【全てはフェルナンド・サントスの】クロアチア対ポルトガル【シナリオ通りに】

EURO2016

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結果は、延長戦後半にポルトガルがカウンターを成功させ、クロアチアに勝利している。とあるオランダ人の言葉をかりれば、中二日の法則というものがサッカー界には存在する。平たく説明すると、中二日のチーム(ポルトガル)と中三日のチーム(クロアチア)が対決した場合、中三日のチームのほうが超有利ということだ。この試合でポルトガルはまさかの中二日。クロアチアは休養十分なうえに、スペイン戦で主力を温存させていた。つまり、試合を行う前からポルトガルには不利な状況がそろっていたということになる。そんな不利な状況を凌ぐためのプランを、フェルナンド・サントスはしっかりと考えてきていた。

相手にボールを保持させる仕様のポルトガル

フェルナンド・サントスの最初の手は、スタメン構成だった。リカルド・カルバーリョ→フォンテ、ヴィエリーニャ→セドリック、モウチーニョ→アドリエン・シルバと、揺るがないだろうと思われた選手たちを初出場の選手たちに代えた。この交代の理由は、疲労もあるだろう。グループリーグのポルトガルは、ボールを保持することを基本としてきた。キラーイを中心とするビルドアップを巧みに行なうハンガリーを相手にしても、その姿勢は揺るがなかった。数的同数でプレッシングを行ってでも、相手にボールを持たせたくない姿勢は、終始一貫していた。

しかし、この試合でのポルトガルは、相手にボールを持たせる道を選んだ。中二日という疲労状態を考慮したのかもしれない。また、ポルトガルのボール保持は運動量を必要とするスタイルだ。トップ下、インサイドハーフ、2トップ、サイドバックが多様な役割を重ねて行なう特徴を持っている。ゆえに、ボールを保持する攻撃をしていても、どうしても攻め疲れという現象が起きてしまう。また、ボールを保持したとしても、効果的に得点に繋がらなかったことをグループリーグで証明してしまっている。それだったら相手にボールを持たせてしまおう。相手にボールを保持させるとすれば、守備に特徴を持つ選手を起用しようと、フェルナンド・サントスが考えても不思議ではない。

モウチーニョ→アドリエン・シルバはトップ下で起用された。アドリエン・シルバの役割は、モドリッチを徹底的に抑えることだった。ひたすらにモドリッチを追いかけ回しながらも、自分たちのボール保持ではしっかりと貢献する。その姿勢は、モウチーニョにはなかなか難しかったかもしれない。また、ヴィエリーニャ→セドリックも堅実な守備を見せた。左サイドのラファエル・ゲレイロが攻撃的に振る舞う代わりに、しっかりとバランスを保っていた。フォンテもリカルド・カルバーリョに劣らないプレーを見せ、相手にボールを保持させる仕様のポルトガルは、準備万端でクロアチアを迎え撃った。

ボックスビルドアップへの対策とスルナ封じ

クロアチアにボールを保持させると決めたポルトガル。次に考えることは、どのようにクロアチアにボールを保持させるかとなる。ポルトガルのシステムは、4-3-1-2。特徴的だったのは前線の役割だった。クリスチャーノ・ロナウドはチョルルカの前、ナニはバデリを見ながら、時には前にでる。そして、アドリエン・シルバはモドリッチとデートだった。クロアチアのビルドアップは、2センターバックと2セントラルハーフによって行われる。よって、ポルトガルは2セントラルハーフを徹底的に抑え、2センターバックもチョルルカ周辺にクリスチャーノ・ロナウドを配置して、クロアチアのビルドアップへ対応した。

この方法は、ドイツ対スロバキアの、後半のスロバキアの戦い方に似ている。クロアチアの攻撃方向を眺めると、スルナの右サイドを長所としていることがわかる。初戦のスルナによるクロス爆撃は記憶にあたらしいだろう。右サイドで作って、左サイドのペリシッチが仕留めることがクロアチアの得意技だ。よって、ポルトガルは右サイドからの攻撃を防ぎたい。そのためにはボールをビダに持たせる必要がある。ビダからスルナサイドへの華麗なサイドチェンジは捨てるとして、ビダにボールを持たせることで、ポルトガルはクロアチアの攻撃の精度低下を狙った。

ポルトガルの守備の狙いを整理すると、モドリッチとバデリを経由した攻撃を許さない。ついでに、チョルルカからスルナサイドへのボールの供給をクリスチャーノ・ロナウドをうろうろさせることで、制限する。よって、クロアチアの攻撃は、ビダが中心となる。そうなれば、攻撃の精度は減るだろうという計算だ。実際に、前半のクロアチアは様子見な雰囲気もあった。ポルトガルが行ってきた高い位置からのプレッシングや、ボール保持をどのように行ってくるかを観察したかったに違いない。実際には何もやってこなかったが。

ポルトガルの守備の前に、クロアチアはモドリッチたちがポジションを下げてプレーをするようになる。自然と増えていくロングボールだが、ウィリアム・カウバーリョとペペを中心とするポルトガルの守備陣に対して、マンジュキッチたちは不発となった。また、モドリッチたちが下がってプレーすることで、前線の枚数不足が、ポルトガルに余裕を与えていた。攻撃を跳ね返しながら、自分たちらしい攻撃を仕掛けていくポルトガル。全ては予定通りの前半戦だったのだろう。

全てはフェルナンド・サントスの手のひら

後半のクロアチアは、高い位置からプレッシングを行なう。そして、ストリニッチの攻撃参加からのクロスによって、後半の自分たちの姿勢を明確にしてきた。前半のクロアチアのサイドバックは、低めのポジショニングが目立った。よって、ポルトガルのインサイドハーフの守備に捕まり、守備は安定すれど、攻撃では両者ともに目立つ場面はほぼなかった。よって、後半は一気呵成にでるクロアチア。相手が中二日だったこともあって、もともと後半勝負だったのかもしれない。

そんなクロアチアの姿勢を見て、フェルナンド・サントスの次の手は、アンドレ・ゴメス→レナト・サンチェス。そして、システムを変更する。4-4-1-1か4-1-4-1なのだけど、大切な点は、サイドハーフとサイドバックを置いたことだ。ナニが右サイドハーフになり、クリスチャーノ・ロナウドがワントップとなる。つまり、クロアチアのサイドバックのポジショニング、サイドハーフが自由になるのくだりに対して、複数による対応をさっさとしてきた。恐らく、後半の頭からクロアチアがどのように動いてくるか予想していたのだろう。よって、クロアチアの手を見ると、すぐに動くことができた。

レナト・サンチェスの役割は移ろい気味だったが、フィジカルを活かしたボール奪取と、バイエルンに引きぬかれただけのことはある意外な上手さが両立している選手だ。ボールを運ぶ推進力のある選手で、ポルトガルの攻撃に変化をつけることができていた。守備面でもインサイドハーフだったり、ウィリアム・カウバーリョの横にいたりとときどきよくわからなかったが、しっかりと守備に貢献していた。

ポルトガルの守備方法の変化によって、クロアチアは新たな対策が必要となる。しかし、チャチッチにこれ以上の策はない。よって、フィールドの選手にすべてが託された。解禁された右サイドの攻撃もジョアン・マリオとラファエル・ゲレイロに抑えられ、中央はアドリエン・シルバとレナト・サンチェスが邪魔。頼みの綱のマンジュキッチはペペに封じ込まれ、ラキティッチはウィリアム・カウバーリョに苦戦と、にっちもさっちもいかなくなっていった。

クロアチアにとって時間を味方につけたいのだが、最初から守備で耐え忍ぶことを前提としているポルトガルの守備に乱れはなかった。セットプレーやクロス爆撃の力技を見せているかが、どうしてもシュートが枠に飛ばない。特にボールを持たされたビダの決定機は、色々と物悲しくさせた。挽回のチャンスだったのに。がっつり守備をするポルトガルはクアレスマを投入し、ナニを左サイドハーフへ移動させる。着々とカウンターの準備を進めていくが、PKも視野に入れていたことだろう。

延長になっても枠内シュートが両チームにないという展開は、フェルナンド・サントスによってもたらされた。そして、試合をクロアチアが強引に動かそうとすると、ポルトガルにカウンターが発動する。レナト・サンチェスがボールを運び、ナニのアウトサイドパスをクリスチャーノ・ロナウドがシュート。こぼれ球をクアレスマが押し込んで、クロアチアを絶望に叩き落とした。延長後半のゴールはまさに出来過ぎたストーリーだったが、下馬評にめげずに自分たちの勝ち抜けの確率をしぶとく上げていったポルトガルが試合を決着させることに成功した。

ひとりごと

優勝候補のクロアチアが散る。万能型のクロアチアだったが、ボールを保持したときの精度を削られ、相手がボールを保持したときも苦戦すると、厳しい試合になってしまった。何かの拍子に得点が決まりそうな場面もあったが、枠内シュートが0か1かではやはり難しい。

枠内シュートが2のポルトガルだが、あの場面を作れたことが全てか。都合よく考えれば、守り切ってのPKが基本路線だけど、最後の最後にカウンターのチャンス来るかもね、みたいな予想はあったと思う。次の相手との試合前に休息ができることで、打てる手は増えるだろう。何をしてくるかわからなくなったポルトガルは、相手からすれば予想のつかない不気味なチームへと変貌した。

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