マンチェスター・シティ対シャフタール・ドネツク ~キーパーをビルドアップで使う意図と4つの局面の噛み合い~VOL1

マッチレポ×マンチェスター・シティ1718

いけいけ、僕らのマンチェスター・シティ。更新を再開致します。いつになったら、現実に追いつくのだろうか、ということは考えないように。なお、この記事でのマンチェスター・シティは、未だに昨年の9月末。スタメンの流れを説明すると、ジェズスとアグエロの共存はどうするの?どちらがワントップをはるの?そして、デルフがサイドバックってまじ?という状況である。

対戦相手は、こちらも僕らのシャフタール・ドネツク。ムヒタリアンとフェルナンジーニョがいたころのシャフタール・ドネツクは素晴らしかった。そういう意味では、フェルナンジーニョダービーとも言えるこの対戦。ブラジル人が攻めて、脇を固めるのはウクライナ人という陣容は、ACLの広州恒大を思い出させる。シャフタール・ドネツクの監督は、パウロ・フォンセカ。神だったルチェスクからのバトンタッチとなったが、しっかりと仕事をこなしている、という情報が入ってきている。

シャフタール・ドネツクの最初の罠

グアルディオラのチームは、高いボール保持率を代名詞としている。ボール保持率を達成するためにと書くと語弊がありまくるのだが、そのためには相手からボールを奪う必要がある。よって、ボールを失ったときの素早い切り替えや、相手がボールを安定して保持しているときに見せるボールを返せと言わんばかりのプレッシングも、グアルディオラのチームの特徴といえるだろう。その姿勢は、バルセロナ、バイエルン、マンチェスター・シティと、どのチームにいっても基本的には変わらない。もちろん、季節やコンディションによって、その強度が落ちてしまうことはあるけれども。

シャフタール・ドネツクを相手にしても、グアルディオラのチームの基本姿勢は揺るがない。4-2-3-1でビルドアップをするシャフタール・ドネツクに対して、デ・ブライネを前に出して、同数によるプレッシングスタイルを見せる。相手のビルドアップの枚数に対して、同数でプレッシングを行う姿勢こそが、ボールを一秒でも速く奪い返したい姿勢の表れと言いだろう。ただし、この姿勢を相手だって予測することはできる。グアルディオラのチームの代名詞と言っていいくらいなのだから。

2枚のセンターバックと2枚のセントラルハーフを中心とするビルドアップをボックスビルドアップとする。相手と同数にするために、マンチェスター・シティは4枚の選手を集めたが、タイソンの存在が非常に気になってしまう。よって、フェルナンジーニョとシルバはタイソン番(言い過ぎ)として、デ・ブライネとアグエロのポジショニングで、相手のセントラルハーフ(フレッジとステパネンコ)へのパスコースを遮断。そして、相手のセンターバック(ラキツキとオルデッツ)へは、サイドハーフのジェズスとサネが相手のサイドバック(イスマイリーとブトコ)へのパスコースを制限しながら、プレッシングに行く形となった。

パスコースを制限しながらといえど、シャフタール・ドネツクがサイドバックにボールを渡せそうな雰囲気は伝わってくる。その場合は、マンチェスター・シティのサイドバックが脅威の縦スライドで対応する約束事となっていた。かなりバランスは悪いのだが、ここまでして、ボールを奪いに行くのかと、その揺るがない決意を見せられた瞬間でもあった。ただし、もっと死なばもろともでもどうにかなるんじゃない?とも考えさせられたのだけど、シャフタール・ドネツクのセントラルハーフコンビが抜群にうまかったので、中央を経由させる可能性を少しでも減らして、サイドからボールを運ばれるのはしょうがない、くらいにグアルディオラが計算していた可能性は高い。

相手が2トップでくるなら、ビルドアップの形を変えるよとばかりにシャフタール・ドネツク。マンチェスター・シティも4-1-4-1に変更する。マンチェスター・シティからすると、相手のビルドアップの形を見極めて。守備の形を決める。そして、ルーティン作業に落とし込んでいきたい。しかし、相手のビルドアップの形が変化すると、そのたびに守備の形も変化させなければいけない。このやりとりは非常にめんどくさい。マンチェスター・シティのプレッシングに正面から向き合っていくシャフタール・ドネツク。前半のみを振り返ってみると、ボール保持率の数字は、ほぼ半々であった。マンチェスター・シティからボールを取り上げることで、マンチェスター・シティの長所を出す機会を減らしていく作戦を行っていくシャフタル・ドネツクだが、これは所詮は罠であった。本当の狙いは別にあるシャフタール・ドネツク。

ビルドアップにキーパーを組み込む意味とは

ビルドアップでキーパーを使うのは、時代のスタンダードからは外れてきている。もちろん、エデルソンのような規格外の化物がいるなら話は別だが。キーパーをビルドアップで使う最大のデメリットは、相手に守備を整わせる時間を与えてしまうことにある。懐かしい話になるが、浦和レッズ対ドルトムントのプレシーズンマッチで、ドルトムントはビルドアップにキーパーを多用していた。よって、時代のスタンダードから外れていると判断し、ドルトムントのボス監督は成功しないと、書いたことを記憶している、序盤は連勝街道だったので、まじかよ!と思ったけれど。

マンチェスター・シティが相手陣地からプレッシングを果敢に行ってくるため、シャフタール・ドネツクはビルドアップの形をかえたり、キーパーをビルドアップの逃げ場として利用した。ゴールキックからのプレーの再開でも、シャフタール・ドネツクは愚直にボールをつなごうとした。ゴールキーパーがボールを繋げそうもないな!と判断したときに、みんな上がってくれ!というジェスチャーをすることは、世界中でどのカテゴリーでも見られる現象である。しかし、シャフタール・ドネツクはみんな上がってくれ!とやらない。普通に蹴っ飛ばしてしまう。

 

その理由は、この写真にある。この場面は、後方からのロングキックを競り合う準備をするフェレイラとオタメンディの図だ。ロングボールを蹴るときの準備として、セカンドボールをどのように拾うか?という設計がある。その設計をするために、みんな上がってくれ!のジェスチャーをする。その心は、ロングボールの的の周りに味方がたくさんいれば、ボールがマイボールになる可能性が高いからだ。しかし、相手も集まってきて、全員集合になることは目に見えている。だったら、繋ぐふりして、相手を自陣に引き寄せて蹴っ飛ばせばいいんじゃないの?というのがシャフタール・ドネツクの作戦であった。どこに蹴るかわかっていれば、セカンドボールを拾う隊を配置することができる。この図では、デ・ブライネとサネがどうしても所定の位置に行くまでに時間がかかってしまっている。

まとめると、シャフタール・ドネツクはボールを保持するネタ(ビルドアップの形変更)を行いながら、相手をひきつけて、ボールを蹴っ飛ばし前進というスタイルでマンチェスター・シティに迫っていった。マンチェスター・シティからすれば、前にいったり後ろに戻ったりと、守備のポジショニングがどうしても不安定になる場面が目立ち、シャフタル・ドネツクの意図的なボール前進に苦しむようになっていく。

マンチェスター・シティのボール保持と、シャフタル・ドネツクのプレッシング

シャフタル・ドネツクの守備の形は、4-4-2。圧縮が半端なかった。マンチェスター・シティはいつもどおりにハーフスペースの入り口からの攻撃を狙う。ただし、相手の圧縮したプレッシングに戸惑う。同サイドからのボールの前進は困難そうだったので、繰り返されるサイドチェンジが必須な雰囲気だった。この試合ではバイエルン時代を思い出させるようなサイドチェンジ→アイソレーションの場面が目立ったけれど、ロングボールの精度と届いても質的優位でない問題があり、効果的ではなかった。

目立った形としては、フェルナンジーニョが降りての3バック+アラバロールのデルフで、サイドバックのエリアを空ける。この位置にサネやシルバが降りてきて、オープンな状態を作るであった。デルフがセンターサークルに移動すると、相手のサイドハーフをピン止めできる。よって、大外で待つサネへのパスコースができた場面だ。

試合の起承転結

オープニングは、根性でボールを持つシャフタル・ドネツク。マンチェスター・シティはプレッシングがはまらずに、相手のロングボール→空中戦でマイボールにして前進する作戦に四苦八苦。ボールを保持しても、相手の4-4-2圧縮の前に、シルバ、デ・ブライネのひらめきという名のスルーパスくらいでしかチャンスが生まれなそう。

徐々にロングボールからの攻撃に手応えを感じ始めたシャフタル・ドネツク。各々のボールスキルが異常に高いので、マンチェスター・シティの面々は簡単にボールを奪い返せない。シャフタル・ドネツクはロングボールからの速攻やボール保持攻撃を判断よく織り交ぜていった。マンチェスター・シティのサイドハーフの帰陣の遅さを利用した速攻で、マンチェスター・シティのエリア内にも侵入していくシャフタル・ドネツク。特に左サイドバックのイスマイリーはかなり目立っていた。

このままでは嫌な予感しかしないマンチェスター・シティ。15分には撤退守備に移行する。この時間までは、前でボールを奪えそうもない&ロングボールで守備が整理されていない状況になっていた。だったら、ボールを前で奪うことを捨てることで、守備を整理した状態を取り戻そうと判断する。この判断によって、守備が整っていない状況からシャフタル・ドネツクの攻撃を受け止めていたマンチェスター・シティという状況が変化していく。

守備モードに移行したマンチェスター・シティは、必要とされる試合の強度に対応していく。よって、シャフタル・ドネツクからボールを奪い、逆にカウンターを見せるようになっていく。シャフタル・ドネツクの整理された4-4-2が強ければ、トランジション局面を利用しよう作戦。この作戦が機能するマンチェスター・シティだったが、デ・ブライネが決定機を外し、他の面々もぎりぎりのところでオフサイドになってしまう。試合の序盤よりは、試合内容が拮抗してくなかで、シャフタル・ドネツクもマンチェスター・シティの苦手とするカウンターを繰り出していく。このカウンターの詳細は後半戦のレポで書けたら良い。

前半戦は0-0で終わり。後半戦はまた今度。

ひとりごと

試合を見る時間がなかなか作れないので、前半と後半を分けてレポする苦肉の策。ただ、後半戦をがっつり分析できそうな方法になったので、個人的にはこの方法のほうが楽しめそうだ。

試合を振り返ると、どの局面勝負の機会を増やすか対決となっている。守備が整理されている状況のシャフタル・ドネツクに突撃するマンチェスター・シティと、守備が整理されていないマンチェスター・シティに突撃するシャフタル・ドネツク。この構図をひっくり返して斬り合いに持ち込んだマンチェスター・シティの修正(撤退守備への以降)は見事だった。ただ、斬り合いでも負けません!というシャフタル・ドネツクの準備にも痺れさせられたけれど。

コメント

  1. shin より:

    欧州最強とも思えるマンチェスター・シティですが、この1ヶ月間はクリスタル・パレスに苦戦したり、クロップ監督のリヴァプールにリーグ初黒星を喫するなど勢いが落ちています。
    個人的には経験不足、最終ラインのビルドアップ能力と守備力のアンバランスさ、そしてシルバの代役不在などが気になりました。

    リーグ戦に余裕が生まれた今、チャンピオンズリーグに向けて課題とどのように向き合っていくのかに注目しています。

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