【横綱相撲】マンチェスター・ユナイテッド対サウサンプトン【ホイビュルクの奮闘】

マッチレポ1617×プレミアリーグ

マンチェスター・ユナイテッドのスタメンは、デ・ヘア、バレンシア、バイイー、ブリント、ルーク・ショー、ポグバ、フェライニ、マタ、マーシャル、ルーニー、イブラヒモビッチ。監督は、ジョゼ・モウリーニョ。かつての栄華を取り戻すために、モウリーニョを招聘。補強選手にもイブラヒモビッチ、ポグバとビッグネームを揃え、マンチェスター・ユナイテッドの偉い人たちの必死ぶりを感じさせるメンバーとなっている。

サウサンプトンのスタメンは、フォスター、セドリック、フォンテ、ファン・ダイク、ターゲット、ロメウ、デイビス、ホイビュルク、タディッチ、レドモンド、ロング。監督は、クロード・ピュエル。かつてはリヨンを率いていたことで、有名な監督だ。リヨンで成功したかどうかはともかく。選手、監督ともに大脱走が起きている。サウサンプトンの抱える問題は、脱走が果たして終了したのかどうか、になる。

結果は2-0でマンチェスター・ユナイテッドの勝利となった。前半の終了間際にイブラヒモビッチの力技で先制し、後半の開始直後にPKから追加点を決めて試合を終わらせた。まさに横綱相撲のようなスコアと展開だったのだが、本当に横綱相撲のような試合だったのかを考えていきたい。

マンチェスター・ユナイテッドの基本構造

マンチェスター・ユナイテッドのシステムは、4-4-2。ボールを保持する、しないに関わらず、システムは変わらない。ルーニーの動きで4-5-1と4-4-2を行き来する傾向があるが、ルーニーを2列目まで落とすことをモウリーニョは好んでいないようだった。下りても4-4-1-1。列の移動を任されているという意味での、ルーニーの役割は大きい。なお、エレーラが登場してからは、セントラルハーフをこなすルーニーが目撃されている。1列目の選手が2列目のカバーリングする状況を嫌っているだけで、ルーニーの中盤起用の可能性は大いにあるようだった。

ボールを保持したときの攻撃は、チェルシー時代(アザールやセスク時代)の攻撃に似ている。ただし、イブラヒモビッチがいることで、微調整が必要なようだった。サイドにはっていることで、真価を発揮しそううなマーシャル。しかし、ボールを保持した攻撃ではイブラヒモビッチの空けた中央への突撃役割もこなしていた。そういう意味では、マタのほうが空いているエリアを感じられる特性があるので、当初の予想を裏切って重用されているのかもしれない。ただし、ポグバ、イブラヒモビッチという異質な選手が加わり、選手のポジションも変わっているので、流れるような攻撃からは程遠い状況だった。

可能性をより感じさせたのが、トランジションからのカウンター。イブラヒモビッチを起点として、マーシャルがスピードにのって相手ゴールに迫っていくプレーは破壊力を見せていた。その他では、イブラヒモビッチやポグバの相手を絶望させる個人技からのチャンスメイクが目立っていた。特にポグバは得点という結果を欲しがったようで、果敢に前線に飛び出していた。フェライニが徹底的に我慢である。

1列目にルーニーとイブラヒモビッチを起用していることもあって、高い位置からの守備は、積極的に行わない。相手がボールを保持したいならば、どうぞ!みたいな。その代わりに、ボールを保持に対しては、撤退守備で対抗。ポグバとフェライニを中央から動かさない中央圧縮を基本としている。相手を陣地におびき出して、イブラヒモビッチを起点としたカウンターだという作戦は理にかなっているだろう。イブラヒモビッチとルーニーの体力を温存する意味でも撤退守備を選択する意味はわかる。また、かつてのマンチェスター・ユナイテッドは、リオ・ファーディナンドとヴィディッチを中心とした撤退守備を得意としていたので、懐かしさを感じさせる選択とも言える。懐かしさがタイトルを持ってくるかは、また別の話だが。

サウサンプトンの振る舞い

ロメウ、ホイビュルクがスタメンにいるサウサンプトン。バルセロナ育ちとグアルディオラ育ちのコラボレーションとくれば、ボールを繋ぐのだろうと誰もが予想をするに違いない。なお、ロメウはさっさと負傷退場してしまうが、ベンチから登場するのがクラシー。クラシーも繋げる選手なので、サウサンプトンの考えがよくわかる。

マンチェスター・ユナイテッドが撤退守備ならば、こちらは繋げる選手を大量動員だとばかりに、ボールを回すサウサンプトン。サウサンプトンのビルドアップは、しっかりと計画されていた。2センターバックは横幅をとり、アンカーの選手はセンターバックの間と本来の自分の位置を行き来し、インサイドハーフの選手はルーニー周りのエリアにポジショニングする。ポグバとフェライニが動かないならば、そのエリアを支配してしまおう作戦は、なかなか機能していたと思う。

相手にボールを保持される展開に慣れていない様子のマンチェスター・ユナイテッド。我慢をしていればいいのだが、慣れなければ我慢はできない。外から見ていれば退屈でもボールを保持するサッカーに慣れると、ボールを奪い返すまでの時間が億劫になる。億劫になりたくなければ、すぐにボールを奪い返そうぜという教えは、論理的な解決策なのだなと妙に納得させられてしまった。

15分過ぎのマンチェスター・ユナイテッドは、我慢の限界を迎える。個々の選手がプレッシングの圧力を強めていくが、イレギュラーな動きなので連動するわけもなかった。このタイミングで勝負に出たかったサウサンプトンだが、ロメウが怪我でいなくなったばかりでエンジンを全開にするには、分が悪い状況だった。そんなタイミングにも救われたマンチェスター・ユナイテッドの我慢のできなさだったが、しばらくすると落ち着きを取り戻すようになる。

危なっかしい場面がなかったわけではないが、自分たちの攻撃機会を徐々に増やしていき、前半の終了間際にはイブラヒモビッチがヘディングで豪快にシュートを決める。この得点の場面がなかなか興味深かった。最前線から離れたイブラヒモビッチ。代わりに最前線にいたのはマタ。マタの空けたサイドに流れたのはルーニー。このように、アドリブでも対応できるよ、というマタとルーニーがしばらくはマンチェスター・ユナイテッドの攻撃を牽引していきそうだ。

後半の開始と同時に攻勢を強めていくサウサンプトン。同点ゴールかと思ったが、オフサイドの判定に泣かされる。この場面でも起点になったのはホイビュルク。試合に出られる環境にいれば、自ずとビッククラブに引き抜かれるのではないかというプレーをしていた。ロメウ、クラシーと自分と似たような感性を持つ選手たちに囲まれていることもプラスになるだろう。

そういったサウサンプトンの流れをぶったぎったのがイブラヒモビッチのPK。クラシーがルーク・ショーを倒して得たPKをイブラヒモビッチが決める。2点差があれば、相手がボールを保持していても関係ないマンチェスター・ユナイテッド。我慢ができない体質も我慢を正当化してくれれば、問題がなくなるものだ。サウサンプトンはサイドチェンジを繰り返して、マンチェスター・ユナイテッドをスライドさせようにも、サイドチェンジが飛び過ぎたり、自陣にずれたりと時間の無駄使いをしてしまっていた。

そんなサウサンプトンを見て、モウリーニョはエレーラ、ムヒタリアン、スモーリングと選手を試しながら試合をクローズさせる。サウサンプトンは選手を交代しながらも、デ・ヘアを焦らせることなく試合を終えることとなった。

ひとりごと

サウサンプトンのプラン(ルーク・ショー、ブリントサイドを狙う)など、悪くはなかったと思う。ただし、全体的な技術ミスが目立っていた。いわゆる良い選手にはお金がかかる、つまり、お金が足りないみたいな。そういう意味では苦しいシーズンになると思う。シーズン終わりにホイビュルクがどうなっているかは楽しみにしたい。

振り返ってみると、横綱相撲と言っていいだろうマンチェスター・ユナイテッドの戦いぶりだった。隙を感じさせる場面もあったが、その隙を失点に直結させるようなチームとの対決はいつになるか。チャンピオンズ・リーグもないので、隙を具現化させられる前に、隙を閉じることに成功するかもしれない。シーズンが終わる頃にどのようなチームになっているか非常に楽しみだ。

なお、フォンテが移籍すれば、吉田麻也の出番は増えるかもしれない。

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