いけいけ、ぼくらのマンチェスター・シティ。今日の相手は8戦負け無しのチェルシー。昨年の王者のチェルシーだ。でも、僕らのマンチェスター・シティも7連勝中だ。というわけで、昨年の9月末に、この試合は天王山だねと盛り上がっていたことを思い出しながら、書いている。なお、スタメンからアグエロが外れている。そうか、シャフタール・ドネツクとの試合でアグエロを最後まで試合に使い、早々にジェズスを交代したのは、この采配を念頭に置いてあったのか!とカッコよく書こうと思ったら、アグエロは交通事故にあったらしい。これも非常に懐かしいニュースだ。
チェルシーのスタメンを眺めると、3バックの顔ぶれに変化があったり、モーゼスがいなかったり、セスクがスタメンだったりと、当時はいろいろあったのかもしれない。システムも3-4-3でなく、3-1-4-2で、アザールとモラタの2トップであった。なお、ぼくらのダビド・ルイスは累積で出場停止だったみたいだ。
狙われたセスクの裏
チェルシーの守備が5-4-1ではなく、5-3-2であることを読み切っていた、もしくは、両方の対応の準備をしていたかのようなプレーを見せるマンチェスター・シティ。試合開始直後こそは、デ・ブライネはいつものようにサイドバックの位置に下りてくることもあったが、その現象は最初に起きてからもう起きなかった。もう起きなかったというのが、なかなか興味深い。さて、図にあるように、あなたが監督だったら、どちらのサイドから攻めたいですか?という問だ。カンテとセスク・ファブレガスがいる。どう考えても、セスクサイドから攻略したほうがお得感満載だ。カンテに突撃して、カンテを破壊して、相手のメンタルを破壊するという手段もあるが、グアルディオラはそこまで博打打ちではない。
今日の選手配置は図を見てください。シルバサイドのほうが人員が多いのだけど、マンチェスター・シティが狙ったのはセスクとケイヒルの間であった。3バック+フェルナンジーニョのボール回しで、ウォーカーオープンにする。ウォーカーは大外のスターリングにパスをする。そして、デ・ブライネがセスクの裏に走って受ける。または、デ・ブライネがパスを受けて、スターリングとワンツーをする。徹底的にセスクの裏のエリアを狙い続けるマンチェスター・シティであった。チーム全体として、ワンツーによる前進をこの試合では行う場面が多かった。おそらく、パスをした選手をフリーにしてしまう習慣がチェルシーの選手にあると分析されていたのだろう。
5分にはセスクの裏にシルバも登場する。ウォーカーがそこまで攻撃参加できないので、代わりにシルバが登場する。徹底的にセスクサイドから仕掛け続けるマンチェスター・シティ。大忙しのセスクと、大外で暇そうにしているサネのコントラスト。シルバとデ・ブライネが同サイドでプレーする、片方のサイドから攻撃を仕掛け続けるマンチェスター・シティは、あまり記憶にない。忘れているだけかもしれないけれど、チェルシー対策としてはバッチリはまっていた。
悪手となった5-3-2
2トップにした理由は、たくさん考えられる。カウンターのために、前に人を残したい。アザールを左サイドハーフで起用する5-4-1だと、デ・ブライネとウォーカーへの対応でアザールが消費してしまう。または、2トップで前からボールを奪いに行きたいとか。11分に前からボールを奪いに行こうぜという姿勢を見せたチェルシー。しかし、その結末は、ウォーカーに中央を切り裂かれ(この場面もセスクの裏を使われている)、最後はシルバにフィニッシュを許してしまっている。
ボールを保持するチームに対しては、相手陣地から行う同数によるプレッシングを行うか、自陣に全員で撤退して相手に時間とスペースを与えない作戦のどちらかを使うのが定跡とされている。むろん、両方できるのが一番いい。それで、アトレチコ・マドリーは欧州で結果を残している。今日のチェルシーは、非常に中途半端になってしまっていた。よって、5-3-0-2のような形になってしまう。どっちつかず。よって、マンチェスター・シティのボール保持を全く邪魔できないけれど、相手にはまだ決定機を与えていないという15分過ぎのゲームであった。
また、チェルシーはボール保持にこだわりを見せていたが、サイドハーフに走って死んでタスクを担わせるマンチェスター・シティのプレッシングの前に四苦八苦。蹴っ飛ばしてモラタでいいような気もするのだけど、アスピリクエタ、アロンソともに空中戦で優位にたてないと計算したのか、あまり空中戦勝負を進んで行う雰囲気はなかった。だからといって、ボールを運べそうな雰囲気もまるでないどころか、マンチェスター・シティにビルドアップでボールを奪われてカウンターの機会を与える場面もあった。つまり、攻守にチェルシーはまるで機能していなく、ときどきアザールやモラタが個人技で時間とスペースを作れたときに何とかなるかもしれんな、くらいであった。
興味深いマンチェスター・シティの変化とチェルシーの修正
20分過ぎにストーンズが相手ゴール前の競り合いで負傷する。頭の負傷だったので、ピッチ内で治療が行われた。よって、チェルシーはこの時間をハーフタイムのように使いたい。
セスクの裏を狙ってくるなら、セスクを中央にしてやる作戦。ピルロがこの位置をやっていたように、実は意外に隠せるのだった。ボールを繋ぐことを考えても、セスクを中央で使うのは理に適っている。ストーンズの治療後のプレーでビルドアップをいきなり失敗するセスクだったけれど。バカヨコに比べると、セスクのほうがどの位置に立つべきかの判断は上手い。バカヨコはフィジカルを活かしてボールを奪うことを長所としている。人についていってなんぼ。
セスクが中央に移動したから、マンチェスター・シティは左サイドからの攻撃を増やしていった、というのは真っ赤なウソだ。実際には20分前から、マンチェスター・シティは左サイドからの攻撃を仕掛けていた。序盤は、デルフのアラバロールでカンテをピン止めし、シルバに時間を与えるいつもの形から始まった。そして、オタメンディが登場する。マンチェスター・シティの3バックには時間とスペースがかなり与えられていた。5-3-0-2の0の部分を謳歌していたと言えば、わかりやすいだろうか。なので、オタメンディが運ぶドリブルで上がってくる。よって、デルフはサイドに広がる。そして、隣り合うポジションは同じ列にいてはいけないので、サネがハーフスペースに移動する。となると、シルバが中央エリアに移動できるようになる。
シルバが中央エリアに移動すると、フェルナンジーニョに時間ができるようになる。セスクのピン止め効果。セスクがフェルナンジーニョに行けば、シルバとジェズスにライン間を使われるという無間地獄であった。ほとんどシルバのトップ下のような配置は、さらにチェルシーを追いつめる状況に繋がっていった。さらに、興味深かったのが、デ・ブライネとシルバが役割を変更することもあったことだろう。ビルドアップで何の苦労もないこの試合では、デ・ブライネが攻撃に集中できるようになる。
よって、非常にえぐぐなっていくマンチェスター・シティ。チェルシーはモラタが負傷し、ウィリアンが登場するが、5-3-2をいじらない。ただ、39分に走るアザールとウィリアンで初めてマンチェスター・シティのビルドアップを阻害することに成功する。39分まではほとんど守備では何もしていなかった。そんな試合の前半戦は0-0で終わる。後半戦はまた後日。チェルシーにチャンスがなかったわけではないけれど、最後のコーナーキックからのフェルナンジーニョのヘディング、エデルソンのフィードからのスターリングの超速攻など、マンチェスター・シティのほうが試合を思い通りに進め、さらに決定機を増やしていきそうな気配であった。チェルシーはさらなる修正をしなければ、後半に沈みそうな予感である。撤退か、前に出てくるか。コンテの策はいかに。
ひとりごと
シャフタール・ドネツク戦では、良くも悪くも目立っていたサネ。この試合では戦術的な理由からもまるで目立たなかった。ある意味で別のチームのようなマンチェスター・シティ。ロングボールによるサイドチェンジもほとんどなし。相手の内在的論理によって、こちらの振る舞い方は変わる好例だろう。マンチェスター・シティのネガティブトランジションやプレッシングに関しては、ほとんど機会がなかったので、特に書くこともない。ただ、この試合でもマンチェスター・シティの攻撃から守備への切り替えは抜群に早かった。このトランジション勝負をどう破壊するかはなかなか難しそうである。アザールで殴るくらいしかなさそうなチェルシー。そういう意味ではチェルシーの3バックによる配置的な優位性を、そんなのかんけーねーとばかりに、強度の高いプレッシングで破壊したマンチェスター・シティの振る舞いは、非常に論理的なものであった。チェルシーはプレッシングを行ううえでの最適解(ポジショニング)を見つけられないまま、コンテはハーフタイムを迎える。
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