マンチェスター・シティ対ドルトムント ~ポジショナルアタックと質的優位アタック~

2025/26欧州サッカー

はじめに

マッチレポを書こうと思った理由は、マッチレポが面白いと思ったからだ。

なんとなく試合結果を見て、なんとなくハイライトを見て、知ったふうな口を聞くことは、当時の自分はどうしても性にあわなかった。知ったかぶりをするにしても、マッチレポを読んでから、周りに喚き散らせば、「うるさいけど、こいつは試合を見ているんだな」と伝わることの偉大さに酔いしれていた気がする。どこで?

そんなことは決してなかったんだけど、フットボリスタが週刊でマッチレポを根性で載せていた時代は本当に愉快だった。ワールドカップのときとか、日刊でやっていたと記憶している。この記憶が間違っていることを願いたい。日刊ってどうやってやるねん。

最近はマッチレポが減ってきている気がする。読まれないとか読まれるとかいう話ではなく、自分はマッチレポが好きだったので、淡々と続けていきたい。最近はいろいろな媒体、といっても、フットボリスタとフットボールチャンネルくらいだけど、で書いているとしても、マッチレポは少ない。

というわけで、一人であがいてみたい。せめて週刊。何度目の決断か、わかりませんが、何度も何度も同じ決断を繰り返して生きていくんでしょう、たぶん。

というわけで、チャンピオンズリーグから、マンチェスター・シティ対ドルトムントを。

収斂する世界

序盤はドルトムントのポゼッションが目立つ形となった。

システム表記では【3421】だったドルトムント。しかし、よーく眺めると、【433】の風味を感じさせる部分が強かった。僕らの知っているマンチェスター・シティはハイライン&ハイプレッシングなんだけど、今日のマンチェスター・シティは一味違った。

ゴールキックやゴールキーパーからのプレーの再開ではハイプレッシングの気配を感じさせるところはいつも通りだった。ただし、相手がボール保持を安定させる、もしくは、守備の基準点が定まらないなと判断すると、さっさと諦めてミドルブロックを構える事が多かった。

この諦めの判断が早かった。もう諦めるのかい、みたいな。諦めると書くと、ネガティブに映るかもしれないけれど、別にネガティブでもない。それはミドルブロックで構えることにも慣れてきているからだ。かりにシュートまで相手がたどり着いても、残念そこはドンナルンマがいることも大きいのだろう。

マンチェスター・シティの早々の諦めによって、ボール保持から攻撃を繰り返すドルトムント。たぶん、10分すぎになると、マンチェスター・シティがボールを保持する展開へと試合は移り変わっていった。たぶん、こうなることもなんとなくマンチェスター・シティは知っていたのかもしれない。

マンチェスター・シティのボール保持に触れる前に、ドルトムントのボール保持について少し。左サイドはバイアーが大外でスベンションが内側、右サイドはアデイェミが右ハーフスペースと大外を占領しながら、リエルソンは後方で控えていた。

最近はこのような左右の役割の差によって、不均等構造で試合に臨むチームが増えている気がする。プレッシングの配置は均等構造を持ちたがる傾向もあるので、不均等構造のほうが都合が用意のだろう。

個人的にはアデイェミをサポートするリエルソンの立ち位置が面白かった。この試合では1秒に込められる情報量が他の選手と比べて格段に多かったアデイェミの周りに相手がついてこないように、ドクをひきつけるために敢えてアデイェミから距離を取るサポートは面白かった。

で、マンチェスター・シティに目を移すと、こちらも不均衡な構造を持っていた。3バックだったり、2バックだったりすることは当たり前。右サイドバックのマテウス・ヌネスが3バックの一員になったり、右サイドバックになったりする。でも、これが不均衡の合図ではない。

左サイドバックのオライリーがキーになっている。オライリーはわかりやすい質的優位をチームにもたらすことはあまりないが、ポジションバランスを維持する立ち位置を取ることができる。さらに、どの立ち位置でもマンチェスター・シティのボール保持の安定に貢献することができる。これがとても大きい。

オライリーは左サイドバックとして、左ウイングとして、左インサイドハーフとして、左セントラルハーフとして振る舞うことができる。オライリーの立ち位置によって、5レーンを埋めているドク、フォーデン、ラインデルスは自分の持ち場から解放される流れとなる。もしくは、オライリーの存在が彼ら周りの守備の基準点を乱すことに成功する流れとなる。

ほら、【325】から【3151】への変化で、フリーマンを作るあれである。さらに言えば、マンチェスター・シティはフリーマンの交換という裏技も持っている。フォーデンをずっとフリーマンとして使うのではなく、ときにはラインデルスが、ときにはドクがフリーマンとして立ち位置を変幻自在に変化させる役割に変化するのだった。

こうなると、セントラルハーフ周りの負荷は強くなる。3バックの両脇もどこまで相手を迎撃するかは常に悩みどころだ。マンチェスター・シティにはハーランドが控えていることも大きい。ボールを運べるラインデルスと、狭いエリアでもターンとゴールへのパスをこなすフォーデンのコンビは一見の価値がある。

試合を決めたもの

では、マンチェスター・シティのボール保持からの中央の変幻自在の立ち位置でボールを引き出したから勝利したのだな!となりそうだが、実際のきっかけはそこではなかった。

きっかけは15分のサビーニョの突破だ。華麗に裏を取られたスベンションがサヴィーニョを倒し、イエローカード。この試合のサビーニョは少し異次元であった。右の大外を担当するサビーニョはスベンションを完全に攻略し、ベンセバイニもまるで対応できていなかった。

つまり、中央のポジショナルアタックと、右サイドの質的優位アタックの合せ技でドルトムントは窮地に陥る。なんてことはないサビーニョ祭りだった。本来は複雑な左サイドからボールを前進させる形になりそうなものだが、シンプルにサビーニョアタックを繰り返すところに、マンチェスター・シティの試合の流れを掴む仕草が最高な試合であった。

ひとりごと

試合を見るときにどのようなルールで立ち位置が決まっているかの原則を探ろうと常にしてしまうのが悪いところ。もしくは職業病。なぜかマンチェスター・シティはわかりやすい。たぶん、グアルディオラからいろいろなものを学び取ったからなのだろう。

ドルトムントも悪くなかった。アデイェミはとんでもない左アタッカーになりそうだし、ヌメチャも良い選手だった。世界に散らばったマンチェスター・シティ下部組織コレクション大会を実施してほしい。

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