シーズンの終わりはチャンピオンズリーグ・ファイナル。生放送でチャンピオンズリーグのファイナルを毎年放送してくれているフジテレビに感謝感激だ。なお、チャンピオンズリーグの放映権は、来季からダ・ゾーンに変わる。民放でチャンピオンズリーグのファイナルが来年も見られるのかどうかは注目だ。この風習だけはできれば続けてほしいと心の底から願っている。
チャンピオンズリーグのファイナルにいることが当たり前の景色になりつつあるレアル・マドリー。しかも、メンバーも変わらないのだから、凄い。というか、意味が不明だ。この試合ではベイルではなく、イスコを選択したジダン。4-3-3でなく、4-3-1-2でリヴァプールに臨むジダンであった。
コウチーニョのバルセロナ移籍も何のそののリヴァプール。むしろ、おれたちのミルナーが中盤に戻っていて嬉しくなる。なお、サイドでブレイクしたミルナーだが、一時期はセントラルハーフをやっていた。そのときのミルナーは、当時のスコールズを彷彿とさせるプレーをしていたことをよく覚えている。なお、セントラルハーフ後のミルナーは便利屋として、本職はどこなん?状態が続いていたのは言うまでもない。特にけが人もいないよ!ということで、ベストメンバーで臨むリヴァプールであった。
リヴァプールのプレッシング
クロップのチームは、良くも悪くも攻撃的なイメージが強い。よって、相手がボールを持っていたら、それがどんな位置だったとしても、ボールを果敢に奪いに行くみたいな。しかし、レアル・マドリーを相手にしたときのリヴァプールは、非常に落ち着いたプレッシングを見せた。フィルミーノはカゼミーロを担当し、ウイングのサラーとマネは2列目に吸収されることなく、ハーフスペースの入り口にたつことで、レアル・マドリーのビルドアップの出口を消そうとしていた。また、2列目に吸収させない&ハーフスペースにたつことで、このウイングコンビをカウンターの起点としたい狙いがチームにあったのだろう。
ただし、トランジション局面でのプレッシングの激しさは非常にクロップらしさにあふれていた。レアル・マドリーがボールをいい姿勢で持っているときは静かに。ボールの持ち方にちょっとした混乱が生じたときは風のように疾いプレッシングで、レアル・マドリーからボールを奪い返していた。試合の序盤に関して言えば、リヴァプールの2種類の動と静のプレッシングに対して、レアル・マドリーは解決策を見いだせずにいた。よって、リヴァプールが試合の主導権を握る形となっていった。
守備が整理されていないときに慣れている特殊型のレアル・マドリー
前半のレアル・マドリーの守備は、かなり不安定なものだった。序盤はクリスチャーノ・ロナウドを左サイドとする4-5-1。しかし、気がつけば、イスコをサイドハーフとする4-4-2。イスコはどちらのサイドと守備が決まっていないようで、ときどきは帰ってこないこともあった。
このように、レアル・マドリーの守備の形、枚数は気まぐれに変更される。変更理由に相手が存在しているのかしていないのか不明なので、非常に不安定なものとされる。後方の7人はいざとなったら、4-3で守りますという心の準備はしている。よって、崩れそうで崩れない。だろうけど、この不安定さは弱点につながっていくと考えるのが普通だろう。
レアル・マドリーを追いかけている人ならば、覚えているディフェンダーがいるだろう。その名はカンナバーロ。当時は世界最強のセンターバックが来た!と大騒ぎだったが、イタリアと比べると、さらされる回数の多いレアル・マドリーの守備組織のなかで、良さを出すことがなかなかできなかった。
一方で、バルセロナにいたプジョルはさらされた中でも存在感を出していた。つまり、守備が整理されていない状況では、ディフェンダーがかなり厳しい状況に追い込まれることとなる。ゆえに、相手の守備が整っていないときに速攻、カウンターを仕掛けたら得点が生まれやすい。この試合でもさらされた状態でマネの対応に苦しんでいたカルバハルのプレーは印象に残っている。
しかし、セルヒオ・ラモスとヴァランはさらされた状態でも崩れない。この試合のリヴァプールは決定機はそんなに多くなかったが、決定機未遂(あとちょっとで決定機)の場面は多かった。そんな場面で必ず登場するのがセルヒオ・ラモスとヴァランだ。ぺぺもこのタイプの守備者に分類されるが、ちょっと異常な能力と言っていいだろう。
もちろん、彼らの前にいるカゼミーロ、後ろにいるケイラー・ナバスの実力も半端ない。序盤のアーノルドのシュートをケイラー・ナバスが止めていなければ、この試合の主導権はもっとリヴァプールが握る形になっていたかもしれない。そんな場面で仕事をできるかどうかが選手としての価値を決めるので、この試合でのケイラー・ナバスはしっかりと仕事をしたと言えるだろう。
ビルドアップの出口を見つけていくレアル・マドリー
フィルミーノがカゼミーロ番だったので、センターバック同士のパス交換で状況をリセットできる状態だったレアル・マドリー。ビルドアップの出口を見つけましょう!ということで、左サイドに活路を見出すことになった。最初のネタは恒例の「インサイドハーフ落とし」だ。インサイドハーフの選手がサイドバックのエリアに移動→サイドバックの選手は一列前の大外エリアに移動することで、相手のウイング(サラー)の守備の基準点を複数用意することで、ビルドアップの出口とする。アンチェロッティ時代から続く伝統芸だ。
そして、伝統芸にたされたネタがベンゼマ、クリスチャーノ・ロナウドが同サイドに流れてプレーするだ。彼らが高い位置にポジショニングすることで、「ピンどめ」が起きている。マルセロを守備の基準点としたいアーノルドだが、クリスチャーノ・ロナウドがいて動けない。クリスチャーノ・ロナウドを捨てたくても、ロブレンはベンゼマがいるので、動けないという構図だ。なお、このエリアにイスコも登場することしばしばあった。
人が多い左サイドの一方で、逆サイドは空っぽであることが多かった。サラーを守備に奔走させたかったという狙いもあるだろうが、単純にレアル・マドリーの強いサイドが左サイドだったことから、左サイドを中心とする前進が中心となったのだろう。そして、ゆっくりと試合の主導権を握り返そうとするレアル・マドリーであった。
20分がすぎると、これはゆっくりとレアル・マドリーのペースになっているではないか!と気がついたリヴァプールの面々。だったら、我々も動かねばならない。座して死を待つなら戦って死のう!というわけで、クロップらしいプレッシングを仕掛けるようになる。フィルミーノは我慢、時々参加。中心人物はマネとサラーであった。
レアル・マドリーはインサイドハーフ落としのように、ポジショニングを調整する時間を必要とする。よって、その時間を与えなければ、まじか!という状態になりがちだ。よって、レアル・マドリーはロングパスなどでプレッシング回避を狙うが、ミスが目立つようになっていく。よって、リヴァプールがまたも主導権を握り返したかな?という流れになっていく。なお、ここで、イスコの切ない守備をきっかけにアーノルドの決定機が起きるのだが、残念そこはケイラー・ナバス。そして、その後にサラーが負傷退場してしまう。
サラーがいなくなったときのレアル・マドリーの勝負勘
サラーの代わりに登場したのはララーナ。そして、右サイドにはマネが移動。マネのポジショニングはサラーと大きく変わらなかった。よって、クロップの狙いとしては、レアル・マドリーがアーノルドサイドから狙うなら、マネを置いて殴り合いは継続だぜという采配とも言える。そして、サラーがいなくなっても、クロップらしいプレッシングは継続していた。継続していたんだけど、それを継続させなかったのがレアル・マドリーの恐ろしさだった。
ララーナが登場したのは30分。残りは15分だ。しかし、流れはリヴァプール。そのきっかけはプレッシング。よって、プレッシングは継続する。しかし、マルセロが個人技でプレッシングを回避する。そして、続けて今度はモドリッチが運ぶ&突破のドリブルのミックスでプレッシングを回避する。おそらく、この2つのプレーがリヴァプールのプレッシング継続に恐怖を抱かせた。
それに拍車をかけるのが微妙な残り時間と言えるだろう。前から奪いに行っても奪えそうもない。時間もそんなにない。だったら、撤退して守備をしたほうがいいのではないかと考えるのは懸命な判断だろう。それまでは強引にプレッシングをかわそうとするプレーをほとんどしてこなかったマルセロとモドリッチだったが、この状況でハイリスクを選択し、ハイリターンを得るのだから、本当に恐ろしいプレーだった。
レアル・マドリーのボール保持の特徴
リヴァプールが撤退守備を選択した、もしくはさせられたこともあって、ボールを保持するようになったレアル・マドリー。レアル・マドリーのボール保持はゴール前のバランスが非常に悪いケースが多い。具体的に言うと、ゴール前に誰もいないことが多い。前述のように、2トップはサイドに流れていく仕事がある。だったら、中央に飛び出していく選手はだれなの?となるが、特に準備されていない。なので、ゴール前に人がいないじゃねえか!となり、また攻撃をやり直すことがある。
ゴールを決めるためにボールを保持するのだから、効率が良くないように思える。ただし、ゴール前に人がいない代わりに中盤には人がいる。よって、ボールを保持するという目的を達成する意味では人の配分は正しいとなる。前線のポジショニングバランスの悪さを修正するためには、またしても時間が必要になるレアル・マドリー。その時間を捻出するために、レアル・マドリーはゴール前に人がいる状態よりも、ボール保持を安定させることを優先している。よって、ゴール前に人が集まってくるまでは相手のブロックの外で延々とボールを回し続ける。そして、ゴール前の準備が整うと、サイドからクロスを上げてくるという形がこの試合では多かった。
ベンゼマのシュートが認められなかった場面ではイスコの左サイドの仕掛けから始まっている。また、前半の終わり間際では、ビルドアップの出口としていた左サイドからベンゼマのカットインミドルとベンゼマのクロスからファーサイドでナチョという形を作られている。つまり、枚数を集めた左サイドからの仕掛けと延々と続くビルドアップからのクロスという準備された攻撃によって、今度はリヴァプールが追い込まれていく展開となっていった。しかし、前半にゴールは決まらずに、試合の結果は後半に委ねられた。
ひとりごと
後半に続く。
コメント
一応チェンバレンが怪我だったと…
ほんまや。。補足ありがとうございます。
いつも楽しく拝見しております。
カンナバーロ懐かしいですね。
当時はイケイケドンドンのSB(ときどきCB)だったラモスが、こんな風になるとは想像もしていませんでした。
移籍の噂も絶えないですが、なんだかんだ来シーズンもいい位置につけそうだなと感じました。