アトレチコ・マドリーのスピード【アトレチコ・マドリー対ユベントス】

マッチレポ1819×チャンピオンズリーグ

アトレチコ・マドリーのスタメンは、オブラク、フィリペ・ルイス、ゴディン、ヒメネス、ファンフラン、トーマス、ロドリ、サウール、コケ、ジエゴ・コスタ、グリーズマン。

監督がシメオネになってからのアトレチコ・マドリーの躍進は素晴らしいものなんだけれど、スタメンの顔ぶれはマイナーチェンジしながらも骨格は変わっていない印象を受ける。同じチームを同じ監督が率いる寿命は3年説があるけれど、シメオネはどうなるのだろうか。

ユベントスのスタメンは、シュチェスニー、デッシリオ、キエッリーニ、ボヌッチ、アレックス・サンドロ、ピアニッチ、マテュイディ、ベンタンクール、ディバラ、マンジュキッチ、クリスチャーノ・ロナウド。

アッレグリ監督に率いられたユベントスの至上命題は国内のリーグ戦ではなく、チャンピオンズ・リーグなのだろう。チャンピオンズ・リーグで優勝するために、クリスチャーノ・ロナウドを獲得。クリスチャーノ・ロナウドの年齢などを考えるとユベントスらしくない補強だが、それだけチャンピオンズ・リーグへ掛ける思いが強いのかもしれない。

自己紹介

ユベントスのキックオフで試合の幕は開けた。ユベントスは準備されたセットプレーのように、ファンフランの周りに人を集めてロングボールを放り込んだ。この攻撃はアトレチコ・マドリーのカウンターに繋がってしまったが、空中戦を狙うなら、フィリペ・ルイスではなく、ファンフランというユベントスからのメッセージをキックオフから読み解くことができる。

試合開始直後のゴールキックからボールを保持する姿勢を序盤から示すユベントスに対して、アトレチコ・マドリーも[4-4-2]のプレッシングで対抗する。つまり、この試合はボールを保持していきたいんだ、というユベントスの自己紹介の前に、自分たちもそれで構わないよ、というアトレチコ・マドリー。両チームの自己紹介が終わったところで、両チームの変化について見ていきたい。

ユベントスのボール保持

ユベントスの配置は、非常に興味深いものだった。ビルドアップ隊の枚数や配置はオーソドックスな8枚だったのだけど、ディバラ、クリスチャーノ・ロナウド、マンジュキッチの配置はフリーダムだった。ディバラとクリスチャーノ・ロナウドがウイングのように振る舞ったかと思えば、センターフォワードのようにも振る舞う。さらに、3人が同サイドに流れてくることもあった。

フリーダムと引き換えに苦労を強いられたのがインサイドハーフだ。前線の3枚がペナ幅でプレーするならば、パスラインを作るために移動しなければならない。いわゆる重なるポジションが同じレーンにいてはいけないの法則だ。でも、横幅隊は基本的にサイドバックが担っている。

となると、ボールを受けたがるディバラやクリスチャーノ・ロナウドの代わりに前線に飛び出すこともしなければならない。つまり、インサイドハーフの役割が過多に及んでいるだけでなく、決まりきった形というよりは、前線の選手にあわせて動かなければならないという条件付きの過多になっていた。それでも、マテュイディは何度も飛び出していたので偉大。つまり、ユベントスのボール保持はボールを持てるけれど、再現性はあまりない。でも、ディバラたちが個人技を発揮しなければ、ちょっと何も起きそうにないとなかなかシビアなものとなっていた。

アトレチコ・マドリーのプレッシング

ユベントスのビルドアップに対して、アトレチコ・マドリーは[4-4-2]で対抗する。はっきりいって、前線でボールを奪えそうにない雰囲気だったのだが、それでも、やることはやります!というジエゴ・コスタとグリーズマンの姿勢は立派だった。

アトレチコ・マドリーの凄まじさは、前線でボールを奪えない→相手がビルドアップの出口を見つける、という流れになっても、プレッシング失敗と全く感じていないところだろう。なので、切り替えが起きない。失敗した!という感覚がないので、相手がファーストラインを超えてくる→だから何?みたいなしぶとさがある。また、この流れを繰り返してもちっともぶれないのだから、えげつない。

よって、アトレチコ・マドリーは徐々に撤退してユベントスのボール保持に対応するようになっていく。[4-4]の移動が早く、守備の基準点の再設定もあっさりとこなすアトレチコ・マドリーの前に、ユベントスは効果的な攻撃を仕掛けることができないまま、時間が過ぎていった。なお、頼みの綱のクリスチャーノ・ロナウドは往年のマドリードダービーで対決していたファンフランとサウールのコンビに苦戦し、ディバラはなぜかミスを連発していた。

アトレチコ・マドリーのプレッシングのもうひとつの特徴は、グリーズマンとジエゴ・コスタの配置にある。自分たちを超えていったボールに対して、2人が下がりすぎることはあまりない。2列目のスライドが間に合わないという例外事項のときはグリーズマンが下がることになっているけれど。

その代わりに彼らはボールを奪ったときにフリーになれるようなポジショニングを実行する。特に撤退してからは、グリーズマンとジエゴ・コスタが縦関係になるように配置換えをして、ピアニッチ周りをカウンターの加速点として定めているようだった。ユベントスは配置がフリーダムにならざるをえないこともあって、アトレチコ・マドリーのカウンター対策ができるわけもなく、しっかり守ってカウンターを実現させていくアトレチコ・マドリーという流れで試合は展開していった。

大外を基準とするユベントスとデ・シリオを狙うジエゴ・コスタ

15分がすぎると、アトレチコ・マドリーがボールを保持する場面も出てくる。ユベントスは[4-3]でアトレチコ・マドリーに対抗。アトレチコ・マドリーがまったりとボールを保持したり、サイドチェンジを延々としたりしないチームなこともあって、枚数が足りなくても対応はできそうな雰囲気。ただし、ときどきマンジュキッチが思い出したかのように下がって守備をサポートしていた。

最も苦労しているのはジエゴ・コスタへの対応。最強のポストマンはキエッリーニでもファウルをしなければ止められない。さらに、ジエゴ・コスタはデ・シリオとの空中戦を繰り返すことで、相手の弱みにつけこむ形を見せる。空中戦をするなら、相手のもっとも弱いところに最も強い選手をぶつける。相手がセンターバックでも平気でプレーできるジエゴ・コスタをサイドバックにぶつけるのは、やりすぎ感がある。

ジエゴ・コスタを中心としてボール保持攻撃でも強さを見せ始めたアトレチコ・マドリーに対して、ユベントスはアトレチコ・マドリーのプレッシングの特徴を掴み始める。必ず前からプレッシングに来るアトレチコ・マドリーは、ボールサイドでないサイドハーフがピアニッチまで寄せに来るくらいに逆サイドはがら空きになる。よって、サイドを攻撃の起点とするようにマイナーチェンジ。サイドバックだったり、インサイドハーフがサイドで攻撃の起点となり、ディバラやクリスチャーノ・ロナウドにボールを届けられるようになっていく。

しかし、逆サイドにアイソレーションを完結できる選手がいるわけでもないユベントス。よって、アトレチコ・マドリーのプレッシングの速さにたじたじ。クリスチャーノ・ロナウドとディバラがサイドにはっている形を画策するが、それはそれでもったいないような。ベンゼマロールを愚直にこなすマンジュキッチもジエゴ・コスタとのセットプレーでの対決以外はおとなしい印象で、クリスチャーノ・ロナウドという劇薬を上手く消化できていないことが伝わってくるような前半戦となった。

点を取りに行く明確なメッセージ

アトレチコ・マドリーは[4-4-1-1]に変更。グリーズマンがピアニッチと、ジエゴ・コスタがボヌッチとデートになる。これがなにげに恐ろしい変更だった。

前半の終盤からユベントスはセンターバックも攻撃参加させて、アトレチコ・マドリーのペナルティーエリアまで侵入することはできていた。フィニッシュまでにはまだ困難な道程がありそうだけど。

で、その過程で仕事をしそうなのがピアニッチ。そして、後ろからロングボールを蹴りそうなのがボヌッチ。なので、二人にデートを申し込んで相手の攻撃力を削るアトレチコ・マドリー。さらに、キエッリーニにボールをもたせて持ち上がらせることで、ジエゴ・コスタはボヌッチとの殴り合いに自動的になるという構図になっていた。

しかし、直後の決定機を外すジエゴ・コスタ。グリーズマンのループはシュチェスニーが止める。65分までに交代枠を使い切るシメオネ。ジエゴ・コスタ→モラタ。トーマス→レマル。コケ→コレア。選手の入れ替えが興味深い。サイドハーフは左にグリーズマン、右にレルマとなった。

交代するまでの2列目はコケ、トーマス、ロドリ、サウールとウイイレで見たことあるようなCHが4枚並ぶ形だった。それがレマル、サウール、ロドリ、グリーズマンになったのだから、攻撃的といっていいだろう。実際にグリーズマンがチャンスメイクをするようになり、ボールを持つこともできていたアトレチコ・マドリーがホームだし勝ちに行くぜ!と一気に勝負を決めにかかる。

69分のモラタのゴールはVARで取り消し。しかし、めげないアトレチコ・マドリーはコーナーキックとセットプレーで一気に2-0にすることに成功する。困ったユベントスだったが、後半からマンジュキッチを左サイドに流すくらいで、大きな変更もなく、交代選手もピッチに影響を与えることなく、それでもあわや!の場面を作るところはさすがだが、スコアを動かせずに試合は終了した。

ひとりごと

アトレチコ・マドリーは非常にらしい試合をした。テーマはスピード。相手にビルドアップで与えた時間とスペースを一瞬で配置を整理された状態にすることで、無効化することができていた。単純な速さでなく、判断スピードがえげつない。セットプレーで得点を取るところもらしかったと思う。

ユベントスはボールは持てるけれど、、、、といった感じ。守備ブロックの配置も決して褒められたものではなく、ディバラとクリスチャーノ・ロナウドの共存ってかなり難しいのかもしれない。ついでに、マンジュキッチも元気がない。クリスチャーノ・ロナウドのフリーダムの引き換えに失ったものはそこそこに多そうである。後半のようにクリスチャーノ・ロナウドのワントップや、ツートップにするしかなさそうだが。

セカンドレグのアッレグリが何をするのか乞うご期待!!!

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