【可変式プレッシング】レヴァークーゼン対ドルトムント【トライアングルの再構築】

マッチレポ1617×ブンデスリーガ

レヴァークーゼンのスタメンは、ベルント・レノ、ヨナタン・ター、オマル・トプラク、ベンヤミン・ヘンリヒス、ラース・ベンダー、カンプル、アランギス、ブランド、チャルハノール、メフメディ、チチャリート。ロジャー・シュミットに率いられたレヴァークーゼン。国内リーグ、チャンピオンズ・リーグともに苦戦が続いている。ただし、序盤に躓いて、後半になると、連勝街道を突き進む法則が例年あるらしい。また、ベララビなど怪我人が多いようだ。

ドルトムントのスタメンは、ビュルキ、ピスチェク、ソクラティス、ギンター、ゲレイロ、ヴァイグル、ローデ、カストロ、デンベレ、プリシッチ、オーバメヤン。ライプツィヒに殴られて以降は、良い結果が続いているドルトムント。レヴァークーゼンはライプツィヒと同じ匂いがする。座して死を待つのか、戦って死ぬのか。なぜ死ぬことが前提なのかは不明だが、どのようにレヴァークーゼンのプレッシングに抗うかが注目される。

可変式は、ボール保持と保持していないときだけではない

ライプツィヒ戦では、3バックビルドアップで挑んだ。結果は散々だったのだが、トゥヘルはこの試合も3バックで臨んだ。

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ゲレイロがラームのように振る舞っている形だ。ライプツィヒとレヴァークーゼンは4-4-2を基準としたハイプレッシングを志向している。よって、システムを噛み合わせないように、3バックを採用したのだろう。ハル対チェルシーのように、ビルドアップを3バックで行なうことで、ビルドアップ隊の数的同数が時間とスペースを与えてくれることはある。時間とスペースを与えくれるかどうかは、相手次第。1列目に走らせることで、4-4-2を維持したまま、3バックのビルドアップに対抗するチームもあれば、相手のポジショニングにあわせて、自分たちの形を変えられるチームもある。ライプツィヒは自分たちの形を4-4-2→4-3-3で対抗してみせた。

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ライプツィヒと同じように、4-3-3に変化してドルトムントのビルドアップに対抗するレヴァークーゼン。なお、4-4-2から4-3-3への変化を最初に行ったのは、クロップ監督だった気がする。過去のドルトムントの策によって、現在のドルトムントが苦しめられるという構図は、なかなか興味深いものがある。また、チチャリートの役割が懐かしさを感じさせるものだった。ソクラティスには無闇にプレッシングをかけない。中央でボールを受けようとするヴァイグルやゲレイロへのパスコースを遮断することを優先していた。かつての、ボヌッチ→ピルロラインを遮断する役割を思い出させる場面だ。

ライプツィヒ戦の反省を活かして、ドルトムントはオーバメヤンに蹴っ飛ばす&2セントラルハーフにすることで、ビルドアップの出口を作りやすくするように修正をしてきた。しかし、カストロ、ローデをスルーして突撃してくるレヴァークーゼンのプレッシングに、2セントラルハーフを置いた意味は早々になくなる。試合中に一度だけ、ドルトムントのビルドアップ隊よりも、レヴァークーゼンのプレッシング隊の枚数のほうが多い場面があって笑った。ビュルキが繋げる選手ならば、それでも頑張るドルトムントになるのかもしれないが、蹴っ飛ばす場面のほうが多かった。オーバメヤンへの蹴っ飛ばしに対しては、ターとトプラクがスピード勝負でも簡単には負けなかったことで、効果的なプレッシング回避にはならなかった。

ボールを蹴っ飛ばせば、トランジションは起きやすくなる。トランジションを好物とするレヴァークーゼンにとっては、好都合の展開となる。ボールが両チームを移ろう中で、さきに先制点を決めたのはレヴァークーゼン。ビュルキのファインセーブで得たコーナーキックから、メフメディが決めて、レヴァークーゼンが先制する。

可変するシステムたち

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10分の失点で、3バックビルドアップをやめるドルトムント。トゥヘルの動きははやい。そして、レヴァークーゼンもさっさと4-4-2に戻した。こちらの動きもすこぶるはやい。ヴァイグルをオトリにして、センターバックの運ぶドリブルをする場面が増えていくドルトムント。ヴァイグルが身振り手振りで、センターバックにボールを運んでこいと合図していたのが印象に残っている。

このシステム変更をきっかけに、ドルトムントがボールを保持できるようになっていく。つまり、ロングボールを蹴る機会が減る。よって、トランジションで機会も減り、試合の流れはゆっくりとドルトムントペースになっていく。ただし、2つの走って死んでをできることで、ドルトムントの攻撃の精度を落とすことに成功したレヴァークーゼンの守備だった。

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クロップのチームやシメオネのチームの走力は異常。いわゆる走って死んでをする場面はする。する必要のない場面(3バックに3トップをぶつけるとか)ではしないの基準がしっかりしている。走らなければいけない場面がしっかり定義できているから選手も迷わない。2トップとサイドハーフがこれだけ守備に奔走してくれれば、後ろの選手も非常に守りやすい。22分くらいからは、カンプルをヴァイグルまで出して、ドルトムントのビルドアップに変化を求めている。ただし、長続きはしなかったけれど。

トライアングルの再構築

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後半の頭から、怒りの2枚替えのトゥヘル。プリシッチ→モル。カストロ→シュメルツァー。ゲレイロをインサイドハーフに移動させた。レヴァークーゼンの4-4-2の基準点を狂わせる答えが、インサイドハーフ落としだった。シュメルツァーの位置を上げて、ゲレイロを下ろす。そして、デンベレが中に入る。この整理が、サイドでのトライアングルの再構築となった。前半はインサイドハーフとサイドハーフのポジショニングが中央渋滞してしまい、センターバックの運ぶドリブルに対して、誰がどこで受けるかが曖昧になっていた。よって、数少ない機会もチャンスに繋げることができなかった。

このトライアングルの再構築は、逆サイドでも試される。ローデ→香川で一気呵成にでるドルトムント。ただし、その答えが昨年に散々やってきて封印したインサイドハーフ落としという策になるのも、また興味深い。そして、この策はカウンターや撤退守備で苦戦するために封印された。その歴史はしっかりと繰り返され、レヴァークーゼンにカウンターで80分に追加点を決められてしまう。しかし、オフサイドで取り消されたオーバメヤンのゴールのように、確実にレヴァークーゼンのゴールに迫れるようになっていったドルトムント。しかし、最後まで攻め続けるも久々のノーゴールで試合を終えることになった。

ひとりごと

インサイドハーフからビルドアップタスクをなくした今季のドルトムント。しかし、この試合で試合を動かしたのがインサイドハーフのビルドアップタスクを取り戻してからだった。結果としてはカウンターで沈んだけれど、効果的にボールを運ぶという意味では、苦戦したときのインサイドハーフ落としは、今後も出番があるかもしれない。20分のプレータイムをもらった香川真司。可でも不可でもなく。決して評価を落としたということはないだろう。上げたということもないだろうけど。レアル・マドリー戦のあとで、精神的な疲労もあったろうで、もう少しターンオーバーをしても良かったかもしれない。条件は、レヴァークーゼンも同じだけど。

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