マンチェスター・シティ対シャフタール・ドネツク ~どのように振る舞うかは、相手が教えてくれる~VOL2

マッチレポ×マンチェスター・シティ1718

後半の試合内容に触れる前に、前半戦の試合内容をもう一度まとめておこう。序盤はシャフタール・ドネツクの可変式ビルドアップとロングボール前進作戦によって、プレッシング開始ラインの設定に戸惑ったマンチェスター・シティ。相手のビルドアップ可変式によって、自分たちの守備の最適解は見つけにくい。さらに、プレッシングがはまったと思ったら、ロングボールでセカンドボールを回収&マイボールにされてしまう→急いで自陣に戻らなければいけない状況となった。これは面白くないとばかりに、15分過ぎから全員で撤退するマンチェスター・シティ。修正が早い。全員が自陣に戻ったことで、ボール保持機会は減ってしまうが、守備のコンパクトさを取り戻す。そして、相手に応じた守備の強度を取り戻していくと、カウンターでチャンスを掴むようになるマンチェスター・シティ。ただし、カウンター合戦でも負けないぜ、という用意周到さを見せるシャフタール・ドネツクであった。

後半の立ち上がりの絵だ。シャフタール・ドネツクの4-4-2に変化はないし、マンチェスター・シティの3バック+アラバロールにも変化はない。この場面でデルフをスキップし、シルバにボールを通せるようになったオタメンディは確実に進化している。少し話はそれたが、後半の立ち上がりは、前半のリピートとなった。マンチェスター・シティからすれば、ボール保持の精度を上げられれば、カウンター合戦というコントロールできない領域での賭けに出なくてすむ。

4つの局面と、相手の守備が整っているか、いないか

拙い記憶を辿っていると、試合中に訪れる4つの局面という考え方を明確にしてくれたのはスペインからの伝達であった。4つの局面は、我々がボールを保持しているとき、我々がボールを保持していないとき、我々がボールを奪ったとき、我々がボールを失ったときだ。すでに既知のことなので、今更感満載なのだか。この4つの局面をさらに分類したほうがいいんじゃないの?という考えを伝達してくれたのがトランジション大国のドイツだ。すべての局面に、相手の守備が整っているか、いないかの前提を入れましょう的な。ボールを奪った、失ったときというのは相手の守備が整っていないことが多いんだけど。ただ、守備が不安定、整っている、枚数が足りないなどなど、さらに細かく分類されていくのだが、それはまた別のお話だ。

大事なことは、どの局面勝負が自分たちにとって優位に試合をすすめられるか!である。マンチェスター・シティはボールを保持しているときに力を発揮することを得意としている。だから、シャフタル・ドネツクはボールを取り上げることで、マンチェスター・シティのボール保持対シャフタール・ドネツクのボールを保持していないときの局面機会を減らそうと様々な罠をはった。最終的には、お互いのボールを失った、奪ったときにどうするか対決に前半は変化していった。マンチェスター・シティからすれば、ボール保持しても優位にならないならば、力技で噛み合う局面を変える必要がある。その手法が撤退して守備しましょう、だったわけだ。

そんなことを何となく頭に入れながら、後半の試合内容に本格的に移っていく。

さて、マンチェスター・シティは何を修正したら優位にたてるのか

後半の立ち上がりは、最初の絵のとおり、前半のリピートだった。それならば、早々に試合が動くこともないだろう。ただし、サッカーはミスのスポーツである。試合が動いたのは47分。ここでミスをしたのはシャフタール・ドネツクだ。シャフタール・ドネツクはキーパーからのパスでボールを繋いでいくが、マルロスが痛恨のパスミス。パスミスで発生したカウンターで、デ・ブライネの狙いすましたミドルシュートが炸裂した。ベッカムのようなカーブをかけたシュート。試合を動かしたのは定位置攻撃ではなく、トランジション。鉄則だ。

グループリーグ突破を考えれば、マンチェスター・シティのホームで勝つ必要があるかは疑問だけれど、得点を取りに行く必要がでてきたシャフタール・ドネツク。フレッジが列を下りてビルドアップの起点となる。細かいことはぬきにして、マンチェスター・シティは4-1-4-1からの死なばもろともプレッシングの様相を見せるけれど、あっさり前進していくシャフタル・ドネツクは巧みだ。また、前からボールを奪いに行くシャフタル・ドネツク。しかし、プレッシング回避に長けているマンチェスター・シティからすれば、待ち望んだ環境とも言える。自分たちのボール保持によって、相手の守備が整っていない状況を簡単に作れるようになるからだ。

スコアが動けば、試合が動く。おそらく、後半のマンチェスター・シティはボール保持の精度をあげようと試みる。さらに、スコアの変化によって、無理をする必要もなくなった。よって、選手の配置をオーソドックスな形に戻した。

アラバロール終了。ときどきやるけど。シャフタール・ドネツクの中央圧縮に対しては、前半に続きサイドチェンジからのアイソレーションを狙っていたマンチェスター・シティ。しかし、ロングボールの精度、やるせないサネのプレーによって、途中でやめる。ときどきやるけど。よって、オーソドックスな4-3-3に変更する、というよりは戻した。同じレーンに隣り合うポジションの選手はいてはいけない法則があるけれど、サイドバックとサイドハーフが大外にポジショニングすると、相手の守備配置を横に広げることはできる。中央圧縮を広げるためのポジショニングとボールの動かし方(ロングボールによるサイドチェンジ)で、シャフタール・ドネツクの中央圧縮を牽制するように変化していく。スコアが動いたこともあって、フェルナンジーニョをどうする?問題にセントラルハーフの飛び出しで対応すると、デ・ブライネかシルバが空いてしまう仕掛けになってしまう。つまり、前半のサイドチェンジ作戦に、大外にポジショニングしよう作戦を追加した格好となっている。

ボール保持状態をサイドからの攻略にかえたことで、中央でボールを失いシャフタール・ドネツクにカウンターをくらい機会が減ったマンチェスター・シティ。そして、もうひとつの問題はピアトフからのロングボール問題であった。この問題に対しては、サネとデルフの中間ポジションでサイドの対応を行う。また、デ・ブライネとフェルナンジーニョが自分の担当するサイドのセカンドボールを拾う隊になる、または、縦スライドしたサイドバックのカバーリングを行うことによって、各々の役割が整理された。この整理によって、また、空中戦を競る選手の意識向上によって、シャフタール・ドネツクのロングボール大作戦を防ぐことに成功したマンチェスター・シティ。よって、ボール保持率も後半に限っては59%まで回復されることとなった。

では、シャフタール・ドネツクはどうする?となるが、地上戦でもいけなくもない。よって、致命的なエラーをしないで何とかマンチェスター・シティの陣地に侵入したりできなかったりという展開になっていく。53分にジェズス→スターリングが登場する。サネに比べると、守備でしっかりと帰陣していたジェズス。しかし、後半のサイドチェンジからのアイソレーションを考えると、サネが優先されたのはわからないでもない。55分にはボールを奪ってからの速攻でマンチェスター・シティにビックチャンス。シルバにループスルーパスにあわせたアグエロだったが、キーパーに防がれてしまう。

65分を過ぎると、シャフタル・ドネツクのボールサイドへの移動が遅くなっていく。よって、マンチェスター・シティのボール保持攻撃でフィニッシュまで行けるようになっていく。ボール保持チームへのご褒美。サイドを攻撃の起点として、サイドバックの裏のエリアを使えるようになっていく。この試合でイージーなミスが目立ったサネは、何とかミスを取り返してやろうとゴールを狙いまくる。忘れちゃいけないエゴ。70分にエデルソンのフィードから一気にカウンターが発動。サネがドリブルで仕掛けてPKを奪う。報われたサネ。しかし、アグエロのPKをピアトフが止める。

エデルソンを起点とするのカウンターは、キーパーからのロングボールに抜け出したシャフタル・ドネツクの攻撃の終わりから始まっている。ボールを運ばれてしまっても、そのあとのカウンターで相手をさせるのはなかなかえぐい。ただし、前半から見られたようにサイドハーフの帰陣が遅いマンチェスター・シティ。シャフタール・ドネツクはサイドバックの攻撃参加のスピードを利用して数的優位を作るのだけど、単純にサイドハーフとサイドバックの殴り合いでデルフ、ウォーカーに勝てるサイドハーフのいるチームには苦労しそうなマンチェスター・シティ。そういうチームの場合は、しっかりと守るのかもしれないけれど。

80分にシルバ→ギュンドアン。83分にアグエロ→ベルナウド・シルバ。カウンターとボール保持攻撃を織り交ぜていくマンチェスター・シティの前に、シャフタール・ドネツクはたじたじ。エリア内でのハンドをっ見逃してもらったマンチェスター・シティは幸運だったとも言えるけれど。後半に何度も繰り返された外外前進からの裏抜けでベウナウド・シルバが抜け出して、最後はスターリングが決めて2-0となる。その前に、デ・ブライネからの最高のクロスを外していたスターリングは救われたか。なお、サネは救われたのかはわからないまま、試合が終わる。

ひとりごと

シャフタール・ドネツクのカウンターは、ボールを持っている選手がマンチェスター・シティのセンターに正対して、全員を中央にピン留めする。そして、空いたサイドのスペースに超特急で味方が駆け上がってくるの繰り返しであった。アラバロールをやっている関係もあって、捨てているサイドなんだけれど、さらにスペースを与えてしまうとちょっとやばい。サイドハーフも戻ってこないし。ただ、デ・ブライネがいると、ボールを奪ってくれる。ちょっと恐ろしい進化を遂げているデ・ブライネ。ボールも持てるし、奪えるしとなると、ちょっと手がつけられない。

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