【アンカーシステムへのプレッシング】レアル・ソシエダ対バルセロナ【ブスケツが不調になりそうな理由】

マッチレポ1617×リーガエスパニョーラ

レアル・ソシエダのスタメンは、ルジ、ユーリ、イニゴ・マルティネス、ラウール・ナバス、カルロス・マルティネス、イジャラメンディ、スルトゥサ、シャビ・プリエト、オヤルサバル、ベラ、ウィリアン・ジョゼ。監督は、バルセロナのレジェンドのエウセビオ。バスク地方と言えば、どうしてもビルバオが目立ってしまうが、レアル・ソシエダも非常に健闘している。そして、ホームのアノエタでは、バルセロナに勝ちまくっている過去も持っている。今季の好調さを証明するためにも、アノエタでの結果を繋いでいきたい。

バルセロナのスタメンは、シュテーゲン、ジョルディ・アルバ、マスチェラーノ、ピケ、セルジ・ロベルト、ブスケツ、アンドレ・ゴメス、ラキティッチ、ネイマール、スアレス、メッシ。ウムティティやイニエスタは未だに怪我をしているが、クラシコに向けて怪我人が戻ってきている印象を受ける。ふたりともにクラシコには間に合いそうだが。今季はリーグ戦での取りこぼしが多いバルセロナ。鬼門アノエタでいつものように勝ち点を落とすと、ダメージが大きい。ただし、6シーズンも勝っていないので、その壁は大きいか。また、ルイス・エンリケとエウセビオの対決もこの試合への興味を駆り立てる要因のひとつだろう。ちなみに、あのポルトガルのエウゼビオではない。

チーム設計あれこれ

最初に両チームの並びはこちら。

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試合の展開は後半も一様だった。基本的にレアル・ソシエダが試合を支配し続けた。前線からのプレッシングでバルセロナのボール保持を破壊し、自分たちのボール保持でバルセロナの守備を切り裂いた。グアルディオラ時代ならば、自分たちのポジショニング、システムを変化させることで、相手に解決しなければならない状況を作り出していた。しかし、ルイス・エンリケはほとんど動かない。もちろん、試合が安定しない状況だからこそ、両チームの間でボールが移り変わっていく展開は増えていくだろう。その機会が増えていけば、ネイマール、メッシ、スアレスの火力を全面に押し出す機会は増えていく。よって、試合をどうしても安定させなければいけない、という思想が、ルイス・エンリケには、多分無い。

エウセビオに率いられたレアル・ソシエダは、かつてのバルセロナの代名詞をしっかりと実行しているように見えた。キーパーも含めたボール保持&前線から激しいプレッシングをすることによって、相手からボールを奪い返すことを徹底的に行なう。バルセロナやレアル・マドリーが抱えている問題である、試合を決めることができる選手が献身的に守備をしてくれない問題とレアル・ソシエダは向き合う必要がない。よって、11人が献身的にハードワークを行なえることが、激しいプレッシングを可能とし、エウセビオの設計図がレアル・ソシエダにボール保持を許可している。バルセロナのハードワーク版がレアル・ソシエダだとイメージすればわかりやすいかもしれない。

レアル・ソシエダのプレッシング

プレー再開(主にゴールキック)やシュテーゲンにボールを下げたときのレアル・ソシエダのプレッシングは強烈さと連動性を兼ね備えていた。バルセロナがボールを保持しているときのレアル・ソシエダのシステムは、4-4-2となる。シャビ・プリエトが前の列に移動し、イジャラメンディも同じく移動する。4-4-2と4-3-3ではブスケツがフリーになりそうだが、なりそうでならない。その仕組みを見ていく。

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ゴールキックのときは、4-4-2で構える。シャビ・プリエトとマスチェラーノの距離よりも、ウィリアン・ジョゼがピケの近くに立つことで、ボールをマスチェラーノ側に誘導している。マスチェラーノよりもピケを警戒していたのだろうし、メッシサイドにボールを運ばせたくなったという理由もありそうだ。

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逆サイドを思い切って捨てる。巧みなのは、ボールサイドでないサイドハーフのポジショニングだった。状況によっては4-1-3-2のようになるレアル・ソシエダのボールを保持していないときのシステムを支えていたのが、サイドハーフコンビだ。ときにはバルセロナのインサイドハーフとサイドバックの中間ポジショニングで守備に備え、逆サイドにボールがあるときは、ボールサイドでないインサイドハーフのマークをしっかりとついていた。

バルセロナからすれば、サイドチェンジをすればプレッシング回避となる。しかし、バルセロナにマルセロはいない。また、レアル・ソシエダのプレッシングのスピードが速かったこともあって、ほとんど時間を与えてもらえなかった。同サイドの頼みの綱のネイマールもカルロス・マルティネスの対応とイジャラメンディやベラによるプレスバックで挟み込まれていた。よって、特別な選手が時間を稼ぐというバルセロナを救ってきた裏技も、レアル・ソシエダには通用しなかった。

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しかし、バルセロナもボールを保持することに魂を捧げてきた。よって、セルジ・ロベルトにボールを逃がす場面がなかったわけではない。しかし、ボールを逃がすと、今度はサイドバックが出てくる。昨年のボルシア・メンヒェングラッドバッハがグアルディオラ対策で行った手法に似ている。ボルシア・メンヒェングラッドバッハは、バイエルンにボールを保持させたくなかった。よって、同数によるプレッシングでボール保持の破壊を試みる。しかし、同数を前線に投入すると、後方の頭数がどうしても足りなくなる。でも、3バックで我慢だとという思想。プレッシングがかかっていれば、同数の前線にボールが届くとしてもロングボールとなる。ならば、ボールが前線に届くまでの時間を利用して3バックでスライド作戦でバイエルンに対抗していた。

レアル・ソシエダの最終ラインのヘルプも同じような発想で行われている。いざとなれば、3バックでも問題なし。それよりも、ボールを受けに下るネイマールやメッシを捕まえるほうがメリットが大きいと計算したのだろう。レアル・ソシエダは、このプレッシングでバルセロナのボール保持を破壊することに成功する。中央をうろちょろするメッシがビルドアップの出口となれば、状況は変わりそうだった。しかし、その位置までボールを運ぶことに苦しむバルセロナだった。後半にはルイス・エンリケがゴールキックは蹴っ飛ばせと指示を出すくらいに、ボールを前進させることに苦労していた。

バルセロナの4-4-2の守備

バルセロナのボールを保持していないときのシステムは4-4-2。奇しくもレアル・ソシエダとそっくりな変化となった。ネイマールをサイドハーフの守備の役割を行わせる方法は、レアル・マドリーがディ・マリアの守備を行わせていたことを思い出させる。

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キーパーを使ったビルドアップをするレアル・ソシエダに対して、スアレスとメッシの守備の役割はあやふやだった。後半になると、多少は守備に奔走するようにはなった。しかし、基本的に何もしない。何もしないなりに立ち位置でパスコースを制限するとかもない。よって、何が起きるかというと、ボール保持者に対して、ファーストディフェンダーが決まらない。よって、ブスケツが必要以上に相手を追いかけ回す場面が出てくる。本来ならばメッシやスアレスがプレッシングに行かなくてはならない状況でも行かない。だから、ブスケツがでる。

ブスケツが前に出れば、アンドレ・ゴメスやラキティッチはカバーリングを行う必要が出てくる。しかし、あまりしない。さらに、ネイマールが中央に絞ってくるかといえばしない。よって、ブスケツの負担がえげつないことになっている。誰もボールを取りに行かない→自分が出ていく→自分の出ていったエリアを相手に使われる→ブスケツが絶望する。こんなサイクルに突入している。フィジカル的にもきついし、精神的にもなかなかきついだろう。なお、イニエスタもブスケツのような仕事をしているときがあった。

この試合はレアル・ソシエダがボールも支配した試合となった、その理由が両チームの守備のレベルの差にある。もちろん、バルセロナはボールを持たせてカウンターという考えもあったゆえだろう。しかし、レアル・ソシエダのプレッシングにたじたじとなってしまったことは紛れもない事実だ。そして、さらにバルセロナが危険な状況にあるのは、そのたじたじの状況から抜け出すアイディアがないことだろう。レアル・ソシエダのプレッシングを正面から受け止め滅びていく姿勢は、ある意味で潔いのかもしれないが、状況によって変化していくバルセロナが本来の姿だとすると、非常に程遠いのが現状だ。

ルイス・エンリケの采配

後半の頭からラキティッチ→デニス・スアレス。メッシに時間とスペースを与えるために行われるメッシを追い越していく動きを、この試合ではほとんどやる機会すらなかった。サイドハーフの守備の機会が多いならば、まだデニス・スアレスのほうがマシだと考えたのかもしれない。

後半のバルセロナはメッシとスアレスに守備を少しだけ行わせるように修正していた。ただし、レアル・ソシエダのボール保持にほとんど影響は与えていなかった。それよりも、ブスケツが下りる形でのビルドアップ機会が増えていった。今までのバルセロナだったら、成功不成功に限らずに色々な策を前半の途中から試していたような気がする。ブスケツが下りるまでの時間を稼げれば、この形はレアル・ソシエダにとってめんどくさいものになりそうな気配はあった。

53分にレアル・ソシエダが先制する。キーパーからのロングボールをセルジ・ロベルトに狙い撃ちからの抜け出しで最後はウィリアン・ジョゼが決める。セルジ・ロベルトの高さが狙われた形となった。バルセロナのサイドバックは、両方共にサイズはない。よって、レアル・ソシエダの攻撃は大外にクロスを上げる形が非常に目立っていた。それを考慮すると、レアル・ソシエダの狙いが炸裂したゴールと言っていいだろう。

しかし、直後に定位置攻撃からネイマールとメッシのコンビネーションが炸裂して、メッシのゴールが決まる。一瞬の相手の隙を見逃さないバルセロナらしさが出た場面となった。たまたまだろうけれど、ブスケツとアンドレ・ゴメスのポジションチェンジが起きる。レアル・ソシエダのマークの分担が狂う。その隙見逃さずにボールを前進させ、ネイマールが個人技を炸裂させた場面だった。

その後はレアル・ソシエダの一方的なペースとなった。懐かしのカナレス、グラネロが出てきたときはちょっとうれしくなった。レアル・ソシエダの攻撃の核はベラ。左サイドからの果敢な仕掛けでポスト、バーに直撃するシュートを放つ。さらに、味方が押し込んだ場面はオフサイドで取り消される不運となった。レアル・ソシエダの攻撃の形としては、縦のポジションチェンジが非常に目立った。1列目が下がる動きをしたら、2列目は必ず飛び出すなどの動きがバルセロナを苦しめた。ほとんど負けに等しいような試合だったが、相手のシュートが枠に飛ばないことにも救われて、アノエタでの試合は引き分けに終わる。

ひとりごと

レアル・ソシエダのプレッシングに対して、ポジションを変更しながら相手と会話することができなかったことがバルセロナは痛い。また、メッシの守備免除ゆえだろうけれど、4-4-2の守備もまるで機能していない。さらに、ブスケツやイニエスタの負担が無駄に増えるだけなので、絶対にやめたほうがいい。しかし、ネイマール、スアレス、メッシをベンチに置くことはできないので、4-3で撤退するのかと考えると、非常に厳しい。だとすれば、ボールを保持する方向に舵を取るしか無いのだが、それはルイス・エンリケの哲学に背きそうな気がする。クラシコがどのような試合になるかは、ちょっと想像がつかない。

コメント

  1. かにえせいや より:

    イニエスタがいないときは中盤ボックスの3-4-3がいいんじゃないかと思います
    メッシインサイドでアルダがウイングの
    左のバックはマテューかウンティティ

  2. shin より:

    ブスケツの守備負担を減らすために343を導入していた節があります。
    CBの離脱ですぐに使えなくなってしまったのですが。

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