付近に立ち位置を取るようになり、徐々にリヴァプールはボールを持てど、最後のシュートを打つときに相手がそばにいる状態へと移行していく。最後はやらせんぞ、そしてマイボールになったらボールを根性で運んでやるアヤックススタイルはなかなか男前だった。

得点が欲しいリヴァプールは65分にエリオット→フィルミーノ、ジョタ→ヌニョスで攻勢に出るリヴァプール。67分にアヤックスは足をつったレンシュ→サンチェスを交代する。

フィルミーノの登場で[4231]感の強くなったリヴァプールに対して、アヤックスはアルバレスが下がっていたこともあって[4123]とがっつりはまる形となった。ただし、アヤックスはマンマークをやめていたこともあって、これまで通りにセンターバック、自由なアーノルド、相手の守備範囲外からのチアゴと様々な起点を持ってリヴァプールは攻め込む形となっていった。タディッチという基準点の出番を減らされたことで、めっちゃ繋げればいけるけど、基本的に繋げなそうなアヤックスは自陣で耐え忍ぶ展開がさらに増えていく。74分にはカウンターからアヤックスに決定機が訪れるが、残念、枠の外であった。

82分の決定機はマティップの運ぶドリブルから生まれている。この試合で延々と再現された形であった。以前のアヤックスはもっとマンマーク思考で相手のセンターバックを余らせない印象だったが、監督が交代して変化があったのかもしれない。徐々にゴールの雰囲気が強まっていくアンフィールド。最後はこの試合で何度もヘディングに成功していたコーナーキックからマティップだった。アヤックスにとってシンプルな高さ不足は上に行けば行くほど弱点として顕在化するかもしれない。こうしてリヴァプールが2-1でアヤックスに勝利したとさ。

ひとりごと

ボール保持、速攻、カウンターと満遍ない感じがリヴァプールらしかった。また、前半にアヤックスのボール保持から奪われた嫌な感じを強烈なプレッシングで流れを引き寄せた後半も非常にリヴァプールらしかった。ジョタ、チアゴ、マティップの存在感は強く、ルイス・ディアスも大外レーンだけでなく中央でも何とかしようとする意思は今後に期待が持てるものだった。

アヤックスは流石に最後は力負けした感が強い。それでも試合終了間際までは同点のスコアだったため、ホームでは殴りかえすき満々だろう。ただし、リヴァプールのセンターバックが空いてしまう問題をどげんかしないと、この試合のリプレイになりそうな予感は強い。

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