【プレッシングあれこれ】ハル対チェルシー【3バックのコンテ】

マッチレポ1617×プレミアリーグ

ハルのスタメンは、デヴィッド・マーシャル、アンドリュー・ロバートソン、カーティス・デイヴィーズ、デヴィッド・マイラー、ジェイク・リヴァモア、ロバート・スノッドグラス、ライアン・メイソン、アダマ・ディオマンデ、マルクス・ヘンリクセン、サミュエル・クルーカス、ディウメルチ・ムボカニ。開幕から3連勝。しかし、3連勝後の相手は、マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リバプール。そして、チェルシーと怒涛の日々が続いている。3連勝も過去の記憶で、精一杯の反抗ができるかどうか。

チェルシーのスタメンは、クルトワ、アスピリクエタ、ダビド・ルイス、ケイヒル、マルコス・アロンソ、モーゼス、カンテ、マティッチ、アザール、ウィリアン、ジエゴ・コスタ。ハルのように開幕から3連勝を決めたが、アーセナル、リバプールに敗戦で嫌な雰囲気のチェルシー。今季は欧州の舞台がないので、日程的な余裕がある。だからこそ、最低でもチャンピオンズ・リーグの出場権を獲得したい。しかし、チャンピオンズ・リーグ出場権を争う相手に続けての敗戦となれば、焦りも出てくるといいうものだろう。なお、リーグカップは順調に勝っている。

チェルシーの選手配置

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最初に選手の配置を見てみる。てっきりコンテ式の3-5-2なのかと予想していたが、まさかの3-4-2-1だった。3-5-2の場合は、ボールを保持しないときに5-3-2となる。2列目の3をできる選手がいないと、コンテは考えているのかもしれない。また、ウィリアン、アザール、ペドロ、オスカルと攻撃に長所を持つ選手を同時に起用を考えているならば、3-4-2-1が適切な形と言えるだろう。本当は右サイドバックだったアスピリクエタが、さらに便利屋になっていることや、モーゼスがウイングバックなのかと突っ込みどころはあるが、わからないでもない選手配置になっている。

各々の役割を見ていると、ビルドアップでは、ダビド・ルイスとアスピリクエタが中心として機能していた。3バックにしたことで、ハルの4-1-4-1のプレッシングは人員的に余裕がある。その余裕がチェルシーに時間とスペースを与えることとなる。ダビド・ルイスはフリー状態からの縦パスやロングパスで攻撃を牽引した。ユベントスのボヌッチの仕事をイメージすると、わかりやすいかもしれない。ただし、ボヌッチのほうがうまいのは言うまでもないが。

アスピリクエタは運ぶドリブルで相手をひきつけて、前線の選手にパスを繋いでいった。横幅のモーゼス、中のウィリアンと相手に2択を迫ることもできていた。ビルドアップ能力を考えても、アスピリクエタのセンターバックは、継続されるかもしれない。ケイヒルが妙におとなしく、テリーが怪我から復活したときに、どのような選択をコンテがするだろうか。テリーが左からビルドアップを行なうかもしれないけれど。

数的優位のビルドアップに対して

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システムが噛み合わないときに、どのような対策を行なうか。ハルのボールを保持していないときのシステムは4-1-4-1。相手の3バックに1トップで追いかけ回すのは、さすがに運動量過多になる。かつてのエトーやタムードは走って死んでを愚直に繰り返していたが、そんな選手はあまりいない。となれば、2列目から縦に誰かがスライドするというのが現実的に発生している現象だ。よく見られるのが4-1-4-1から4-4-2に変更する形だろう。相手の2センタ-バックを1トップで追いかけ回すのではなく、2トップに変更することで、運動量過多をなくすことが狙いだ。

4-1-4-1から4-4-2への変更は、インサイドハーフの縦スライドがトリガーとなる。なぜ中の選手が移動するかというと、そっちのほうが守備の穴ができにくいからだ。

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しかし、ハルの対応は、安定していなかった。具体的に言うと、誰が列を飛び出していくかが定かではなかった。よって、サイドハーフやインサイドハーフが縦スライドを行ったり、誰も前に出ていかなかったりした。つまり、どういう状況のときに誰が出ていくというのが定かではなかった。チェルシーの3バックが奇襲だったとしても、準備不足は明らかだった。この試合でチェルシーが圧倒的にボールを保持、、後半には74%という数字も出た、、することができたのは、ハルのプレッシングが最後まで定まらさなかったことが原因だろう。

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ちなみに、サイドが縦スライドすると、サイドバックの裏にスペースができてしまう。ただし、大抵の場合は、サイドバックの裏にスペースを作りたくないので、サイドバックが連動しないことが多い。サイドハーフが相手のボール保持者(アスピリクエタ)に突撃していく。ボール保持者の状況に応じてモーゼスを捕まえるというよりは、捕まえにいかない、みたいな。パススピード、身体の向きを考慮すれば、アスピリクエタにサイドハーフがプレッシングに行く、さらに、プレッシングにを受けた状態を考慮してサイドバックがモーゼスを捕まえるか、捕まえに行かないかを決定することもできる。でも、そこまでつめてはなかった。試合で起きた現象を振り返すと、アスピリクエタがフリーでボールを運ぶ。相手のサイドハーフを運ぶドリブルでピン止めする場面だった。

5-4-1からのプレッシング

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ボールを保持していないときのチェルシーのシステムは、5-4-1。ミシャ式と同じ。ボールを保持しているときはセンターでプレーをするウィリアンとアザールだが、相手がボールを保持しているときはサイドハーフのように振る舞っていた。人員的に余裕のあるハルのビルドアップ隊。とくに右センターバックのリヴァモアはセントラルハーフを本職としていたので、パスがとてもうまい。ジエゴ・コスタで追いきれるわけもなく、序盤にハルのペースで試合が始まった理由は、この守備体型にあった。両チームともに始まりの形では分が悪いと不思議と共通している。しかし、チェルシーはしっかりと修正する。

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ウィリアンとアザールを中央に集めて、プレッシングを始める。サイドのスライドという状況になったチェルシー。モーゼスやマルコス・アロンソは縦のスライドを行なう必要があるが、行ったり行わなかったり。コンテの振る舞いを見る限りだと、恐らく縦へスライドしろ、そのための3バックだろ!みたいな印象を受けた。マルコス・アロンソが縦にスライドしても、サイドバックの裏のスペースは両脇のセンターバックがスライドすればいいという論理になっている。このあたりの整理はまだまだだが、ハルのビルドアップ隊を焦らせるには十分の策だった。

試合を振り返ると、序盤はリヴァモアを中心に攻撃を組み立てていくハルのペースだった。ムボカニの存在感も強く、メイソンもハードワークでチームを牽引していた。しかし、チェルシーがプレッシングを行なうようになると、チェルシーがボールを保持する場面が増えていく。チェルシーはアザールとウィリアン、ジエゴ・コスタの中央突破コンビネーションがとても多かった。カンテ、マティッチ、そして3バックはどのように攻撃に絡むべきかまだ未整理のようだった。センターバックも前に出てくるようになれば、破壊力はより増していくと思う。

試合が動いたのは後半。チェルシーの精力的なボール保持攻撃とプレッシングによって、ショートカウンターもできるようになっていくチェルシー。ハルはただただ耐え忍ぶのみ。耐えきれるかというと、やっぱり耐えきれない。ウィリアンに中央をこじ開けられたあとは、ジエゴ・コスタにとどめをさされて、ゲームオーバーとなった。サイドにはってろでなく、相手のライン間で活動を繰り返すウィリアンとアザールを見ていると、3-4-2-1か3-5-2かで悩ましいコンテになるだろうと思う。久々の勝利と3バックの導入でコンテらしさを出していきそうなチェルシー。試金石はマンチェスター・ユナイテッド戦になるだろう。

ひとりごと

・ライアン・メイソン

もっとできる選手だと思うので、頑張って欲しい。ハルのビルドアップがぼろぼろになったときに、もっと列を下りてプレーしても良かった。対面のカンテやマティッチに勝てれば、いいアピールになっただろうに。

・ダビド・ルイス

ボヌッチ仕事を行うというよりは、目の前の空いてをただただ倒していくという単純作業がダビド・ルイスには向いているかもしれない。迎撃守備の3バックは、どこかへ消えてしまうダビド・ルイスには向いているかも。隣にテリーやケイヒルがいれば、ダビド・ルイスがどこかへ消えてしまっても、すぐには問題にならないだろう。

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