【第一節】アヤックス対AEKアテネ【アヤックスのデザインを読み解く】

マッチレポ1819×チャンピオンズリーグ

アヤックスのホームスタジアム、ヨハン・クライフ・アレーナでの試合。スタジアムの名前が選手の名前になる時代が日本にも来るのだろうか。

久しぶりにチャンピオンズリーグに挑むアヤックス。久しぶりの出場ということで、最近のアヤックスはどうなの?と調べてみた。昨年のヨーロッパリーグのファイナリスト(相手はぼくらのマンチェスター・ユナイテッド)になっている。よって、チャンピオンズリーグで戦う強さを取り戻してきていると言って良いのだろう。AEKアテネ(以下はアテネと略す)は主力が何名か欠けているらしい。24年ぶりに国内リーグを制したアテネ。アテネといえば、聖闘士星矢世代である。やはり同じ技は通用しないのだろうか。

アヤックスのビルドアップ

最初に噛み合わせから見ていく。

アヤックスのシステムは【4-2-3-1】。伝統の【4-3-3】でないことに驚かされた。なお、この試合はアヤックスがボールを延々と保持する展開で進んでいった。時間帯によっては、ボール保持率が84%を超えていたらしい。

アテネのシステムは【4-4-2】。ボールを保持しているときは【4-2-3-1】のようになるが、ボールを保持する場面はあまりなかった。よって、あまり気にする必要はない。

次に【4-4-2】の形に対して、というよりは、2トップの形に対するビルドアップの形を振り返っていく。図の形が定跡になるだろう。相手が1トップのときに、3バック化を行う必要は基本的にない。ただ、相手の形に応じて、自分たちの形を決めすぎることはあまり良くない。何をしてくるかわからない、つまり、自分たちの形に相手が論理的な対応をしてこないほうが、景色の変化などで相手を惑わすことはできる。

2トップの間にポジショニングすることで、相手の形を【2→1-1】に変化させることができる。もしも、変化しなかったとしても、その隙間でボールを受けるか、ボールを受けさせないように2トップ同士の距離を狭くすることによって、2トップ脇のエリアが開放される仕組みになっている。

3バック変化は、数の論理で相手を殴ることができる。また、2バックに比べると、横幅を確保しやすくなるため、2トップを疲弊に追い込むこともできる。両脇のセンターバックが攻撃の起点となることが多い。【3-1】ビルドアップが猛威を奮っているように、ボックスビルドアップ(ビルドアップ隊が4枚)でスタートすると、いろいろな変化をつけることができる。

その変化のひとつが、セントラルハーフが2トップの脇に下りる形だろう。片方のセントラルハーフは2トップの間、もう片方のセントラルハーフは2トップの脇、という非対称型のビルドアップもよく見ることができる。ただし、非対称の形はどちらかに攻撃の方向が偏ることが多い。アイソレーションでぶん殴れる選手がいるならば、話は別だが。

この試合のアヤックスはビルドアップで多彩な形を見せていたが、基本的にはシェーネが2トップの間、アイティングが左ハーフスペースの入り口にポジショニングすることが多かった。特にアイティングのポジショニングに対して、アテネは特に対策を行わなかった。2トップに走って死んでタスクを行わせるかと思ったが、シェーネにボールを渡さないことを優先したのだろう。多分。

1トップに対して、グアルディオラが逆三角形(1バック+2アンカー)で対抗していたことも記憶に新しいが、アヤックスのこの形もなかなか興味深い。3バックに変化していると言えるのだが、アイティングとデ・ヨングは2トップの脇にポジショニングしていることもある。よって、菱形と解釈したほうが実情に近い。最近はどこもかしこも菱形に見えるようになってきたのは、たぶんやりすぎな気がする。ただ、両脇の選手の上下の移動によって、相手の1列目の守備は完全に破壊された。

アヤックスの未来予想図

アヤックスの抱える問題は、ビルドアップの先にあった。再現性をもって時間とスペースを満喫するビルドアップ隊に反して、前線の選手たちは定位置攻撃が定まっていないように見えた。ただし、タディッチ、ネレス、ジエクのトリオの攻撃センスは抜群だった。全員がオコチャみたいなプレーをする。そういう意味ではエンターテイメント性は高い。ただし、エールディヴィジで無双している選手が他のリーグでも同じように無双できるかどうかは非常に怪しい。特に、ここはチャンピオンズリーグである。というわけで、ボールを支配し、ゴール前で仕掛ける場面は多いアヤックスだが、肝心の決定機はほとんどないまま、前半戦を終える。

高いボール保持を基本とするアヤックスのボール非保持の振る舞いは、即時奪回であった。非常に理にかなったデザインなのだが、ガンガンいこうぜ!プレッシングな雰囲気が強かった。つまり、自分たちのスピードで相手の自由を奪えればOK。奪えなかったら、ボールを運ばれてしまう。そのスピードもリヴァプールほど速いわけでもないし、かつてのバルセロナほどのスピードはない。よって、プレッシングをかいくぐられる場面がしばしば見られた。そして、プレッシングをかいくぐられ、デュエル勝負になると、非常に脆さをみせるアヤックスであった。ボール保持チームにありがちな待ち構える守備が苦手説が濃厚である。

そんなアヤックスだったが、後半にコーナーキックの流れから先制する。そして、追加点はボールを奪ってからのカウンターで決め、最後は定位置攻撃から決めている。ゴール場面の種類の多さをみると、盤石な雰囲気だが、最後のゴールのようなウイングとサイドバックの入れ替わりのような仕掛けが何度も何度も繰り返し行えるようになってくると、前線のスーパートリオももっと輝きを放ちそうな予感。彼らがベンフィカ、バイエルンにどれだけ通用するかは非常に楽しみだ。

ひとりごと

懐かしのアヤックスは、非常にビルドアップで多彩さを見せ、攻撃ではエンターテイメント性を見せ、守備ではハードワークをしていた。ようやく戻ってきたかと。ただ、チャンピオンズリーグの舞台でファイナルラウンドに進めるレベルかどうかは怪しいので、レベルアップしていってほしい。というか、若い選手が相変わらず多くてびびった。東京オリンピックに出るような世代の選手がチャンピオンズリーグで戦っている現実は、ちょっと重い。

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