【ファーストレグ】バルセロナ対マンチェスター・シティ【グアルディオラのプレッシング】

マッチレポ1617×チャンピオンズ・リーグ

バルセロナのスタメンは、シュテーゲン、マスチェラーノ、ピケ、ウムティティ、ジョルディ・アルバ、ブスケツ、イニエスタ、ラキティッチ、メッシ、スアレス、ネイマール。怪我人がこのころから多発している影響から、マスチェラーノが右サイドバックになっている。なお、この試合では前半のうちにジョルディ・アルバ、ピケが負傷退場してしまう。マンチェスター・シティのプレーが荒いのか、プレミアリーグ基準の球際能力がぶっ壊れているかは謎だ。チャンピオンズリーグのグループリーグ組分けの基準が変更になったこともあって、何位で突破するかの重要性が不透明になってきている。それでも目指すは1位抜け。マンチェスター・シティの監督がグアルディオラであり、バルセロナ育ちのノリートもいることから、ちょっとしたダービーの雰囲気になっている。

マンチェスター・シティのスタメンは、ブラボ、サバレタ、オタメンディ、ストーンズ、コラロフ、フェルナンジージョ、シルバ、ギュンドアン、スターリング、ノリート、デ・ブライネ。アグエロがベンチにいることが特徴だろうか。グアルディオラの登場で、マンチェスター・シティの悪い意味での曖昧さや奔放さは消えつつある。理想の形が明確であるグアルディオラの登場で、そういった部分はどんどん消え去っていると言っていいだろう。そんな両チームがグループリーグで同居するとは夢にも思わなかった。なお、バイエルンとアトレチコ・マドリーの同居もかなりえげつない。

グアルディオラのプレッシング

カウンターや速攻、南米トリオの質的優位で相手を殴るようになってきたバルセロナ。しかし、試合の大部分は、ボールを保持する展開になっている。ボール保持からの定位置攻撃、ボールを奪ってからのカウンター、定位置攻撃からの速攻とあらゆる攻撃手段を手に入れたバルセロナ。非常に厄介な存在になっていることは間違いないが、ボールを保持する能力の高さは健在だ。相手にカウンターを許したくなければ、ボールを奪われなければいい。また、速攻や定位置攻撃を許したくなければ、相手からボールを取り上げればいい。そのためには、相手のボール保持の時間を減らすと精度を落とすような守備をしなければならない。そんなグアルディオラの設計について見ていく。

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サイドでの質的優位が重要だとバイエルン時代のグアルディオラが発言したらしい。サイドにメッシとネイマールがいるバルセロナは、そんなグアルディオラの言葉を最も表しているチームと言えるだろう。気がつけば、左利きのセンターバックも定着してきているバルセロナ。ボールを持てるし蹴っ飛ばすこともできるよという姿勢が、ルイス・エンリケ時代の特徴と言えるだろう。

試合内容に話を移すと、マンチェスター・シティのプレッシングに対して、バルセロナが苦戦する場面が目立った。

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マンチェスター・シティの守備の役割が独特だった。スタートの形は、4-3-2-1になる。さらに、2の部分にノリートやスターリングではなく、シルバとギュンドアンを配置したことが特徴と言えるだろう。インサイドハーフ(シルバ、ギュンドアン)とサイドハーフ(スターリング、ノリート)を比較すると、サイドハーフのほうが長い距離を早いスピードで走ることに長けている。よって、移動距離が長い役割をサイドハーフにやらせることで、適材適所を狙った配置となっている。

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デ・ブライネの役割は、ピケをみる。ピケにボールを持たせないようにポジショニングをとる。ウムティティにボールが渡ると、ギュンドアンがプレッシングに出てくる。ブスケツはシルバが担当する。バルセロナのセンターバックがボールを持っているときは、ボールサイドのサイドバックに対して、マンチェスター・シティのサイドハーフ(ノリートやスターリング)が前に出てくる。サイドハーフの移動にともなって空いてしまうバルセロナのインサイドハーフは、基本はフェルナンジーニョ、ときどきはディフェンスラインからのヘルプで対応する。

メッシの動きに対しても、ストーンズがついていくことで対応していた。昨年のボルシア・メンヒェングラッドバッハが行っていたプレッシングスタイルに少し似ている。最終ラインは3枚でも可能だという計算は、ボール保持者にプレッシングがかかっていることが前提となっている。相手の3トップと数的均衡になったとしても、長いボール以外に数的均衡局面は成立しない。長いボールはパスが届くまでに時間がかかる。その時間を利用してスライドすれば、3トップに3バックでも対応できる。さらに言えば、空中戦で勝てるようだと、なお良い。

相手のボール前進に対して、同数のプレッシングを行なう。そのためには、どこかを捨てる必要が出てくる。グアルディオラの考えは、ボールサイドでないサイドバックを捨てることと最終ラインでの数的均衡を受け入れることで、バルセロナのボール保持の精度を徹底的に削る設計を見せた。

バルセロナの脱出パターンは、インサイドハーフがサイドラインまで流れるが最近の必殺技になっている。相手がついてくれば、中央にパスラインができる。ついてこなければ、前進は成功する。この狙いが成立する場面もあれば、成立しない場面もあった。全ては、ボール保持者へのプレッシング圧力が鍵を握っていた。相手の選択肢を削りながらじわじわと迫ってくるマンチェスター・シティのプレッシングは、しっかりと準備されたものだった。よって、バルセロナの攻撃は、プレー再開(主にスローイン)からのトランジション、ディフェンスラインからの速攻がメインとなった。そんな試合を動かしたのが、メッシとイニエスタのコンビネーションというよりは、フェルナンジーニョがゴール前で滑るというなかなか切ないものになってしまった。

バルセロナのプレッシング

マンチェスター・シティのプレッシングが、緻密に計算されたものであったとすれば、バルセロナのプレッシングは、とにかく勢いが大事となっている。これはグアルディオラ時代から続く伝統だ。なお、マンチェスター・シティも相手の選択肢を削るというよりは、相手から思考の時間を奪うようなプレッシングを見せることがある。そういう意味では、これらのプレッシングに優劣は別にない。

ボールを保持したいバルセロナは、一秒でもはやくボールを奪い返したかった過去を持つ。よって、ゴールキーパーまでプレッシングに行くこともしばしばだ。プレッシングを回避されたことはあまり考えない。よって、相手がボールをもっているとき、味方がボールを奪われたときのプレッシングスピードは尋常でないスピードで行われる。このスピードに相手は思考の時間を奪われてたじたじとなる。結果として、よくわからないロングボールを蹴っ飛ばす形となれば、プレッシングは成功となる。

スピードを重視したプレッシングは、連動性を欠いてしまうことが多い。ファーストディフェンダーを回避されたときに相手に褒美を与えてしまう現象だ。試合の時間軸は前後してしまうが、セビージャ戦でもバルセロナのプレッシングを外されてしまう場面が目立った。その現象はこの試合でも見られた。ブラボを頻繁に利用するマンチェスター・シティのボール前進にバルセロナは四苦八苦していく。

しかし、やめないバルセロナ。その姿勢はマンチェスター・シティが10人になってからさらに強さを見せる。10人になったことで、非日常をピッチで過ごすことになったマンチェスター・シティはミスが目立つようになる。よって、相手陣地でボールを奪ってからのカウンターでメッシが怒涛の追加点を決めて、試合はほぼ終わりを告げる。後半の頭からバルセロナが変則的な3バック(サイドバックの片方を上げる)を行ったりしたけれど、マンチェスター・シティがすぐに10人になってしまったので、あまり意味をなさなかった。

結局のところ、フェルナンジーニョのスリッピングと10人になってからのバルセロナのプレッシングがマンチェスター・シティを倒すには十分な理由となった試合だった。また、ブラボの退場のきっかけもブラボの軽率なパスミスから始まっているのもグアルディオラを悲しませているだろう。もちろん、ミスはつきものだし、ミスが失点に絡むのが日常だが、マンチェスター・シティは少しミス(フェルナンジーニョは不運なミスだったけれど)が多く目立つ試合となった。そして、セカンドレグに向けて、グアルディオラの復讐が始まる。

ひとりごと

ファーストレグは観る価値があるのかと思っていたけど、グアルディオラの4-3-2-1のプレッシングは面白かったから良かった。そして、バルセロナのボールを奪ってからのカウンターはえぐい。もともと素早い攻守の切り替えと前からボールを奪いに行く姿勢はあったので、転換がスムーズにいったのだろう。しかし、あほほどにボールを持つ相手と対峙すると、撤退守備の怪しさが顔を出しそうな試合だった。それでも、メッシとスアレスを中心とするロングカウンターで逃げ切れるのかもしれないけども。

コメント

  1. ととや より:

    シティはバルサにリベンジしましたけど、リーグ戦では取りこぼしましたね。
    守備の課題も尾を引きそうですが、ローテーションの難しさも感じます。
    プレミアの過密日程は議論の的ですが、やはり複数のタイトルレースを走り切るのは難しいかもしれません。

    • らいかーると より:

      グアルディオラも慣れてくれば、そこまでやるのかローテーションをやるような気がします。チャンピオンズ・リーグの難敵をしのいだので、あとは恐怖の12月をどのように乗り切るか楽しみです。

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