両チームのスタメンはこちら
前評判の高かった両チームだが、初戦で3ポイントを取ることができなかった。
ポルトガルは、ジョアン・マリオ、ダニーロ→ウィリアム・カウバーリョとクアレスマをスタメンで起用してきた。4-4-2の菱型から、オーソドックスな4-3-3にシステムを変更した。クアレスマは調子が良さそうだったが、4-4-2の菱型は機能していたポルトガル。クアレスマの起用ありきのシステム変更か、オーストリアに合わせた変更なのか、答えはピッチの中。
オーストリアは、出場停止のドラコビッチに代わってプレドル。怪我で欠場のユヌゾビッチに代わって、守備的なイルザンカーを起用。ユヌゾビッチのポジションにはアラバを上げる。そして、ヤンコ→ザビツァー。初戦を振り返ると、バウムガルトリンガーとアラバのコンビは機能していたと言い難い。ユヌゾビッチの怪我によって、そのコンビが解散したことが、オーストリアにとってどう転ぶかは非常に興味深い。
原点回帰のオーストリアと、得点だけが足りないポルトガル
オーストリアのサッカーの原点が何かはわからない。しかし、近年のサッカーにおいて、いつか帰るところは、4-4-2の愚直な守備と言ってもいいだろう。初戦で機能不全を起こしたオーストリアの修正は、4-4-2を愚直にこなす、というものだった。ハーフラインからプレッシングを基本の型とする。ポルトガルに自陣に押し込められたときは、4-4-1-1。動かされた2列目の穴をアラバが丹念に埋めていくことで、ポルトガルの狙いを消していく形になっていた。ユヌゾビッチの怪我のため、ポジションを上げたアラバだったが、この試合では守備に貢献するプレーが目立っていた。
アイスランドに続き、この試合でも4-4-2を相手にすることになったポルトガル。4-4-2の菱型では、役割を固定しない形でアイスランドを攻略していった。序盤の10分間は、膠着状態で試合が進んでいった。守備から試合に入るオーストリアに対して、ポルトガルは相手の守備の型を観察していく。
ポルトガルの観察タイムが終わったのが10分過ぎ。基本は2トップの脇のエリアをプレーエリアとする形で問題なしと考えたのだろう。初戦で見せたように、2トップ脇のエリアを攻撃の起点しようとボールを循環させ始める。最初に動いたのが、アンカーのウィリアム・カウバーリョだったことが面白かった。アンカーは、2トップの間にポジショニングすることがセオリーだが、ポルトガルの役割は非常に柔軟に設定されている。2トップ脇のエリアを使うこと、必ず誰かが2トップの間にいることが保たれれば、どの選手がどの位置でプレーしても問題がないだのろう。初戦からシステムが変わっても、自分たちのやるべきことが大きく変わらないというのは、ひとつの強さとして揺るがないものがある。
一方で、オーストリアは愚直に4-4-2をこなす道を選んでいる。初戦を見れば、2トップの脇のエリアをポルトガルが有効活用することは予測できることだった。オーストリアの2トップの脇のエリアへの対策は、2トップに走ってもらうだった。アラバ、ハルニクと本職でない選手が1列目に配置したオーストリア。両者ともにスタミナ、献身性と文句のつけようがない選手だ。よって、彼らがボール保持者の前に立つことで、攻撃の起点とさせないように走りまくる作戦でオーストリアは、ポルトガルのボール保持からの攻撃に対抗する。
攻撃の起点とする、オープンな状態でボールを持つ状態になかなかなれないポルトガル。しかし、ここまでは準備済みだった。ポルトガルはボールをワイドからワイドへ循環させることで、相手の1列目(2トップ)のスライドを無効化していく。3枚で横幅をスライドして対応していくことですら困難なのだから、2枚だったら言うまでもない。そのために、相手にサイドチェンジをさせないなどの対策があるのだけど、ポルトガルはサイドチェンジを繰り返すことで、2トップの脇のエリアを攻撃の起点としていった。
攻撃の起点からのポルトガルのポジショニングは、初戦と変わらずだった。ウイングが中へ、サイドバックが大外へ。両者がサイドに縦並びのときは、インサイドハーフが中へ。そして、センターバックが攻撃の起点となる。流動的なポジショニングに対して、オーストリアは選手を動かして対応。隙間のポジショニングもしっかりとマークにつけば関係ないの法則を採用してきた。選手を動かしてしまえば、トップへのパスコースができてしまうことがある。しかし、トップにいるナニやクリスチャーノ・ロナウドのポストプレーは、マークがしっかりしていれば恐れることはない。また、選手を動かしてできたスペースにアラバが登場すれば、守備のバランスを崩すことなく、相手とのマッチアップが可能となる。
てっきりアラバはラインごとの枚数の調整で、オーストリアのビルドアップを助けるものばかりだと思っていた。しかし、実際にはラインの枚数を調整する能力をボールを保持していない局面、守備で発揮していた。なお、守備の仕込みで精一杯だったのか、オーストリアのビルドアップはロングボールをゴールとする場面ばかりだった。ロングボールを目的とするというよりは、ロングボールを蹴らされるばかりだった。
ポルトガルの守備を見てみると。4-4-2の菱型と比べると、2列目の仕事が多くなっていた。3枚で横のスライドに注力するばかりでなく、相手のビルドアップ隊にもプレッシングをかける場面が何度も見られた。そういう意味で言うと、ポルトガルにつけいる隙は間違いなくあった。しかし、守備で追われる、またはボールを支配するポルトガルを前にして、攻撃機会を削られてしまったことで、オーストリアの攻撃は序盤の決定機くらいとなってしまった。
相手がしっかり守っているとしても、攻撃側の個人技が炸裂することもあれば、相手がミスをすることもある。時間がたてばたつほどに、そういった粗は見えてくるものだ。よって、ポルトガルは攻めに攻め立てる。決定機も作る。アイスランド戦の反省を活かして、手の内を隠している場合ではない!ということで、コーナーキックからチャンスも作る。しかし、シュートはポストに当たるわ、アルマの正面に飛びわと踏んだり蹴ったりは、初戦と同じであった。
オープンな状態からのクロスやシュートも何度も見られたので、チャンスメイクは全く問題ではない。最後の崩しの場面での精度の低さがポルトガルの足を引っ張った。特にクロスに関しては、もう少しデザインがないと、空中戦を長所とする選手がいるわけでないので、苦しいかもしれない。決めるときは決めるクリスチャーノ・ロナウド。今日も彼の日ではないようだった。フリーキックが入らないことは日常だったとしても、PKを外してしまったことは痛恨の一撃だったろう。
オーストリアの采配は、なかなか面白かった。最初にアラバ→シェプフ。主力と考えられているアラバが最初に交代する。守備の負担を考えれば、納得の采配なのだが、アラバを残すことのメリットよりも、バウムガルトリンガー、イルザンカーの守備力を重視したのだろう。残りの2枚の交代は、背の高い選手を投入。ペペが上がってきたときの対策だろう。特に、ヒンターゼーアを右サイドで起用し、ゴールキックの的にする采配は効いていた。意外にも空中戦で強さを見せていたハルニクとアラバだが、サイドハーフの選手が競ってくれれば、1列目の選手はボールラインよりも相手ゴールに近い位置にポジショニングすることができる。
ポルトガルの最初の手は、クアレスマ→ジョアン・マリオ。4-4-2の菱型に戻したようだった。ようだったという表現になった理由は、攻め急ぎのなかで、攻守のバランスが決して良くなかったからだ。次の手はアンドレ・ゴメス→エデル。そして、ナニ→ラファ・シルバ。システムなんて関係ないぜという采配になってきている。それでも猛アタックを仕掛ければ何かが起きる可能性はある。その何かがPKになったのだけど、クリスチャーノ・ロナウドが外してしまった次点で、試合の引き分けは決まったようなものだった。こうして、2試合連続決定力不足に泣かされたポルトガルはまさかの崖っぷちとなってしまった。
ひとりごと
オーストリアからすれば、ひとまず体裁は整ったというところか。最終戦に勝てば、グループリーグ突破の可能性がまだ残るだろう。チームのプレーモデルは未だに見えてこないが、守れることを示したことは大きい。あとは、何とか相手のゴールまで辿り着くだけ。
ポルトガルはまさかの2引き分け。勝点2。グループリーグ敗退もちょっと現実的になってきた。オープンな状態での攻撃が多く、やっていることは間違っていない。セットプレーでも多彩さをみせつけた。しかし、呪われているようにシュートが決まらない。人を代える選択肢はないと思うので、クリスチャーノ・ロナウドが爆発するか、このまま大会を去るかにかかっているだろう。
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