【ヨコのほんとうの意味】スペイン対チェコ【イニエスタとロシツキー】

EURO2016

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23人全員が有名なスペインの層の厚さは、尋常でない。サウール、イスコ、予選で活躍したパコなどがメンバーから漏れるくらいだ。23人の選び方に賛否両論はあるが、あとは結果で騒音を批判の声を黙らせるのみ。モラタ、ノリートのスタメンはかなり楽しみ。また、カシージャスではなく、デ・ヘアを選んだ選択も興味を持たせる。とうとう世代交代か。そういえば、ビクトール・バルデスはどこで何をしているのだろう。

20年おきにファイナリストになっているから!という歴史があるらしいが、現実的に厳しいか。それでも、中心選手のロシツキーはいなくてもオランダ、トルコ、アイスランドなどが同居する予選を首位で突破している。チェフがいるのに、失点が多いことが短所のようだ。メジャートーナメントでのロシツキーはラストダンスの可能性が高いので、最後のプレーでいい結果を期待したい。

横の数的優位を防いだチェコのスペイン対策

大方の予想通りに、スペインがボールを保持し、チェコが守備を固める展開が前半のほとんどを占めた。チェコもボール保持からの攻撃、カウンターの機会がなかったわけではないが、デ・ヘアまで届いた場面はわずかだった。ただし、スペインの守備に不安を感じる場面もあった。相手がボールを保持しているときに積極的なプレッシングを見せるよりも、ハーフラインからの撤退守備に切り替える場面が目立った。撤退守備も4-4-2なのか、4-1-4-1なのかが非常に曖昧だった。ボールを失ってからの切り替えはブスケツを中心に速さを見せつけていたが、相手がまったりとボールを保持していいるときの不安定感は、この先で弱点として露呈するかもしれない。

スペインがボールを保持しているときのチェコのシステムは、4-5-1。4-5-1の特徴は、2列目が横並びになっていることだった。バルセロナ対策として、3センターが必要だという時代があったことを思い出す。

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スペインは、列の枚数を調整することが得意だ。ブスケツが3列目に移動したり、シルバがイニエスタの列に加わったり、メッシだったらゼロトップで2列目の列に参加したりするだろう。列の枚数を調整する意味は、数的優位状態を作る。そして、守備の基準点を狂わせる。相手に複数の選手を用意した状態で横パスをすると、オープンになる選手が出てくるというからくりになっている。つまり、複数の守備の基準点を用意し、局地的に数的優位エリアを作る。そして、横パスでオープンな選手を作る。そのオープンな時間はほんのわずかなのだけど、スペインの中盤の選手にとっては十分すぎる時間とスペースになるという仕組みだ。

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ネチドがブスケツを担当していることもあって、スペインは横パスでオープンな選手を作ることができなかった。よって、後方からセルヒオ・ラモスとピケがネチドの横(1トップの脇、インサイドハーフの前)からボールを前進させるようになる。相手が物量で撤退してきたときのボールを保持する攻撃のトレンドは大外攻撃にある。ドルトムントが見せたようにサイドバックのクロスにサイドバックが跳び込んだり、折り返したりでチャンスの精度を高めていく方法だ。

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大外攻撃には6バックで対応するチェコ。準備万端すぎるチェコの守備であった。スペインはボールを循環させながら、あの手この手で迫っていく。最初のテはイニエスタのポジショニング。ジョルディ・アルバの位置から仕掛けることで、ロシツキーをおびき出し、モラタへのパスコースを確保する。次の手は、強引に相手の四角形(ダリダ、リンベルスキー、カドレツ、クレイチー)のポジショニングするイニエスタやシルバに楔のボールを入れる。さらに、ジョルディ・アルバをセラシエの裏に走らせてみる。シルバとポジションがかぶりがちだったセスクのポジショニングでクレイチーを動かすなどなど。

そんな中でも一番の得点の雰囲気を感じさせたのが、トランジションによるカウンターとイニエスタとノリートによるドリブルでの剥がし。前者はボールを失った→奪い返した→相手の守備が整っていないゆえのカウンター発動。自分たちのボール循環で相手の守備を分断するというよりも、ボールを奪った、相手の形が攻撃に転換している隙を狙ったカウンター。相手の守備が整っていないときは、素早い攻撃を見せるスペインだった。後者は自分たちのボール循環で相手の守備を破壊する。特にイニエスタのドリブル力は衰えることを知らない。イニエスタのノリートが相手を剥がし、相手陣地にボールを入れることで、スペインはチェコのゴールに迫っていった。

時間がたつにつれて、4バックと6バックを行き来するサイドハーフのポジショニングが曖昧になってくる。躍動するは、ファンフランとジョルディ・アルバ。ファンフランはシルバへのパスでチャンスメイクをし、ジョルディ・アルバはノリートを追い越すオーバーラップとインナーラップの使い分けで、自らフィニッシュに至る場面を作ることができていた。サイドバックのゲームメイクというよりも、チャンスメイクが求められる時代なんだなと実感させられたところで、前半は終了。最後にチェコのカウンターが炸裂するが、シュートはデ・ヘアの正面だった。

ロシツキーとイニエスタ

後半の序盤は、スペインのセットプレーの連続で幕が開けた。チェコも防戦一方にならず、ボールを奪ってからのスペインのプレッシングをかわせたときは、スペインの陣地に進入することができていた。攻撃の起点はロシツキー。イニエスタとのマッチアップを楽しんでいたロシツキーは、攻撃でも運ぶドリブルでチェコの攻撃を牽引していた。唯一のチャンスがセットプレー。しかし、シュートがしっかり当たらずに、デ・ヘアに止められてしまう。または、セスクの素晴らしいディフェンスに防がれてしまう。

後半のスペインは、セスクの位置が工夫されていた。前半はシルバとプレーエリアが重なる傾向にあったが、セスクは左に移動。イニエスタがブロックの外にいるので、セスクはライン間にポジショニングすることで、イニエスタの仕掛けを助けていた。その他ではモラタの裏抜け、ポストプレー、ジョルディ・アルバとノリートのコンビネーション、ノリートのカットイン、ファンフランの孤独なクロスと、多彩な攻撃を見せる。しかし、クロスが合わなかったり、チェフに止められたりしてしまう。

スペインはチアゴ・アルカンタラ、ペドロ、アドゥリスを入れてさらに攻勢にでる。もう殴り続けるしか無いよね状態。得点の雰囲気が高まった場面の起点は、ほとんどがイニエスタ。イニエスタのドリブルから始まる攻撃、何点はいるかわからない。相手がしっかりと守備を固め、守備の組織が発展してきた時代に、守備網に穴を空けるとすれば、一対一に勝てる選手だと言っていたのはグアルディオラ。ドグラス・コスタ、コマン、ロッベン、リベリとバイエルンに武器がいたことは記憶に新しい。スペインで言えば、イニエスタ。普通はパスでボールを運ぶんだけど、イニエスタはドリブルでボールを運ぶから凄い、みたいなことを言っていたのは、確かピルロ。

スペインからすれば、相手の守備が整っていないときに攻撃を仕掛けたいのだけど、チェコのデザインがそれを許してくれる機会は少ない。しかし、カウンター以外にも守備が整っていない瞬間は現れる。セットプレー崩れ。セットプレーは通常の役割と異なる場合が多い。しかし、セットプレーから、相手の攻撃が連続して続く場合は、セットプレー用の守備がイレギュラーな状態(フォワードの選手がペナルティエリア内で相手のマークをする)となる。このイレギュラーな状態も守備が整っていない、準備ができていないと表現していいだろう。イングランドもセットプレー崩れからやられたが、チェコもセットプレー崩れからやられた。イニエスタへのマークが甘くなり、繰り返されたクロスをピケが合わせてスペインが終了間際に先制点を決める。

チェコも最後の反撃に出る。本来の姿はもっとパスを回す姿なのだろう。ときおり本来の姿を感じさせるようなプレーをしていた。正面衝突よりも、勝点を狙ったプレーだったが、最後の反撃もデ・ヘアに止められてしまう。もともと守備も激しさを持って取り組んでいたロシツキー。攻守に働けるなんて当たり前だと言っているようなイニエスタとの繰り返されるマッチアップは、今大会のハイライトのひとつとなっただろう。

ひとりごと

チェコのスペイン対策は、立派だった。それでも決定機に何度もたどり着くスペインも立派だった。ボールを保持した定位置攻撃では、群を抜いているのが現実だろうか。相手がボールを保持したときの守備に不安が残るが、その機会がほとんどない、というバルセロナらしいサッカーになっている。スコアレスでもスペインへの評価は変わらないけれども、勝ち切ったことでチームの雰囲気も良くなるのだろう。また、途中で交代したモラタだけれど、十分に働けていたと思う。次の試合でも頑張ってほしい。

コメント

  1. ととや より:

    スペインは開幕勝利を飾れましたが、予選の時点で懸念された決定力不足はこの試合でも露呈。
    ドイツも予選では似た試合内容を経験していますし、
    攻撃戦術が多彩になった一方で守備戦術もそれに呼応する形で進化したことで
    最後はやはりストライカー次第、ということを改めて実感します(バルサがアトレティコに7連勝という冗談みたいな戦績を残したのも)。
    個人的にはチームと相性のいいアルカセルが見たかったですね。まだ始まったばかりなんですけど。

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