アトレチコ・マドリー対バルセロナから、ネイマールのいなくなった左サイドには誰もいない件

マッチレポ×1718

すったもんだがありましたが、細々と更新を続けていきます。選手獲得禁止で困った状態のアトレチコ・マドリーと、バルベルデ監督就任とネイマールが移籍してしまったでござるのバルセロナの対決から。昨年のバルセロナの形を思い出してみると、ボールを保持しているときは、4-3-3。ボールを保持していないときは4-4-2だった。MSNと言われるが、ネイマールだけ同列の扱いではない。ボールを保持していないときに2列目の守備に加わるからだ。このような1人だけ守備の負担が重いことは、ディ・マリアの憂鬱(レアル・マドリー時代の扱いを思い出そう)と呼ばれている。むろん、ネイマールがそんな負担を受け入れるわけもなく、パリ・サンジェルマンに移籍してしまった。この移籍をきっかけに、4-4-2で守るとイニエスタとブスケツも辛そうだし、ノーマルな形に戻ることが本来のバルセロナに戻るのではないか?と考えた人は多いだろう。僕もそんな風に考えていた。

しかし、スタメン図をよく眺めてみると、右ウイングにはアンドレ・ゴメスがいる。左右は置いておくとして、ウイングにアンドレ・ゴメスである。固い、非常に固い。そして、驚くべきはネイマールのいなくなった左サイドだ。誰もいない。シーズン前は懐かしのイニエスタがネイマールの位置をやるのかなとワクワクしていたが、蓋をあけてみれば誰もいなかった。セリエAのアトランタ・リスペクトかとも頭をよぎったが、バルベルデがアトランタのプレーモデルをバルセロナでやる、なんてことはないだろう。というわけで、試合に話を移していく。なお、アトレチコ・マドリーは、相変わらずアトレチコ・マドリーであった。

バルセロナの選手配置

恐らく、理想の配置はこのようになる。アンドレ・ゴメスに比べると、中央のポジショニングからハーフスペースに移動するスアレスのほうが負担は大きい。自陣にボールがあるときはロングボールの的になったり、相手に裏を警戒させる必要がある。さっさとハーフスペースに移動してしまうと、相手に深さを警戒させることができないので、好ましくない。よって、スアレスが移動してこないと、左サイドは本当に空っぽになることが多い。でも、バルセロナにはジョルディ・アルバがいるとなるが、ジョルディ・アルバが怪我をしたら、なかなか大変そうである。

なお、アンドレ・ゴメスがすでにサイドにいる右サイドは、セメードとのポジションチェンジ(ハーフスペースにポジショニングするのはサイドバックでもウイングでも可)などなど、左サイドに比べると、多彩さはあった。左サイドは、サイドはほとんどがジョルディ・アルバ一択であった。このようなサイドの差が特にどうこうってことはないんだろうけど、現象として起き続けていた。

偽サイドバック的なインサイドハーフ

バルセロナ陣地でのアトレチコ・マドリーのプレッシングは、なかなか強烈だった。しかし、プレッシングを回避できることが多かったバルセロナは、自陣に撤退したアトレチコ・マドリーと向き合う時間がとっても長かった。アトレチコ・マドリーの得意技は、ボールを奪ってからのカウンターである。この試合のアトレチコ・マドリーは、ボールを奪ってから(バルセロナの守備の撤退が完了してからの攻撃だったけれど、)の定位置攻撃で先制点を取る。ボールを持たされても問題ないことを証明しつつあるけれど、ここで大事なことはボールを奪う→ボールを奪われずに自分たちの定位置攻撃につなげることができたことだ。

ボールを奪ってから最初の起点となるのは、グリーズマンとコレアであることが多い。相手がボールを保持しているときの彼らのポジショニングは重要になる。かつてのバルセロナ対策であるブスケツの周りにずっと潜む作戦は、セカンドボールを回収するブスケツをトランジション局面で消すための策であった。だったら、アトレチコ・マドリーのコンビを消すための策を考えると、イニエスタ、ラキティッチ、ブスケツがこの位置にいることが大きい。バイエルンのアラバが相手のカウンターを止めるためにサイドバック→セントラルハーフのような位置でプレーしていたことは有名だ。通称・アラバロール。バルセロナの場合は、インサイドハーフを動かさないことで、ボール保持を安定させ、相手のカウンターを攻撃を食い止めるポジショニングとなっていた。まあ、それでも根性で突破していく場面を作るアトレチコ・マドリーだったけれど。根性はなかなか再現できない。

ちなみに、得点を奪いに行くときは、イニエスタやラキティッチもハーフスペースやゴール前に侵入していく。そんなときは、ブスケツの周りに人がいなくなり、相手のカウンターを加速させることもしばしば。サイドバックも上がってしまう関係で、センターバックの勇気が試される。こんなときに仕事をしてきたのは相手の前でパズカットできるマスチェラーノや、相手が独走してもなぜか止めてしまうプジョルだった。ウムティティはどちらの道を進むことになるのだろう。この問題はのちのちバルセロナの足を引っ張るかもしれない。あくまで先制されたときの話になるだろうけど。

選手配置の関係で、バルセロナの侵入はサイドが起点となることが多くなっている。ハーフスペースでボールを受ける、大外でボールを受ける。サイドバックとハーフスペースの住人によるコンビネーションでサイドを打ち破る。または、ラキティッチ、ブスケツ、イニエスタでボールを回収してショートカウンターを発動させるか、ポゼッションを延々と続けるかみたいな。そして、主役のメッシが登場する。

質的優位どころではないメッシ

メッシのインサイドハーフは、ごく僅かな住人の希望、夢だったのだけど、バルベルデはトップ下で起用した。今季のバルセロナも相手がボールを保持しているときは4-4-2で守るので、だったら最初から中央にいていいよ!というのは理に適っている。完全な2トップにメッシのトップ下にすれば、昨年のレアル・マドリーのリスペクトスタイルになるのだが、さすがにレアル・マドリーのコピーはしなかったようだ。前述したように、バルセロナの攻撃の起点はサイドよりになっている。しかし、中央にメッシがいる。というわけで、ときどきメッシから始まる中央突破が起きる。相手がサイドを警戒して中央を空けたらと書きたいが、アトレチコ・マドリーが中央を空けるわけでもないので、ときどき強引に中央突破を行うバルセロナであった。

質的優位という言葉には、この相手には勝てますというニュアンスがある。リベリとロッベンなら相手のサイドバックに勝つ可能性が限りなく高いみたいな。このときの相手は単独であることが多い。つまり、ワン・オン・ワンなら負けないっすというあれだ。しかし、メッシの場合は、相手が複数いる。ガビもサウールもときどきはグリーズマンやコレアも。そして、ゴディンやサヴィッチも来る。質的優位とは言っている場合ではない。しかし、それでもメッシならなんとかしてくれるみたいな。バルセロナの中ではドリブルでチャレンジする機会が圧倒的に多いメッシは、相手にボールの奪いどころと設定されることが多い。よって、ファウルすれすれだったり、ファウルだったりで止められるメッシ。南米予選後の試合だったのに、中央から得点を決めそうなメッシは規格外の化物だと改めて感じさせられた。

で、この中央のメッシは諸刃の剣とも言える。メリットは中央からメッシという伝家の宝刀を持つことだ。相手はファウルすれすれのアタックになるので、ゴール前でのセットプレーの機会は自然と増えるだろう。中央を警戒してくれれば、サイド起点の攻撃の精度が上がるという算段にもなってる。デメリットはボールを奪われたときのインサイドハーフのポジショニングだろう。メッシのボールの奪われ方は、イレギュラーな奪われ方であることが多い。そもそもボールを奪われる前提でないだろうし、ボールを奪われてもファウルじゃないのか?という隙も生まれやすい。そのときに、イニエスタとラキティッチがメッシを追い越したポジショニングをしていると、ブスケツがひとりぼっちになってしまう。このバランスをどこに見出すかか、チャンピオンズ・リーグや、レアル・マドリーとの決戦の鍵になってきそうだ。

ひとりごと

アトレチコ・マドリーは、1列目の守備が相変わらずえぐかった。アトレチコ・マドリーの1列目は、2列目の選手が動かされると、さっと2列目にカバーリングできるのがすごい。普通はそこまで守備をしてくれない。FWたちの素晴らしいお手本なので、アトレチコ・マドリーの守備はやっぱり参考になる。なお、守備が機能しない大抵の問題は、ファーストディフェンダーの決定が遅い→1列目が守備をしないからという要因ばかりである。頑張れ1列目。守備をしたくなかったら、ボールを失わない&すぐに奪い返すしか道はない。なお、バルセロナは1列目が守備をあまりしてくれないので、非常に困っている。

ネイマールの代わりがパウリーニョか!といじられていたパウリーニョ。しかし、前線でクロスの的になれるインサイドハーフとして重宝されているようだった。この試合では早速の上下動で偽FWとして振る舞い、地味に同点ゴールを演出している。ファン・ボメル、ダービッツとフィジカル型のインサイドハーフが起用されてきた歴史も持っているバルセロナ。どうせだったら、アンドレ・ゴメス、パウリーニョを並べて、メッシ、スアレス、イニエスタを前線で休ませるファンタジーサッカーにもチャレンジして欲しい。アンドレ・ゴメスやパウリーニョならそれでも耐えてくれそうである。ブスケツがかわいそうだけど。

コメント

  1. shin より:

    試合自体は面白かったですけど、バルサはサイド攻撃が弱体化しアトレティコは攻撃的な守備の見劣りが否めずあまり頂上決戦という感じはしなかったです。
    メッシはネイマールの離脱でむしろ凄味が増しましたが、チームにはあまり怖さを感じません。
    レアルも不振で今季はダークホースのバレンシアが制しそうです。

    • らいかーると より:

      こんにちは。

      結局はメッシかよ!という形が増えていきそうですが、ボールを前進させる、保持するなんてバルセロナのお馴染みの場面は、昨年よりも凄いをマシていきそうです。もちろん、それが結果に繋がるかはわかりませんが。

      レアル・マドリーが不振ということで、こんど見てみます。優勝は絶対にないでしょうけど、ベティスが気になっています。

  2. より:

    更新お待ちしておりました!!!
    お時間が有る時にレアルマドリーの分析もお願いします( ^^) _旦~~

    • らいかーると より:

      お待たせしました!

      レアル・マドリーには昨年の4-4-2菱型を期待しています!

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