チャンピオンズ・リーグ、決勝トーナメントのセカンドレグ。ファーストレグの結果は、アウェーでバルセロナが2-1で勝利。よって、マンチェスター・シティの勝ち抜けには2得点が必要になる。国内リーグにおいても、連勝街道をまっしぐらのバルセロナに対して、不甲斐ない試合が続いているマンチェスター・シティ。いわゆる格下の相手と試合をすると、チーム全体が緩んでしまう悪癖はなかなか抜けないようだ。
スタメンを眺めると、ブスケツが怪我のため欠場のバルセロナ。代役はマスチェラーノを中盤へ。そして、マテューをセンターバックに配置。ファーストレグでも見せた配置なので、日常みたいなものなのだろう。
マンチェスター・シティのスタメンは、ファーストレグから大きく変化している。一番の変化はシルバとアグエロを並べたところだろう。ジェコの代わりの空中戦要員はサニャ。ハートのゴールキックを競る役割をアーセナル時代と同じように担う。サイドバックなのに、空中戦要員のために試合に出場する役回りがちょっと面白い。クリシーは累積のため、コラロフが出場。セントラルはヤヤ・トゥレとフェルナンジーニョ。シティのキングことヤヤ・トゥレの帰還。左サイドには便利屋のミルナー。右サイドにはお気に入りのナスリが配置されている。
■バルセロナらしさという檻はもうない
マンチェスター・シティの面々を見ても分かる通り、地上戦で勝負を挑むつもり満々である。シルバとサイドハーフを中央に侵入させることで、マスチェラーノ付近のエリアを攻略すること。相手が中央によってきたら、サイドバックの高いポジショニングからボールを前進させて、相手のセンターバックとサイドバックの間のエリアから相手のゴールに迫っていく形を発動させる狙いがよくわかる。
しかし、この手筋はファーストレグで見せている。よって、バルセロナは中央のポジショニングうんぬん問題を解決させるために、ボールの出し手に積極的なプレッシングをかけることで、マンチェスター・シティの狙いを破壊しようと試みた。キック・オフの合図とともに、バルセロナは積極的な出足を見せる。もちろん、試合開始直後の奇襲という意味合いもあったプレッシングだったろうけども、マンチェスター・シティの出鼻をくじくには最適な手であった。
ジェコがいないマンチェスター・シティは、プレッシング回避にロングボールを使うことができない。誰もハイボールに競り勝てないからだ。だからといって、相手の裏に放り込んでばかりでは、シルバを起用した意味が無い。だったら、ハートに下げてポジショニングを調整する手段もあるのだが、ハートは繋げない。蹴っ飛ばしたらバックパスの意味が無いし、ヘタしたらバルセロナはそこまでプレッシングをかけてくる。
だからといって、バルセロナのプレッシングを正面から受け止めるのも愚策。よって、蹴っ飛ばしながら様子を観るマンチェスター・シティ。予想通りに、競り勝てない。バルセロナにボールが渡るが、予想できた形でのボールの失い方ならまだ心の準備ができるという、不自然なくらいにポジティブな表現での立ち上がりとなった。
積極的なプレッシングによって、自分たちの望む状況となったバルセロナ。いわゆるボールを繋ぐことを代名詞としていたころのバルセロナだったら、ゆったりとボールを回していたに違いない。しかし、ブスケツの負傷、ファーストレグの結果も相まって、バルセロナは相手の守備組織が整う前に、ボールを前に運ぶ速攻が数多く見られた。そのため、ラキティッチがメッシを追い越すような日常で見られる場面は、後半になるまでなかなか観ることができなかった。
バルセロナの攻撃に対して、枚数を揃えて対抗できれば、マンチェスター・シティは相手の攻撃を跳ね返すことができていた。枚数が揃っていれば、曖昧なポジショニングの選手を捕まえることができる。その修正はファーストレグから続いている。しかし、いかんせんマンチェスター・シティの攻撃が落ちつかない。相手の形に応じて、または自分たちの形を相手に強いるようなボールを前進させる仕組みがなかったので、試合はトランジションが増えていく展開となった。
この展開で強さを見せたのがバルセロナ。元祖ゲーゲンプレッシング。守備の面でも相手を複数で囲む場面が何度も見られ、そこから繰り出すメッシの個人技は異常であった。相手の守備に苦戦しているときに、誰かの個人技によってボールを進める現象はロナウジーニョ時代によく見られたが、最近はメッシの威圧感でそれを可能にしているようにもみえる。この試合のメッシは何度股抜きをしたのかわからないほどにフィーバーしていた。
速攻といっても、もちろん、バルセロナらしい攻撃も見せていた。マンチェスター・シティは不利な場面での守備機会が増えていき、イエローがかさんでいく展開となる。そして、先制点はカウンター。ボールを奪って相手のプレッシングを交わし、ボールを受けたのはメッシ。メッシのサイドチェンジ気味のクロスに飛び込んだのはラキティッチ。ラキティッチのトラップは浮き球になったのだが、エリア内では前に出る判断をしても致し方ないハート。でも、やっぱりループを決められて、バルセロナが先制する。
2点が必要なマンチェスター・シティの状況は変わらない。しかし、焦りからか、高い位置からプレッシングをかけるようになる。しかし、そのプレッシングが連動することもなければ、実ることもなく。ハーフタイムを挟まない修正の困難さを知る。連動しないハイプレスはポゼッションチームの大好物であり、バルセロナがらしさを発揮する。そして苛立ったナスリはネイマールを蹴っ飛ばしてイエローをもらう。まるで脈絡無く訪れたナスリの行動であった。
■希望を与えながらも
ナスリ→ヘスス・ナバスで後半から登場するマンチェスター・シティ。そして、シルバを左サイドに、ミルナーをトップ下に配置した。前半のマンチェスター・シティは4-4-1-1で守る場面が多かったが、ミルナーに二役を任せる。4-4-2だったり、4-4-1-1だったり。便利屋ミルナーの真骨頂。なお、その後もミルナーはポジションを移動することになる。
試合はそのままに展開していくかと思ったが、想像以上にマンチェスター・シティが落ち着きを取り戻していた。また、息の根を止めるなら、バルセロナは前半のような戦い方を継続すればいいのだけども、週末にはクラシコがあったらしい。よって、高い位置からのプレッシングは終わり、ネイマールたちの守備意識もゆっくりと落ちていった。つまり、戻らなくなっていった。
この現象がバルセロナが相手に希望を与える。肉を切らせて骨を断つ。相手に攻め込ませて、カウンターで仕留める。でも、ジョルディ・アルバは怒る。帰って来いと。そして、帰ってくるネイマール。たぶん、ネイマールは心優しいサッカー選手なんだと思う。
マンチェスター・シティはヘスス・ナバスサイドから猛攻を仕掛ける。バルセロナの守備陣がイニエスタ、ピケ、ジョルディ・アルバの三枚であるときは効果的に崩せていた。マスチェラーノが来る前に仕掛ける。本当はネイマールが帰ってきて4人になるんだけど、前述のように帰ってこない。あとは、攻撃の横幅と相手のセンターバックとサイドバックの間のスペースから相手を攻略していく。この試合でも何度も繰り返されたペジェグリーニのネタ。
そんな隙を見せれば何かが起きるのも必然だ!というわけで、アグエロがPKをゲット。しかし、これをシュテーゲンが止める。その前にエリアを飛び出してドリブル→アグエロに奪われるという失態をしていたテオ・シュテーゲン。評価を取り戻すプレーであった。なお、失敗直後のプレーの終わりがテオ・シュテーゲンのキャッチでだったのだけど、観客に拍手を促したピケは立派。そのピケがPKを与えたのだけど、それを止めたのも立派。
バルセロナのカウンターはどうなったのだ!!と振り返ってるみると、それは破壊力抜群だった。しかし残念そこはハート。メッシが途中で飛び込み前転からのピッチに寝る、、くらいに止めまくる。ファーストレグはあんなにあっさり入ったゴールが今日は遠かった。入るべきシュートが入らない展開だったので、このPKが決められていれば本当にどうなったかわからない。
試合はそのまま終了。マンチェスター・シティからすれば、アグエロのPKが決まっていればと希望が残る試合となった。でも、もっと点差がついてもおかしくなかった試合だったので、その希望は幻みたいなもの。そういう意味では、今までよりも余計にたちが悪くなっているのかもしれないバルセロナであった。
■独り言
マンチェスター・シティはよく守れていたと思うんだけど、サイドにボールが出される。サイドからサイドにボールが循環するを相手にやられてしまうと、どうしてもスライドが間に合わない→選手の距離が離れてしまう→パスコースの確保につながってしまっていた。つまり、横スライドのスピード不足。4枚揃っていても中央を使われる悪循環もときどき。ただ、それを防ぐために、前線をヘルプにして4-5-1に変化するって手段もあるわけで、世界は広い。
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