【レアル・マドリーは終わったのか?】レアル・マドリー対アトレチコ・マドリー

マッチレポ1516×リーガエスパニョーラ

レアル・マドリーのスタメンは、ケイラー・ナバス、ダニーロ、セルヒオ・ラモス、ヴァラン、カルバハル、クロース、イスコ、モドリッチ、クリスチャーノ・ロナウド、ベンゼマ、ハメス・ロドリゲス。マルセロ、ベイルは怪我のため離脱している。ジダンが監督に就任してから好調のイメージがあるレアル・マドリー。しかし、ベニテス時代と、そんなに差がない数字らしい。ジダン就任以降のレアル・マドリーの相手は、決して強豪を相手にしてきたわけではない。それゆえの好調に見えていた結果という数字。そして訪れた強豪との対決で、ジダンの真価が問われている。さらに言えば、レアル・マドリーはシメオネ以降のアトレチコ・マドリーを苦手としている。リーガ・エスパニョーラで優勝の望みを残すためにも、負けられない試合。

アトレチコ・マドリーのスタメンは、オブラク、フェリペ・ルイス、ゴディン、ヒメネス、ファンフラン、アウグスト・フェルナンデス、ガビ、コケ、サウール、フェルナンド・トーレス、グリーズマン。中国への移籍の噂のあったフェルナンド・トーレスがスタメンに復活。アウグスト・フェルナンデスも怪我から復活。ティアゴ、カラスコなどは怪我で離脱しているが、十分なメンバーが揃ったと言えるだろう。シメオネ以降はレアル・マドリーをお得意にしているアトレチコ・マドリー。リーガ・エスパニョーラ優勝を狙うには、アトレチコ・マドリーにとっても負けられない試合。つまり、バルセロナに挑むための天王山の決戦。

■迎撃には飛び出し

レアル・マドリーのボールを保持しているときのシステムは、4-3-3。相手がアトレチコ・マドリーでも基本的な構造は変わらない。サイドバックの列を上げ、インサイドハーフの列を下げで攻撃の起点を作ることを特徴としている。ただし、その形にこだわりすぎずに、クロースとモドリッチ、2センターバックによるビルドアップの形もあわせもっている。

アトレチコ・マドリーのボールを保持してないときのシステムは、4-4-2。レアル・マドリーのビルドアップの形がスタートのポジションを動かして行なう形だと定義すれば、ビルドアップに適したポジショニングに変化する前に、相手に圧力をかけてしまおう、という狙いを見せる。平たく言うと、相手陣地から深くプレッシングをかける。試合開始の合図とともに、レアル・マドリーのビルドアップ隊に襲いかかるアトレチコ・マドリーの面々。

相手のビルドアップに対して、枚数をそろえて数的同数にするプレッシングが少し流行っている。ビルドアップは数的優位を前提としているので、その前提を覆してしまえ、というセオリー返し。アトレチコ・マドリーの守備の特徴は、ボールサイドのセントラルハーフはインサイドハーフについていき、プレッシングに連動する。1列目(グリーズマンたち)のボールサイドの選手が、ボール保持者(主にレアル・マドリーのセンター爆)へプレッシングをかけ、もう一方の選手がクロースにつく役割になっている。

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スライド守備に対する定跡は、サイドチェンジ→サイドチェンジ後の素早い縦パスによる前進。または、前線の選手(クリスチャーノ・ロナウド、ベンゼマ、ハメス・ロドリゲス)のライン間でボールを受ける動き。前者は高速スライドで対応し、後者にはサイドバックがどこまでも迎撃スタイルを見せることで、対応するアトレチコ・マドリー。さすが、チーム全員がシメオネの魂を装備すると表現されただけのことはある。

そんなアトレチコ・マドリーの守備に対して、レアル・マドリーも準備を見せる。相手のサイドバックはウイング(クリスチャーノ・ロナウドやハメス・ロドリゲス)へ迎撃スタイル(ゾーンを越える動きをしてもついてくること)をしてくるので、ウイングのポジショニングでサイドバックを動かし、サイドバックの裏を狙う狙いを見せはじめる。アトレチコ・マドリーのサイドバックの裏には、ベンゼマかインサイドハーフ(イスコやモドリッチ)を走らせた。この動きに対して、アトレチコ・マドリーはセンターバックを動かすしか対応策が残っていない。しかし、センターバックは中央から動きたくないようで、マークの受け渡しを画策。しかし、前から守備をしたい2列目より前の選手の以降もあって、特にガビサイドは怪しい役割分担になっていた。

レアル・マドリーからすれば、ビルドアップでオープンな選手(ボール保持者に対して、相手が前に立っていない状態)を作る。次にウイングの動きで相手のサイドバックを動かしてスペースを作り、そのスペースで勝負する展開を再現性を持って繰り返したい。アトレチコ・マドリーはこの形を繰り返させたくない。よって、アトレチコ・マドリーの手は、さらにプレッシングの圧力を強めることで、ビルドアップでオープンな選手を作らせないようにしてきた、なお、センターバックの選手もいざとなったら迎撃スタイルだったので、なかなかのフィジカルバトルを前線の選手は繰り返していたレアル・マドリー。1列目の選手を追い抜いていくような動きを日常的に仕込めれば良いのだけど、サイドバックとインサイドハーフのポジションチェンジの関係でそういった関係性を構築するのは難しそうであった。

そんなアトレチコ・マドリーのプレッシングの圧力を逃がすために、レアル・マドリーは深さを使うようになる。その名もケイラー・ナバスへバックパス。なんてことはない手だ。アトレチコ・マドリーはケイラー・ナバスがそこまで繋げる選手ではないと判断したのだろう。ケイラー・ナバスまでも深追いを見せることで、ケイラー・ナバスにボールを蹴っ飛ばさせればOKというプレッシングを見せる。前半のレアル・マドリーは失点をしそうな場面は作られなかったのだけれど、サンチャゴ・ベルナベウを最高に不安にさせた場面は、ケイラー・ナバスのバックパス処理であった。

これは危険だと、レアル・マドリーはクロースを3列目に下げて、ビルドアップを行なうようになる。また、アトレチコ・マドリーもずっと相手を追いかけまわすわけにもいかないので、撤退守備で相手の攻撃を止める時間が増えていく。中盤の激しいボールの奪い合いを続けながらも、徐々にアトレチコ・マドリーが撤退を選択したこともあって、レアル・マドリーがボールを持つ時間が増えていった、

レアル・マドリーの攻撃の起点は、ポジションを下げたインサイドハーフなので、その前に立つアトレチコ・マドリーのサイドハーフ。ボールの位置に応じてポジショニングが決まるゾーンディフェンスのルールを、相手にあわせてアレンジしていることが特徴。相手の能力によっては、またはエリアによっては、人への意識を強くしなければならない。レアル・マドリーの形から1列目を追い越す選手がいないこともあって、かりに持ち場を離れてもそのエリアを使われることは少ないという事情が、アトレチコ・マドリーの人への意識を強くすることを許していた。ただし、レアル・マドリーもボールを保持しながら強引な個人技、繰り返されるコンビネーションで突破を狙い続ける。

アトレチコ・マドリーの攻撃は速攻とカウンターが中心。レアル・マドリーのウイングの守備が不安定なこともあって、サイドバックの攻撃参加を必須にすることは、レアル・マドリーと試合をするチームにとって必修。カウンター返しが怖いけれど、攻めきれれば問題なし。攻撃の中心はフェルナンド・トーレス。レアル・マドリーはサイドバックが高いポジショニングを取るので、その裏をフェルナンド・トーレスに狙わせる。攻撃的なポジショニングをするサイドバックの裏を狙うことは永遠に今後も残り続ける対策なのだろう。相手のサイドバックエリアを攻略するアトレチコ・マドリー。もちろん、そのままゴールに直結するようなチャンスメイクをしたいのだが、無理をせずにコーナーキックを狙っていたことも印象的だった。繰り返されるコーナーキックとカウンターで得点を虎視眈々と狙い続けるアトレチコ・マドリー。しかし、前半はスコアレスで終わる。

■マジョラル、ルカス・バスケス、ヘセ

後半の頭から、ベンゼマ→マジョラル。おそらく、ベンゼマは怪我。マジョラルの加入によって、レアル・マドリーのポジショニングはカオスになる。クリスチャーノ・ロナウドは守備をできればしたくないから中央に移動。カルバハルへのサイドチェンジからクリスチャーノ・ロナウドが絡む形もあり、メリットもデメリットもでてきそうな選手配置となった。

そして、アトレチコ・マドリーに先制点が決まる。スローインからのボールの奪い合いに抜けだしたのはグリーズマン。ボールを奪いに行く積極的なスタイルが裏目に出た瞬間のレアル・マドリー。グリーズマンの運ぶドリブルに対して、オーバーラップはフェリペ・ルイス。もちろん、レアル・マドリーのウイングは下がってこないので、フェリペ・ルイスとの華麗なワンツーを決めたグリーズマンが決めて、アトレチコ・マドリーが先制する。ケイラー・ナバスもノーチャンスだった。

55分にハメス・ロドリゲス→ルカス・バスケス。ベンチにビックネームの選手がいないレアル・マドリー。怪我人がちょっと多い。セルヒオ・ラモスの運ぶドリブルによる攻撃参加も目立ち始めるレアル・マドリー。サイドチェンジや大外からの攻撃が増えていくが、なかなかフィニッシュまで繋がらない。多少のリスクを納得させながらのビルドアップも目立ったが、こういう場面ではミスにならないのは、さすがというかなんというか。

そんな力技で迫っていくレアル・マドリー。ボールの奪い合いになれば、五分五分の展開を見せるアトレチコ・マドリー。しかし、段々と捕まえきれなくなっていく。よって、レアル・マドリーに押し込まれる時間が長くなる。ただし、ゴール前を固める守備では強さを見せているので、押し込まれても問題はない。しかし、隙を見せれば決定機を作られてしまう。2度の決定機はクリスチャーノ・ロナウドが外して事なきを得た。

70分にイスコ→ヘセ。最初からヘセで良かったような気もするが、先に出てきている選手もジダンからの信頼感を得ているのだろう。

システムを4-4-2に変更し、攻撃的にでる。4-4-2→4-3-3で攻勢を強めていたベニテスとは逆の方法論なジダン。コンビネーションと個人特攻を中心にアトレチコ・マドリーのゴールに迫っていく。アトレチコ・マドリーも全員守備でレアル・マドリーの攻撃に抵抗。ときどきカウンターを仕掛けることもあるが、繰り返されたサイドバックの攻撃参加は封印。傷んだ、または疲労した選手を交代しながら守備の強度を維持していく。レアル・マドリーはゴール前に迫れる場面も作ることはできていたが、いかんせん優位にたてるポイントを作ることができなかった。サイドだったら勝てるとか、空中戦なら勝てるとか。よって、様々な攻撃を強いられる展開になる。クリスチャーノ・ロナウドには決定機がその後も訪れたが、ゴールには届かず。アトレチコ・マドリーの隙から生まれたカウンターチャンスもダニーロのシュートは枠の外へ。今日はそういう日なのかもしれんね、というわけで帰り始めるサンチャゴ・ベルナベウの観客たち。その悲観的な予想が裏切られることなく、アトレチコ・マドリーがバルセロナを追いかける資格を手に入れた試合となった。

■ひとりごと

レベルの高い試合だったと思う。特に中盤でのボールの奪い合い、切り替えスピードの速さは両チームともに尋常でなかった。結果を分けたのが、守備の不安定さの差だとすれば、妥当な結果だったかもしれない。ただ、アトレチコ・マドリーが守備に全振りしているときにゴールを奪えるチームが世界にどれだけあるかと考えると、レアル・マドリーからすればちょっとついてなかったかもしれない。ベンゼマの怪我とか。

ジダンの采配を見ると、もうちょっとでスターになれたかもしれない若手トリオ。そんな場面は確かにあった。相手が引いている状態で、ハメス・ロドリゲスとイスコをどのように使ったら良いかには色々な議論がスペインではなされていそう。中央に彼らのどちらかを配置する形も見てみたかったので。ただし、選手の気迫というか、なんとかしてやろう感はとても感じたので、レアル・マドリーはまだ死んでいない。というわけで、チャンピオンズリーグにすべてをかけるレアル・マドリーがどうなっていくかで、ジダン監督の評価も決まっていくだろう。もちろん、どのような負け方をするかも含めて。

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