バルセロナのスタメンは、テア・シュテーゲン、ジョルディ・アルバ、マスチェラーノ、ピケ、セルジ・ロベルト、ブスケツ、イニエスタ、ラキティッチ、メッシ、ネイマール、スアレス。解説者曰く、今のバルサのベストメンバーらしい。ブラボの突然の離脱によって、出場機会を得られるようになったテア・シュテーゲン。ドイツ界隈から喜びの声が聞こえてきそうだ。そして、右サイドバックでスタメンのセルジ・ロベルト。右サイドバックで飯を食っていく決意はできているのだろうか。ちょっともったいない気がする。
アトレチコ・マドリーのスタメンは、オブラク、フェリペ・ルイス、ゴティン、サヴィッチ、ファンフラン、ガビ、コケ、サウール、カラスコ、グリーズマン、ガメイロ。選手を地味に引き抜かれつつも、お前は誰だ?という選手をシメオネ色に染めて戦力維持をしているアトレチコ・マドリー。シメオネ後に何が起こるかは想像したくもないが、今はシメオネとともに歩もうではないかという感じ。なお、来週にはバイエルンとの試合が控えている。PSV戦ではボールを保持したときのレベルアップを感じさせたが、バルセロナが相手ではその表情に出番はないかもしれない。
2センターバックとアンカーをどのように抑えるか
バルセロナのビルドアップ隊のみを図に載せる。もちろん、メッシやネイマールがビルドアップ隊になるとこもあるが、基本的には降りてこない。次にアトレチコ・マドリーのシステムを噛み合わせる。
ボールを保持していないときのアトレチコ・マドリーは4-4-2。4-4-1-1にすれば、ブスケツのマークは準備できる。しかし、2センターバックに対して、数的不利になる。よって、高い位置から圧力をかけることはできない。システムを噛み合わせていくなかで、どうしても時間とスペースを相手に与えてしまう場所をアトレチコ・マドリーはできるだけ作りたくない。
本気を出したときのアトレチコ・マドリーは、上記のようなシステムに移り変わる。ガビかコケがブスケツまで出ていくことで、相手のビルドアップの枚数を同数のプレッシング隊を用意する。なお、テア・シュテーゲンをビルドアップ隊の枚数にカウントすれば、ビルドアップ隊と数的同数を揃えることは不可能と言っていいだろう。ただし、テア・シュテーゲンに長いボールを蹴らせることができれば、プレッシング隊の勝ちといえるので、テオ・シュテーゲンまでプレッシングに行かないという選択をすることで、アトレチコ・マドリーは試合の展開を思った通りに進めることができる。なお、セントラルハーフの前へのスライドをこの試合では2回くらいしか行わなかった。
よって、アトレチコ・マドリーは前からボールを奪う気がなかった、は言いすぎだが、是が非でもボールを僕たちは奪うんだ、でなければ死んでしまうという姿勢を見せなかったと言えるだろう。最初の何十分かは前から奪いに行くけど、基本プランは全員が自陣に撤退して守備を固める形だったのではないかと。撤退後にグリーズマンを中盤の列に入れて、守備の穴を防ぎつつ、ボールを奪ってからの相手のファーストプレスをかわすための人員を配置することを同時に行っている戦術は興味深かった。
この試合のアトレチコ・マドリーを振り返ると、ブスケツを抑えるために、4-4-1-1に変化する場面が多く見られた。自分のサイドのセンターバックがボールを持つと、前に出ていく。そして、ブスケツにつくの繰り返し。ただし、この図で言うと、ボールホルダーにプレッシングをかけていた選手がブスケツに戻る必要があるかは時と場合による。前の列に出ていく選手がブスケツへのパスコースを制限しながらよせれば、ブスケツまで戻る必要はなくなる。グリーズマンは戻らない、ガメイロは戻るとよくわからない役割になっていた。よって、ガメイロ側のマスチェラーノからボールを運ぶ場面の目立つバルセロナとなった。
バルセロナのインサイドハーフのミニパラと、ハーフスペースにメッシ、ネイマール
昨シーズンからみられたインサイドハーフが、サイドバックの前に流れる形がこの試合でも機能していた。イニエスタもラキティッチも、この形を頻繁に行う。フットサルのパラの動きに似ている。サイドバックがボールを持ったときに、相手のサイドハーフは縦を切りたい。しかし、中央に絞ったサイドハーフが相手のサイドバックへのプレッシングには時間がかかってしまうので、縦をきる身体の向きを作るのは実際には難しい。よって、このエリアにインサイドハーフが登場する。相手のセントラルハーフを動かせれば、この位置にネイマールやスアレス、そして、ブスケツが出てくる。相手のセントラルハーフがついてこなければ、イニエスタがフリーになる。相手からすれば、誰を動かして対応するのが良いかを判断することは机上の空論でも難しい。極端にスライドすると、試合で見せていたようにサイドチェンジで一気に置き去りにされてしまう。
恐らくこの試合で最も再現性のあった形が、この形になる。ビルドアップ隊でマスチェラーノをオープンにする。マスチェラーノが運ぶドリブルをする。アトレチコ・マドリーのサイドハーフのタスクはハーフスペースへのパスラインを遮断すること。よって、サイドバックが空くので、ジョルディ・アルバ経由でネイマールにボールを届ける。または、ジョルディ・アルバがボールを持ったときに列を下げるアトレチコ・マドリーのサイドハーフとセントラルハーフと逆の動きをするイニエスタが相手の2列目の前でフリーになる動きだった。
ジョルディ・アルバの位置を上げすぎると、ファンフランに捕まってしまう。サウールの役割がハーフスペースの前にポジショニングすることだとはバルセロナはスカウティング済みだったろう。ジョルディ・アルバに中途半端なポジショニングをさせることで、ハーフスペースへの進入路をうまく作っていた。また、サウールのポジショニングにあわせてディアゴナーレの動きをするガビの動きと逆の動き(ジョルディ・アルバの斜め後ろ)にポジショニングするイニエスタは巧みだった。ネイマール、メッシに中央でプレーしてもらうことを考えてもバランスの良い役割分担だったと思う。
非常に少ない機会だったが、ブスケツがジョルディ・アルバの位置に下りて、3バックを作る場面があった。この場面では、バルセロナが3-4-3になっていて、中央にイニエスタとラキティッチにセントラルハーフコンビのようで新鮮だった。相手を撹乱するうえでは効果的だったと思う。これらのビルドアップの方法を利用して、アトレチコ・マドリーに自陣に撤退を強いたとは言えるだろう。ただし、前述のようにそれだったらそれでもいいよとばかりにアトレチコ・マドリーがしっかりと自陣に撤退してバルセロナの攻撃を迎え撃つのもお見事だった。
先制点はバルセロナ。困ったときのコーナーキック。ショートコーナーからイニエスタが相手を置き去りにして、ゴールに向かっていくクロスをラキティッチが合わせる。いわゆる、一瞬の隙。ボールが外に出たときこそ、より集中力が試される。
前半の終了間際に失点したアトレチコ・マドリー。後半になると、PSV戦で見せたようにボールを保持してバルセロナのゴールに迫っていった。バルセロナの撤退守備はいるべき場所に選手がいないことが未だに多かった。また、各々が守備を長所をしていないので、質的優位でぶん殴られると、面倒な状況となってしまう。この弱点は相変わらずだった。バルセロナにとって不運だったのは、メッシ、ブスケツが怪我で60分までに交代してしまったことだろう。
60分にアトレチコ・マドリーはシメオネ怒りの2枚替え。フェルナンド・トーレスとコレアを1列目に、グリーズマンを右サイドハーフにして、エンジンを全開にする。そして、その1分後にアトレチコ・マドリーに同点ゴールが生まれる。こちらもセットプレーのクイックリスタート。バルセロナの」」選手が誰も反応せず。フェルナンド・トーレスのフリックはピケの股抜きを誘い、コレアのドリブルはマスチェラーノを滑らせて、中央突破に成功すると、コレアが冷静に決める。
75分にはトーマス・パルティが登場する。たぶん、シメオネのお気に入り。
4-1-4-1で、インサイドハーフにバルセロナのセンターバックの運ぶドリブルの対応させる。つまり、守備をしっかりしようぜに切り替えた。メッシもブスケツもいないし。カンプノウだし。引き分けでいいでしょみたいな。おれたち守るときは本気出すからみたいな。
それでも、ネイマールを中心にアトレチコ・マドリーゴールに迫るけれど、オブラクが堅い。球際でみんな逃げない。フェリペ・ルイスとファンフランがデュエルに強すぎる。今日は守ろうぜモードになると、やっぱり失点しないアトレチコ・マドリー。無事に守りきって、試合は1-1で終わった。
ひとりごと
ちなみに、インサイドハーフのミニパラは、昨年のバイエルンも行っていた気がする。おもにチアゴ・アルカンタラだけども。試合を見ていて感じるのは、両チームともに強いなという当たり前のことだった。アトレチコ・マドリーの自陣に撤退は、中央に枚数を集めてサイドを捨てる。どうせゴール前に来るんだろうみたいな。ビエルサゾーンからはシュートを打たせないぜみたいな守り方は統計とも繋がっているのだろう。
バルセロナはブスケツとメッシが離脱。ブスケツは時間がかからなそうだけど。いつのまにかバルセロナにいたアンドレ・ゴメスに代役がつとまるかは不明。かつてイニエスタ、デコ、シャビで中盤を構成していたこともあるけれど、そこまでポゼッション原理主義ではないルイス・エンリケなので、うまくバランスを取りそうな予感。バルセロナらしさを失いながら。でも、メッシとブスケツが戻ってくればいつもどおりになると思うけど。
コメント
ちょいちょい質問させて頂きます。
分析している際、指導者の立場でなければ分からない場面ってありますか?
監督の采配はまさにそれですかね?
あと、らいかーるとさんが好きな監督っていますか?
指導者でなければわからない、ってことは無いと思います。
好きな監督はトゥヘルです。
今季のバルサはリーガでは少し出遅れてますが、
新しいフォーメーションを試したり、大胆な変更を施したり
昨シーズンとは明確な違いがありますね。
今は流れを変えられる選手もいるので後半戦にどんなチームになっているか楽しみです。
なぬ?結果が出ていないと思ったら、いろいろ試しているのですか?それならば定期的にチェックするようにします。