【迷いを抱かせないコンテ】チェルシー対アーセナル【策をつめきれないベンゲル】

マッチレポ1617×プレミアリーグ

お馴染みのメンバーを揃えるチェルシーに対して、アーセナルはセントラルハーフに怪我人が多数出ているようだ。ベンチを眺めても、代わりに出てこられそうな選手は、残念ながらいない。エジル、アレクシス・サンチェスを筆頭に今季は一味違うアーセナルの雰囲気もあったが、上位には勝てない日々を過ごしている。自分たちのやりたい狙いが機能しなくても、5-4-1の撤退と前線トリオのカウンターで結果をもぎとれるチェルシー。チャンピオンズ・リーグがないこともあって、このまま首位を突っ走るのではないかと予想されている。アーセナルがこの勢いに待ったをかけられるのかどうか、という位置づけの試合となった。

配置的な優位性を消すためのアーセナルの策

チェルシーの3-4-3に対抗するために、アーセナルは4-3-3でプレッシングを行った。3バックに3トップをぶつけるトレンドの方法論によって、チェルシーのビルドアップを機能させないように企んできた。アーセナルのプレッシングといえば、アレクシス・サンチェス。とにかく前から相手を追いかけ回したいアレクシス・サンチェスは、味方にプレッシングの合図を何度も行なう。しかし、チームの約束事なのかどうかは定かではないが、味方がその合図を華麗にスルーする。アレクシス・サンチェスが怒るという試合を何度か目撃してきた。この試合に限って言えば、アレクシス・サンチェスのプレッシングを合図にウォルコット、エジルが3バックに連動したプレッシングを仕掛けていた。アレクシス・サンチェスはそのままクルトワにまでプレッシングをかけるやる気を見せていたのが印象に残っている。

この噛み合わせだと、チェルシーの3トップとアーセナルの4バックに怪しさを感じるところだ。実際の流れを振り返ってみると、ボールサイドのサイドバック(ベジェリン)がウイングバック(アロンソ)まで移動する。そして、逆サイドバックのモンレアルが中に移動する。ついでに、チェルシーの3トップへのパスコースを制限するためにコクランも余っているので、数的不利になりそうな気配はなかった。どちらかというと、アザールが中盤に下りていったら誰がついていくのか?という問題が見られた。ただし、チェルシーのビルドアップを破壊することには成功していたので、アザールの下りるポジショニングが試合に大きな影響を与えることはなかった。

アーセナルの3トップでアレクシス・サンチェスの言うとおりにプレッシングをかけよう作戦は、機能していたと思う。序盤のイウォビのシュートに見られたように、チェルシーはビルドアップでのミスを連発していた。さらに、ロングボールで逃げる場面が多く、アーセナルのサイドバックとチェルシーのウイングバックが空中戦を繰り返すという珍しい場面も見られた。アーセナルに計算ミスがあったとすれば、ジエゴ・コスタがアーセナルのセンターバックの質的優位示したことだろう。今日のジエゴ・コスタは異次元のプレーぶりだった。

諸刃の刃になったエジル

相手陣地での守備は機能していたアーセナル。結論から言うと、他の局面で問題が起きていた。自陣に撤退したときの守備と、相手陣地に相手を押し込んだときの攻撃に問題があった。

チェルシーの5-4-1に対して、アーセナルの攻撃は、残念ながら何かを準備してきているようには見えなかった。また、コクランやチェンバレンが相手にブロックの外でボールを持っても何がか起きそうな気配はなかった。即興性こそがアーセナルらしさでもあるのだけど、こういうときに人を代えてどうにかするしかないというのもなかなかきついアーセナルであった。

相手陣地では4-3-3、自陣に撤退したときは4-1-4-1で守備をするのがアーセナルの約束事だったのか、ウォルコットが真面目に帰陣していただけなのかは、監督に聞いてみないとわからない。事実として、エジルの下ってくるポジショニングは曖昧だった。そして、フリーになりやすかったモーゼスを起点にチェルシーの先制点が生まれてしまう。それまではアーセナルが狙いを持って試合を進めていたので、青天の霹靂のようなゴールだった。ただし、ウォルコットとエジルのポジショニングの差をチェルシーはわかっていたかもしれない。その後もモーゼスからの攻撃は続いた。

だったら、イウォビとエジルのポジションを入れ替えればいい話だ。イウォビは守備をサボらない。中央に移動したエジルは相手にブロックの外でもプレーができる。この変更が20分くらいだった。失点する前にこの変更がしたかった。チェルシーの守備の弱点を考えると、アザールのポジションから攻めようという共通理解がある。アザールはカウンターのことも考えて、できれば下がりたくないし、チームとしても下げたくない。だからこそ、アザールのエリアから攻め立てようというオシム理論をつかうときがきた。

しかし、アーセナルでアザールの位置から攻撃を仕掛けようとするのはエジルとアレクシス・サンチェスくらいであった。同じ目があるのだろう。しかし、他の選手に同じ目はない。また、設計もない。さらにアーセナルにのしかかったのがベジェリンの怪我によって、ガブリエルが右サイドバックに入ったことであった。本職はセンターバックのガブリエル。アザールを抑えるという意味では悪くないかもしれないが、アザールに守備をさせるという意味ではまるで物足りない。ウォルコットのサイドバックという博打のようで正しい作戦が見たかったが、最後までウォルコットがサイドバックになることはなかった。

また、イウォビが下がろうが下がるまいが、アーセナルとチェルシーの守備には決定的な違いがあった。ボールホルダーに誰がどこまで寄せるかという基準だ。チェルシーのカンテ、マティッチはボール保持者へのプレッシングを惜しみなく行った。アーセナルの面々はいまいち守備が整理されていない(下っていくアザールを捕まえられなかったように)ようで、押し込まれると非常に苦労していた。そして、追加点はアザールの個人技が爆発して決まり、トドメはチェフのミスをセスク・ファブレガスが決めるという残酷な形であった。

5-4-1の攻略の策は多々あれど、4-2-2-2はひとつの手として有効だ。2トップが3バックの迎撃守備を否定し、2トップ下と2セントラルハーフがチェルシーの2セントラルハーフの守備の役割を破壊する。そして、サイドバックの絶え間ない攻撃参加によって、チェルシーのウイングバックとウイングをサイドに釘付けにする。ベジェリンの怪我によって、よりによって守備に奔走するペドロサイドから攻撃するしかなかったアーセナルだが、モンレアルの奮闘は凄まじかった。そして、ジルーのゴールに繋がる。アスピリクエタを空中戦で狙い撃ちは、チェルシーの対策として必須になっていくかもしれない。

アザールの前線への移動は意図的かどうか

守備の負担やコンテの採用してきたシステムを考えると、そのうちに5-3-2はやりそうな気配がある。この試合で興味深かったのがアザールのポジショニングだ。

3回だけあった。3回だけなので、流れのなかで起きただけと考えるほうが自然だ。しかし、アーセナルが先制点を決められたときのチェルシーはこの形だった。だから、アザールがニアに飛び込む形が成立していた。このときのチェルシーはアーセナルの策に苦しんでいた。自陣からのビルドアップは機能しない。ジエゴ・コスタが根性でプレッシングを仕掛けるが、アーセナルのセンターバックの上手さにあっさりと回避されていた。5-4-1の撤退守備が崩されそうな気配はなかったが、ずっと守っていてもそれは歓迎すべき状況ではない。よって、アザールを前に出して、ジエゴ・コスタとプレッシングを開始した。これがコンテの指示なのか、選手の判断なのかはわからない。

チェルシーの普段着は3-4-3だが、様々な変化をそのうちに見せるかもしれない。そんな予感を感じさせる場面だった。

ひとりごと

チームの差をみせつけられたかのような試合になってしまった。一瞬の隙を見逃さないチェルシー。チームの設計もはっきりしているので、迷いがない。だから、強い。アーセナルはまだまだ練度不足のところがあるが、この練度が満足になる日が来るのかどうかは非常に怪しい。選手を選ぶというか、エジル、アレクシス・サンチェスクラスの選手が増えないと難しいというか。そんな試合になってしまった。

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